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公開日 2008/10/01 19:22
<ケースイのCEATEC2008レポート>注目の「3Dディスプレイ技術」展示をまとめてチェック!
CEATEC JAPANの見どころには、一歩先行く未来の技術展示を一望できる楽しさもある。今年の注目株は、テレビ向けの先進技術として各社が挙って紹介している「3Dディスプレイ」の技術だ。
一般的な3D映像の技術には、左右の目の視差を利用して、3Dの立体映像を再現するものが多い。テーマパークのアトラクションや映画館でも既に使われている、メガネを使った3D方式の他に、“メガネ無し”で立体映像を再現する方式もある。
ご存じのようにハリウッドの娯楽作品は急速に3D化が進んでいる。アメリカでは3Dのタイトルは、2D作品に比べて2倍から3倍の客足が望めるという。ハイビジョンの普及により、大画面はリビングに入ってきたが、3D映像は映画館でないと楽しめないことから、客足は好調だという。すでに「ベオウルフ/呪われし勇者」など日本でも3D公開される映画が増えており、今後も「センター・オブ・ジ・アース」など、3D上映されるビックタイトルの公開が控えている。市場の盛り上がりを見ると、ホームシアターで3Dを楽しみたい、というニーズが高まるのは時間の問題だろう。今年のCEATECで最も注目すべき先進技術は「3Dディスプレイ」なのではないかと、筆者は感じている
■フルHDの鮮明な3D映像が楽しめるパナソニックの展示
今年の展示の中で、必ずチェックしておきたいのがパナソニックブースの103インチのPDPを使った「3D フルHD プラズマ・シアターシステム」だ。BDの大容量を活かして、右目用の映像と左目用の映像を記録し、専用のプレーヤーとプラズマテレビで再生する。それぞれ専用のモデルとはいえ、現行モデルをベースにつくられたプロトタイプとのことなので、実用化もそう遠くはない技術であろう。この手の3D映像と言えば、映像の立体感はあるものの、画像は不鮮明で魅力に欠ける展示が多いが、パナソニックの展示ではこれまでに目にしたことのないような鮮明なフルHD映像が楽しめる。映像が浮き出してくる感じは映画館の3D上映に近く、自然で見やすい。デモンストレーションでは「BMXのデモ走行」、「グランドキャニオン」、「3Dアニメ」、「北京オリンピック」などが上映されるが、圧巻は北京オリンピック開会式の映像。大勢がスタジアムで中国武術の演武を行うが、手前から奥の人まですべて立体的に見える。その奥行き感はこれまでのディスプレイでは体験できない、引き込まれるような錯覚を生んだ。
会場で同社の高画質・高音質開発センターの末次圭介氏にお話を伺ったところ「ハリウッドの3D作品をどのようにパッケージして再生するかが開発のテーマです。今回の展示はすべて実際の製品を3D用にアレンジするだけで実現しています。技術的にはいつでも製品化が可能です」とのこと。
■手持ちのAV機器と組み合わせて手軽に導入できそうなビクターの「リアルタイム2D/3D変換技術」
日本ビクターは2D映像をリアルタイムで3Dに変換する技術を展示。「リアルタイム2D/3D変換機」を通した映像を、専用のメガネで見ることでリアルな3D映像が楽しめる。
手持ちのDVDやテレビ番組を簡単に3D化できるので、今後の実用化に向けて注目される技術だ。映像の印象は勢いよく飛び出してくるというよりも、立体感は程よく、ナチュラルな感じを受けた。
■用途提案もユニークなパイオニアのメガネなし3Dディスプレイ技術
メガネを使わない3Dディスプレイ技術もある。パイオニアは広告などに利用できるインタラクティブ型の「立体操作用プラットフォーム」を展示している。箱状のユニットの中に3Dの浮遊像を作り出す「3Dフローティングビジョン」を使い、立体映像を使ったPRなどに役立てることができるという。
会場では3D映像のスロットから飛び出るアイコンを専用の携帯電話ですくうとクーポンが手に入るという、デモを行っていた。3D映像の鮮明感はそれほど高くないものの、アプリケーションの使いこなしとしてユニークな技術だと感じた。
