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公開日 2007/08/07 09:50
山之内正の「BDP-LX80+VSA-LX70」レポート(2) − 密度の高いロスレス音声が楽しめる「BDP-LX80」
パイオニアのBDプレーヤー第二弾として登場した本機は、外見上は第一世代機のBDP-LX70となんら変わるところはなく、HDMI出力やアナログマルチチャンネル出力を装備するリアパネルのレイアウトも変更はない。
外観は今回も精悍なブラック仕上げを採用。AVアンプのVSA-LX70もそうだが、パイオニアの主要コンポーネントは今後ブラック仕上げが標準になる模様だ。プラズマテレビの黒を基調とした仕上げと統一感を持たせることが、仕上げ色を黒に変更した最大の理由だという。米国では何年も前から高級機を中心にブラック仕上げが主流を占めており、パイオニアのコンポーネントも深みのある艶をたたえたブラックパネルがトレードマークだ。欧米市場とは対照的にゴールドやシルバーが人気を維持してきた日本の市場でブラック仕上げがどこまで支持されるか、今後の動きが注目される。
さて、本機の最も注目すべき点は初めてロスレス信号のストリーム出力を実現したことにあるが、仕様を注意深く見ていくと、一つだけ疑問に思う点が出てくるはずだ。本機が対応するストリーム出力としてドルビーTrueHDとDTS-HD High Resolution Audioが挙げられているが、DTS-HD Master Audioの記述がない。今回、少なくとも現時点では同信号のストリーム出力について、正式サポートが見送られているのである。
パイオニアの開発陣は当然ながらDTS-HD Master Audioのサポートを視野に入れて開発を進めており、音が出ることは確認しているのだが、様々なソフトでの検証を含め、完全な動作を保証できるまで安定度を高めるにはあと少し時間がかかりそうだという。同じような話は他のメーカーの技術者からも聞いている。時間が解決する問題とはいえ、FOXなど同フォーマットを採用したBDが相当数発売されていることを考えると、映画ファンとしてはできるだけ早い時期になんとか完全対応を望みたいものである。
そうした事情から、今回はドルビーTrueHDの検証を中心に試聴を行うことにした。使用したディスクはおなじみの《Legends of Jazz》。ドルビーデジタル(DD)とドルビーTrueHDの両ストリームを切り替えて聴き比べている。
ジョン・ピザレリとジェーン・モンハイトのデュエットはDDとドルビーTrueHDの差がわかりやすい曲のひとつである。ピザレリのギターは音が出る瞬間、アタックの聴こえ方に微妙だが本質的な違いがあった。DDではフォーカスがやや甘くソフトな感触が先行するが、ドルビーTrueHDに切り替えると、その柔らかさのなかに絶妙な軽さと切れの良さを聴き取ることができる。モンハイトのボーカルはドルビーTrueHDの方が声のタッチがふたまわりぐらいなめらかで、ギターよりも音の違いがさらにわかりやすい。リアルな息遣いや声のコントロールのうまさにもあらためて感服。ロスレス信号は収録条件さえ良ければCDを上回る質感を引き出しうるという事実が実感できるサウンドである。
マーカス・ミラーの「パンサー」をドルビーTureHDで聴くと、スラップ奏法のベースはもちろんだが、リー・リトナーのフレーズがそれに負けないぐらいクリアに浮かび上がってきて、曲の面白さが2倍になる。これまで他の製品で聴いてきたPCM変換のサウンドと情報量の点でほとんど遜色がないうえ、エネルギー感や密度感など本機が優位に立つ要素も少なくない。市販モデルではこの完成度にさらに磨きがかかることが期待され、いまから大いに楽しみである。
(山之内 正)
【山之内 正 プロフィール】
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオビジュアル機器の評論にも反映されている。
第3回はあす(8月8日)更新です。AVアンプ「VSA-LX70」のレポートをお届けします。
