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公開日 2023/09/06 06:30
エレクトロニクスの「サステナビリティ」、そのあるべき形が見えた――IFA2023を振り返る
新たな日本企業やスタートアップも集う
ドイツ・ベルリンで、コンシューマーエレクトロニクスのイベントとしては世界最大級の規模で催される「IFA」を、筆者は2019年以来4年ぶりに現地で取材した。2023年のIFAを振り返りながら、成熟期を迎えたコンシューマーエレクトロニクスの今後を考えてみたい。
IFAは2020年に始まった新型コロナウイルス感染症によるパンデミックのあおりを受けて、2020年はデジタルとリアルのハイブリッド開催になり、そして2021年は開催中止を余儀なくされた。2022年はリアルイベントを開催したが、筆者は足を運ばなかった。
果たして今年のIFAは以前のような盛り上がりを取り戻しているのだろうか。筆者は心配しながら、2020年の秋に開港したベルリン・ブランデンブルグ国際空港に降り立った。ところが始まってみれば拍子抜けするほど、IFAの期間中はメッセ・ベルリンの会場に以前と同じ熱気があふれていた。
日本から参加したパナソニック、ソニーやシャープが一般来場者に向けてブースを開放していなかったことはとても残念だったが、それでもヤマハやAVIOTなど日本から出展した企業のブースを通りがかるたび、多くの来場者が訪れているさまを目にした。今年のIFAに日本から出展したすべての企業に大きな収穫があったことを願いたい。
今年、IFAに出展した多くの企業は「サステナビリティ」をテーマに掲げて、各社の製品やサービスの特徴を紹介した。サステナビリティという英語を日本語に直訳すると「持続可能性」という意味になる。ものづくりにおける省エネを徹底したり、環境にやさしい素材の開発をして、企業のサステナブルな取り組みを評価することもできるが、IFAに訪れる一般のコンシューマーやトレードビジターの関心の目はもっと違うところに向けられているのではないかと筆者は感じた。
IFAを主催するIFA ManagementのCEOとして新しく就任するリーフ・リンドナー氏に、欧州の人々がなぜこれほどまでサステナビリティに関心を寄せるのか、見解を聞いた。
「昨今ドイツでは世界情勢の影響により、エネルギーコストの高騰という課題が企業の経営にだけではなく、一般の人々の生活にも重くのしかかっています。政府もサステナブルな経営やものづくりに力を入れる企業の取り組みを奨励しています。私の感覚では、特に今年に入ってからコンシューマーの間にもサステナブルな製品やサービスへの関心が高まっていると感じます。それどころかいまでは、いかに技術や使い勝手が優れている製品やサービスであろうとも、サステナブルでなければコンシューマーに見向きもされません」
「サステナブル」とは様々な意味に捉えることができる言葉だ。コンシューマーがいま強い関心を向けるサステナブルな商品とは、地球環境にやさしいだけでなく「家計にもやさしい」商品なのだとリンドナー氏が続ける。
「いまドイツの政府はヒートポンプや風力発電を積極的に活用して、エネルギーを国内で自給自足しながら、将来に向けてエネルギーのコストを下げるための土台を整えています。これは絶対に必要な取り組みですが、一方ではものづくりを生業とする企業もまたリサイクルマテリアルの活用などを積極的に推進して、ユーザーが楽しみながら長く使える製品、今までと変わらない価格で手に入れられる製品をつくることが求められています」
「来場者もまた、各社のサステナブルな取り組みが、自分たちの生活に対して、どのように具体的なメリットをもたらしてくれるのか注目しています。今年のIFAに出展した企業は、それぞれが掲げるサステナビリティの旗印がコンシューマーの期待にマッチしているのか、フィードバックが得られたのではないかと私は思います」
コンシューマーエレクトロニクスの製品とサービスが成熟期を迎える一方で、今年のIFAではAIやロボティクスの先進技術を活用して「まったく新しいもの」を生み出そうとするスタートアップの勢いにも触れることができた。
イベントが開催される期間、会場となるメッセ・ベルリンには世界各国の先端テック企業やスタートアップを集めて「IFA NEXT」というイベントが併催される。筆者は先に、IFA NEXTに集まった欧州スタートアップのレポートをPHILE WEBに寄稿しているが、アジアは韓国から沢山のスタートアップがIFA NEXTに参加した。
それぞれに手がけるプロダクトやサービスは多様性に富んでおり、会場に訪れた来場者は韓国のテクノロジーの勢い、あるいはスタートアップの存在感に少なからぬインパクトを受けたはずだ。
振り返れば2019年に、初めてIFA NEXTの「グローバル・イノベーション・パートナー」に選ばれた国は日本だった。PHILE WEBのニュースが当時IFA NEXTの「日本ゾーン」にあふれていた活気を伝えている。
サステナビリティ、あるいはAIやロボティクスのような技術は内容が先進的になるほど手探りで道を進まなければならない場面も増える。ライバルとの切磋琢磨を続けることによって、向かうべき方向の正当性や自社の強みを再確認できることもまたあるはずだ。来年は初めての開催から100周年を迎えるIFAで、多く日本の企業やスタートアップに出会えることを、筆者はひとりのテック・ライターとして期待したいと思う。
■日本企業はヤマハやAVIOTが一般ブースを出展
IFAは2020年に始まった新型コロナウイルス感染症によるパンデミックのあおりを受けて、2020年はデジタルとリアルのハイブリッド開催になり、そして2021年は開催中止を余儀なくされた。2022年はリアルイベントを開催したが、筆者は足を運ばなかった。
果たして今年のIFAは以前のような盛り上がりを取り戻しているのだろうか。筆者は心配しながら、2020年の秋に開港したベルリン・ブランデンブルグ国際空港に降り立った。ところが始まってみれば拍子抜けするほど、IFAの期間中はメッセ・ベルリンの会場に以前と同じ熱気があふれていた。
日本から参加したパナソニック、ソニーやシャープが一般来場者に向けてブースを開放していなかったことはとても残念だったが、それでもヤマハやAVIOTなど日本から出展した企業のブースを通りがかるたび、多くの来場者が訪れているさまを目にした。今年のIFAに日本から出展したすべての企業に大きな収穫があったことを願いたい。
■企業が追求する「サステナビリティ」はコンシューマーの期待に沿っているのか?
