公開日 2014/12/30 09:33
ビートルズのハイレゾ配信はいつ実現する? 元洋楽ディレクターが徹底分析
様々な記録から予測
2014年はビートルズの日本デビュー50周年だったが、ビートルズのハイレゾ化は実現しなかった。元洋楽ディレクター本間孝男氏はビートルズのハイレゾ化を予測するべく、独占配信を行うアップル、EMIの解体、2009年リマスターの過程など様々な記録から分析。2015年のビートルズハイレゾの行方を占った。
■2014年はビートルズ日本デビュー50周年だった
まもなく2014年も終わろうとしている。今年はビートルズが米国と日本でデビューしてから50周年を迎えた年だ。1964年2月7日、ファンの絶叫の中をケネディ空港に降り立ったビートルズは、わずか2週のあいだで人気テレビ番組「エド・サリヴァン・ショー」に立て続けに3回出演。瞬く間に全米を熱狂の渦に巻き込んだ。約1ヶ月後、4月4日付の音楽業界誌『ビルボード』のシングル・チャートでビートルズは、下記のように1位から5位までを独占した(カッコ内は発売レコード会社)。
・1964年4月4日付 『ビルボード』シングル・チャート
1位「キャント・バイ・ミー・ラヴ」(Capital)
2位「ツイスト・アンド・シャウト」(Tollie)
3位「シー・ラヴズ・ユー」(Swan)
4位「抱きしめたい」(Capital)
5位「プリーズ・プリーズ・ミー」(Vee-Jay)
同じ年の2月、ビートルズは日本でもシングル・デビューを飾る。「抱きしめたい(I Want To Hold Your Hand)」が東芝音工(後の東芝EMI)から発売された。ちなみに本国イギリスでは、ビートルズは1962年10月に『ラヴ・ミー・ドゥ/P.S.アイ・ラヴ・ユー』でシングル・デビューし、さらに1963年3月にファーストアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』を発売している。
■アップルによるビートルズ配信の独占契約
それから半世紀。ビートルズのカタログ(オリジナル全14作品213曲)は音楽ビジネスの範疇にとどまらず、ネットの世界でもキラーコンテンツと化している。
ジョン・レノンやポール・マッカートニーなど、ビートルズ個々のメンバーのハイレゾを楽しめる時代となった一方で、ビートルズはハイレゾ音源が発売されていないばかりか、アップルのiTunes以外はネット販売すらできない。アップルの独占契約のため、デジタル利用に厳しい制限が設けられているのだ。
課金型のストリーミング配信(定額聴き放題の音楽サービス)の最大手であるSpotify(スポティファイ)やPandra(パンドラ)も、ビートルズを流すことはできない。さらにはIT業界の巨人、グーグルやアマゾンもこの問題に頭をかかえている。それぞれクラウドを利用した音楽サービスを提供しているが、問題はビートルズ。音楽やエンタテインメント、さらにはストレージまでもこのアップルの独占契約(2010年11月〜期限不明)が邪魔してサービス開始の障害になっている。
ライバルを尻目にビートルズの独占契約をアップルにもたらした故スティーブ・ジョブズの功績は、iPhoneやiPadに隠れて意外と知られていない。ジョブズが音楽産業においてアップルにもたらしたものをざっと挙げると、以下3点となる。こうしたポイントにも触れながらビートルズの話を進めたい。
1)Appleの商標権(名称とデザイン)をアップル・レコード(Apple Corp)から買い取ることに成功(2007年最終合意)。
2)iTunes Storeを開設(2003年4月)。当時のメジャー5社と交渉、全社のカタログを扱うことに成功。米国だけで年間1,000億円を売上げる世界最大のレコード小売商に育てた。
3)iTunes Storeでビートルズを独占販売する(2010年11月〜)。
■ビートルズの配信はスティーブ・ジョブズの夢だった
少年時代のスティーブ・ジョブズは、熱狂的なビートルズマニアだったという。アップルの社名は、創業者がビートルズファンだから命名したという説もある(ジョブズ自身は明らかにしていない)。そのため企業としてのアップル(当時はアップル・コンピュータ)は、英国のアップル・レコードと商標をめぐり法廷で戦いを繰り返してきた。この商標問題は、米国アップルが莫大な金額を投じて商標自体を買い取るというかたちで決着した。2007年に新聞各紙は「アップルが商標権を総計5億ドル(約590億円)で買い取った」と報じた。
iTunesでビートルズを販売するというジョブズの夢が実現するまで、ここからさらに3年。iTunes Store開設から数えれば、7年7ヶ月の月日が必要だったことになる。
