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公開日 2015/01/10 09:30
【CES】ゴールデンイヤーが語る − 世界初のLightning接続ハイレゾヘッドホン「Fidelio M2L」の詳細
Lightning&ハイレゾの「NC1L」も発表
CESに参加するギブソンのブースには、グループの一員である「フィリップス」ブランドのプレミアムラインである“Fidelio”シリーズをはじめ、ユニークな製品が並んでいた。Lightning直結のハイレゾ対応ヘッドホン「Fidelio M2L」の詳細とあわせてお伝えしよう。
Fidelioシリーズの新製品については、ギブソングループの子会社であり、フィリップスのオーディオ・ホームエンターテインメント事業を展開するWOOX Innovations社にて、ヘッドホン製品の商品企画を担当する藍 智楽氏に紹介いただいた。
■CESの会場には2つの新しいFidelioシリーズのヘッドホンを展示
今回のCESで注目したいFidelioシリーズの新製品は2機種。一つが昨年9月に開催されたIFA2014の直後に発表されたLightning端子仕様のケーブルを採用し、iPhoneやiPadなどLightning仕様のiOSデバイスから音声をデジタル入力できるヘッドホン「Fidelio M2L」だ。本機は最大48kHz/24bitまでのハイレゾ再生にも対応している。
Fidelio「M」シリーズの系統をベースにしており、オンイヤータイプのヘッドホンで、ハウジングの外側にボリュームコントロールのジョグダイアルを設け、パネルを押し込むと電源操作や音楽・通話再生がコントロールできるようになっている。先に細かなスペックを記しておくと、再生周波数帯域は7Hz〜25kHzをカバー。インピーダンスは16Ωで、感度は107dB。
ドライバーの口径は40mmで、ネオジウムマグネットを搭載。振動板にはPET素材を採用し、ハウジングは密閉型になる。ケーブルの長さは1.2mで、インラインにリモコンユニットはない。本体の質量はM1MkIIよりほんの少し重い。
iPod/iPhone/iPadを対象としたMFIを取得しており、Lightning端子とiOS 7.1以上を搭載していることが組み合わせの条件になる。
「アップルのLightning端子を搭載するハイレゾ対応のヘッドホンを世界に先駆けていち早く発売できた背景には、フィリップスのブランドがアップルと密接な協力関係のもと本機を開発してきたからです。欧州は12月から発売がスタートし、北米への出荷もまもなく始まる予定です。価格は299ドルになります」(藍氏)
なお、先月末開催のポタフェスにも出展されていたFidelio初のアクティブノイズキャンセリングヘッドホン「NC1」にも、Lightning搭載モデルが発売されることが決定した。本体にバッテリーを内蔵せず、iOSデバイスからLightning経由で電源供給できるところも特徴になる。発売時期については欧州が春頃を予定しており、価格は299ユーロになる見込み。現地時間8日にプレスリリースされたホットなトピックスだが、残念ながらCESのタイミングで実機の展示はなかった。
もう一つのFidelioの新製品は、エントリークラスの「Fidelio F1」。先行して発表されたFidelio NC1のルックスに近づけた、アルミニウムの密閉型ハウジングを採用するメタルなデザインが特徴的なオンイヤースタイルのヘッドホンだ。本体が折り畳めるコラプシブル設計を採用したライトウェイトのポータブルタイプで、価格が149ドルと手頃なのも特徴。北米では春の発売を予定する。
本機も40mm口径のネオジウムマグネット搭載ドライバーを採用しており、メモリーフォームの柔らかいイヤーパッドや、インラインにマイク付きリモコンを搭載するなど「トラベラーにとっての使い勝手の良さを意識した仕様を盛り込んだ」(藍氏)という。会場に展示されていた実機により、サウンドを聴く機会も得たが、ボーカルものは声の存在感が際立つ。低域もタイトに引き締めた、リズム感の再現性に優れたヘッドホンだ。
■ゴールデンイヤーに聞く「M2L」の詳細
CESの会場では、フィリップスのオーディオ製品の音づくりに携わっている“ゴールデンイヤー”の一員である、WOOX Innovationsのオーディオ・アーキテクト Benoit Burette氏に、上記「M2L」のハイレゾ再生についてもう少し突っ込んだ話をうかがうことができた。
