公開日 2017/04/17 16:54
仏TRINNOVのハイエンドAVプリ「Altitude 32」がRoon対応 ー 最先端の音響補正技術を開発者が解説
ステラ/ゼファンが技術説明会を開催
ステラ/ゼファンは14日、仏TRINNOV AUDIO(トリノフ・オーディオ)について技術説明会を開催。AVプリアンプ「Altitude 32」が5月に、プリアンプ/サウンド・オプティマイザー「AMETHYST」が7月に、Roon Readyに対応する予定であることを発表した。
説明会にはトリノフオーディオから、同社のCEOであるArnaud Laborie氏、アジア地区のセールスマネージャーであるJoseph Chen氏が登場。AVプリ「Altitude 32」をテーマに、その音場補正機能やアクティブクロスオーバー機能、そしてRoon対応について紹介を行った。
トリノフは、業務用の立体音響機器を主に手がける会社として2003年に設立。フランス・パリに本拠を置く。28名の社員のうち10名がエンジニアで、これまで48の特許を取得。この技術力を背景に、世界中の放送・録音スタジオ、映画館に同社製品が導入されているという。放送局ではNHKやBBC、FOXなどのハリウッドのスタジオ、アビーロードをはじめとする著名な音楽スタジオにも製品を納入しているとCEOのLaborie氏は説明する。一方で、Altitude 32のようなハイエンドオーディオ/ホームシアター向けの製品も展開する。
今回の主役となった「Altitude 32」(アルチチュード32)は、超ハイエンドのAVプリアンプ/プロセッサーだ。トリノフ独自の高精度な音場補正機能を備えた本機は、16ch出力モデル(450万円)、24ch出力モデル(520万円)、32ch出力モデル(575万円、いずれも税抜)の3ラインナップを用意している。
同社が業務用分野で培った技術を投入した音場補正機能(サウンド・オプティマイザー)が、このハイエンドAVプリの特徴のひとつ。専用の3Dマイクロフォンを使用して、音響を立体測定。周波数特性や距離の補正はもちろん、位相特性、過渡特性、定在波補正などを総合的に行い、より正確かつ全チャンネルで特性のそろったサウンドを展開できるとしている。また、すべてのスピーカーの位置を仮想的に最適化する「3Dリマッピング」機能も搭載する。
また、最大32chの出力はマルチチャンネル再生への使用はもちろん、内蔵のアクティブクロスオーバー機能を用いて最大4ウェイのマルチアンプ駆動を行うこともできる。アクティブクロスオーバー機能においては、各ドライバーの位相差や遅延を測定して最適化。音場補正機能と合わせて、より完璧な音場・音楽再現を実現できるとする。
DSPベースに頼らないPCベース構成としていることも特徴で、これにより64bit浮動小数点方式による高速の信号処理が可能。最大32chにおけるドルビーアトモス、DTS:X、AURO 3Dのレンダリングに対応する。また、ソフトウェアのバージョンアップによる将来にわたる機能強化も可能となっている。
■アクティブクロスオーバー機能によりさらに高精度な音場補正が可能に
Laborie氏は、トリノフのサウンド・オプティマイザー技術(音場補正技術。以下、オプティマイザーと記す)について、改めて詳細な説明を行った。トリノフのオプティマイザーは、「部屋の最適化」と「スピーカーの最適化」という大きく分けて2つのステップで構成される。
そのアプローチは、まず音響特性を部屋の数カ所で正格に測定して、各箇所の特性のばらつきや問題について問題を分類(スピーカー、初期反射、残響・・・etc)、それぞれの問題を適切な方法で補正していく、というもの。電気的に補正できないものは補正を行わないことも特徴だという。
Laborie氏はその具体的な方法についても説明した。なお、ここで説明されたオプティマイザーは、スピーカーの最適化のためにアクティブクロスオーバーも用いることを前提としている。3Dマイクを使って複数箇所での測定を実施して、具体的に以下のような対処を実施していく。
A)アクティブクロスオーバーを調整して、スピーカーシステムの各ドライバーを補正 B)スピーカーからリスナーの耳へと入る直接音を最適化 C)壁や天井による初期反射を補正 D)定在波を補正 E)遅れてくる残響を補正 F)過剰な補正を回避
