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公開日 2013/01/29 11:06

JVC「DLA-X75R」の補正&調整機能で究極の4K映像を観る!

取材・執筆/鴻池賢三
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ホームシアターの世界で、今や確固たる地位を確立したJVCプロジェクター。他社とは一線を画す映像技術のみならず、豊富かつ高精度な補正&調整機能も見逃せないポイントだ。JVCプロジェクターが持つ補正&調整機能を使い、究極の4K映像を堪能する方法をレポートする。

●第2世代4Kモデル誕生
信号処理が大幅に進化! 4K映像に磨きをかけた

ミドルからハイエンドのプロジェクター市場で圧倒的な存在感を示すJVC。その人気の源泉は、独自デバイスD-ILAの高いネイティブコントラスト、レンズを含めた光学系の洗練度、映画への造詣の深さが読み取れる画作り、そして卓越した画質力にある。

2012年秋に発表された4K対応の新モデル群は、新しくなったe-shiftデバイスや最新世代のMultiple Pixel Control(マルチプルピクセルコントロール、以下MPC)が搭載され、4K映像に更に磨きがかかった。特にMPC Levelの項目では、プロファイルの拡大や効果の適応範囲をリアルタイムで表示する映像解析画面の搭載など、マニアも唸る豊富なカスタマイズが楽しめるようになった(詳細は「AV REVIEW」2013年2月号の特集を参照されたい)。

DLA-X95R

DLA-X75R


DLA-X55R(ホワイト)

画素ずらしを行うe-shiftデバイス(写真上)とD-ILAデバイス(写真下)。D-ILAデバイスに変更点はないが、e-shiftデバイスの平面性・透過率を高め、4K映像の高画質化を実現した

●補正&調整機能の意義
PJが備える画質力を最大限に引き出すこと

プロジェクター単体での画質向上と合わせ、機器本来の性能を引き出すための機能として、JVCが数年前から力を入れているものに「補正機能」がある。JVCでは、2009年モデルに「スクリーン補正」機能、2011年モデルに「オートキャリブレーション」機能、そして2012年モデルに「環境設定」を搭載してきた。

補正機能がなぜ必要なのか。プロジェクターの画質を磨けば済む話ではないのか、そう考えるユーザーもいるはずだ。しかし、プロジェクターをただ設置して投写しただけでは、機器本来の性能が100%出ているとは限らない。

まず、プロジェクターの投写光を受け止めるスクリーンの特性に注目して欲しい。実は、同じ白に見えるスクリーンも、可視光の全ての帯域を均等に反射しているとは限らない。プロジェクターから投写される光の成分にもRGBを中心にピークがあり、ミスマッチを起こすと色味が変化する。これまで「プロジェクターとスクリーンの相性」の一言で片付けられるケースが多かったが、科学的根拠があり対策も可能になっている。

さらにスクリーン投写では「視聴環境」、すなわち「部屋」が大きな変動要素となる。映像は「光」である。我々が見ている映像装置の画は、常に周囲の光の影響を受け、あるいは相対的に見え方が変化している。照明の残る部屋はもちろん、迷光も映像に影響を与える。特に白い壁紙の場合、迷光がより多くなることで、投写映像の色は洗い流され薄く見える。そして最後に、視聴距離による見え方の変化も存在する。スクリーンに近いと暗部がよく見えて黒が浮いたように、逆に遠ざかると黒が潰れ気味にみえる傾向がある。

そして、プロジェクター自体にも変動要素がある。プロジェクターはあらかじめ工場で調整された上で出荷されているが、その調整は一定の条件を前提としている。ユーザーが設置位置や投写距離に応じて、ランプ輝度、レンズシフトやズームを調整すれば、収差による画素ズレ、色味の変化などが起こりうる。稼働後は、ランプの消耗に伴う色味の変化も避けられないのだ。

このような諸問題を解決し、プロジェクターが備える画質力を最大限引き出すのが前述した各種補正機能なのだ。4Kや3Dなどといったトピックに比べれば、正直「地味」ではある。しかし「ユーザーまかせ」が当たり前とされてきた部分に対して、1つ1つ対策を講じてきたブランドはこれまで無く、JVCプロジェクターが持つ補正機能の意義は非常に大きい。

やや前置きが長くなってしまったが、今回はJVCプロジェクターの2012年モデルを使い、最上位の画質を堪能するべく各補正機能をレポートしていこう。


●2012年モデルの機能
誰もが手軽に補正できる環境設定を新搭載

先程述べたように、JVCのプロジェクターには本来の性能を引き出すための様々な補正機能が搭載されている。

設置状態における投写光を測定しBT.709を始めとする各種基準、あるいは所望のターゲットに色温度、ガンマ、色域を自動で追い込む「オートキャリブレーション」機能。視聴距離や環境光を考慮して映像調整のパラメーターを最適化する「環境設定」。スクリーンの分光特性を把握し逆補正を掛けることでスクリーンのキャラクターを打ち消す「スクリーン補正」機能などだ。これらはモデルによって機能の有無、あるいは内容に違いがあるので、ここで少し整理しておこう。
 

4Kプロジェクターのハイクラスに位置するDLA-X75R(以下X75R)とDLA-X95R(以下X95R)は、全ての補正機能を有する。中でも、センサーを用いたオートキャリブレーションが最大の特徴だ。オートキャリブレーションを利用するには、光学センサーを別途入手する必要があるが、センサーの実売価格は15,000円程度だ。また、分析とコントロールを行うPCソフト「Projector Calibration Software」はJVCから無償で提供される。マニアやインストーラーが使用するような、高価な測定器やソフトウェアが不要な点も大きなメリットである。

環境設定はセンサーを用い、実際にスクリーン周辺の光を測定して補正する高精度な方法と、プロジェクターのGUI上でスクリーンサイズ・視聴距離・壁の色を入力する簡易的な方法の2種類が存在する。

スクリーン補正も精度に違いがある。X75RとX95Rでは、世界中で販売されているほとんどのスクリーンを網羅するデータ(105種類!)を収録し、使用するスクリーンに最適な補正値を呼び出すことができる。DLA-X55R(以下X55R)のスクリーン補正は、オフ/A/B/Cの4タイプに分類された補正値から、各スクリーンに適した設定を対照表から選択する仕組みだ。

端的に言えば、X75RとX95Rは実測を伴う精度、X55Rは本体だけで設定が済む簡便性がポイントと言える。X55RはX75Rなどに対して簡易版と言えるが、世に存在するプロジェクターの多くは同様の機能を備えておらず、調整はユーザーの知識や経験頼りである。その点、X55Rでは、設定項目に従って入力するだけで、一定の成果が得られるのはアドバンテージと言える。

では実際に、それぞれの機能がどのような働きをするのかを詳しく見て行こう。


●「スクリーン補正」機能
スクリーンの分光特性を「ゼロ」に戻す作業

まず、X55R、X75R、X95Rに共通に搭載されている「スクリーン補正」と「環境補正」から見て行こう。


「スクリーン補正」は、スクリーンの分光特性の違いによる色のシフトを解消するものである。分光特性とは光の成分であり、プロジェクターの場合は通常、光の三原色であるRGBにピークがある。プロジェクターから投写されたRGBが同じ比率で反射すれば問題はない。一方の幕面は、同じ白に見えても反射時の分光特性がフラットとは限らない。

オーディオに例えると、アンプの周波数特性がフラットでも、スピーカーの特性に凹凸があれば、結果にその凸凹が現れる。プロジェクターの場合、RGBの三原色を利用している原理上、スクリーンの分光特性に凸凹があると色のバランスが崩れやすい。

その点、JVCのスクリーン補正機能は、世界で市販されているスクリーン生地を収集して分光特性を計測し、膨大且つ詳細な補正値を持つに至った。つまり、分光特性に凹凸があるスクリーンに投写しても、スクリーン補正を適用すると、分光特性がフラットなスクリーンに投写したかのような、正確な色再現が得られるのだ。スピーカーの周波数特性の乱れを、イコライザーで補整してフラットに整える様をイメージすると理解し易いだろう。「スクリーン補正」は何かを加えるのではなく、「ゼロ」に戻す作業なのだ。


