公開日 2017/08/01 10:00
【製品批評】テクニクス「SU-G30」− 斬新なコンセプトのもとで信号純度を追求したDAC内蔵プリメイン
シリーズ中核を担う“グランドライン”
ネットワークオーディオアンプ
TECHNICS
SU-G30
¥400,000(税抜)
テクニクスのグランドシリーズは、リファレンスとプレミアムの間に位置する新しいシリーズで、同ブランドの中核となる重要な製品が揃う。
「SU-G30」は、DAC内蔵プリメインアンプにネットワーク再生機能を組み込み、プレーヤーとアンプを一台にまとめた多機能なモデルだ。
デジタル音源の再生方法は主に2つ。「ST-G30」と組み合わせる場合はサーバー側でデコードした信号をUSB経由で本機に入力し(もちろんパソコンとのUSB接続による再生も可能だ)、他の一般的なNASの場合はLAN経由で読み出した信号を本機でデコードする。その他に光/同軸のデジタル入力と2系統のアナログ入力があり、後者のうち1系統はMM型のみながらフォノ入力に対応。パソコンやNASを音源に使うなら、本機とスピーカーだけでシンプル&スリムなシステムが完成するわけだ。
ネットワーク再生の長所はそれだけではない。入力からアンプの最終段までアナログ変換を排したフルデジタル処理によって、音質劣化を最小に抑えるという、音質面での重要なメリットを見逃すことはできない。
まず、FidataのNASをネットワークにつなぎ、DLNA再生の音を聴く。
『カンターテ・ドミノ』のハイレゾ音源は、ソプラノに余分な音がまとわりつかず、澄んだ音色が際立つ。音楽の背景に聴こえる暗騒音も含めて、もやもやとした成分が乗らず、くもったガラスをきれいに拭き取ったような透明感がある。オルガンの足鍵盤の音域も音程と音色がはっきり聴き取れるので、アナログレコードで聴き慣れたサウンドとは明らかに一線を画している。
続いて「ST-G30」を本機につなぎ、カーティス・フラーの『ブルースエット』をハイレゾ化した音源を聴く。ホーン楽器は立ち上がりの瞬間に強いエネルギーが乗る。時間を経たアナログ音源からもその事実をあらためて思い知らされるのは、ジャズでもクラシックと変わらず、むしろ違いが分かりやすいと感じた。
ストレージにSSDを採用した「ST-G30」は、どの音にも揺らぎがなく、ビシッとした安定感を引き出す。SU-G30との組み合わせは、澄んだ音で音楽を美しく聴かせるだけでなく、演奏に備わるテンションの高さを引き出す能力が高い。
「SU-G30」のコンセプトはかなり斬新だが、ネットワーク再生機能を組み込む発想は信号の純度を追求する視点から見ても秀逸で、理にかなう。先端技術を駆使してその長所を活かすアプローチに、ブランド価値の再創造を目指すテクニクスの強い意志を読み取ることができる。
Specifications
●定格出力:50W+50W(1kHz、T.H.D. 0.5%、8Ω、20kHz LPF、JEITA)、100W+100W(1kHz、T.H.D. 0.5%、4Ω、20kHz LPF、JEITA)●推奨負荷インピーダンス:4Ω〜16Ω ●周波数特性:LINE=5Hz−80kHz(−3dB、8Ω)、DIGITAL=5Hz−90kHz(−3dB、8Ω) ●入力端子:USB-A×1、USB-B×1、光デジタル×1、同軸デジタル×2、アナログ音声入力(PHONO)、アナログ音声入力(LINE IN)×1、LAN(ネットワーク再生)×1 ●出力端子:ヘッドフォン端子(ステレオ、φ6.3mm) ●消費電力:96W ●外形寸法:430W×98H×424Dmm ●質量:約11.5s
※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」162号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから