[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第150回】田村ゆかりさんに捧ぐ!ラジオ「いたずら黒うさぎ」歴代OP/ED曲をオーディオ目線で語る
▼君をつれて(シングル「恋せよ女の子」より)
2005年04月23日から2005年10月01日のED曲。OPの「candy smile」と共にシングル「恋せよ女の子」に収録。
この時期にはメールの「声優さんの握手会に行った」という部分に「ちょっと待って。ゆかりん最近握手会してないんだけど」と返しており、「この少し前までは握手会とか普通にあったんだなあ…」と羨ましい。
さて、「空の向こう側に」の紹介で「後ほど紹介するもう一曲もそうなのだが、ゆかりさんの曲の中でも独特の雰囲気を持っていて」と触れておいたのがこの曲。「空の向こう側に」と同じく、抑揚や勢いを抑え気味にして、淡々とした切なさを感じさせる曲だ。
しかしあちらはリズムは軽快でメロディラインも少し明るいのに対して、こちらはテンポも控えめでメロディの雰囲気も歌の音域も低め。そしてたぶんそれらのおかげで、ゆかりさんの声の質感の魅力がとてもわかりやすい。その点は「Lovely Magic」以上だ。
改めて確認。ゆかりさんの声の魅力で僕にとって特に大きな要素のひとつは、「猫の舌のように心地よいざらつき」とでもいうような感触。「ざらつき」という表現が微妙なら「引っかかり」とかでもよいのだが、声が耳にそして心に入ってくるときにただすうっと入ってくるのではなく、何かあるのだ。「猫の舌」がぴんとこないなら、「書道の半紙の表裏のツルツルではなくザラザラな方」とかでもいい。
それをこの曲では特に堪能できる。書道という言葉が出たのでそれに倣うのを続けると、この曲でのゆかりさんは「掠れ」を生かした筆使い、少しハスキーな声の出し方や歌い回しをしている。だからではないかと思う。
山野裕子さんによるこの曲の歌詞は一人称が「僕」で、内容も少年の視点でのものと受け取るとしっくりくる。ゆかりさんもそれを意識して、少年らしいあるいは中性的な声や歌い回しにしたのかな、みたいなことも想像させる歌い方だ。
ということで、曲全体としても素晴らしいのだが、やはりとにかく声の質感を堪能できるオーディオシステムで聴きたい。となるとスピーカーよりも声との距離が近い、というか脳内な、ヘッドホンやイヤホンの方が手軽で強力だ。一般的に「女性ボーカルに合う」と言われるようなモデルであれば、おおよそフィットするのではないかと思う。
なおこちらの曲の作曲と編曲は橋本由香利(ゆかり)さん。次に紹介する次期OP曲「Cutie♡Cutie」では、こちらとは全く異なる曲調の作曲と編曲も披露している。他のアーティストの作品への参加も豊富で、近年では上坂すみれさん「Inner Urge」での、いまっぽい本格さにしすぎずあえてレトロなチープさも残したと思われる、ディスコファンクな編曲が印象的だ。
そして文化放送土曜24時はその上坂すみれさんが引き継ぐ。ロリータに身を包みツインテールを翻し、これからもきっと、この時間を楽しい時間にしてくれることだろう。上坂すみれさんのデビュー曲「七つの海よりキミの海」は、ゆかりさん主演作品「波打際のむろみさん」のOP曲だった。
そこに「ゆかり」を感じるのは、センチメンタルすぎるだろうか。
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