公開日 2021/03/22 06:30
“官能美”を体現するラックスマン「L-595A LIMITED」。CDとレコードでその表現力を味わい尽くす
【特別企画】触れる喜びを感じさせる純A級プリメイン
■ラックスマンの真髄ともいえる、純A級のプリメインアンプ
不自由な日々が続き家庭で過ごす時間が増え、よい音楽をよい音で聴くことが平安をもたらしかけがえない喜びであることに、みながあらためて気付いたのではないか。CD、デジタル音楽ファイル、存在感を取り戻したアナログレコード……。ソースの選択肢が増えても、再生の不動の要がアンプだ。ユーザーはそこに単なる増幅機器、システムをつなぐハブ以上のものを求める。
オーディオメーカーに寄せられる要望では、昨今、セパレートよりプリメインアンプを求める上級ユーザーが多いという。セパレートアンプからリターンするケースも少なくないらしい。プリメインアンプは、単にプリアンプとパワーアンプを一筐体にまとめたものではない。システムを統御しユーザーと交流する人格と顔を持った存在なのだ。
昨今のニーズに応えるように昨年はプリメインアンプの力作がオーディオメーカー各社から次々に登場した。その中で、ひときわ強い印象を与えたのが、ラックスマンのL-595A LIMITEDだ。他もそれぞれ優れたプリメインアンプだが、本機には他にないものがある。結論を先に言ってしまうと、“官能美”である。
ラックスマンの真髄のようなアンプだ。品番の意味する所は500シリーズの95番で同社の創立95周年に由来。AはA級とアニバーサリーのダブルミーニングでリミテッドモデル、国内限定300台である。ベテランのオーディオファイルはお気づきと思うが、本機は同社プリメインの名作、1989年のL-570(純A級50W+50W)へのリスペクトとオマージュから生まれた。570シリーズ(L-570、L-570X's、L-570Z's)は、ラックスマン史上最も売れたプリメインアンプとなっている。当時営業として販売に携わり、現在95周年モデルとして本機を企画したのが、現社長の末吉達哉氏である。
外観はリブートだが内容は純A級であること以外別物の同社最前線のアンプである。D-10Xに初搭載された第五世代となるODNF-uをプリメインアンプで初めて採用した。誤差(歪み)検出検出精度を上げ、歪成分のみをフィードバックする完全バランス回路となっている。
ボリュームに新LECUA(レキュア)1000を採用する。同社看板技術の電子制御式アッテネーターだ。本機に搭載された新LECUA1000は、ディスクリート構成でプリアンプと回路を一体化し、経路の最短化と高効率化を達成。1デシステップと11デシステップを組み合わせ0~87dBの88接点となり、非常に精度の高い音量調節機構だ。
信号経路を広げず、音声信号は一ヶ所だけを通過するシンプルな形式に徹することがラックスマンの考え方。フロントパネル操作部に音声信号を一切引っ張らず、位置検出用の電流だけが流れる。ボリュームノブは角度で位置を検出するためにあり、アナログ音声信号を扱わないフライバイワイヤである。プリアンプ回路の出力段にC-900uと同等の大規模なディスクリートバッファ回路を積む。パワーアンプに純度の高い、エネルギー感の高い信号を送り込むことがねらいだ。
銅メッキ鋼板でシールドすることでパワー部からプリ部への飛び込みを防止することができた。アンプ回路と入出力端子を接続するジョイント基板にピールコート基板を採用したことも特筆される。キャパシタンス(静電容量)効果を持つレジスト(被膜)を使わない利が高域の伸びやかさに現れる。
■触る喜びも感じさせる上質な質感。ローズウッドの木箱も美しい
