公開日 2014/08/27 17:40
見えてきた「リモート視聴」の課題 ー 他社製機器とアプリで接続できない理由とは?
<山本敦のAV進化論>第22回
今年の2月に次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)が発表した「デジタル放送受信機におけるリモート視聴要件 Ver1.0」(関連ニュース)。その「リモート視聴」の技術要件に従って、ソニーのBDレコーダーが、自宅で受信・録画した放送をインターネット経由で宅外へ転送し、視聴できる機能アップデートを行った(関連ニュース)。続く6月にはパナソニックがリモート視聴に対応するiOSアプリ「Panasonic Media Access」をリリース。録画対応テレビとBDレコーダーの一部機種を対象に、リモート視聴が楽しめる機能を追加した(関連ニュース)。
スマートフォンやタブレットなどモバイル機器を使い、テレビ番組をより自由に楽しめるようになるリモート視聴の登場でかなり便利になったはずなのだが、実際のところ、まだあまり注目が集まっていないようにみえる。
その原因はいくつか考えられる。まずは、まだリモート視聴の機能に対応している製品数が限られ、ユーザー数が少ないからという理由がひとつあるだろう。
リモート視聴を楽しむためにはインターネット環境が必要だが、外出先で利用する際にはLTEや3Gのセルラー回線が便利だ。ところがセルラー回線を使ったリモート視聴を行うと、データ通信料制限にすぐ到達してしまう。ソニーのレコーダーで、仮にテレビ番組をLTE/3G回線経由でリモート視聴した場合、720Pのモードでは1時間に1.47GBのデータ量を使ってしまう。通常の携帯キャリアが提供する標準的なLTEサービスでは、1ヶ月間のデータ通信量が7GBを超えると128kbpsに通信速度が制限される。7GBには720Pでトータル4時間30分を視聴すると到達してしまう計算だ。これではセルラー環境下で気兼ねなく活用するというわけにはいかない。
ほかにも、リモート視聴でコンテンツを再生する際にはチャプタースキップが使えなかったり、レコーダーに録画したコンテンツを遠隔地からモバイル端末にダウンロードし、後から見るという使い方も現時点ではできないなど、NexTV-Fの視聴要件によって使い勝手が制約を受けている部分がある。筆者としては、そもそもメーカーがリモート視聴の便利さをユーザーへ十分にアピール出来ていないのではと感じている。
■DLPAが「リモートアクセスガイドライン2.0」を公開
一方で8月に入ってから、リモート視聴に関連する新たな動きがあった。DLPA(デジタルライフ推進協会)が「リモートアクセスガイドライン2.0」を公開し、外出先から自宅のNASに保存した録画番組に加え、テレビやレコーダーに直接録画した番組や放送中のテレビ番組をリモート配信・視聴できる機能を盛り込んだことを明らかにしたのだ(関連ニュース)。
2010年にアイ・オー・データ機器、デジオン、メルコホールディングスのPC周辺機器関連3社が設立したDLPAは、現在ではソフトウェアメーカーや通信キャリアを含む全13社が会員として参加しながら、デジタルライフの普及・促進と啓発活動、および基準・規格・ガイドラインの提案などを行っている。
2013年の1月に策定された同ガイドラインの「DLPAリモートアクセスガイドライン1.0」では、録画された番組を宅外に配信できるNASなどのサーバー機器はチューナーを持たないものと規定され、テレビやレコーダーで録画した番組をいったん対応するNASに転送することが必要だった。バッファローやI-Oデータからは2013年に対応するNASが発売されている。
最新のガイドライン「2.0」では、NexTV-Fが策定した「リモート視聴要件」に準拠し、テレビやレコーダーなどチューナーを内蔵する録画機で受信している放送中のテレビ番組や、HDDに録画された番組をリモート配信できるようになった。機能や仕様はDTCP+に準拠している。だが、現在のところまだDLPAガイドラインに対応するレコーダーが存在していないこともあり、具体的に何がどんなふうに便利になるのかがわかりづらい。
今回はDLPAを訪ね、技術ワーキンググループ長を務める(株)デジオンの三阪英一氏、ならびにDLPA総務委員会 委員長の土田拓氏、事務局長の吉見修氏に話を聞いた。
■DLPA新ガイドラインの最も大きなメリットとは
まず、「DLPAリモートアクセスガイドライン2.0」が策定された事で実現されるメリットについて、改めて整理しておこう。
スマートフォンやタブレットなどモバイル機器を使い、テレビ番組をより自由に楽しめるようになるリモート視聴の登場でかなり便利になったはずなのだが、実際のところ、まだあまり注目が集まっていないようにみえる。
その原因はいくつか考えられる。まずは、まだリモート視聴の機能に対応している製品数が限られ、ユーザー数が少ないからという理由がひとつあるだろう。
リモート視聴を楽しむためにはインターネット環境が必要だが、外出先で利用する際にはLTEや3Gのセルラー回線が便利だ。ところがセルラー回線を使ったリモート視聴を行うと、データ通信料制限にすぐ到達してしまう。ソニーのレコーダーで、仮にテレビ番組をLTE/3G回線経由でリモート視聴した場合、720Pのモードでは1時間に1.47GBのデータ量を使ってしまう。通常の携帯キャリアが提供する標準的なLTEサービスでは、1ヶ月間のデータ通信量が7GBを超えると128kbpsに通信速度が制限される。7GBには720Pでトータル4時間30分を視聴すると到達してしまう計算だ。これではセルラー環境下で気兼ねなく活用するというわけにはいかない。
ほかにも、リモート視聴でコンテンツを再生する際にはチャプタースキップが使えなかったり、レコーダーに録画したコンテンツを遠隔地からモバイル端末にダウンロードし、後から見るという使い方も現時点ではできないなど、NexTV-Fの視聴要件によって使い勝手が制約を受けている部分がある。筆者としては、そもそもメーカーがリモート視聴の便利さをユーザーへ十分にアピール出来ていないのではと感じている。
■DLPAが「リモートアクセスガイドライン2.0」を公開
一方で8月に入ってから、リモート視聴に関連する新たな動きがあった。DLPA(デジタルライフ推進協会)が「リモートアクセスガイドライン2.0」を公開し、外出先から自宅のNASに保存した録画番組に加え、テレビやレコーダーに直接録画した番組や放送中のテレビ番組をリモート配信・視聴できる機能を盛り込んだことを明らかにしたのだ(関連ニュース)。
2010年にアイ・オー・データ機器、デジオン、メルコホールディングスのPC周辺機器関連3社が設立したDLPAは、現在ではソフトウェアメーカーや通信キャリアを含む全13社が会員として参加しながら、デジタルライフの普及・促進と啓発活動、および基準・規格・ガイドラインの提案などを行っている。
2013年の1月に策定された同ガイドラインの「DLPAリモートアクセスガイドライン1.0」では、録画された番組を宅外に配信できるNASなどのサーバー機器はチューナーを持たないものと規定され、テレビやレコーダーで録画した番組をいったん対応するNASに転送することが必要だった。バッファローやI-Oデータからは2013年に対応するNASが発売されている。
最新のガイドライン「2.0」では、NexTV-Fが策定した「リモート視聴要件」に準拠し、テレビやレコーダーなどチューナーを内蔵する録画機で受信している放送中のテレビ番組や、HDDに録画された番組をリモート配信できるようになった。機能や仕様はDTCP+に準拠している。だが、現在のところまだDLPAガイドラインに対応するレコーダーが存在していないこともあり、具体的に何がどんなふうに便利になるのかがわかりづらい。
今回はDLPAを訪ね、技術ワーキンググループ長を務める(株)デジオンの三阪英一氏、ならびにDLPA総務委員会 委員長の土田拓氏、事務局長の吉見修氏に話を聞いた。
■DLPA新ガイドラインの最も大きなメリットとは
まず、「DLPAリモートアクセスガイドライン2.0」が策定された事で実現されるメリットについて、改めて整理しておこう。