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公開日 2008/02/18 11:44

【一条真人の体当たり実験室】ドコモ「P905iTV」の“VIERA度"を検証する

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●ブランド携帯急増の理由は?

最近の携帯電話は、記号と数字の羅列による機種名に加え、AQUOSケータイやCyber-Shotケータイ、VIERAケータイなどと、家電でなじみのあるブランド名を冠した機種が増えている。これらのブランド携帯は、そのもとになるテレビ、デジカメなどで使われている技術をある程度、取り入れているが、このような流行が起きた理由は何だろうか。

これはいわゆるブランディング戦略と呼ばれるものだ。単なる記号である機種名、たとえば、「SH905iTV」という名前をユーザーに覚えさせるよりは、最近、発売された「AQUOSケータイ」のほうがずっと覚えやすいし、携帯ショップの店員にも伝えやすい。すでに家電で知名度を高めたブランドを冠することで、少ない費用で製品の特徴を知らしめることができ、自社の携帯電話を売りやすくなる。

ユーザーに自社の製品名を浸透させるのは難しい作業であり、かつ大きな費用が必要となる。頻繁に新機種が登場する携帯電話市場では、いちいち英文字と数字の組み合わせをユーザーに覚えてもらうことなしに、自社の製品名をユーザーに覚えてもらえるというメリットがある。メーカーがブランディングに走るのも無理はない。

●VIERA携帯の本命「P905iTV」がスタンバイ


本体左上の「VIERA」の文字が、P905iTVのTV機能の高さを主張する。ちなみにP905iは同じVIERAケータイなのにボディにVIERAの文字がない
そんななか、パナソニックは自社のテレビ「VIERA」の名を冠したワンセグ携帯、ドコモ「P905i」をリリースしている。そして、テレビ機能をさらに強化させた「P905iTV」(関連ニュース)が、同じくドコモから近く登場する。末尾に「TV」とつくだけあり、このP905iTVのワンセグ関連機能はP905iよりも強力なことが想像できる。

テレビ機能に注目した場合、このP905iTVこそ“VIERA携帯"の真打ちだと言っていいだろう。今回、キャリアであるドコモの好意により、P905iTVを発売前に借りることができたので、ワンセグ機能を中心にP905iと比較しながら、試用レポートを行ってみたい。

●P905iとのルックスの違い

P905iは基本的には折りたたみ携帯なのだが、画面を横にした「横開き」も可能なやや特殊な構造となっており、机などにおいてワンセグを視聴する場合に重宝する。横開き時は、自動的に画面表示が横向きに切り替わる。

これに対して、P905iTVはスライド型であり、液晶ディスプレイが常に露出する形状になっている。スライドオープンした状態ではワンセグ画面は縦表示だが、クローズすると横画面に切り替わる。P905iTVは特に背面にスタンドがついているわけではないが、横にしても比較的安定して立てておける。

横置きしたP905i(左)とP905iTV(右)。アンテナはどちらも2段式で角度が変更できる

P905iは縦開きでは画面が縮小され、データ画面、操作キーが表示される。P905iTVではスライドオープン時は同様な縦表示になる

P905i、P905iTVのどちらも縦表示、横表示が可能であり、手持ちで見たり、置いて見たりする場合に、それぞれに合った表示が可能だ。ここで大きな違いは、P905iの液晶が3インチ(480×854ドット)であるのに対して、P905iTVの液晶が3.5インチ(480×854ドット)と解像度は変わらないが、より大型である点。このような小さな画面では、0.5インチの違いは意外に大きく感じる。

●P905iTVの外観をチェック

次にP905iTVの外観とコネクタなどをチェックしてみよう。

P905iTVキーボードアップ。キーが大きくて押しやすい

P905iTV背面。カメラのレンズがあるが、基本的にフラットになっており、ポケットなどからの出し入れもスムーズ


左側面にはアンテナ、IRポート、ストラップ用の穴などがある

上部のボタンではワンセグ起動、録画開始/停止、チャンネル切り替え、ボリューム調整などの操作が可能


右側面にはACアダプタ接続コネクタがある

下部にはmicroSD用のスロット、クレードルとの接点がある。クレードルからの充電も可能だ



●P905iTVのワンセグ機能をチェック

それではP905iTVのワンセグ機能を見ていこう。ワンセグ視聴モードはメニューの「ワンセグ」>「ワンセグ視聴」で起動できるが、ボディ上面の「TV/表示」ボタンでも起動できる。