プレゼンにおいては、このオプティマイザーが、位相の最適化やインパルス応答の最適化による時間領域の補正などまでを行えることがアピールされた。さらに、Altitude32をはじめアクティブクロスオーバー機能を備えるモデルでは、スピーカーからの直接音まで総合的に補正できることも強みとなる。
説明会では、Altitude 32の4ウェイ・アクティブクロスオーバー機能を活用して、CH Precisionのステレオアンプ「A1」「M1」を片方chあたり1台ずつ組み合わせ、VIVID Audioのスピーカー「GIYA G1 SPIRIT」を4ウェイ・マルチアンプ駆動するするというシステムでデモを実施。オプティマイザー機能およびアクティブクロスオーバーの性能をアピールした。
ステラの会長である西川英章氏は、ハイエンドオーディオのユーザーはイコライジングを忌避する方も多いが、一方で録音現場ではデジタルのイコライジングが駆使されていると指摘。「トリノフについては、鮮度が上がることはあっても、落ちることはない。ぜひ聴いて確かめてほしい」と語っていた。
■トリノフがRoonを採用した理由
説明会では同社のJoseph Chen氏が、「Altitude 32」と「AMETHYST」のRoon Ready対応について、また、同社がなぜRoonに対応したかについて説明を行った。
「Altitude 32」と「AMETHYST」はそれぞれRoon Readyに対応、Roonの「Core」(サーバー部)を動かすパソコンやNASと組み合わせることで、ネットワーク再生が可能となる。
Roonは、プレーヤー/サーバー機能やライブラリ管理機能を統合的に運用できる総合音楽鑑賞ソフトともいうべきもので、現時点で最高峰と言えるライブラリ管理、優れたオーディオ再生機能、拡張性の高いネットワーク再生機能を兼ね備えている。複数のローカルライブラリと、TIDAL(日本ではサービス未導入)によるロスレス・ストリーミングの音源を一元的かつシームレスに管理できることも特徴だ。
“Roon Ready対応”とは、簡単に言うと、Roonシステムにおいてネットワークプレーヤーの役割を持つこと。トリノフの他にも、dCSやAYRE、MARGING、PS AUDIOなど、Roon Ready対応製品を手がけるハイエンドブランドが増えている。
Roonの根本をなす思想については逆木一氏による解説記事を、Roon Readyについては佐々木喜洋氏のレビュー記事をご参照いただきたい。
Joseph Chen氏はRoonを採用した理由について、優れたライブラリ管理や豊富なメタデータ提供を背景に「Roonでは音楽が主役になることができるから」とコメント。さらには、サウンドクオリティーの高さ、多彩な操作プラットフォーム、サーバー・コントロール・再生機能を1社が提供することによるフォローアップのしやすさなどを具体的な理由として挙げた。
発表会ではAltitude 32によるRoon再生のデモも行われたが、これはβ版での運用とのこと。現在、Roon Lab社による承認待ちの段階という。
ステラ 取締役社長の橋隅和彦氏は、「トリノフのハイエンドサウンドを、優れた使い勝手を実現したネットワーク再生によって楽しめるのは非常に魅力的」と利点をアピールしていた。
■ミュンヘン「High End」でAirForce ZEROの一部を展示
発表会の最後には、ステラが手がけるTechDASのアナログプレーヤー「AirForce One Premium」によるアナログ再生デモも実施。もちろんAltitude 32およびそのオプティマイザー機能が組み合わされ、最高峰のアナログを最先端のデジタルシステムで鳴らすからこそ得られるサウンドを示した。
西川会長は、5月にミュンヘンで開催されるオーディオショウ「High End」にて、TechDACの最高峰アナログプレーヤーとなる「AirForce ZERO」の一部を展示することを発表。専用の12極3層モーターを現在開発しているとした。High Endの模様については、ファイルウェブでも現地からレポート予定だ。
説明会にはトリノフオーディオから、同社のCEOであるArnaud Laborie氏、アジア地区のセールスマネージャーであるJoseph Chen氏が登場。AVプリ「Altitude 32」をテーマに、その音場補正機能やアクティブクロスオーバー機能、そしてRoon対応について紹介を行った。
