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公開日 2017/10/13 19:27

驚異の進化で旗艦機に肉薄 ー モニターオーディオ「Silverシリーズ」のステレオ再生能力を探る

【特別企画】Silver 500/200/50を聴く
井上千岳
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モニターオーディオの中核スピーカーシリーズ「Silver」はこの秋、第6世代へと進化を果たした。多彩なラインナップを誇るSilverから、今回はトップエンドの「Silver 500」と、新しいコンセプトが投入されたスリムモデル「Silver 200」「Silver 50」を選び出して井上千岳氏が試聴。各モデルのステレオ再生をチェックしつつその進化を探った。

MONITOR AUDIO「Silver 6th Series」

先進的な独自ユニット開発を創業以来続けるモニターオーディオ

モニター・オーディオは1972年に創業した英国のスピーカー専門メーカーだ。1980年代後半にいち早くメタル・ユニットの開発に着手し、1991年には世界初として知られるセラミック/アルミ・ウーファーを発表した。このため同社は、“メタル・ユニットのパイオニア”とも呼ばれている。

1999年モニター・オーディオでは、「C-CAM」と呼ばれる画期的なメタル・ユニットを搭載した「Gold Reference(GR)」というシリーズを発表する。C-CAMはアルミ・マグネシウム合金にセラミック・コーティングを施した振動板素材で、軽量・高剛性なうえ、メタル・ユニットの泣き所とされてきた高域共振も巧みに回避している。極めて理想い近い素材として、その後のモニター・オーディオを方向づける原点ともなったのである。

Silverシリーズの第一弾となった「Silver Studio」

GRに続いて開発されたのが、「Silver Studio(SS)」というシリーズである。同じくC-CAMドライバーを搭載しながら、汎用性も追求したコストバリューの高いモデルとして人気を集めた。さらにこの後ベーシックな「Bronze」や、2007年にはフラッグシップの「Platinum」が発表されて、同社の存在感は飛躍的に高まったが、その中核を担ってきたのがSilverシリーズであったと言っていい。モデル数が最も多いことだけを見ても、Silverがいかに重要なシリーズであるかがわかる。そういうポジショニングであるということを、始めに確認しておきたい。

ユニットを含めて全面刷新を行った第6世代Silverシリーズ

新しいSilverシリーズは「G6」と呼ばれる。第6世代という意味で、すでにそれだけのモデルチェンジを行ってきたわけである。このG6はC-CAMなど従来のテクノロジーに加え、上位機種「Platinum II」の技術も色濃く反映された最新の内容となっている。

ドライバー・ユニットは全てC-CAMで統一され、特にトゥイーターにはゴールド・ドームC-CAMが全機種に採用されている。これまではマグネットがフェライトだったが、このシリーズからネオジウムに変わった。磁力を高めるとともに、サイズを縮小してミッドレンジやウーファーとの近接配置を可能にするのが目的だという。

Silver 50のトゥイーター部。印象的なパンチングメタルで覆われている

ゴールド・ドームC-CAMトゥイーターの分解図

ミッドレンジとウーファーは、表面にディンプルを持たせた「RSTドライバー」である。RSTは「リジッド・サーフェス・テクノロジー」と言って、C-CAMが開発された最初から使用されている技術である。振動板の表面に加工を施して、硬度と強度を高める手法だ。これもモニター・オーディオの基幹的な技術だが世代によって加工の形も変わり、ディンプルの大きさを変化させたりリブにしたりしたこともある。このシリーズでは外周から内周ヘディンプルのサイズが徐々に変わる形状としている。

ユニットで大変重要なのが、ウーファー・コーンに装着されたDCF(ダイナミック・カップリング・フィルター)である。昨年登場した旗艦モデル「Platinum II」で初めて採用された技術で、振動板の背後にナイロン製のリングが取り付けられている。そのサイドの通風孔から空気が出入りしてボイスコイルの放熱効果を高め、同時にショックアブソーバーのように働いて余分な高周波エネルギーを吸収し、動作精度を高めるという手法だ。この効果はちょっと見逃せないものである。

Silver 50のウーファー部。周囲がネジ止めされていないのが見てわかるだろう

Platinum IIで開発されたDCF(ダイナミック・カップリング・フィルター)が本シリーズにも採用。上写真はPlatinum IIのDCF

ドライバー・ユニットの取り付けは、背後からボルト1本で引っ張って固定するテンション・ロッド方式である。この方式は2世代前の「Silver RXシリーズ」で開発されてものだが、Platinum IIにも採用されてモニター・オーディオのトレードマークのようになった。

Silver 50の背面部。バスレフポートの形状も最適化されている

Silver 200の分解図。各ユニットは背面まで伸びるシャフトで引っ張ることで固定されている

バッフルには取り付けネジはなく、ユニットのフレームと緩衝材を挟んで接触している。ネジがないためバッフルの幅を、ユニットぎりぎりまで抑えられるという利点もあるし、外観もスマートだ。さらに背後から支えているため、磁気回路の重さでユニットが後方に傾くという現象も生じない。もちろんブレーシングの一部として、キャビネットの強度を高めることにも貢献している。

今回のSilverでは、キャビネットの設計にはイギリス国立物理研究所の協力を得て、レーザー解析が活用されている。このためブレーシングの量や共振点の排除などいっそう適確な処理が可能となり、精度を高めることに成功した。

もうひとつ面白いのがトゥイーターのバッフルで、ネットの延長のように小さな穴が開いている。これもきちんと計算されたものだそうだが、ランダムに見える部分は後ろからふさがっていてデザイン的なものということだ。またフロア型には、アウトリガー・フィートのベースを採用し、安定性を確保している。

次ページシリーズのトップエンドモデル「Silver 500」を聴く

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