まず「M2Lの中味」はどうなっているのか。写真の図解を見ていただくとよくわかると思うが、Lightning経由でiOS機器から入力された信号は固定式のケーブルを伝わって、最初に「Lightning Audio Module(LAM)」というアップルが提供するモジュールに到達する。その後にウォルフソン製のDACチップに入力されアンプで信号を増幅する。バッテリーはiOS機器から供給を受けるため、iPhoneなどで音楽を再生する場合はデバイス側の電力が消費されるかたちになるが、「アップルが外部デジタル接続機器に対して定めている上限50mAhの駆動時消費電力に対して、M2Lは20mAh〜30mAhとそれよりも低い消費電力で駆動できるのが特長」とBurette氏は説明する。
ハイレゾ対応ではあるが、再生できるファイルの上限は48kHz/24bitまで。「アップルのiOSの仕様に則ったもので、48kHz以上の信号についてはダウンコンバートされる仕様です。M2Lについてはアップルの規定に沿ったかたちで開発を進め、最終的にはセットとして認証を取得できた段階で発売となりました。今後発売するノイズキャンセリング搭載の“NC1L”についても、ハイレゾ再生の仕様は48kHz/24bitまでとなり、アップルの認証取得が必要になります」(Burette氏)
そもそも“Lightning仕様”とした背景については、ハイレゾ対応を実現することも理由の一つにはあるが、「アナログの端子による接続に比べて、デジタル接続にすることでクロストーク干渉を避けて、チャンネルセパレーションやステレオイメージの向上が実現できることに魅力を感じています。バンドやオーケストラの演奏は楽器の音の分離感や粒立ちが向上して、立体的な空間表現力が一段と高まるところも特徴と言えるのではないでしょうか」とハイレゾに関わらずオーディオ再生全般のクオリティアップに貢献することのメリットが得られるからだとBurette氏は強調する。
iOS機器による音楽再生の品質向上を狙ったときに、最新のインターフェースであるLightningによるデジタル接続を“ヘッドホン直結”で実現することが、DAC内蔵のポタアンを間に挟むことなく軽快に高品位なサウンドが楽しめるという、ユーザーにとっての利便性向上にもつながる。「iOS機器と組み合わせて、いい音でかつ快適に音楽が楽しめるヘッドホンをつくること」がM2Lの開発命題であったことが、Burette氏の説明をうかがううちに段々と見えてきた。
なお、Lightningからのデジタル接続に対応するヘッドホンには、ソニーが先行して発売する「MDR-1ADAC」がある。本機はオフィシャルには“ハイレゾ対応”を表明しておらず、以前に本機のリスニング取材を敢行した際に、ソニーに連絡を取って仕様を確認したところ「ソニーではその検証を行っていない」という回答だった。試しに96kHz/24bitの音源を再生してみたところ、48kHzにダウンサンプリングされるところまではわかったのだが、ビット深度を確かめる術を持ち合わせておらず、残念ながら核心に迫ることはできなかった。その分、フィリップスの「M2L」は公式に24bit対応と“ハイレゾ対応”を掲げる世界初のヘッドホンとして、今後のハイレゾオーディオの進化のクロニクルにその名を刻むモデルとなるだろう。
音質については持参したiPhone 5sで幾つかのハイレゾ音源を「HF Player」を使って聴いてみた。確かにステレオイメージや立体感の向上と、ボーカルや楽器の音の輪郭、リズムの正確さが高まる印象だ。ただ、いくら本機が密閉型だとはいっても、そこかしこでスピーカー製品のデモやアーティストによる特設ステージの演奏が爆音で鳴り響く環境での試聴だったため、本機のサウンドについてはまた改めてゆっくりと聴く機会を作りたいと思う。
なお、今回のCESの開発期間中にNC1のLightning対応が発表されたわけだが、今後「X2」など他のモデルにも波及して行く可能性はあるのだろうか。Burette氏は「デジタル接続の優位性を考えれば、確かに上位モデルにも搭載することの意義は大きいはずです。でも正直に言うと、今のところはまだその計画はありません。今後、Fidelioシリーズの新しい商品ポートフォリオを構成する段階で、また検討していきたいと思います」とコメントしてくれた。
インタビューの最後、ギブソングループに加わったWOOX社のメンバーとして、今後のオーディオ商品の開発プランを訊ねた。「今回出展したギブソンのオリジナルブランドによる新ヘッドホンや、TRAINER by Gibson(関連ニュース)のローンチにも私たちWOOXの開発スタッフや、“ゴールデンイヤー”が関わっています。また今回はプロトタイプをご紹介しているオンキヨーのヘッドホン、ワイヤレスポータブルスピーカーについても、オンキヨーの高いブランドイメージと技術に、WOOXのスタッフによるノウハウを組み合わせることによって、効果的なシナジーをつくりだしたいと考えています」(Burette氏)