トリノフは、業務用の立体音響機器を主に手がける会社として2003年に設立。フランス・パリに本拠を置く。28名の社員のうち10名がエンジニアで、これまで48の特許を取得。この技術力を背景に、世界中の放送・録音スタジオ、映画館に同社製品が導入されているという。放送局ではNHKやBBC、FOXなどのハリウッドのスタジオ、アビーロードをはじめとする著名な音楽スタジオにも製品を納入しているとCEOのLaborie氏は説明する。一方で、Altitude 32のようなハイエンドオーディオ/ホームシアター向けの製品も展開する。
今回の主役となった「Altitude 32」(アルチチュード32)は、超ハイエンドのAVプリアンプ/プロセッサーだ。トリノフ独自の高精度な音場補正機能を備えた本機は、16ch出力モデル(450万円)、24ch出力モデル(520万円)、32ch出力モデル(575万円、いずれも税抜)の3ラインナップを用意している。
同社が業務用分野で培った技術を投入した音場補正機能(サウンド・オプティマイザー)が、このハイエンドAVプリの特徴のひとつ。専用の3Dマイクロフォンを使用して、音響を立体測定。周波数特性や距離の補正はもちろん、位相特性、過渡特性、定在波補正などを総合的に行い、より正確かつ全チャンネルで特性のそろったサウンドを展開できるとしている。また、すべてのスピーカーの位置を仮想的に最適化する「3Dリマッピング」機能も搭載する。
また、最大32chの出力はマルチチャンネル再生への使用はもちろん、内蔵のアクティブクロスオーバー機能を用いて最大4ウェイのマルチアンプ駆動を行うこともできる。アクティブクロスオーバー機能においては、各ドライバーの位相差や遅延を測定して最適化。音場補正機能と合わせて、より完璧な音場・音楽再現を実現できるとする。
DSPベースに頼らないPCベース構成としていることも特徴で、これにより64bit浮動小数点方式による高速の信号処理が可能。最大32chにおけるドルビーアトモス、DTS:X、AURO 3Dのレンダリングに対応する。また、ソフトウェアのバージョンアップによる将来にわたる機能強化も可能となっている。
■アクティブクロスオーバー機能によりさらに高精度な音場補正が可能に
Laborie氏は、トリノフのサウンド・オプティマイザー技術(音場補正技術。以下、オプティマイザーと記す)について、改めて詳細な説明を行った。トリノフのオプティマイザーは、「部屋の最適化」と「スピーカーの最適化」という大きく分けて2つのステップで構成される。
そのアプローチは、まず音響特性を部屋の数カ所で正格に測定して、各箇所の特性のばらつきや問題について問題を分類(スピーカー、初期反射、残響・・・etc)、それぞれの問題を適切な方法で補正していく、というもの。電気的に補正できないものは補正を行わないことも特徴だという。
Laborie氏はその具体的な方法についても説明した。なお、ここで説明されたオプティマイザーは、スピーカーの最適化のためにアクティブクロスオーバーも用いることを前提としている。3Dマイクを使って複数箇所での測定を実施して、具体的に以下のような対処を実施していく。
A)アクティブクロスオーバーを調整して、スピーカーシステムの各ドライバーを補正 B)スピーカーからリスナーの耳へと入る直接音を最適化 C)壁や天井による初期反射を補正 D)定在波を補正 E)遅れてくる残響を補正 F)過剰な補正を回避
プレゼンにおいては、このオプティマイザーが、位相の最適化やインパルス応答の最適化による時間領域の補正などまでを行えることがアピールされた。さらに、Altitude32をはじめアクティブクロスオーバー機能を備えるモデルでは、スピーカーからの直接音まで総合的に補正できることも強みとなる。
説明会では、Altitude 32の4ウェイ・アクティブクロスオーバー機能を活用して、CH Precisionのステレオアンプ「A1」「M1」を片方chあたり1台ずつ組み合わせ、VIVID Audioのスピーカー「GIYA G1 SPIRIT」を4ウェイ・マルチアンプ駆動するするというシステムでデモを実施。オプティマイザー機能およびアクティブクロスオーバーの性能をアピールした。
ステラの会長である西川英章氏は、ハイエンドオーディオのユーザーはイコライジングを忌避する方も多いが、一方で録音現場ではデジタルのイコライジングが駆使されていると指摘。「トリノフについては、鮮度が上がることはあっても、落ちることはない。ぜひ聴いて確かめてほしい」と語っていた。
