ビクター、光学ユニットからレンズまで新設計の世界最小・ネイティブ 4Kプロジェクター「DLA-Z7」

JVCケンウッドは、ビクターブランドより光学ユニット／レンズ／回路基板まで新設計を施すことで世界最小サイズを実現した、“ネイティブ4K”対応の4Kプロジェクター「DLA-Z7」を11月下旬に発売する。価格は1,100,000円（税込）としている。カラーはブラックのみ。

DLA-Z7は、同社のフラグシップ・8Kプロジェクター「DLA-V900R」にも実装されている、独自開発の第3世代・ネイティブ4Kデバイス「D-ILA」（0.69型／4,096×2,160）を搭載。新技術によって液晶の配向制御性を向上させ、同時に画素の平坦性も高めたことで、ネイティブコントラスト 80,000：1を実現している。さらに、製造プロセスを見直すことで、画面内の均一性を改善することで、高品位な映像表現が可能だという。色域については、DCI比で98％をカバーする。

今回、光学ユニットをはじめ、レンズから回路基板などの設計をゼロから見直すことで、大幅な小型化を実現したことで、ネイティブ4K対応プロジェクターとして世界最小サイズを成し得たことが大きなトピック。「ほぼ全ての部品と設計を見直しており、基本的に一度設計されたら変更することのない光学ブロックのところも変更し、映像の処理からD-ILAデバイスの駆動回路まで初めてワンチップ化し、基板やシャーシ、さらにはレーザー光源ユニットまで新規に設計することで、ネイティブ4Kプロジェクターとして世界最小サイズを実現している。我が社の意欲モデルだ」と、ビクター担当者は説明する。

2022年に発売された同社の最小サイズモデル「DLA-V50」と比較して約35％の体積を削減。また2017年にリリースされた4Kプロジェクター「DLA-X990R」とほぼ同等サイズであり、他社のネイティブ4Kプロジェクターと比較してもサイズがコンパクトなため、安心して置き換えることができるとアピールしている。

新設計レンズは、11群15枚・80mmという大口径レンズを投入しており、4Kによる高解像度を忠実に再現できるという。駆動は電動仕様で、ズーム（1.6倍）／フォーカス／シフト（上下70％／左右28％）をカバー。画面投写サイズは60 - 200型まで対応しており、100型（16:9）を2.98mで投写できるという短焦点化も叶えている。併せて、シネマスコープサイズのスクリーンを使用する際に便利な「レンズメモリー機能」も搭載しており、柔軟な設置性も成し得ている。

光源にはブルーレーザーダイオードを使用した独自のレーザー光源技術「BLU-Escent」（Laser Phosphor 165W）を搭載しており、輝度は2,300ルーメン（ANSI）、約20,000時間の光源寿命を実現する。また、電力効率を高めていることも特徴で、有効電力あたりの明るさが従来モデルと比較して最も効率が高く、省電力化も改善している。

レーザーダイナミック光源制御も可能なため、光出力の制御を瞬時に行えることもメリット。従来のアパーチャー方式と比較して、遅延の少ない明るさ調整ができ、全暗のシーンでは完全に光源を絞ることで圧倒的な黒表現が可能。レーザー出力は101段階で制御でき、視聴環境や映像のターゲット輝度に合わせた細かい設定にも対応する。

HDR機能も多彩であり、独自機能として第2世代「Frame Adapt HDR」を搭載。同社が培ってきたHDR映像処理技術を活かし、シーンやフレームに応じたトーンマッピングのアルゴリズムを見直し、トーンカーブ自体を最適化することで、白飛びを抑えながらも明るく、色鮮やかでダイナミックレンジの広い映像表現を叶える機能だ。画質モードでは、「Frame Adapt HDR1」と「Frame Adapt HDR2」の2種類を用意している。