外観は今回も精悍なブラック仕上げを採用。AVアンプのVSA-LX70もそうだが、パイオニアの主要コンポーネントは今後ブラック仕上げが標準になる模様だ。プラズマテレビの黒を基調とした仕上げと統一感を持たせることが、仕上げ色を黒に変更した最大の理由だという。米国では何年も前から高級機を中心にブラック仕上げが主流を占めており、パイオニアのコンポーネントも深みのある艶をたたえたブラックパネルがトレードマークだ。欧米市場とは対照的にゴールドやシルバーが人気を維持してきた日本の市場でブラック仕上げがどこまで支持されるか、今後の動きが注目される。
さて、本機の最も注目すべき点は初めてロスレス信号のストリーム出力を実現したことにあるが、仕様を注意深く見ていくと、一つだけ疑問に思う点が出てくるはずだ。本機が対応するストリーム出力としてドルビーTrueHDとDTS-HD High Resolution Audioが挙げられているが、DTS-HD Master Audioの記述がない。今回、少なくとも現時点では同信号のストリーム出力について、正式サポートが見送られているのである。
パイオニアの開発陣は当然ながらDTS-HD Master Audioのサポートを視野に入れて開発を進めており、音が出ることは確認しているのだが、様々なソフトでの検証を含め、完全な動作を保証できるまで安定度を高めるにはあと少し時間がかかりそうだという。同じような話は他のメーカーの技術者からも聞いている。時間が解決する問題とはいえ、FOXなど同フォーマットを採用したBDが相当数発売されていることを考えると、映画ファンとしてはできるだけ早い時期になんとか完全対応を望みたいものである。
そうした事情から、今回はドルビーTrueHDの検証を中心に試聴を行うことにした。使用したディスクはおなじみの《Legends of Jazz》。ドルビーデジタル(DD)とドルビーTrueHDの両ストリームを切り替えて聴き比べている。
ジョン・ピザレリとジェーン・モンハイトのデュエットはDDとドルビーTrueHDの差がわかりやすい曲のひとつである。ピザレリのギターは音が出る瞬間、アタックの聴こえ方に微妙だが本質的な違いがあった。DDではフォーカスがやや甘くソフトな感触が先行するが、ドルビーTrueHDに切り替えると、その柔らかさのなかに絶妙な軽さと切れの良さを聴き取ることができる。モンハイトのボーカルはドルビーTrueHDの方が声のタッチがふたまわりぐらいなめらかで、ギターよりも音の違いがさらにわかりやすい。リアルな息遣いや声のコントロールのうまさにもあらためて感服。ロスレス信号は収録条件さえ良ければCDを上回る質感を引き出しうるという事実が実感できるサウンドである。
マーカス・ミラーの「パンサー」をドルビーTureHDで聴くと、スラップ奏法のベースはもちろんだが、リー・リトナーのフレーズがそれに負けないぐらいクリアに浮かび上がってきて、曲の面白さが2倍になる。これまで他の製品で聴いてきたPCM変換のサウンドと情報量の点でほとんど遜色がないうえ、エネルギー感や密度感など本機が優位に立つ要素も少なくない。市販モデルではこの完成度にさらに磨きがかかることが期待され、いまから大いに楽しみである。
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パイオニアから満を持して登場した、驚異のコントラスト比20,000対1を実現したプラズマテレビPDP -5010HD。このプラズマテレビを主役に迎え、ブルーレイプレーヤーからの24p出力による高画質、新リビングシアターシステムによる高音質を同時に楽しむことのできる、次世代ホームシアター体験イベントが開催されます。しかも「製品発売前」の超プレミアイベントです。オーディオ・ビジュアル評論家によるトークショーも開催します。あなたのその目と耳で、次世代の画と音を確かめてみませんか? 本イベントの会場はなんと全国17都市。東京・大阪・名古屋から始まり、北は札幌から南は鹿児島まで全34日間にわたる特大イベントになります。 イベントの詳細はこちら:http://www.phileweb.com/kuro2/ |
(山之内 正)
【山之内 正 プロフィール】
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオビジュアル機器の評論にも反映されている。
第3回はあす(8月8日)更新です。AVアンプ「VSA-LX70」のレポートをお届けします。