今後への期待と浮かび上がった課題
「東京インターナショナルオーディオショウ」で見た注目のネットワークオーディオ機器を総まくり!
■Cocktail Audioのリッピング機能搭載マルチメディアプレーヤー「CA-X40」
トライオードのブースでは、合計4種類の真空管アンプを参考出品するとともに、新規取り扱い予定ブランドの製品も多数展示された(関連ニュース)。その中でも要注目なのが、Cocktail Audioのマルチメディアプレーヤー「CA-X40」だ。
本機はネットワークオーディオ再生機能を始め、FMチューナー、インターネットラジオやqobuz、simfyなどのストリーミングサービスにも対応している、メディアサーバー的な製品だ。
内蔵CDドライブによるCDリッピング機能を備え、リアスロットに装着した2.5インチ/3.5インチHDD/SSDにWAV、FLAC、ALAC、MP3やOGG形式でリッピングが可能。ユニークなのは、MMフォノイコライザー内蔵のアナログRCA入力を利用して、レコード音源を最大192kHz/24bitのFLAC/WAVでデジタライズすることができる。
DACにはESS「9018K2」を搭載し、HDD/SSDに保存されたDSD 11.2MHz、DXD(24Bit/352.8KHz)384KHz/32bitの再生にも対応するなど、スペック面もかなり強力だ。フロントパネルには高詳細の5インチディスプレイを装備、HDMI出力による外部ディスプレイへの映像出力も可能だ。
■リクエスト・オーディオの超弩級ミュージックサーバー「THE BEAST」
大規模なブースを構えていたステラ/ゼファンは、リクエスト・オーディオ社のデジタルミュージックサーバー「THE BEAST」を昨年に引き続き展示。2TBのSSDを内蔵し、本体でCDのリッピングとファイル再生までが可能な超弩級機だ。
大型のディスプレイを装備し、そこにアルバムアートが並ぶ、凄みのある筐体。WEBブラウザベースに表示される独自の操作アプリが用意され、快適な操作性を見せていたのが印象的であった。
■MSBはネットワーク再生を可能にするオプションモジュールを出展
やはり大規模なブースを構えていたアクシスからは、MSB TECHNOLOGYの単体D/Aコンバーター「DAC IV」「DAC V」「Analog DAC」に取り付けることでネットワーク再生が可能になる、オプションモジュール「Network Renderer Module」が参考展示されていた。
本製品は、今年5月に開催されたミュンヘン「HIGH END」で発表されていたが、操作アプリの開発が終了すれば正式発売となる見込み。本モジュールを使用すれば、優秀な音質を誇る同社のD/Aコンバーターを利用して、ネットワーク再生が行える。個人的にもとても楽しみだ。
■TIASにみたネットワークオーディオへの期待と課題
エソテリックの新製品発表やLINNのTIDALプロモーションなど、明るい話題が多かった今年のTIASのネットワークオーディオ分野。一方で、今後の課題点も見えてきたので、あえて指摘したい。
今回のショーではネットワーク関連の製品ラインナップを揃えていたにも関わらず、控えめな展示を行ったメーカーや、明確な発売時期がわからず(ロードマップが表せない)、少々苦悩しているようなメーカーの姿があった。
操作アプリケーションソフトの仕上がりや、その開発リソースの確保。販売後のサポート、無線関係の認可(いわゆる技適と言われるもの)など、ネットワークプレーヤー(メディアプレーヤー)独自の特徴に対し、その取り扱いに苦労している印象だ。
特に操作アプリケーションについては、ネットワークプレーヤーの根幹を司る重要な要素ということが認知されつつある中、メーカー側にとっては、今までのオーディオ開発と違う開発スキームと人材で取り組まなくてはならない性質がある。
しかも最近では、LINNや(TIASには出展してはいないが)LUMINをはじめとするアプリケーションの仕上がりが業界標準となりつつあり、今回出展したようなハイエンドメーカーでは、製品発売時に「そのレベルを担保」しなくてはいけない雰囲気になっている。
OpenHomeに対応するアプリケーションを開発することが、なによりも近道であることも表面化しているが、この部分に関しても先行しているメーカーが有利な状況なのは変わりない。各メーカーも“どのようにして操作性の良いアプリを提供するのか”頭を悩ましていることだろう。その苦悩は察するに余りある。
また期間中、何人かの来場者に声をかけられたが、その全ての人たちが「もっとデジタルファイル管理を覚えたい」と話されていた。しかし、ユーザー自身にデジタル楽曲ファイルの管理手法を模索させるのはあまりにも負担が大きい。
今以上にネットワークオーディオを盛り上げるためには、デジタルファイル楽曲管理手法の標準化を進め、それを広く認知させること。そしてその手法をユーザーとともに、販売店がマスターする必要性があると感じている。この日本でも、ロスレスストリーミングサービスの足音が少しずつ聞こえてきた昨今だが、私自身もネットワークオーディオ普及のため、さらに努力していく所存だ。
【筆者プロフィール】
土方久明
ネットワークやデジタルファイルに精通する新世代の評論家。アナログレコードの再生にも強いこだわりを持つ。ベテランオーディオファンにネットワークオーディオの“いろは”を教えて、とても喜ばれたことをきっかけに、この世界に入る決意をする。
トライオードのブースでは、合計4種類の真空管アンプを参考出品するとともに、新規取り扱い予定ブランドの製品も多数展示された(関連ニュース)。その中でも要注目なのが、Cocktail Audioのマルチメディアプレーヤー「CA-X40」だ。
本機はネットワークオーディオ再生機能を始め、FMチューナー、インターネットラジオやqobuz、simfyなどのストリーミングサービスにも対応している、メディアサーバー的な製品だ。
内蔵CDドライブによるCDリッピング機能を備え、リアスロットに装着した2.5インチ/3.5インチHDD/SSDにWAV、FLAC、ALAC、MP3やOGG形式でリッピングが可能。ユニークなのは、MMフォノイコライザー内蔵のアナログRCA入力を利用して、レコード音源を最大192kHz/24bitのFLAC/WAVでデジタライズすることができる。
DACにはESS「9018K2」を搭載し、HDD/SSDに保存されたDSD 11.2MHz、DXD(24Bit/352.8KHz)384KHz/32bitの再生にも対応するなど、スペック面もかなり強力だ。フロントパネルには高詳細の5インチディスプレイを装備、HDMI出力による外部ディスプレイへの映像出力も可能だ。
■リクエスト・オーディオの超弩級ミュージックサーバー「THE BEAST」
大規模なブースを構えていたステラ/ゼファンは、リクエスト・オーディオ社のデジタルミュージックサーバー「THE BEAST」を昨年に引き続き展示。2TBのSSDを内蔵し、本体でCDのリッピングとファイル再生までが可能な超弩級機だ。
大型のディスプレイを装備し、そこにアルバムアートが並ぶ、凄みのある筐体。WEBブラウザベースに表示される独自の操作アプリが用意され、快適な操作性を見せていたのが印象的であった。
■MSBはネットワーク再生を可能にするオプションモジュールを出展
やはり大規模なブースを構えていたアクシスからは、MSB TECHNOLOGYの単体D/Aコンバーター「DAC IV」「DAC V」「Analog DAC」に取り付けることでネットワーク再生が可能になる、オプションモジュール「Network Renderer Module」が参考展示されていた。
本製品は、今年5月に開催されたミュンヘン「HIGH END」で発表されていたが、操作アプリの開発が終了すれば正式発売となる見込み。本モジュールを使用すれば、優秀な音質を誇る同社のD/Aコンバーターを利用して、ネットワーク再生が行える。個人的にもとても楽しみだ。
■TIASにみたネットワークオーディオへの期待と課題
エソテリックの新製品発表やLINNのTIDALプロモーションなど、明るい話題が多かった今年のTIASのネットワークオーディオ分野。一方で、今後の課題点も見えてきたので、あえて指摘したい。
今回のショーではネットワーク関連の製品ラインナップを揃えていたにも関わらず、控えめな展示を行ったメーカーや、明確な発売時期がわからず(ロードマップが表せない)、少々苦悩しているようなメーカーの姿があった。
操作アプリケーションソフトの仕上がりや、その開発リソースの確保。販売後のサポート、無線関係の認可(いわゆる技適と言われるもの)など、ネットワークプレーヤー(メディアプレーヤー)独自の特徴に対し、その取り扱いに苦労している印象だ。
特に操作アプリケーションについては、ネットワークプレーヤーの根幹を司る重要な要素ということが認知されつつある中、メーカー側にとっては、今までのオーディオ開発と違う開発スキームと人材で取り組まなくてはならない性質がある。
しかも最近では、LINNや(TIASには出展してはいないが)LUMINをはじめとするアプリケーションの仕上がりが業界標準となりつつあり、今回出展したようなハイエンドメーカーでは、製品発売時に「そのレベルを担保」しなくてはいけない雰囲気になっている。
OpenHomeに対応するアプリケーションを開発することが、なによりも近道であることも表面化しているが、この部分に関しても先行しているメーカーが有利な状況なのは変わりない。各メーカーも“どのようにして操作性の良いアプリを提供するのか”頭を悩ましていることだろう。その苦悩は察するに余りある。
また期間中、何人かの来場者に声をかけられたが、その全ての人たちが「もっとデジタルファイル管理を覚えたい」と話されていた。しかし、ユーザー自身にデジタル楽曲ファイルの管理手法を模索させるのはあまりにも負担が大きい。
今以上にネットワークオーディオを盛り上げるためには、デジタルファイル楽曲管理手法の標準化を進め、それを広く認知させること。そしてその手法をユーザーとともに、販売店がマスターする必要性があると感じている。この日本でも、ロスレスストリーミングサービスの足音が少しずつ聞こえてきた昨今だが、私自身もネットワークオーディオ普及のため、さらに努力していく所存だ。
【筆者プロフィール】
土方久明
ネットワークやデジタルファイルに精通する新世代の評論家。アナログレコードの再生にも強いこだわりを持つ。ベテランオーディオファンにネットワークオーディオの“いろは”を教えて、とても喜ばれたことをきっかけに、この世界に入る決意をする。