米Gibson Brands社は昨年の6月末にWOOX Innovationsの買収を完了した。今回の取材に同行していただいたWOOX Innovationsの広報担当者によれば、同社は今後社名をGibson Innovationsに変更し、グループ傘下の各ブランドとより密接な協力関係を構築しながらマーケティング、商品開発を展開していくという。
Fidelioシリーズの新製品については、ギブソングループの子会社であり、フィリップスのオーディオ・ホームエンターテインメント事業を展開するWOOX Innovations社にて、ヘッドホン製品の商品企画を担当する藍 智楽氏に紹介いただいた。
■CESの会場には2つの新しいFidelioシリーズのヘッドホンを展示
今回のCESで注目したいFidelioシリーズの新製品は2機種。一つが昨年9月に開催されたIFA2014の直後に発表されたLightning端子仕様のケーブルを採用し、iPhoneやiPadなどLightning仕様のiOSデバイスから音声をデジタル入力できるヘッドホン「Fidelio M2L」だ。本機は最大48kHz/24bitまでのハイレゾ再生にも対応している。
Fidelio「M」シリーズの系統をベースにしており、オンイヤータイプのヘッドホンで、ハウジングの外側にボリュームコントロールのジョグダイアルを設け、パネルを押し込むと電源操作や音楽・通話再生がコントロールできるようになっている。先に細かなスペックを記しておくと、再生周波数帯域は7Hz〜25kHzをカバー。インピーダンスは16Ωで、感度は107dB。
ドライバーの口径は40mmで、ネオジウムマグネットを搭載。振動板にはPET素材を採用し、ハウジングは密閉型になる。ケーブルの長さは1.2mで、インラインにリモコンユニットはない。本体の質量はM1MkIIよりほんの少し重い。
iPod/iPhone/iPadを対象としたMFIを取得しており、Lightning端子とiOS 7.1以上を搭載していることが組み合わせの条件になる。
「アップルのLightning端子を搭載するハイレゾ対応のヘッドホンを世界に先駆けていち早く発売できた背景には、フィリップスのブランドがアップルと密接な協力関係のもと本機を開発してきたからです。欧州は12月から発売がスタートし、北米への出荷もまもなく始まる予定です。価格は299ドルになります」(藍氏)
なお、先月末開催のポタフェスにも出展されていたFidelio初のアクティブノイズキャンセリングヘッドホン「NC1」にも、Lightning搭載モデルが発売されることが決定した。本体にバッテリーを内蔵せず、iOSデバイスからLightning経由で電源供給できるところも特徴になる。発売時期については欧州が春頃を予定しており、価格は299ユーロになる見込み。現地時間8日にプレスリリースされたホットなトピックスだが、残念ながらCESのタイミングで実機の展示はなかった。
もう一つのFidelioの新製品は、エントリークラスの「Fidelio F1」。先行して発表されたFidelio NC1のルックスに近づけた、アルミニウムの密閉型ハウジングを採用するメタルなデザインが特徴的なオンイヤースタイルのヘッドホンだ。本体が折り畳めるコラプシブル設計を採用したライトウェイトのポータブルタイプで、価格が149ドルと手頃なのも特徴。北米では春の発売を予定する。
本機も40mm口径のネオジウムマグネット搭載ドライバーを採用しており、メモリーフォームの柔らかいイヤーパッドや、インラインにマイク付きリモコンを搭載するなど「トラベラーにとっての使い勝手の良さを意識した仕様を盛り込んだ」(藍氏)という。会場に展示されていた実機により、サウンドを聴く機会も得たが、ボーカルものは声の存在感が際立つ。低域もタイトに引き締めた、リズム感の再現性に優れたヘッドホンだ。
■ゴールデンイヤーに聞く「M2L」の詳細
CESの会場では、フィリップスのオーディオ製品の音づくりに携わっている“ゴールデンイヤー”の一員である、WOOX Innovationsのオーディオ・アーキテクト Benoit Burette氏に、上記「M2L」のハイレゾ再生についてもう少し突っ込んだ話をうかがうことができた。
まず「M2Lの中味」はどうなっているのか。写真の図解を見ていただくとよくわかると思うが、Lightning経由でiOS機器から入力された信号は固定式のケーブルを伝わって、最初に「Lightning Audio Module(LAM)」というアップルが提供するモジュールに到達する。その後にウォルフソン製のDACチップに入力されアンプで信号を増幅する。バッテリーはiOS機器から供給を受けるため、iPhoneなどで音楽を再生する場合はデバイス側の電力が消費されるかたちになるが、「アップルが外部デジタル接続機器に対して定めている上限50mAhの駆動時消費電力に対して、M2Lは20mAh〜30mAhとそれよりも低い消費電力で駆動できるのが特長」とBurette氏は説明する。
