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公開日 2020/01/15 17:52
より身近な便利を実現する次世代技術に注目。「オートモーティブ ワールド2020」レポート
自動運転やコネクテッドカーが現実的に
自動車業界における最新技術が一同に集うイベント「第12回 オートモーティブ ワールド -クルマの先端技術展-」が、1月15日(水)〜17日(金)にかけて東京ビックサイトにて開催。その模様をレポートしたい。
第12回を迎える本イベントでは、クルマの電子化・電動化や軽量化などといった車体そのものに関連した技術はもちろんだが、第10回から加わった「自動運転EXPO」のコーナーやコネクテッドカーなど、クルマの未来にまつわる展示も多く行われている。ここでは自動運転、コネクテッドカーに関する内容を中心に取り上げていく。
ゲーム向けミドルウェアで知られるシリコンスタジオは、2〜3年ほど前からオートモーティブ事業部を立ち上げており、その3DCG技術を活かした車載ディスプレイ向けHMIデザインおよびソフトウェア開発や、リアルタイム3DCG描画技術の提供、社内エンターテインメントの企画支援といったソリューション提案を行っている。
自動運転では車外の情報だけでなく、車内の情報としてドライバーの状況などを把握することが求められる。「眠そう」「視線が外れている」といった判断はAIが行うことが考えられるが、その精度を高めるためには膨大なデータが必要となる。実際に人物を撮影して行うには大きな労力がかかることから、同社では人種・年齢が異なる人物の顔をほぼ無限にプロシージャル生成できる「Avatar Generator」を用意。ディープラーニングを行うためのAI教師データ用ツールとして拡張でき、活用することで安全性の向上につながる。
3DCGソフトウェアのMayaから、レンダリングをリアルタイムかつ美しく行えるデモも展示。最終的なゴールを想像しやすくなり、イメージの共有も容易になるため、生産工程の改善につながるとアピールされていた。
ジオマテックは液晶ディスプレイやスマートフォンなど多様な場面で用いられる高機能薄膜を開発するメーカー。車載装置に求められるタッチパネル化への対応や、差し込む光に対して視認性が落ちないようにする反射防止性能などを備えたガラス・フィルム製品などを揃えている。
モスアイ構造フィルム「g.moth」は極めて高い透明度と、超低反射による映り込みのなさを実現。実際に肉眼で見ても、透明度が高く反射がないため、フィルムがそこにあるということがほぼ分からないほどだった。また、同社製品は高い撥水性や耐久力も特徴。悪天候の日にカメラセンシングやLiDARなどの大敵となる結露や曇りを、あたためることでカバーする車載向け透明ヒーターなども自動運転レベル4時代の実装を見据えて展開していた。
NECはコネクテッドカー向けの車載サービスプラットフォームを提案。様々な情報・データをクラウドで共有することで多くの “便利” が実現できるコネクテッドカーだが、NECではその一案として、人物認証によりドライバーごとに異なるサービスを利用できるパーソナライズ化を挙げている。
例えばシェアカーで、乗り込んだドライバーの顔認証を行い、サーバーから人物のデータをダウンロード、よく使う音楽アプリを起動したり後部座席の車載ディスプレイは利用しないのでオフにする、などの設定を自動で行うといったことが可能だ。これはもちろん同乗者にも適用でき、シェアカーでなくとも家族で一台のクルマを共用しているケースなどにも反映できる。
パイオニアでは運転支援システム「Intelligent Pilot」をデモ。通信機能搭載ドライブレコーダーなどと組み合わせ、走行している場所や天気、時間、ドライバーの運転傾向に合わせて事故リスクを予測・診断し、適宜アラートを出すといったことが可能だ。また組み合わせるのはドライブレコーダーである必要はなく、同社ではSDKを提供しており、スマートフォンの地図アプリなどに導入するといったこともケースとしては考えられる。自動車だけでなく、自転車や歩行者がヒヤリハットの防止に活用すると発展も期待したい。
CRIWAREのブースでは、サウンドの設計から出力調整までをワンストップでサポートするソリューション「CRI ADX Automotive」をアピール。これはゲームソフトで使用される「CRI ADX2」をベースに車載向けのカスタマイズを行ったものとなる。また同社の音響補正ソリューションは、Diracの基本特許技術、パイオニアのハードウェア技術を背景に培われたサウンドソフトウェア技術により提案される。