今年、IFAに出展した多くの企業は「サステナビリティ」をテーマに掲げて、各社の製品やサービスの特徴を紹介した。サステナビリティという英語を日本語に直訳すると「持続可能性」という意味になる。ものづくりにおける省エネを徹底したり、環境にやさしい素材の開発をして、企業のサステナブルな取り組みを評価することもできるが、IFAに訪れる一般のコンシューマーやトレードビジターの関心の目はもっと違うところに向けられているのではないかと筆者は感じた。
IFAを主催するIFA ManagementのCEOとして新しく就任するリーフ・リンドナー氏に、欧州の人々がなぜこれほどまでサステナビリティに関心を寄せるのか、見解を聞いた。
「昨今ドイツでは世界情勢の影響により、エネルギーコストの高騰という課題が企業の経営にだけではなく、一般の人々の生活にも重くのしかかっています。政府もサステナブルな経営やものづくりに力を入れる企業の取り組みを奨励しています。私の感覚では、特に今年に入ってからコンシューマーの間にもサステナブルな製品やサービスへの関心が高まっていると感じます。それどころかいまでは、いかに技術や使い勝手が優れている製品やサービスであろうとも、サステナブルでなければコンシューマーに見向きもされません」
「サステナブル」とは様々な意味に捉えることができる言葉だ。コンシューマーがいま強い関心を向けるサステナブルな商品とは、地球環境にやさしいだけでなく「家計にもやさしい」商品なのだとリンドナー氏が続ける。
「いまドイツの政府はヒートポンプや風力発電を積極的に活用して、エネルギーを国内で自給自足しながら、将来に向けてエネルギーのコストを下げるための土台を整えています。これは絶対に必要な取り組みですが、一方ではものづくりを生業とする企業もまたリサイクルマテリアルの活用などを積極的に推進して、ユーザーが楽しみながら長く使える製品、今までと変わらない価格で手に入れられる製品をつくることが求められています」
「来場者もまた、各社のサステナブルな取り組みが、自分たちの生活に対して、どのように具体的なメリットをもたらしてくれるのか注目しています。今年のIFAに出展した企業は、それぞれが掲げるサステナビリティの旗印がコンシューマーの期待にマッチしているのか、フィードバックが得られたのではないかと私は思います」
■IFAはスタートアップが進むべき道を確認できる場所
コンシューマーエレクトロニクスの製品とサービスが成熟期を迎える一方で、今年のIFAではAIやロボティクスの先進技術を活用して「まったく新しいもの」を生み出そうとするスタートアップの勢いにも触れることができた。
イベントが開催される期間、会場となるメッセ・ベルリンには世界各国の先端テック企業やスタートアップを集めて「IFA NEXT」というイベントが併催される。筆者は先に、IFA NEXTに集まった欧州スタートアップのレポートをPHILE WEBに寄稿しているが、アジアは韓国から沢山のスタートアップがIFA NEXTに参加した。
それぞれに手がけるプロダクトやサービスは多様性に富んでおり、会場に訪れた来場者は韓国のテクノロジーの勢い、あるいはスタートアップの存在感に少なからぬインパクトを受けたはずだ。
振り返れば2019年に、初めてIFA NEXTの「グローバル・イノベーション・パートナー」に選ばれた国は日本だった。PHILE WEBのニュースが当時IFA NEXTの「日本ゾーン」にあふれていた活気を伝えている。
サステナビリティ、あるいはAIやロボティクスのような技術は内容が先進的になるほど手探りで道を進まなければならない場面も増える。ライバルとの切磋琢磨を続けることによって、向かうべき方向の正当性や自社の強みを再確認できることもまたあるはずだ。来年は初めての開催から100周年を迎えるIFAで、多く日本の企業やスタートアップに出会えることを、筆者はひとりのテック・ライターとして期待したいと思う。