●「環境補正」機能
視聴距離に応じた最適化と迷光の影響を無くすこと

X55R、X75R、X95Rに共通のGUIで行える環境補正には、視聴距離に応じた映像の最適化と、迷光の悪影響を打ち消す2つの機能がある。


仕組みはこうだ。パラメーターとしてスクリーンサイズと視聴距離を入力する。JVCの研究によれば、視聴距離が短い場合は暗部が見えやすく黒が浮き気味に、遠い場合は暗部が潰れ気味に感じる傾向があるという。

そこで、実際に複数の被験者による実験を行い、理想的な3Hでの見え方を基準とし、距離による見え方の違いを解消する黒レベル、コントラスト、ガンマ値を導き出したという。これにより、設置環境で視聴距離が変わってしまう場合でも、理想的な視聴距離で見た映像が得られるのだ。

壁色は「Light」または「Dark」を選択する。Lightは一般的な白色、Darkは暗めの色調や光を反射しにくい素材を想定している。Lightに設定すると迷光を加味し、色は適度に濃く調整される。薄く洗い流されがちな色も、迷光の無い暗室で見るのと同等のルックに仕上がる。


●「キャリブレーション」機能
より忠実に製作者が作った画を引き出すことができる

JVCプロジェクターが有する補正機能の中で、その最たるものがオートキャリブレーションだろう。2012年の新ラインナップでは、最上位のX95Rに加えてX75Rにも標準装備された。


キャリブレーションの概要を説明すると、対応する市販の光学センサーでプロジェクターからの投写光を受け、専用ソフトウェアをインストールしたパソコンで解析、その結果をもとにプロジェクターを自動調整するというものである。スクリーンからの反射光でなく、プロジェクターからの光をセンサーが直接受けることで、比較的安価なセンサーで高精度な測光を実現できるのだ。また、センサーの感度特性から高精度な部分が使えるよう、アプリケーションが受光量から適正なセンサーの位置を指示する仕組みも備える。

X75RとX95Rのオートキャリブレーションは、味付けする作業ではなく、設置状態に応じて調整したレンズシフトやズームによって起こる色味の変化を理想的な「ゼロ」に戻す作業だ。この「ゼロ」に戻した投写光を、スクリーン補正で反射特性を「ゼロ」に整えたスクリーンに投影することで、設置や環境による色味の変化が排除でき、製作者の意図した映像を忠実に引き出すことができる。

なお、キャリブレーションのターゲットは、ユーザーの用途や好みに応じて変更することも可能だ。BDなど制作者が見ていたであろう画調を忠実に再現したいなら、HDTVの制作基準をターゲットに、色温度は6500K、ガンマ2.2、色域はBT.709に合わせればよい。CG作品をデジタルシネマのように、より鮮やかに楽しみたいなら、デジタルシネマの広色域をターゲットにする。

肝心なのは、今自分が見ている映像がどのような状態にあるのか定量的に把握することと、目指すターゲットにきちんと沿った調整ができるかどうかである。キャリブレーションの是非が話題になることもあるが、キャリブレーションは映像の土台を平らにする作業であり、好みの調整を否定するものではないのだ。

キャリブレーションが難解な知識や経験が無くても高精度に、そして自動かつ短時間で行えるのは画期的であり、他社には無いJVCプロジェクターならではの機能といえるだろう。


●PJ本来の画を観ているか?
機能や設置環境に向き合い最上の画を追及して欲しい

プロジェクターが4K時代に突入した今、ユーザーの画質へのこだわり、本物へのこだわりは一層増しているに違いない。しかしプロジェクター本来の性能を眠らせたままでは、本物を味わうことも、そして映画に込めた制作者の意図を味わうこともできないはずだ。

いま目前に映しだされたプロジェクターの画は、本来の性能を引き出せているか? 是非一度、プロジェクターが持つ機能や設置環境に向き合い、最上の画質を追及して欲しい。

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