メニュー画面を呼び出し、「ワンセグ」を実行

ワンセグ関連で実行できる操作が表示される


P905iTVワンセグ縦画面表示。スライドオープン時は縦表示となり、画面が縮小表示され、画面下にデータ放送と操作キーが表示される

クローズ状態では横表示となり、画面をフルに使って表示される。画面下部にはチャンネル、受信状態などの情報が表示される


●P905iとは異なる方向性のP905iTVの画質

次に、P905iTVのワンセグ画質を、P905iとの比較で見ていこう。

P905iの液晶は480×854ドットなので、320×240ドット(15fps)のワンセグ放送を全画面表示する場合、アップコンバートしてデジタルエンハンス処理して表示している。P905iの映像処理はかなり強めで、エッジが明確でコントラストが高く、メリハリの効いた映像であり、ワンセグ放送の低解像度さを感じさせない、優れたものだ。

しかし、その強めの映像処理によって、映像が必要以上にクッキリとしてしまい、エッジがややノイジーな感じがすることがある。また、フレームレートが15fpsであるがゆえ、ワンセグ独特の微妙なコマ落ち感、ぎくしゃく感をより強く感じる面もある。


ワンセグメニューから「ユーザー設定」の「画質モード設定」で、見ている放送に合わせて画質のチューニングを設定できる
これに対して、P905iTVでも液晶解像度は同じ480×854ドットだが、P905iほどエッジの効いたコントラストの高い映像ではない。クリアで、よりスムーズかつ自然な画作りと感じる。これはP905iTVがフレームレートを30fpsに変換するフレームレート変換機能を搭載していることと無関係ではないだろう。

日本のTV放送はもともと30fpsだし、ハリウッド映画にしても24fpsだ。それを15fpsでそのまま再現するのはそもそも無理がある。P905iのように強めの映像処理をかけて高画質化すると、逆にそのアラが目立つようになってくる。これに対して、30fpsに変換して表示するP905iTVの映像がスムーズかつ自然に見えるのも当然だろう。

またP905iTVの映像は、P905iと比較した場合、映像のエンハンス処理が抑えめに感じられる。フレームレートの高さを意識した上で、バランスを取るようチューニングしたのかもしれない。

このように、同じVIERA携帯の名を持っていても、2機種の画質傾向はかなり異なるが、テレビとして見た場合、P905iTVのほうが美しく、好ましいと感じた。

●受信感度は?

ワンセグ受信感度に関して、P905iTVはP905iよりも明らかに優れている。P905iが受信感度アンテナ2本の場所でも、P905iTVであれば、アンテナ2本と3本を繰りかえすような状態になり、感度には明確な差がある。P905iTVがより大型のアンテナを内蔵しているだけのことはある。

●EPG・予約録画環境

P905iTVでは、プリインストールされたiアプリ「Gガイド番組表リモコン」でEPG番組録画予約を行う。これはP905iでも同じだ。ただし、これはEPGデータの取得に同じ方法を使っているというだけで、予約機能についてはP905iとP905iTVとで仕様が異なる。EPG録画予約時にはチャンネル、時間などの時間を取得し、それを本体側の録画予約機能にデータ登録するわけだが、その際に設定できるオプション機能は機種ごとに異なっている。

P905iTVとP905iで大きく異なるのは、「上書き録画設定」、そして、「録画先設定」だ。上書き録画設定は毎日とか毎週などのリピート予約時に有効な設定で、前回の録画データを上書きして記録する。そのため、同じ番組の録画が増えてデータを消費することがない。

iアプリのEPG番組表から録画予約が可能。予約することで、本体の録画予約機能にEPGデータが登録される

ワンセグメニューの「録画予約」では時間やチャンネルを指定した録画予約が可能。EPG番組表で録画予約した予約データはここに登録される

繰り返し録画を設定した場合、「上書き録画設定」を指定することができる

●P905iとP905iTVのワンセグ機能の違い

P905iは内蔵メモリを持たないため、外部メモリ(microSD)に録画を記録するしかない。これに対して、P905iTVは1GBの内部メモリにも、外部メモリにも録画が可能だ。また、録画先の容量が不足すれば、録画先を自動的に変更するように設定することもできる。


