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公開日 2012/11/12 10:05

オーディオ機器として突き詰められたデジタルプリメインの入門機・パイオニア「A-50」を岩井 喬が聴く

取材・執筆/岩井 喬
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新素子採用デジタルアンプ機ながら、
根本からオーディオ機器として突き詰められたモデル


「A-10」「A-30」と価格帯やフロントフェイスのデザインを一新したパイオニアの新たなプリメインアンプシリーズに中級機となる「A-50」と「A-70」が加わった。「A-70」については別の機会に譲るとして、本項では「A-50」にフォーカスを絞って紹介することにしよう。

A-50


まず「A-50」が「A-10」「A-30」と大きく違う点として、「A-70」とともに同社のAVアンプでも用いられているIR社製“Direct Power FET”を用いたデジタルアンプ構成であることが挙げられる。信号ラインやグラウンドパターンを太くして低インピーダンス化を図るとともに、素子の冷却も基板と必要最小限の小型ヒートシンクで行うためより効率を高め、不要な振動も抑えた。

一般的にデジタルアンプ製品はシャーシを小型化し、省スペースを図るものが多い。しかし本機ではクラスDアンプ素子を用いながら地に足のついた安定感あるサウンドを指向した結果、アナログアンプと変わらない規模を必要とするシステム構成となったのである。

A-50の内部構造

能動的にデジタルアンプ素子を活かすため、部品や基板を低位置に配して低重心化を実施し制振化を進め、シャーシに対して基板を水平におくことで強いグラウンドとアースポイントの最適化も実現したという。

A-50の背面部

デジタルアンプのため放熱が少なく、天面のヒートシンクも小さい。結果、振動による影響低減につながるという

またプリ部とパワー部で巻き線を分けた電源トランスやプリ、パワー、電源部をシャーシ内で分けて各ブロックをシールドし、筺体強度を向上させたセパレート構造やチップフィルムコンデンサー、オーディオ用リレー、真鍮製スピーカーターミナルなど、根本のつくりからオーディオ用モデルとして突き詰めて考えられた設計となっている。フォノ入力はMM専用で、パワーアンプとしても活用できる“パワーアンプ・ダイレクト”も用意された。

バランスの整ったサウンド傾向
鮮やかで瑞々しい質感描写力を持つ


試聴にはSACDプレーヤーに同じパイオニアの新製品である「PD-70」、スピーカーにはエラックの「BS243BE」を接続。素直で解像感高く、音像にはほんのりと肉付きを持たせたバランスの整ったサウンド傾向であり、鮮やかで瑞々しい質感描写力を持っている。

クラシックでは広がり良く、ヴァイオリンのタッチは繊細に描き出す。音場の表現も価格以上の安定感を見せており、定位の前後感も的確に見通せる。分解能の高いサウンドでもあり、オーケストラの楽器は粒立ち良くほぐれ、ホールトーンはウェットで上品な響きを聴かせる。低域の制動感も高く、S/Nの良いすっきりとした心地よい余韻が味わえた。

つづいてジャズにおいては音像の中域成分を厚み良く描写し、ピアノはクリアに、ウッドベースは胴鳴りを弾力良く引き締め、爪弾きのエッジ感を残す。ロックでは軽快なエレキのリフに対し、リズム隊は押し出しの圧力を持ちながら輪郭をスマートに引き締め見通し良い音場を作り出している。ボトムの肉付きを残したボーカルは口元をハリ良く描く。

DSDディスクからの再生ではボーカル表現がより鮮やかで清々しくクールなエッジと口元の潤い感をバランス良く描写。楽器それぞれの分離の良さも格別で奥行きや定位、音像の立体感を付帯感なくストレートに表現してくれた。

■試聴ソース
○クラシック
・諏訪内晶子『シベリウス&ウォルトン:ヴァイオリン協奏曲』(ユニバーサル・SHM-SACD:UCGD-9007)
○ジャズ
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー(ユニバーサル:UCCU-9407)
・『Pure2 〜Ultimate Cool Japan Jazz〜』〜届かない恋、夢であるように(F.I.X:KIGA10)
○ロック
・デイブ・メニケッティ『MENIKETTI』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(DREAM CATCHER:CRIDE35)
○DSDディスク
・『Pure2 〜Ultimate Cool Japan Jazz〜』&『キズナ/Suara』(DSDマスターデータ)
・『音展』ライブレコーディングイベントにおける長谷川友二氏のギター弾き語り(ウッドベース:土井孝幸氏、筆者によるDSD録音)

(岩井喬)

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