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公開日 2010/08/31 09:18

第13回:松木恒秀さんが語る「ピットイン」との長くて深い関係 <後編>

【連載】PIT INNその歴史とミュージシャンたち
インタビューと文・田中伊佐資
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今回は、1968年に初めて「新宿ピットイン」のステージに立ち、その後も様々な形態で「新宿ピットイン」「六本木ピットイン」のステージで活躍。数多くのアーティストのレコーディングに参加し活躍した松木恒秀さんに登場していただき、佐藤良武さんとの対談形式で、ピットインとの深い関わりや出演時の思い出などを語ってもらう(前編を読む)。


エリック・ゲイルみたいに色っぽくギターを弾けたら
僕はギタリストをいつ辞めてもいいと思っている


1979年にザ・プレイヤーズ結成。六本木ピットインの看板バンドへ


佐藤:松木さんが超売れっ子セッション・ギタリストになったというところで前編が終わりました。そしてついに伝説のバンド、ザ・プレイヤーズの結成になります。

松木:リーダーでピアニストのコルゲン(鈴木宏昌)さんとはスタジオの仕事で知り合いました。ある日、練馬の自宅へお邪魔したんですね。そうするとハービー・ハンコックの『ヘッドハンターズ』をかけてこう言うわけです。「松木、こういうのやりたいなあ、おまえがリズム隊を集めてくれないか」と。そこから始まったのがザ・プレイヤーズです。

佐藤:その前身がコルゲン・バンドですね。

松木:コルゲン・バンドとは、メンバーもやっていることも同じなんですけど、レコード会社を移籍したのを機に、79年にザ・プレイヤーズとバンド名を変えたんです。スタジオ・プレイヤーが集まっているバンドだからという理由で命名されました。

佐藤:コルゲンさんも新しい音楽へ積極的にアプローチする人だった。ただ自分一人ではできないから、実績と人脈を買って松木さんに声をかけたんだろうね。で、ザ・プレイヤーズとオーバーラップするように77年に「六本木ピットイン」がオープンするんですよ。

松木:「新宿」が生楽器、「六本木」がエレキという色分けでしたね。

佐藤:そう。やっぱり「六本木」はフュージョン系がメインだった。ザ・プレイヤーズはもちろん看板バンドのひとつになって、その名も『LIVE』というライヴ盤を「六本木」で残しました。まあ、ジャズ・ロック、フュージョンの時代がやってきた感じでしたね。マイルスもエレクトリックになっていたし、ウェザーリポート、スタッフと、目白押しだった。そのスタッフのギタリスト、エリック・ゲイルと重ね合わせて、当時ファンは松木さんを和製エリック・ゲイルと呼んでいたよね。

松木:いやあ、エリック・ゲイルみたいにギターを弾けたら、ギタリストをいつ辞めてもいいと思っていますよ。クインシー・ジョーンズの『ウォーキング・イン・スペース』というアルバムに「ラヴ・アンド・ピース」という曲があるんです。そこでエリック・ゲイルが弾いている。20歳のとき初めて聴いて、こんな風にギターを弾けたら、それでおしまいにしようと思った。あんなふうに色っぽく弾けたら、もう本望ですよ。でも弾けないから、まだやってるわけだ(笑)。


「今夜は最高!」でレギュラー出演
次第に音楽がゴキゲンじゃなくなってザ・プレイヤーズは解散してしまった


佐藤:ところでザ・プレイヤーズが音楽ファン以外に知名度を上げたのは、タモリのバラエティ番組「今夜は最高!」でレギュラー出演していたのが大きいね。演奏以外にコントまでやっていたわけだからねえ。

松木:時代劇で斬られ役なんかよくやっていた。タモリから「松木、斬られてからの演技が長いんだよ、早く死ね」と言われてね(笑)。でも、あの頃からザ・プレイヤーズは壊れていきました。


(株)ピットインミュージック 代表取締役 佐藤良武さん(右)と松本さん
佐藤:それはまたどういうことで?

松木:そういう仕事はしたくないというメンバーが出てきた。それに俳優さんが歌うコーナーがあって、正直あまりうまくない人のバックをリハーサルからかなり時間をかけてやるわけですね。これでいいのかなという雰囲気になりました。そして次第に本業の音楽が、ゴキゲンではなくなっちゃったんですよ。

佐藤:「ピットイン」で、ライヴやるんだったらいいわけだけどね。

松木:そうです。「今夜は最高!」は別のミュージシャンを寄せ集めてやればよかったんですよ。ザ・プレイヤーズはザ・プレイヤーズで別個に存在していれば、もっと長く続けられたと思いますね。そんなこんなで、メンバーのひとりが辞めるということになって、さらにコルゲンさんがピアノ・トリオでやりたくなったこともあって、バンドは終結しました。

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