■アーケードゲームなどにリアルな3D映像を提供できそうな東芝松下ディスプレイの技術
東芝松下ディスプレイテクノロジーでは、広い視野角でも立体的に見えるという「インテグラルイメージング方式」の3Dディスプレイ技術を展示。
9つ以上の視点で撮影した映像を使って立体映像を作成するので、視点を動かすことで、映像の「側面」なども立体的に見えるのが大きな特徴だ。この方式はCGでのグラフィック作成に向いており、実機の他に開発ツールの展示も行われていた。今回の展示の中では、もっともフォログラムによる3D映像に近く、スターウォーズに登場する通信機を見ているようだった。家庭用テレビでの実現と言うよりは、アーケードゲームなどでの利用が考えられている。
3Dディスプレイの魅力を昭和的な言い方で呼ぶならば“飛び出すテレビ”だ。昭和40年代生まれの筆者が子どものころ、未来のテレビといえば「壁掛けテレビ」と「飛び出すテレビ」を思い描いていた。昨今、超薄型テレビが実現したことで「壁掛けテレビ」の夢は現実のものになり、「次はどんなテレビ?」と期待していたが、3Dディスプレイの開発がここまで進んでいることを改めて実感できた。特にパナソニックのデモは完成度が高く、このクオリティのまま、家庭で映画やゲームを楽しめるようになったら、子どものころに描いた未来へのマイルストーンにふれることになりそうだ。
今年のCEATECは全体的に目玉となる展示や製品が少なく、未来への期待感よりも現実的な印象が強く、筆者は残念に思っていた。明るいはずだったデジタル放送への移行は、テレビ録画のコピーガード問題、デジタル放送特有の画面ノイズなど新たな悩みをユーザーに突きつけている。こと録画に関して言えば操作性の良かったアナログ時代の方がよっぽど幸せだったと痛感している筆者にとって、3Dディスプレイの展示は久々にデジタルAVの未来に夢を与えてくれるニュースだった。もし会場へ行くなら、各ブースの3D展示をまとめてチェックしてみてはいかがだろう。
(レポート:鈴木桂水)
筆者プロフィール
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、使いこなし系のコラムを得意とする。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら
一般的な3D映像の技術には、左右の目の視差を利用して、3Dの立体映像を再現するものが多い。テーマパークのアトラクションや映画館でも既に使われている、メガネを使った3D方式の他に、“メガネ無し”で立体映像を再現する方式もある。
ご存じのようにハリウッドの娯楽作品は急速に3D化が進んでいる。アメリカでは3Dのタイトルは、2D作品に比べて2倍から3倍の客足が望めるという。ハイビジョンの普及により、大画面はリビングに入ってきたが、3D映像は映画館でないと楽しめないことから、客足は好調だという。すでに「ベオウルフ/呪われし勇者」など日本でも3D公開される映画が増えており、今後も「センター・オブ・ジ・アース」など、3D上映されるビックタイトルの公開が控えている。市場の盛り上がりを見ると、ホームシアターで3Dを楽しみたい、というニーズが高まるのは時間の問題だろう。今年のCEATECで最も注目すべき先進技術は「3Dディスプレイ」なのではないかと、筆者は感じている
■フルHDの鮮明な3D映像が楽しめるパナソニックの展示
今年の展示の中で、必ずチェックしておきたいのがパナソニックブースの103インチのPDPを使った「3D フルHD プラズマ・シアターシステム」だ。BDの大容量を活かして、右目用の映像と左目用の映像を記録し、専用のプレーヤーとプラズマテレビで再生する。それぞれ専用のモデルとはいえ、現行モデルをベースにつくられたプロトタイプとのことなので、実用化もそう遠くはない技術であろう。この手の3D映像と言えば、映像の立体感はあるものの、画像は不鮮明で魅力に欠ける展示が多いが、パナソニックの展示ではこれまでに目にしたことのないような鮮明なフルHD映像が楽しめる。映像が浮き出してくる感じは映画館の3D上映に近く、自然で見やすい。デモンストレーションでは「BMXのデモ走行」、「グランドキャニオン」、「3Dアニメ」、「北京オリンピック」などが上映されるが、圧巻は北京オリンピック開会式の映像。大勢がスタジアムで中国武術の演武を行うが、手前から奥の人まですべて立体的に見える。その奥行き感はこれまでのディスプレイでは体験できない、引き込まれるような錯覚を生んだ。