「録画先を切り替える」に設定しておけば、容量がなくなっても自動的に録画先を切り替えてくれる
P905iTVは1GBの内部メモリにも録画可能なので、当然、P905iよりも長時間録画が可能であり、現在では最大容量の4GBのmicroSDHCカードを使うことで、合計5GBの容量に録画できることになり、最大約25時間の録画が可能となる。

バッテリ駆動時間に関しては、P905iより液晶が3.5インチと大きいために消費電力が大きいはずだが、大容量バッテリーを搭載したことで、約7時間という連続視聴可能時間を実現し、P905iの約6時間より1時間長い視聴が可能。今回は短期間しか借りられなかったため、実動作時間をチェックできなかったが、2時間弱の視聴でバッテリーゲージが減ることはなかった。

●スピーカーの音質

内蔵スピーカーの音質に関しても、P905iTVのほうが明らかにキャパシティが大きい。普通にワンセグを視聴している状態でも、P905iのスピーカーではやや音が割れている感じで限界を感じるが、P905iTVのスピーカーはまだ余裕がある印象を受ける。P905iは基本的にはヘッドホン視聴をメインに開発しているのに対し、P905iTVはスピーカー視聴でもある程度の実用性を確保することを目指しているのだろう。

さらにP905iTVに標準付属するクレードルは横置きタイプで、スピーカーを内蔵しており、より高音質なオーディオ出力が可能になる。このクレードルを使った視聴が今までのワンセグ携帯に大きく差をつけることになるだろう。ちなみに、この内蔵スピーカーの出力は5.4V 700mAになる。

ワンセグ以外の機能にも触れておこう。P905iTVはSD-Audio対応のオーディオプレーヤー機能を搭載しており、SD-Audio方式の音声を記録したmicroSDを用意することで、ミュージックプレーヤーとして活用できる。このオーディオプレイヤー機能は、リピートやランダム再生、アーティスト、アルバム、ジャンル、プレイリストなどでの再生にも対応し、実用的なオーディオプレイヤーとして使うことができる。ただし、オーディオプレーヤーの機能に関してはP905iと変わらない。

スピーカー内蔵クレードルでより高音質にテレビを楽しめる

P905iTVでハイビジョンDIGA「DMR-XW300」でリッピングしたSD-Audioデータを再生しているところ

●ハンドリング

P905iTVは3.5インチ大型液晶搭載のスライドタイプなので、大きくて扱いにくいのではないかという先入観があったが、実際に持ってみると意外なほど手になじむ。ズボンのポケットに入れると若干かさばるが、上着のポケットなら、無理なく持ち運ぶことができるだろう。日常的に違和感なく使えるサイズだ。このあたりのセンス、技術はさすがにパナソニックの端末だと言える。また、ボタン類も大きく、非常に押しやすい。

●VIERA携帯の本命か?

同じくVIERA携帯の名前を持つP905iと比較した場合、その「VIERA度」はあきらかにP905iTVのほうが高い。ワンセグ携帯で最大の3.5インチ液晶、30フレームのスムーズな映像、クリアな画質、より長時間の録画時間、TV視聴時間などによって、P905iTVはよりテレビに近いワンセグ携帯となった。

しかし、それとは引き替えに、カメラの画素数は約200万画素と、P905iの約510万画素に大きく遅れをとるし、GPSやGSMには非対応など、テレビ機能のために切り捨てた部分がある。これらの点を考慮に入れた上で、テレビ機能を重視したい人にはP905iTVがお薦めだし、バランスの取れた機能が欲しければP905iを選べばいいだろう。

今回は試作機での試用であり、実機では機能、画質が異なる可能性があるが、今回、体験した底力が失われることはないだろう。実機がどの程度の仕上がりになるか楽しみな端末だ。

(一条真人)

執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。

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