■トリノフがRoonを採用した理由
説明会では同社のJoseph Chen氏が、「Altitude 32」と「AMETHYST」のRoon Ready対応について、また、同社がなぜRoonに対応したかについて説明を行った。
「Altitude 32」と「AMETHYST」はそれぞれRoon Readyに対応、Roonの「Core」(サーバー部)を動かすパソコンやNASと組み合わせることで、ネットワーク再生が可能となる。
Roonは、プレーヤー/サーバー機能やライブラリ管理機能を統合的に運用できる総合音楽鑑賞ソフトともいうべきもので、現時点で最高峰と言えるライブラリ管理、優れたオーディオ再生機能、拡張性の高いネットワーク再生機能を兼ね備えている。複数のローカルライブラリと、TIDAL(日本ではサービス未導入)によるロスレス・ストリーミングの音源を一元的かつシームレスに管理できることも特徴だ。
“Roon Ready対応”とは、簡単に言うと、Roonシステムにおいてネットワークプレーヤーの役割を持つこと。トリノフの他にも、dCSやAYRE、MARGING、PS AUDIOなど、Roon Ready対応製品を手がけるハイエンドブランドが増えている。
Roonの根本をなす思想については逆木一氏による解説記事を、Roon Readyについては佐々木喜洋氏のレビュー記事をご参照いただきたい。
Joseph Chen氏はRoonを採用した理由について、優れたライブラリ管理や豊富なメタデータ提供を背景に「Roonでは音楽が主役になることができるから」とコメント。さらには、サウンドクオリティーの高さ、多彩な操作プラットフォーム、サーバー・コントロール・再生機能を1社が提供することによるフォローアップのしやすさなどを具体的な理由として挙げた。
発表会ではAltitude 32によるRoon再生のデモも行われたが、これはβ版での運用とのこと。現在、Roon Lab社による承認待ちの段階という。
ステラ 取締役社長の橋隅和彦氏は、「トリノフのハイエンドサウンドを、優れた使い勝手を実現したネットワーク再生によって楽しめるのは非常に魅力的」と利点をアピールしていた。
■ミュンヘン「High End」でAirForce ZEROの一部を展示
発表会の最後には、ステラが手がけるTechDASのアナログプレーヤー「AirForce One Premium」によるアナログ再生デモも実施。もちろんAltitude 32およびそのオプティマイザー機能が組み合わされ、最高峰のアナログを最先端のデジタルシステムで鳴らすからこそ得られるサウンドを示した。
西川会長は、5月にミュンヘンで開催されるオーディオショウ「High End」にて、TechDACの最高峰アナログプレーヤーとなる「AirForce ZERO」の一部を展示することを発表。専用の12極3層モーターを現在開発しているとした。High Endの模様については、ファイルウェブでも現地からレポート予定だ。
トピック
- ジャンルAVプリアンプ
- ブランドTRINNOV AUDIO
- 型番ALTITUDE 32
- 発売日2017年5月
- 価格4500000
【SPEC】●ラインナップ:16ch出力モデル(450万円)、24ch出力モデル(520万円)、32ch出力モデル(575万円)●デジタル入力端子:HDMI×8、AES×8 ch (816モデル) AES×16 ch (1624,1632モデル) DCI準拠DB25、AES Stereo XLR×2, SPDIF Stereo RCA×4, SPDIF Stereo TOSLINK×4、UPLP/DLNA準拠ネットワークレンダラー ●ステレオ入力端子:XLR×2, RCA×3, 7.1 ch RCA×4、Headphone Jack×1 ●アナログ入力端子:XLR×16 ch、DB25 16 ch (816モデル), 24ch (1624モデル), 32 ch (1632モデル)、Stereo RCA×1, Stereo Headphone Jack×1 ●出力端子:デジタル: AES×16 ch DCI準拠DB25、AES Stereo XLR×1, SPDIF Stereo RCA×1, SPDIF Stereo TOSLINK×1 ●外形寸法:442W×165H×445Dmm ●質量:12kg