会場で同社の高画質・高音質開発センターの末次圭介氏にお話を伺ったところ「ハリウッドの3D作品をどのようにパッケージして再生するかが開発のテーマです。今回の展示はすべて実際の製品を3D用にアレンジするだけで実現しています。技術的にはいつでも製品化が可能です」とのこと。
■手持ちのAV機器と組み合わせて手軽に導入できそうなビクターの「リアルタイム2D/3D変換技術」
日本ビクターは2D映像をリアルタイムで3Dに変換する技術を展示。「リアルタイム2D/3D変換機」を通した映像を、専用のメガネで見ることでリアルな3D映像が楽しめる。
手持ちのDVDやテレビ番組を簡単に3D化できるので、今後の実用化に向けて注目される技術だ。映像の印象は勢いよく飛び出してくるというよりも、立体感は程よく、ナチュラルな感じを受けた。
■用途提案もユニークなパイオニアのメガネなし3Dディスプレイ技術
メガネを使わない3Dディスプレイ技術もある。パイオニアは広告などに利用できるインタラクティブ型の「立体操作用プラットフォーム」を展示している。箱状のユニットの中に3Dの浮遊像を作り出す「3Dフローティングビジョン」を使い、立体映像を使ったPRなどに役立てることができるという。
会場では3D映像のスロットから飛び出るアイコンを専用の携帯電話ですくうとクーポンが手に入るという、デモを行っていた。3D映像の鮮明感はそれほど高くないものの、アプリケーションの使いこなしとしてユニークな技術だと感じた。
■アーケードゲームなどにリアルな3D映像を提供できそうな東芝松下ディスプレイの技術
東芝松下ディスプレイテクノロジーでは、広い視野角でも立体的に見えるという「インテグラルイメージング方式」の3Dディスプレイ技術を展示。
9つ以上の視点で撮影した映像を使って立体映像を作成するので、視点を動かすことで、映像の「側面」なども立体的に見えるのが大きな特徴だ。この方式はCGでのグラフィック作成に向いており、実機の他に開発ツールの展示も行われていた。今回の展示の中では、もっともフォログラムによる3D映像に近く、スターウォーズに登場する通信機を見ているようだった。家庭用テレビでの実現と言うよりは、アーケードゲームなどでの利用が考えられている。
3Dディスプレイの魅力を昭和的な言い方で呼ぶならば“飛び出すテレビ”だ。昭和40年代生まれの筆者が子どものころ、未来のテレビといえば「壁掛けテレビ」と「飛び出すテレビ」を思い描いていた。昨今、超薄型テレビが実現したことで「壁掛けテレビ」の夢は現実のものになり、「次はどんなテレビ?」と期待していたが、3Dディスプレイの開発がここまで進んでいることを改めて実感できた。特にパナソニックのデモは完成度が高く、このクオリティのまま、家庭で映画やゲームを楽しめるようになったら、子どものころに描いた未来へのマイルストーンにふれることになりそうだ。
今年のCEATECは全体的に目玉となる展示や製品が少なく、未来への期待感よりも現実的な印象が強く、筆者は残念に思っていた。明るいはずだったデジタル放送への移行は、テレビ録画のコピーガード問題、デジタル放送特有の画面ノイズなど新たな悩みをユーザーに突きつけている。こと録画に関して言えば操作性の良かったアナログ時代の方がよっぽど幸せだったと痛感している筆者にとって、3Dディスプレイの展示は久々にデジタルAVの未来に夢を与えてくれるニュースだった。もし会場へ行くなら、各ブースの3D展示をまとめてチェックしてみてはいかがだろう。
(レポート:鈴木桂水)
筆者プロフィール
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、使いこなし系のコラムを得意とする。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら