【特別企画】RMEの最先端を具現化した注目機
Babyface Proのサウンドをオーディオファン目線で分析 ― 理論に裏付けられた音楽的表現
レファレンスというべき性能を備える − ヘッドフォンアンプのサウンドに注目
今回の試聴で特に注目したのが、Babyface Proのヘッドフォン出力だ。本機は完全に独立した出力段を持つ6.3mmの標準プラグと3.5mmミニプラグ2つのヘッドフォン端子を備え、どんなヘッドフォンでも変換プラグを使わずして接続が可能となる(ちなみに聴き比べると分かるが、変換プラグは予想以上に音質に悪影響を及ぼす)。今回は、AKG K712PRO(オープンエアー型インピーダンス:62Ω)、SONY MDR-7506(密閉型 インピーダンス:63Ω)、V-MODA M100(密閉型・インピーダンス32 Ω)など複数のヘッドフォンを試してみた。
Jポップの作品『W BEST - Original & Covers -/May J.』(96kHz/24bit FLAC)では、フラットで情報量豊かな音調、そして何よりもヴォーカルの表情が豊かだ。また、バスドラムのにじみも抑えられている。さまざまなヘッドフォンも十分に駆動したことからも、ヘッドフォンアンプ部の性能はかなり高いことが分かる。ここにも、「音源に対して正確な音」を実現するというRMEのポリシーがよく現れている。
「制作現場の第一線」での使用を前提とした機器を手に入れる喜び
今回の試聴で分かったことは、本機は情報量豊かで色づけのサウンドを実現したモデルであるということ。つまり、ハイファイシステムに組み込むUSB DACとして、そしてヘッドフォンの個性や能力を十分に発揮するためのレファレンス機としての導入も可能なモデルであるということだ。
そして、使っていて気がついたのだが、Babyface Proは数々の機能が全て音に直結していて、一切の無駄が感じられないのだ。むやみやたらに数値を追従するのではなく、その分のリソースとRME独自の技術を全て音質向上と使いやすさに振り向けたことが、このような好結果につながったのかもしれない。
例えば、本機が対応するフォーマットはPCM 192kHz/24bitまでで、DSDや32bitなどにはあえて対応させていない。RMEの技術力をもってすればこれらに対応させることなどはたやすいことだと思うのだが、そのためだけに消費電力の大きいチップを使わなければいけなくなったり、コスト面や性能面でもいくつか犠牲を払う必要がでてきてしまうと同社のエンジニアがインタビュー(関連記事)で発言していることなどからも裏付けがとれる。
また、RMEの製品は製品サイクルや技術の更新が速いデジタル分野の製品でありながら、長く使うことを前提として開発されている。事実、10年以上前に登場した製品であってもいまだに最新OSで動作するドライバを開発/提供し続けている。しっかりとした入出力端子やシンプルながらもさまざまな機能をコントロールする操作性の良い本体のボタン類なども含め、プロの土壌で勝負するということは、このようなことなのかもしれない。
ラッキーなことに僕たちは、そんな「制作現場の第一線」での使用を前提とした機器を手に入れ、自身のオーディオシステムに組み込むことができる。そうした意味でも、「Babyface Pro」の満足度は高い。