半ドアやシートベルト未着用などのアラートがすべてセンターから鳴らされることで音が重なってしまい、重要度の高い音が聞こえないことがあるといった課題に対して、Diracの技術により悪条件に設置されたスピーカーの音のこもりを取り除き、聞かせたい音を強調することで解決するといったソリューションをティアワンメーカーに提供。OEMメーカーとはサウンド設計から携わることでクオリティの均一化を図れることを強みとしている。
オートモーティブ ワールドではモーションセンサーを活用したハンドジェスチャーデバイスや球体形状スクリーンなどの展示も注目されるが、今回はTOPPANが世界初という “薄型” 空中浮遊ディスプレイを参考出展。ORTUSTECHの独自光学技術を使って5インチディスプレイとして約1/2の奥行きを実現したというもので、非接触空間ジェスチャー入力技術を搭載。 “触れない操作パネル” の実用が一歩近づいたようだ。
ロームは今回も広いブースを展開していたが、そのなかで2.8W出力の小型スピーカーアンプ「BD783xxEFJ-M」シリーズが新製品として出展されていた。保護回路の掛け方を工夫し、放熱特性を100%活かすという設計が特徴で、従来方式では負荷電流が保護回路の動作しきい値で大きく制限されることで音割れが発生してしまっていたのに対し、独自の過電流保護回路の搭載により大音量の安定出力を実現している。
USB Power Delievryについてはアナログ・デバイセズやサイプレス セミコンダクタなどが技術展示を実施。100Wまでの受給電によりノートパソコンなどの受給電が行えるほか、急速充電が可能であることなどメリットの多い規格であるが、その一方で車載向けにはノイズやサイズ、排熱などの課題も多い。各社、それぞれのアプローチでそのハードルをクリアし、設置需要の高まりが予想されるUSB PD対応を大きくアピールした。
イベントは主にBtoBを対象としたものであり、そこで披露された技術に関して、すぐにエンドユーザーが体感できるかと言えばそうではない。しかし、最終的にBtoC市場での展開も見越した技術開発が進められているケースも多かった。自動運転の試験導入が進められるなか、数年以内の飛躍的な進展も現実的な話となってきた。今後の動きにも注視して待ちたい。
第12回を迎える本イベントでは、クルマの電子化・電動化や軽量化などといった車体そのものに関連した技術はもちろんだが、第10回から加わった「自動運転EXPO」のコーナーやコネクテッドカーなど、クルマの未来にまつわる展示も多く行われている。ここでは自動運転、コネクテッドカーに関する内容を中心に取り上げていく。
ゲーム向けミドルウェアで知られるシリコンスタジオは、2〜3年ほど前からオートモーティブ事業部を立ち上げており、その3DCG技術を活かした車載ディスプレイ向けHMIデザインおよびソフトウェア開発や、リアルタイム3DCG描画技術の提供、社内エンターテインメントの企画支援といったソリューション提案を行っている。
自動運転では車外の情報だけでなく、車内の情報としてドライバーの状況などを把握することが求められる。「眠そう」「視線が外れている」といった判断はAIが行うことが考えられるが、その精度を高めるためには膨大なデータが必要となる。実際に人物を撮影して行うには大きな労力がかかることから、同社では人種・年齢が異なる人物の顔をほぼ無限にプロシージャル生成できる「Avatar Generator」を用意。ディープラーニングを行うためのAI教師データ用ツールとして拡張でき、活用することで安全性の向上につながる。
3DCGソフトウェアのMayaから、レンダリングをリアルタイムかつ美しく行えるデモも展示。最終的なゴールを想像しやすくなり、イメージの共有も容易になるため、生産工程の改善につながるとアピールされていた。
ジオマテックは液晶ディスプレイやスマートフォンなど多様な場面で用いられる高機能薄膜を開発するメーカー。車載装置に求められるタッチパネル化への対応や、差し込む光に対して視認性が落ちないようにする反射防止性能などを備えたガラス・フィルム製品などを揃えている。
