FPGAを使った独自技術の全貌を紹介
CHORDが「DAVE/Mojo」で実現した“最先端” DAC技術。CEOやエンジニアが詳細を語る
■ロブがFPGAに描き込む回路は「大都市の景観全体を見渡すようなもの」
フランクス氏は同社のDACの要点についても詳しく説明してくれた。汎用のDACチップは数ドルで買えるものからあるが、処理能力はある程度限定されてしまうと同氏は説明する。オーディオ機器の心臓部と言えるDACが汎用のものならば、オーディオ的な処理能力も限定的にならざるを得ないというのが同氏の考えだ。
対してCHORDは、FPGAに独自のアルゴリズムを書き込むことでDACとして使う。フランクス氏は「FPGAはいわば黒いキャンパスで、そこに回路を設計して描いていき、DACの役目を果たす電子回路が完成するのです」と例えてくれた。
「汎用のDACチップが見ている世界というのは、例えれば街の1ブロックを見ているのに過ぎません。一方でロブが設計してFPGAに描き込む回路というのは、大都市の景観の全貌を見渡すような広さを持っています。そのくらいの差があると考えてもらえればいいでしょう」(フランクス氏)。
CHORDの最新製品であり、コンパクトさと求めやすい価格を実現して話題を集めるポータブルDAC「Mojo」も、当然FPGAによるDACを備えている。これは、消費電力の低いXilinx社の新世代Artix7 FPGAがあってこそ実現したものだという。Mojoにおける消費電力というハードルは、Hugoの比ではなかった。
フランクス氏はMojoに対して特別な想いを込めている。この分野のコンパクトな製品で、大出力を供給できるというのがひとつのポイントなのだという。「音楽を愛している、あらゆる人に楽しんでもらえる製品を目指したのです」。
「Mojoはオーディオファイルだけでなく広いユーザーを対象としています。最近でもあるユーザーコメントで、それまでオーディオにそれほど興味がなかったのに、Mojoを買ってからヘッドホンをたくさん買ったというものがありました。Mojoをきっかけに、オーディオファイルの世界に新しいユーザーが入ってきているのです。どこでも手軽に素晴らしい音を提供できるハードを提供することで、これからも音楽好きのハートを勝ち取っていきたいのです」(フランクス氏)。
■ロバート・ワッツ氏が語る、D/A変換における“トランジェント”の重要性
続いて、ロバート・ワッツ氏が登場。同社の2つの最新製品「Mojo」と「DAVE」について、技術面での詳細を説明してくれた。
DACの音がどうして悪いのかご存じですか、ワッツ氏はそう切り出した。「つまるところ、トランジェント(過渡特性)の精度の問題なのです。トランジェントは、“時間精度”とも言い換えることもできます。楽器のピッチは、音の急峻な立ち上がりと立ち下がりによって表現されます。特にベースギターが出すような低い音は、そもそもピッチを判別しにくいですが、それを正確に再現できるかどうかには、トランジェントが大きく関わるのです」。
「音場空間の再現や定位においても、トランジェントは重要です。人間は音が聞こえる方向や位置を、左右の耳にその音が届く際の時間差によって聴き分けます。そのごくわずかな“時間差”を高い精度で再現できるかという意味で、定位においても重要なのはトランジェントなのです」(ワッツ氏)。
楽器の音色についても、トランジェントが強く関係しているとワッツ氏。「楽器そのものの明るさや暗さの判別に、トランジェントが影響します。当然ながら音符の再現、楽音の始まりと終わりを正確に再現できるかどうかも、時間精度が左右しています」。
「デジタルオーディオの問題というのは結局、離散的なタイミングでサンプルされたデータを、時間軸上にいかに正確に復元できるかということなのです。一般的なDACチップとそれが含有するデジタルフィルターで、この復元を正確に行うには処理能力的にも限界があります。ですから時間軸で精度が低く、密度の低いサンプルしか作れないのです」(ワッツ氏)。
フランクス氏は同社のDACの要点についても詳しく説明してくれた。汎用のDACチップは数ドルで買えるものからあるが、処理能力はある程度限定されてしまうと同氏は説明する。オーディオ機器の心臓部と言えるDACが汎用のものならば、オーディオ的な処理能力も限定的にならざるを得ないというのが同氏の考えだ。
対してCHORDは、FPGAに独自のアルゴリズムを書き込むことでDACとして使う。フランクス氏は「FPGAはいわば黒いキャンパスで、そこに回路を設計して描いていき、DACの役目を果たす電子回路が完成するのです」と例えてくれた。
「汎用のDACチップが見ている世界というのは、例えれば街の1ブロックを見ているのに過ぎません。一方でロブが設計してFPGAに描き込む回路というのは、大都市の景観の全貌を見渡すような広さを持っています。そのくらいの差があると考えてもらえればいいでしょう」(フランクス氏)。
CHORDの最新製品であり、コンパクトさと求めやすい価格を実現して話題を集めるポータブルDAC「Mojo」も、当然FPGAによるDACを備えている。これは、消費電力の低いXilinx社の新世代Artix7 FPGAがあってこそ実現したものだという。Mojoにおける消費電力というハードルは、Hugoの比ではなかった。
フランクス氏はMojoに対して特別な想いを込めている。この分野のコンパクトな製品で、大出力を供給できるというのがひとつのポイントなのだという。「音楽を愛している、あらゆる人に楽しんでもらえる製品を目指したのです」。
「Mojoはオーディオファイルだけでなく広いユーザーを対象としています。最近でもあるユーザーコメントで、それまでオーディオにそれほど興味がなかったのに、Mojoを買ってからヘッドホンをたくさん買ったというものがありました。Mojoをきっかけに、オーディオファイルの世界に新しいユーザーが入ってきているのです。どこでも手軽に素晴らしい音を提供できるハードを提供することで、これからも音楽好きのハートを勝ち取っていきたいのです」(フランクス氏)。
■ロバート・ワッツ氏が語る、D/A変換における“トランジェント”の重要性
続いて、ロバート・ワッツ氏が登場。同社の2つの最新製品「Mojo」と「DAVE」について、技術面での詳細を説明してくれた。
DACの音がどうして悪いのかご存じですか、ワッツ氏はそう切り出した。「つまるところ、トランジェント(過渡特性)の精度の問題なのです。トランジェントは、“時間精度”とも言い換えることもできます。楽器のピッチは、音の急峻な立ち上がりと立ち下がりによって表現されます。特にベースギターが出すような低い音は、そもそもピッチを判別しにくいですが、それを正確に再現できるかどうかには、トランジェントが大きく関わるのです」。
「音場空間の再現や定位においても、トランジェントは重要です。人間は音が聞こえる方向や位置を、左右の耳にその音が届く際の時間差によって聴き分けます。そのごくわずかな“時間差”を高い精度で再現できるかという意味で、定位においても重要なのはトランジェントなのです」(ワッツ氏)。
楽器の音色についても、トランジェントが強く関係しているとワッツ氏。「楽器そのものの明るさや暗さの判別に、トランジェントが影響します。当然ながら音符の再現、楽音の始まりと終わりを正確に再現できるかどうかも、時間精度が左右しています」。
「デジタルオーディオの問題というのは結局、離散的なタイミングでサンプルされたデータを、時間軸上にいかに正確に復元できるかということなのです。一般的なDACチップとそれが含有するデジタルフィルターで、この復元を正確に行うには処理能力的にも限界があります。ですから時間軸で精度が低く、密度の低いサンプルしか作れないのです」(ワッツ氏)。