ネイティブ4K「D-ILA」デバイスのダイナミックレンジを最大限に発揮するための機能として、暗部階調を拡張する「Deep Black Tone Control」も採用しており、従来以上のリアルな暗部表現によって、コントラスト感を高めた映像を表現できるという。

またHDRレベルを自動検出する際に、コンテンツ編集に用いるモニターの最大輝度情報を示すメタ―である「DML（Display Mastering Luminance）」も採用されており、最適な明るさによるトーンマッピングを可能としている。HDRフォーマットは、HDR10+／HDR／HLGをフォローする。

上位機種で採用されていた、SDRコンテンツを色彩豊かに再現する新しい画質モード「Vivid」モードも追加で導入されているのも特徴だ。従来の「Natural」モードは、色温度6500に設定され、忠実なsRGB表現を目指しているため、スタンダードな画作りであるが“少し物足りない”という印象を与えることもあったというが、「Vivid」モードによって人間の記憶色に近い感覚の画作りを施すことで、華やかさとインパクトを兼ね備えた映像を実現するとしている。

「Vivid」モードの細かい調整内容として、明るさを維持しながらのRGBの色域拡張、濃淡を際立たせたカラーマッピング調整、人間の一般的な色彩記憶に合わせた肌色調整、そして明暗差を付けることで立体感を高めるガンマ調整を行っている。特にアニメーション作品との相性がよく、音楽ライブやスポーツなどのビデオコンテンツでも大きな効果を発揮するという。

「Vivid」モードについて、開発担当者は「Rec.709の映像コンテンツにおいて、出来るだけ映画館のような広い色域で表現できないのか、という発想から『Vivid』モードは生まれている。アニメであればセル原画に近付けようと試み、赤や緑の色ピークを伸長し、黄色などの色表現を高めることで、肌色や緑をリッチトーンで再現できるように取り組んできた」と技術の特徴を語ってくれた。

映像制作者の意図を忠実に再現することを目指してUHD Allianceが開発した映像モード「FILMMAKER MODE」も導入「FILMMAKER MODE」がオンの状態では、各種画質調整機能がオフになり、色温度はD65（6500K）に設定されるため、映画やドキュメンタリー作品などの、マスターに忠実な映像再現が可能だという。

DLA-Z7では、シネマフィルターの採用によって、DCI-P3の広色域を実現。4K UHD BDのHDRコンテンツにおいて、グラデーションを滑らかに表現し、真紅の薔薇や新緑の木々の対比も色鮮やかなに描き分ける。独自の映像処理アルゴリズムでフォーカス感を鮮明に捉え、奥行き感を表現する「Multiple Pixel Control」も搭載されている。

倍速回路「C.M.D（Clear Motion Drive）」は非搭載だが、黒挿入モードを備えている。また、高解像度表示技術「8K/e-shiftX」は非搭載となっているが、処理回路による基板サイズ、放熱のための筐体スペースを確保しなくて済む分、小型化に寄与していると明らかにした。

今回、ライトなユーザーにとっても使いやすくしたいという意向の基、使用感を高める仕様としてGUIも改良している。トップに「画像設定」「HDMI設定」「設置設定」といった3つの入り口を設けており、ユーザーの目的にあったメニュー項目に進みやすくなっている。

最新モデルのトピックであるコンパクト設計は、サステナブルな面にも配慮。DLA-V50と比較して、消費電力は約33％低減され、梱包寸法は約30％、本体のプラスチック使用量は18％削減されており、製造時／輸送時／廃棄時といった面で環境負荷の低減に貢献しているという。

主な入力端子としてHDMI×2基（HDMI 2.1/HDCP 2.3 32Gbps）、USB Type-A×1基（ファームアップ用）、LAN×1基を搭載。最大入力信号は4K/60p（1080i入力は非対応）まで、3D出力は非対応としている。

前方吸気／後方排気を新たに採用しており、後方約50mmの設置も可能。消費電力は280W（待機時1.8W）、騒音は23dB、外形寸法は450×181H×479Dmm、質量は14.8kg。