モスアイ構造フィルム「g.moth」は極めて高い透明度と、超低反射による映り込みのなさを実現。実際に肉眼で見ても、透明度が高く反射がないため、フィルムがそこにあるということがほぼ分からないほどだった。また、同社製品は高い撥水性や耐久力も特徴。悪天候の日にカメラセンシングやLiDARなどの大敵となる結露や曇りを、あたためることでカバーする車載向け透明ヒーターなども自動運転レベル4時代の実装を見据えて展開していた。
NECはコネクテッドカー向けの車載サービスプラットフォームを提案。様々な情報・データをクラウドで共有することで多くの “便利” が実現できるコネクテッドカーだが、NECではその一案として、人物認証によりドライバーごとに異なるサービスを利用できるパーソナライズ化を挙げている。
例えばシェアカーで、乗り込んだドライバーの顔認証を行い、サーバーから人物のデータをダウンロード、よく使う音楽アプリを起動したり後部座席の車載ディスプレイは利用しないのでオフにする、などの設定を自動で行うといったことが可能だ。これはもちろん同乗者にも適用でき、シェアカーでなくとも家族で一台のクルマを共用しているケースなどにも反映できる。
パイオニアでは運転支援システム「Intelligent Pilot」をデモ。通信機能搭載ドライブレコーダーなどと組み合わせ、走行している場所や天気、時間、ドライバーの運転傾向に合わせて事故リスクを予測・診断し、適宜アラートを出すといったことが可能だ。また組み合わせるのはドライブレコーダーである必要はなく、同社ではSDKを提供しており、スマートフォンの地図アプリなどに導入するといったこともケースとしては考えられる。自動車だけでなく、自転車や歩行者がヒヤリハットの防止に活用すると発展も期待したい。
CRIWAREのブースでは、サウンドの設計から出力調整までをワンストップでサポートするソリューション「CRI ADX Automotive」をアピール。これはゲームソフトで使用される「CRI ADX2」をベースに車載向けのカスタマイズを行ったものとなる。また同社の音響補正ソリューションは、Diracの基本特許技術、パイオニアのハードウェア技術を背景に培われたサウンドソフトウェア技術により提案される。
半ドアやシートベルト未着用などのアラートがすべてセンターから鳴らされることで音が重なってしまい、重要度の高い音が聞こえないことがあるといった課題に対して、Diracの技術により悪条件に設置されたスピーカーの音のこもりを取り除き、聞かせたい音を強調することで解決するといったソリューションをティアワンメーカーに提供。OEMメーカーとはサウンド設計から携わることでクオリティの均一化を図れることを強みとしている。
オートモーティブ ワールドではモーションセンサーを活用したハンドジェスチャーデバイスや球体形状スクリーンなどの展示も注目されるが、今回はTOPPANが世界初という “薄型” 空中浮遊ディスプレイを参考出展。ORTUSTECHの独自光学技術を使って5インチディスプレイとして約1/2の奥行きを実現したというもので、非接触空間ジェスチャー入力技術を搭載。 “触れない操作パネル” の実用が一歩近づいたようだ。
ロームは今回も広いブースを展開していたが、そのなかで2.8W出力の小型スピーカーアンプ「BD783xxEFJ-M」シリーズが新製品として出展されていた。保護回路の掛け方を工夫し、放熱特性を100%活かすという設計が特徴で、従来方式では負荷電流が保護回路の動作しきい値で大きく制限されることで音割れが発生してしまっていたのに対し、独自の過電流保護回路の搭載により大音量の安定出力を実現している。
USB Power Delievryについてはアナログ・デバイセズやサイプレス セミコンダクタなどが技術展示を実施。100Wまでの受給電によりノートパソコンなどの受給電が行えるほか、急速充電が可能であることなどメリットの多い規格であるが、その一方で車載向けにはノイズやサイズ、排熱などの課題も多い。各社、それぞれのアプローチでそのハードルをクリアし、設置需要の高まりが予想されるUSB PD対応を大きくアピールした。
イベントは主にBtoBを対象としたものであり、そこで披露された技術に関して、すぐにエンドユーザーが体感できるかと言えばそうではない。しかし、最終的にBtoC市場での展開も見越した技術開発が進められているケースも多かった。自動運転の試験導入が進められるなか、数年以内の飛躍的な進展も現実的な話となってきた。今後の動きにも注視して待ちたい。