ハイレゾ対応ではあるが、再生できるファイルの上限は48kHz/24bitまで。「アップルのiOSの仕様に則ったもので、48kHz以上の信号についてはダウンコンバートされる仕様です。M2Lについてはアップルの規定に沿ったかたちで開発を進め、最終的にはセットとして認証を取得できた段階で発売となりました。今後発売するノイズキャンセリング搭載の“NC1L”についても、ハイレゾ再生の仕様は48kHz/24bitまでとなり、アップルの認証取得が必要になります」(Burette氏)
そもそも“Lightning仕様”とした背景については、ハイレゾ対応を実現することも理由の一つにはあるが、「アナログの端子による接続に比べて、デジタル接続にすることでクロストーク干渉を避けて、チャンネルセパレーションやステレオイメージの向上が実現できることに魅力を感じています。バンドやオーケストラの演奏は楽器の音の分離感や粒立ちが向上して、立体的な空間表現力が一段と高まるところも特徴と言えるのではないでしょうか」とハイレゾに関わらずオーディオ再生全般のクオリティアップに貢献することのメリットが得られるからだとBurette氏は強調する。
iOS機器による音楽再生の品質向上を狙ったときに、最新のインターフェースであるLightningによるデジタル接続を“ヘッドホン直結”で実現することが、DAC内蔵のポタアンを間に挟むことなく軽快に高品位なサウンドが楽しめるという、ユーザーにとっての利便性向上にもつながる。「iOS機器と組み合わせて、いい音でかつ快適に音楽が楽しめるヘッドホンをつくること」がM2Lの開発命題であったことが、Burette氏の説明をうかがううちに段々と見えてきた。
なお、Lightningからのデジタル接続に対応するヘッドホンには、ソニーが先行して発売する「MDR-1ADAC」がある。本機はオフィシャルには“ハイレゾ対応”を表明しておらず、以前に本機のリスニング取材を敢行した際に、ソニーに連絡を取って仕様を確認したところ「ソニーではその検証を行っていない」という回答だった。試しに96kHz/24bitの音源を再生してみたところ、48kHzにダウンサンプリングされるところまではわかったのだが、ビット深度を確かめる術を持ち合わせておらず、残念ながら核心に迫ることはできなかった。その分、フィリップスの「M2L」は公式に24bit対応と“ハイレゾ対応”を掲げる世界初のヘッドホンとして、今後のハイレゾオーディオの進化のクロニクルにその名を刻むモデルとなるだろう。
音質については持参したiPhone 5sで幾つかのハイレゾ音源を「HF Player」を使って聴いてみた。確かにステレオイメージや立体感の向上と、ボーカルや楽器の音の輪郭、リズムの正確さが高まる印象だ。ただ、いくら本機が密閉型だとはいっても、そこかしこでスピーカー製品のデモやアーティストによる特設ステージの演奏が爆音で鳴り響く環境での試聴だったため、本機のサウンドについてはまた改めてゆっくりと聴く機会を作りたいと思う。
なお、今回のCESの開発期間中にNC1のLightning対応が発表されたわけだが、今後「X2」など他のモデルにも波及して行く可能性はあるのだろうか。Burette氏は「デジタル接続の優位性を考えれば、確かに上位モデルにも搭載することの意義は大きいはずです。でも正直に言うと、今のところはまだその計画はありません。今後、Fidelioシリーズの新しい商品ポートフォリオを構成する段階で、また検討していきたいと思います」とコメントしてくれた。
インタビューの最後、ギブソングループに加わったWOOX社のメンバーとして、今後のオーディオ商品の開発プランを訊ねた。「今回出展したギブソンのオリジナルブランドによる新ヘッドホンや、TRAINER by Gibson(関連ニュース)のローンチにも私たちWOOXの開発スタッフや、“ゴールデンイヤー”が関わっています。また今回はプロトタイプをご紹介しているオンキヨーのヘッドホン、ワイヤレスポータブルスピーカーについても、オンキヨーの高いブランドイメージと技術に、WOOXのスタッフによるノウハウを組み合わせることによって、効果的なシナジーをつくりだしたいと考えています」(Burette氏)
米Gibson Brands社は昨年の6月末にWOOX Innovationsの買収を完了した。今回の取材に同行していただいたWOOX Innovationsの広報担当者によれば、同社は今後社名をGibson Innovationsに変更し、グループ傘下の各ブランドとより密接な協力関係を構築しながらマーケティング、商品開発を展開していくという。