【特別企画】
【Phile-web読者 × 大橋伸太郎】ヤマハAVアンプ“AVENTAGE”最上位機「RX-A3020」の進化を検証する!
【第四章】シネマDSPの進化 |
AVアンプユーザーの本音が飛び出す! 「シネマDSP」の進化を軸に、ヤマハの音場づくりに迫る
4名のPhile-web読者が評論家 大橋伸太郎氏と共に、ヤマハAVアンプ “AVENTAGE”最上位機「RX-A3020」の進化に迫っていくプレミアム視聴会。ここまで3回にわたって、音質や機能面など多角的にRX-A3020の実力を検証してきた。
実は今回の視聴会では、RX-A3020自体の高音質化・機能性もさることながら、参加者から一様に「シネマDSPの実力に驚いた」という声が上がっていた。RX-A3020は、ヤマハ独自の音場創生技術「シネマDSP」の最高位である「シネマDSP HD3」に対応している。
そこで最終回となる第四章では、このシネマDSPの進化を軸に、ヤマハの“リアリティを追求した音場づくり”の歴史に迫ってみたい。
「“ストレートデコード”が一番リアルな音だと思っていたが、今日で考えが変わった」
1986年に、ヤマハは世界初のデジタル信号処理による音場創生技術を搭載したデジタルサウンドフィールドプロセッサー「DSP-1」を発売した。このDSP-1の開発でオリジネートされたHiFi-DSPの技術を映画再生に応用し、映画館での上映を前提に創られた映画のサウンドデザインを家庭でより忠実に再生するという発想が生まれる。そしてDSP-1発売の4年後となる1990年に、世界初の一体型7ch・AVアンプ「AVX-2000DSP」が発表された。このAVX-2000DSPに、現在のシネマDSPの前身となる音場創生技術「CINE-DSP」が搭載されたのだ。
大橋伸太郎氏は「現在では各メーカーのAVアンプの機能として当たり前になっているDSP(デジタル・サウンドフィールド・プロセッサー)ですが、AVX-2000DSP以前は“スポーツ”や“ムービー”といった単純なソース別のマトリクスサラウンドだけしかありませんでした。ヤマハのCINE-DSPは、映画のシーンに応じて音場をダイナミックに変化させるという、それまでにはない新しいホームシアターサウンドの再生を実現したわけです」と語る。
今回ヤマハのAV視聴室で、シネマDSPの最高位である シネマDSP HD3 を体験できることが楽しみだったという参加者の阿部明さんは、「かつてヤマハから“CINE-DSP”が登場したときには感動しました」と当時の思いを振り返った。
大橋氏は、「ここからヤマハは、映画再生における“音場のリアリティ”の追求に踏み込んでいきます。以来、“映画を家庭で楽しむための音場作り”に取り組んできた歴史があるのです」と解説した。
しかし、先ほど「CINE-DSPに感動した」と語った参加者の阿部さんからは意外な台詞が飛び出した。阿部さんは「実は自宅でAVアンプを使うときには、DSPをあまり使わなくなってしまいました」という。
その理由について訊ねると、阿部さんは「何種類もあるDSPプログラムを使いこなしきれなかったこともあるのですが、実は映画監督が作品を表現するために意図した音に近いのは、結局一番シンプルな“ストレートデコード”で聴く音だと思っていたんです」と、本音を語った。
さらにここで新井豊さんからも「AVX-2000DSPを使っていたことがあるのですが、実は私もCINE-DSPのときは、“一番リアリティがあるのはストレートデコードだ”と思っていました」と、阿部さんと同じ意見が語られたのだ。
“ストレートデコードが映画の一番リアルな音”…阿部さんと新井さんは同じ考えを持っていた。
しかしそんな2人に今回の視聴の感想を訊ねてみると、「今日でシネマDSPに対する考え方が変わりました」と口を揃えた。最新のシネマDSPについて「昔のCINE-DSPとは全く違った」という。
新井さんは「CINE-DSPだと、あからさまに“DSPをかけました”という感じで、効果はあるのですが音がわざとらしい印象だったんです。でも、今回の視聴ではシネマDSPを入れた方がむしろ音が自然になりました。どうして昔と今でこんなに違うのでしょうか?」と質問した。
2人の言葉を受け、ヤマハの安井氏は頷きながら「CINE-DSPの頃は、映画の音声がアナログで、チャンネルセパレーションが悪くサラウンドchもモノラルで帯域制限がかかっていたことが大きいのです」と語り始めた。