FPGAを使った独自技術の全貌を紹介
CHORDが「DAVE/Mojo」で実現した“最先端” DAC技術。CEOやエンジニアが詳細を語る
■アナログ波形の正確な復元を可能にするWTAフィルター
ロバート・ワッツ氏はDACの働きについて、下の図を示して説明する。「上の図はオリジナルの正弦波の信号を示しています。これがA/D変換を経て、下の図のように、標本化して得られるデジタルデータになります。そして、D/A変換で行われるのは、下の図の波形を、元々の上の図の波形に復元する作業になります」。
「このアナログ信号への復元を単純なデジタルフィルターで行うと、トランジェント特性から考えるとエラーを伴う波形になってしまいます、ここで言うエラーは、100マイクロ秒以上のタイミングの誤差というかたちで現れます。もしここで、無限の処理が可能なデジタルフィルターを補間に用いることができれば、オリジナルの波形を完全に復元することができるのです」(ワッツ氏)
では、現実にはどのような処理によって、この時間精度の正確な再現を実現するのだろうか。「シャノンの標本化定理が示す通り、無限に近づくように処理を増やしていけば、音質を向上させることができるのです」とワッツ氏は語る。そのために開発されたのが、CHORD独自のWTAフィルターなのだ。
「DAC64の開発に際して、デジタルフィルターのアルゴリズムを徹底的に検討しました。ここで、現在に至る補間フィルターのレシピができたのですが、ポイントはいかに効率的に処理を行うかということです。サンプルしたデータが22ミリ秒であれ、2ピコ秒であろうと、復元することは可能なのです」(ワッツ氏)。
■最新FPGAによりWTAフィルターが小型ポータブル機でも実現可能に
こうして完成されたWTAフィルターは、FPGAの進化もあり、手のひらに収まるサイズのMojoにも搭載できるようになった。このMojoが備えるデジタルフィルターでさえ、通常のDACの500倍の処理能力を持つとワッツ氏は胸を張る。「楽器の音色、音の立ち上がりと立ち下がり、ピッチ…様々な音楽の要素をより正確に再現できるのです」。
Mojoは設計に3年間の月日を要したとのこと。当然ながら、先行して登場したポータブルDAC「Hugo」で完成された技術も大きく関係したという。Mojoにおいては特に、動作効率を極限まで高めて、どこまで省電力化できるかがキーポイントになったとのこと。
Mojoの大きな飛躍を実現したのは、フランクス氏も述べた通り、Xilinx社の新世代Artix7 FPGAだった。このチップは省電力での動作が可能で、かつ、比較的ローコストで入手ができるのだという。こうして、Hugoで実現したことが、その半分以下のサイズのDACで可能になったのだ。
また、Mojoにおいてはバッテリー技術の進化も重要だった。Mojoにおける処理の規模は大きく、かつ筐体は非常に小さいため、安定した恒温動作が可能なバッテリーの開発が求められたのだという。「ジョンから求められたのは、Mojoのサイズと価格で、Hugo並の音質と音楽性を維持せよというものでした。そして感度の高いイヤホンから駆動力の必要な大型ヘッドホンまで、十分に駆動できる出力も必須でした」。
もうひとつキーになったのは「低雑音性能」だったとのこと。カスタムIEMなど感度の高いイヤホンにおいても、満足できるノイズレベルを実現するために、低雑音性能のさらなる強化は必須だったのだという。「Mojoにおいては、雑音出力が3μVという超低雑音を実現しました」とワッツ氏。さらにはTHD+Nが0.00017%@3Vという超低歪、ダイナミックレンジが125dBという驚異的な特性も獲得した。ワッツ氏は「Mojoはとても小さな製品ですが、Hugoと同じ出力、そしてHugoと同じ音質と音楽性を獲得しているのです」と自信を見せていた。
ロバート・ワッツ氏はDACの働きについて、下の図を示して説明する。「上の図はオリジナルの正弦波の信号を示しています。これがA/D変換を経て、下の図のように、標本化して得られるデジタルデータになります。そして、D/A変換で行われるのは、下の図の波形を、元々の上の図の波形に復元する作業になります」。
「このアナログ信号への復元を単純なデジタルフィルターで行うと、トランジェント特性から考えるとエラーを伴う波形になってしまいます、ここで言うエラーは、100マイクロ秒以上のタイミングの誤差というかたちで現れます。もしここで、無限の処理が可能なデジタルフィルターを補間に用いることができれば、オリジナルの波形を完全に復元することができるのです」(ワッツ氏)
では、現実にはどのような処理によって、この時間精度の正確な再現を実現するのだろうか。「シャノンの標本化定理が示す通り、無限に近づくように処理を増やしていけば、音質を向上させることができるのです」とワッツ氏は語る。そのために開発されたのが、CHORD独自のWTAフィルターなのだ。
「DAC64の開発に際して、デジタルフィルターのアルゴリズムを徹底的に検討しました。ここで、現在に至る補間フィルターのレシピができたのですが、ポイントはいかに効率的に処理を行うかということです。サンプルしたデータが22ミリ秒であれ、2ピコ秒であろうと、復元することは可能なのです」(ワッツ氏)。
■最新FPGAによりWTAフィルターが小型ポータブル機でも実現可能に
こうして完成されたWTAフィルターは、FPGAの進化もあり、手のひらに収まるサイズのMojoにも搭載できるようになった。このMojoが備えるデジタルフィルターでさえ、通常のDACの500倍の処理能力を持つとワッツ氏は胸を張る。「楽器の音色、音の立ち上がりと立ち下がり、ピッチ…様々な音楽の要素をより正確に再現できるのです」。
Mojoは設計に3年間の月日を要したとのこと。当然ながら、先行して登場したポータブルDAC「Hugo」で完成された技術も大きく関係したという。Mojoにおいては特に、動作効率を極限まで高めて、どこまで省電力化できるかがキーポイントになったとのこと。
Mojoの大きな飛躍を実現したのは、フランクス氏も述べた通り、Xilinx社の新世代Artix7 FPGAだった。このチップは省電力での動作が可能で、かつ、比較的ローコストで入手ができるのだという。こうして、Hugoで実現したことが、その半分以下のサイズのDACで可能になったのだ。
また、Mojoにおいてはバッテリー技術の進化も重要だった。Mojoにおける処理の規模は大きく、かつ筐体は非常に小さいため、安定した恒温動作が可能なバッテリーの開発が求められたのだという。「ジョンから求められたのは、Mojoのサイズと価格で、Hugo並の音質と音楽性を維持せよというものでした。そして感度の高いイヤホンから駆動力の必要な大型ヘッドホンまで、十分に駆動できる出力も必須でした」。
もうひとつキーになったのは「低雑音性能」だったとのこと。カスタムIEMなど感度の高いイヤホンにおいても、満足できるノイズレベルを実現するために、低雑音性能のさらなる強化は必須だったのだという。「Mojoにおいては、雑音出力が3μVという超低雑音を実現しました」とワッツ氏。さらにはTHD+Nが0.00017%@3Vという超低歪、ダイナミックレンジが125dBという驚異的な特性も獲得した。ワッツ氏は「Mojoはとても小さな製品ですが、Hugoと同じ出力、そしてHugoと同じ音質と音楽性を獲得しているのです」と自信を見せていた。