7年ぶりに登場した“Soavo”シリーズ
【レビュー】ヤマハ「ハイレゾ時代」のマルチchスピーカー新“Soavo”に大橋伸太郎が迫る
■バスレフ形式なのに密閉型に近いフラットで自然な低域表現
紹介もほどほどに新Soavoの音に耳を傾けてみよう。最初にNS-F901から。音が出てすぐに気付くのは、低域が俊敏で表情豊かなことだ。そして解像感に富んでいる。音の動きが、透明な流れの底の魚群のように活き活きと「見える」。
NS-F901はグローバルモデルで、販売する市場別に微妙に音調を変えた作りとしている。例えば、欧州向けと日本市場向けではユニットの磁気回路の磁束密度が異なる。なお最も大きな相違は、バスレフポートのチューニングだ。
NS-F901のバスレフポートに右手を入れると、中に行くにしたがって径が窄まっていくのがわかる。ヤマハの開発担当者によれば「後ろ半分のポートの径を細くしており、エア抜きのようなチューニングでダンプドバスレフの効果を生んでいる」とのことで、これは日本市場向けのチューニングだという。
従来のSoavo-1はポートチューニングを高めに設定してバスレフ効果を多めに出した。今回のNS-F901はその逆を狙った。低域ユニットをNew A-PMDに代え分解能が向上したからである。低域の解像力を活かすために、密閉型に近いなだらかな減衰特性の誇張のないチューニングを狙ったのである。
事実それは成功した。マウリツィオ・ポリーニ(pf)の新録CDを聴いたが、NS-F901のダブルウーファーが休みなく軽やかに呼吸し高速で動いていることが分かる。バスレフ効果を控えめにしたといっても、最低共振周波数は30Hzが確保され、システムとしての再生周波数帯域は30Hz〜50kHz(-10dB落ち)と広大。低域が非常にクリアで見通しがよくドロドロ肥大せず自然に減衰していくのが分かる。ソースによっては若干物足りなく思う人もいるかもしれない。しかし、NS-F901の音離れのよさ、前に出てくる快活な鳴り方がそれをカバーしている。
ミッドからハイに掛けてのつながりも非常にいい。従来のSoavo-1はミッドとトゥイーターのつながる帯域にディップがあったが、今回のNS-F901はフラットにつながっている。これに共振を排した三方留めエンクロージャーの剛体構造が加わり、解像力は非常に高い。ピアノの早いパッセージは低域から高域まで、音がさざ波立つように立体的に描写される。