この製品のひとつの真骨頂がデザイン。現代の主流のミニマリズムやシンプルモダン、合理主義へのアンチテーゼである。フロントパネルは上品でクラシックなヘアライン仕上げ。下端部がアルマイトの黒のツートーン。570シリーズはFRPで墨黒のベースだった。そのコンビネーションの対比を活かすべくアルマイトで表現した。角形プッシュプルスイッチは中央が盛り上がったかまぼこ形状でそれにヘアラインを施してシルク印刷した。一個一個がその機能名にしか使えない。何とも贅沢ではないか。
見た目が美しいだけでない。ラックスマンの真骨頂はつまむ、さわる、押す、の触感にある。プッシュスイッチは、押すというより指が何かの引力で吸いつく感じ。押ししろは1mmくらい。節度感があって何とも絶妙だ。ボリュームノブももはや芸術の域。
スピン目の加工も美しいがサイド部は精緻なローレット仕上げ。実際に回してみると、きめが細かくダイレクトなアナログフィール。木箱はプリアンプCL-1000と共通のウォールナット天然木突き板を使用。それにローズウッド色で塗装した。プリアンプCL-1000にない放熱孔があることが違いだ。
L-595A LIMITEDを初めて聴いたのは、昨年9月29日、神奈川県新横浜のラックスマン試聴室であった。アコースティックな音楽とりわけジャズ、ポップスそしてクラシック(オペラ)まで、ボーカルのきめ細やかな表現に感銘を受けた。歌声の個性は歌手の数だけある。艶っぽかったり清楚だったり、温かく包み込む包容力を感じさせたり、逆に冷たく研ぎ澄まされた鋼の響きだったり。歪み、ノイズが少なく広帯域で高解像度の本機は、歌声のワンアンドオンリーなニュアンスをありありと描き出す。それは第一に、本機が歪みやノイズの発生が少ない純A級動作であることに由来する。
同社のリサーチでは、特定の楽器の音色を熟知していてこだわりのある音楽ファンが純A級を求める傾向が強いという。ラックスマンは古くから純A級のプリメインアンプを作り続けている。積み上げた経験とチューニングのノウハウが桁違い。先に挙げた同社最新の技術がA級増幅のピュアネスを支援する。その結果、絵画でいえば、パレットを埋め尽くす中間色の豊富さが生まれる。微妙な音色のニュアンス差で音楽を描く本機である。
不自由な日々が続き家庭で過ごす時間が増え、よい音楽をよい音で聴くことが平安をもたらしかけがえない喜びであることに、みながあらためて気付いたのではないか。CD、デジタル音楽ファイル、存在感を取り戻したアナログレコード……。ソースの選択肢が増えても、再生の不動の要がアンプだ。ユーザーはそこに単なる増幅機器、システムをつなぐハブ以上のものを求める。
オーディオメーカーに寄せられる要望では、昨今、セパレートよりプリメインアンプを求める上級ユーザーが多いという。セパレートアンプからリターンするケースも少なくないらしい。プリメインアンプは、単にプリアンプとパワーアンプを一筐体にまとめたものではない。システムを統御しユーザーと交流する人格と顔を持った存在なのだ。
昨今のニーズに応えるように昨年はプリメインアンプの力作がオーディオメーカー各社から次々に登場した。その中で、ひときわ強い印象を与えたのが、ラックスマンのL-595A LIMITEDだ。他もそれぞれ優れたプリメインアンプだが、本機には他にないものがある。結論を先に言ってしまうと、“官能美”である。
ラックスマンの真髄のようなアンプだ。品番の意味する所は500シリーズの95番で同社の創立95周年に由来。AはA級とアニバーサリーのダブルミーニングでリミテッドモデル、国内限定300台である。ベテランのオーディオファイルはお気づきと思うが、本機は同社プリメインの名作、1989年のL-570(純A級50W+50W)へのリスペクトとオマージュから生まれた。570シリーズ(L-570、L-570X's、L-570Z's)は、ラックスマン史上最も売れたプリメインアンプとなっている。当時営業として販売に携わり、現在95周年モデルとして本機を企画したのが、現社長の末吉達哉氏である。