2010年11月14日、アップルは自社のウェブサイト全てを使ってビートルズの配信開始を「明日、いつもと同じ1日が、忘れられない1日になる(Tomorrow is just another day…)」と予告した。それはビートルズを愛しながら、確信犯的にビートルズが設立した会社と戦いを繰り返してきたスティーブ・ジョブズの素直な喜びを表した言葉だった。
■2014年はビートルズ日本デビュー50周年だった
まもなく2014年も終わろうとしている。今年はビートルズが米国と日本でデビューしてから50周年を迎えた年だ。1964年2月7日、ファンの絶叫の中をケネディ空港に降り立ったビートルズは、わずか2週のあいだで人気テレビ番組「エド・サリヴァン・ショー」に立て続けに3回出演。瞬く間に全米を熱狂の渦に巻き込んだ。約1ヶ月後、4月4日付の音楽業界誌『ビルボード』のシングル・チャートでビートルズは、下記のように1位から5位までを独占した(カッコ内は発売レコード会社)。
・1964年4月4日付 『ビルボード』シングル・チャート
1位「キャント・バイ・ミー・ラヴ」(Capital)
2位「ツイスト・アンド・シャウト」(Tollie)
3位「シー・ラヴズ・ユー」(Swan)
4位「抱きしめたい」(Capital)
5位「プリーズ・プリーズ・ミー」(Vee-Jay)
同じ年の2月、ビートルズは日本でもシングル・デビューを飾る。「抱きしめたい(I Want To Hold Your Hand)」が東芝音工(後の東芝EMI)から発売された。ちなみに本国イギリスでは、ビートルズは1962年10月に『ラヴ・ミー・ドゥ/P.S.アイ・ラヴ・ユー』でシングル・デビューし、さらに1963年3月にファーストアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』を発売している。
■アップルによるビートルズ配信の独占契約
それから半世紀。ビートルズのカタログ(オリジナル全14作品213曲)は音楽ビジネスの範疇にとどまらず、ネットの世界でもキラーコンテンツと化している。
ジョン・レノンやポール・マッカートニーなど、ビートルズ個々のメンバーのハイレゾを楽しめる時代となった一方で、ビートルズはハイレゾ音源が発売されていないばかりか、アップルのiTunes以外はネット販売すらできない。アップルの独占契約のため、デジタル利用に厳しい制限が設けられているのだ。
課金型のストリーミング配信(定額聴き放題の音楽サービス)の最大手であるSpotify(スポティファイ)やPandra(パンドラ)も、ビートルズを流すことはできない。さらにはIT業界の巨人、グーグルやアマゾンもこの問題に頭をかかえている。それぞれクラウドを利用した音楽サービスを提供しているが、問題はビートルズ。音楽やエンタテインメント、さらにはストレージまでもこのアップルの独占契約(2010年11月〜期限不明)が邪魔してサービス開始の障害になっている。
ライバルを尻目にビートルズの独占契約をアップルにもたらした故スティーブ・ジョブズの功績は、iPhoneやiPadに隠れて意外と知られていない。ジョブズが音楽産業においてアップルにもたらしたものをざっと挙げると、以下3点となる。こうしたポイントにも触れながらビートルズの話を進めたい。
1)Appleの商標権(名称とデザイン)をアップル・レコード(Apple Corp)から買い取ることに成功(2007年最終合意)。
2)iTunes Storeを開設(2003年4月)。当時のメジャー5社と交渉、全社のカタログを扱うことに成功。米国だけで年間1,000億円を売上げる世界最大のレコード小売商に育てた。
3)iTunes Storeでビートルズを独占販売する(2010年11月〜)。
■ビートルズの配信はスティーブ・ジョブズの夢だった
少年時代のスティーブ・ジョブズは、熱狂的なビートルズマニアだったという。アップルの社名は、創業者がビートルズファンだから命名したという説もある(ジョブズ自身は明らかにしていない)。そのため企業としてのアップル(当時はアップル・コンピュータ)は、英国のアップル・レコードと商標をめぐり法廷で戦いを繰り返してきた。この商標問題は、米国アップルが莫大な金額を投じて商標自体を買い取るというかたちで決着した。2007年に新聞各紙は「アップルが商標権を総計5億ドル(約590億円)で買い取った」と報じた。
iTunesでビートルズを販売するというジョブズの夢が実現するまで、ここからさらに3年。iTunes Store開設から数えれば、7年7ヶ月の月日が必要だったことになる。
2010年11月14日、アップルは自社のウェブサイト全てを使ってビートルズの配信開始を「明日、いつもと同じ1日が、忘れられない1日になる(Tomorrow is just another day…)」と予告した。それはビートルズを愛しながら、確信犯的にビートルズが設立した会社と戦いを繰り返してきたスティーブ・ジョブズの素直な喜びを表した言葉だった。