外観はリブートだが内容は純A級であること以外別物の同社最前線のアンプである。D-10Xに初搭載された第五世代となるODNF-uをプリメインアンプで初めて採用した。誤差(歪み)検出検出精度を上げ、歪成分のみをフィードバックする完全バランス回路となっている。
ボリュームに新LECUA(レキュア)1000を採用する。同社看板技術の電子制御式アッテネーターだ。本機に搭載された新LECUA1000は、ディスクリート構成でプリアンプと回路を一体化し、経路の最短化と高効率化を達成。1デシステップと11デシステップを組み合わせ0~87dBの88接点となり、非常に精度の高い音量調節機構だ。
信号経路を広げず、音声信号は一ヶ所だけを通過するシンプルな形式に徹することがラックスマンの考え方。フロントパネル操作部に音声信号を一切引っ張らず、位置検出用の電流だけが流れる。ボリュームノブは角度で位置を検出するためにあり、アナログ音声信号を扱わないフライバイワイヤである。プリアンプ回路の出力段にC-900uと同等の大規模なディスクリートバッファ回路を積む。パワーアンプに純度の高い、エネルギー感の高い信号を送り込むことがねらいだ。
銅メッキ鋼板でシールドすることでパワー部からプリ部への飛び込みを防止することができた。アンプ回路と入出力端子を接続するジョイント基板にピールコート基板を採用したことも特筆される。キャパシタンス(静電容量)効果を持つレジスト(被膜)を使わない利が高域の伸びやかさに現れる。
■触る喜びも感じさせる上質な質感。ローズウッドの木箱も美しい
この製品のひとつの真骨頂がデザイン。現代の主流のミニマリズムやシンプルモダン、合理主義へのアンチテーゼである。フロントパネルは上品でクラシックなヘアライン仕上げ。下端部がアルマイトの黒のツートーン。570シリーズはFRPで墨黒のベースだった。そのコンビネーションの対比を活かすべくアルマイトで表現した。角形プッシュプルスイッチは中央が盛り上がったかまぼこ形状でそれにヘアラインを施してシルク印刷した。一個一個がその機能名にしか使えない。何とも贅沢ではないか。
見た目が美しいだけでない。ラックスマンの真骨頂はつまむ、さわる、押す、の触感にある。プッシュスイッチは、押すというより指が何かの引力で吸いつく感じ。押ししろは1mmくらい。節度感があって何とも絶妙だ。ボリュームノブももはや芸術の域。
スピン目の加工も美しいがサイド部は精緻なローレット仕上げ。実際に回してみると、きめが細かくダイレクトなアナログフィール。木箱はプリアンプCL-1000と共通のウォールナット天然木突き板を使用。それにローズウッド色で塗装した。プリアンプCL-1000にない放熱孔があることが違いだ。
L-595A LIMITEDを初めて聴いたのは、昨年9月29日、神奈川県新横浜のラックスマン試聴室であった。アコースティックな音楽とりわけジャズ、ポップスそしてクラシック(オペラ)まで、ボーカルのきめ細やかな表現に感銘を受けた。歌声の個性は歌手の数だけある。艶っぽかったり清楚だったり、温かく包み込む包容力を感じさせたり、逆に冷たく研ぎ澄まされた鋼の響きだったり。歪み、ノイズが少なく広帯域で高解像度の本機は、歌声のワンアンドオンリーなニュアンスをありありと描き出す。それは第一に、本機が歪みやノイズの発生が少ない純A級動作であることに由来する。
同社のリサーチでは、特定の楽器の音色を熟知していてこだわりのある音楽ファンが純A級を求める傾向が強いという。ラックスマンは古くから純A級のプリメインアンプを作り続けている。積み上げた経験とチューニングのノウハウが桁違い。先に挙げた同社最新の技術がA級増幅のピュアネスを支援する。その結果、絵画でいえば、パレットを埋め尽くす中間色の豊富さが生まれる。微妙な音色のニュアンス差で音楽を描く本機である。
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