公開日 2021/05/12 06:30
新次元に進化した旗艦プリ「Grandioso C1X」。今後のエソテリックサウンドの方向性を示すモデル
【特別企画】リラックスした音の境地に到達
エソテリックのフラッグシップ、Grandiosoシリーズのプリアンプがバージョンアップし、“Xエディション”となった。ボリューム部の刷新をはじめ数々の改良が加えられ、さらなる高い完成度に至っている。今回はこの「Grandioso C1X」でアナログ再生を実践したレポートをお届けしよう。
■内部回路やボリューム機構を刷新。今後のエソテリックアンプの方向性を示す
オフィシャルウェブサイトでGrandioso C1Xを見ると、まず出てくるのが「これからのESOTERICアンプの方向性を決定づける」という言葉だ。おそらく技術的な意味でもそうなのだが、実際に聴いてみて強く印象づけられたのは、音自体も新しい段階に入っている点だ。これからのエソテリックブランドの音の方向性をこう構築していく、という力強い宣言にも感じる。
ボディの外観のデザインは先代をあえて踏襲している。だが中身は別ものだし、ボディ自体の振動の逃がし方や天板をフローティング化している点も進化している。
電源部の筐体は29kgあり、電源ケーブルが2本挿さる。パワーサプライユニットや、左右の各入出力アンプ部、コントロール部の計5つの大型電源トランスをはじめ、大容量ブロックコンデンサー、ショットキーバリアダイオードなど、理想主義的な電源部を構成している。
本体も20kg強ある。入力セレクターは従来のメカニカルリレー方式からFET素子を使ったセレクター回路部に進化。このFET素子というのが常時3A、瞬間電流で12Aを許容する素子で、音色への影響や経年変化を抑えているという。そしてスルーレートで2000V/μsという反応良く、大きな電流を発生させるHCLDバッファアンプを経て、アッテネーター回路に伝送。この音量調節機構が大幅に刷新されている。
一種の固定抵抗切替式のアッテネーター回路ではあるようだが、そのステップは0.1dB刻みでの、なんと1120の細やかな音量調節を実現。実際に使ってみると、可変抵抗ボリューム回路のように、使い勝手も音量自体の変化も、極めて滑らかな音量調節ができる。ちなみに入/出力のアンプ部についてはモジュール化。回路を構成するパーツを自由に選定できるディスクリート構成としつつもコンパクトなモジュールというそれぞれの利点を兼ね備え、今後のエソテリックアンプにも応用されていくようだ。
■ミュージシャンの微妙なニュアンスや空気感を見事に表現
アナログプレーヤーはVPIの「VPI Prime Signature」と組み合わせた。それ以外はアキュフェーズのCDプレーヤー、フォノイコ、パワーアンプに、B&Wの「803 D3」を使用している。
CDやSACDから聴きだしたが、竹内まりやの「シングル・アゲイン」を聴いただけでも音を構成する粒子に極めて細かい感触があり、しなやかでシルキーな肌触りがある。一般的には音像の輪郭がはっきりしているのは美点だが、このレベルのプリアンプにおいては、もっとナチュラルで強調感のない音像感がありつつ、それぞれの実体感は強烈だ。ふとした瞬間に押し出してくる低音の圧の凄さ。何千回も聴いているソフトなのに、初めて聴く音の成分もべらぼうに多い。
キース・ジャレット・トリオの『アット・ザ・ブルーノート』の再生も凄かった。シンバルの形が明確に見えつつ、高域のシャーンという成分がシンバルの上で踊っているような、まとわり付きつつ空中に飛び立っていくような様子を、克明に、しかもリラックスした音のテンションで見せてくれる。この“リラックスした”というところがついに到達したエソテリックの境地だ。
VPIでの再生もさすがにアナログの良さがあって、ちょっとした音の立ち上がりのトランジェントに慄然とさせられる。特に低域のリニアリティに高いポテンシャルを感じるプレーヤーだ。あるいはクラプトン『アンプラグド』での女性コーラス。この声がこんなに艶かしかったかと驚かされる。
音の表情が細やかで、大編成のオーケストラを聴いてもその響きのテクスチャーが見事に見えてくる一方、これみよがしでなくミュージシャンの出したいイメージが出てくる。微妙なニュアンスや空気感の表現力の素晴らしさに圧倒され通しだった。
しかし今回のテスト、同社の独自の電流伝送であるES-LINK Analogを使えていない。ケーブル自体はXLRのバランスケーブルを流用しつつ、そこを通る電流量は一般的なバランス接続の50〜100倍という伝送方式だ。この方式によるナチュラルさを知っているだけに、デジタルプレーヤーからプリ、パワーまでが全てこれで接続された時の音を聴いてみたい。通常の接続方式でさえこんなに凄かったのだから。
(提供:エソテリック)
記事は『季刊analog vol.69』 からの転載です。
■内部回路やボリューム機構を刷新。今後のエソテリックアンプの方向性を示す
オフィシャルウェブサイトでGrandioso C1Xを見ると、まず出てくるのが「これからのESOTERICアンプの方向性を決定づける」という言葉だ。おそらく技術的な意味でもそうなのだが、実際に聴いてみて強く印象づけられたのは、音自体も新しい段階に入っている点だ。これからのエソテリックブランドの音の方向性をこう構築していく、という力強い宣言にも感じる。
ボディの外観のデザインは先代をあえて踏襲している。だが中身は別ものだし、ボディ自体の振動の逃がし方や天板をフローティング化している点も進化している。
電源部の筐体は29kgあり、電源ケーブルが2本挿さる。パワーサプライユニットや、左右の各入出力アンプ部、コントロール部の計5つの大型電源トランスをはじめ、大容量ブロックコンデンサー、ショットキーバリアダイオードなど、理想主義的な電源部を構成している。
本体も20kg強ある。入力セレクターは従来のメカニカルリレー方式からFET素子を使ったセレクター回路部に進化。このFET素子というのが常時3A、瞬間電流で12Aを許容する素子で、音色への影響や経年変化を抑えているという。そしてスルーレートで2000V/μsという反応良く、大きな電流を発生させるHCLDバッファアンプを経て、アッテネーター回路に伝送。この音量調節機構が大幅に刷新されている。
一種の固定抵抗切替式のアッテネーター回路ではあるようだが、そのステップは0.1dB刻みでの、なんと1120の細やかな音量調節を実現。実際に使ってみると、可変抵抗ボリューム回路のように、使い勝手も音量自体の変化も、極めて滑らかな音量調節ができる。ちなみに入/出力のアンプ部についてはモジュール化。回路を構成するパーツを自由に選定できるディスクリート構成としつつもコンパクトなモジュールというそれぞれの利点を兼ね備え、今後のエソテリックアンプにも応用されていくようだ。
■ミュージシャンの微妙なニュアンスや空気感を見事に表現
アナログプレーヤーはVPIの「VPI Prime Signature」と組み合わせた。それ以外はアキュフェーズのCDプレーヤー、フォノイコ、パワーアンプに、B&Wの「803 D3」を使用している。
CDやSACDから聴きだしたが、竹内まりやの「シングル・アゲイン」を聴いただけでも音を構成する粒子に極めて細かい感触があり、しなやかでシルキーな肌触りがある。一般的には音像の輪郭がはっきりしているのは美点だが、このレベルのプリアンプにおいては、もっとナチュラルで強調感のない音像感がありつつ、それぞれの実体感は強烈だ。ふとした瞬間に押し出してくる低音の圧の凄さ。何千回も聴いているソフトなのに、初めて聴く音の成分もべらぼうに多い。
キース・ジャレット・トリオの『アット・ザ・ブルーノート』の再生も凄かった。シンバルの形が明確に見えつつ、高域のシャーンという成分がシンバルの上で踊っているような、まとわり付きつつ空中に飛び立っていくような様子を、克明に、しかもリラックスした音のテンションで見せてくれる。この“リラックスした”というところがついに到達したエソテリックの境地だ。
VPIでの再生もさすがにアナログの良さがあって、ちょっとした音の立ち上がりのトランジェントに慄然とさせられる。特に低域のリニアリティに高いポテンシャルを感じるプレーヤーだ。あるいはクラプトン『アンプラグド』での女性コーラス。この声がこんなに艶かしかったかと驚かされる。
音の表情が細やかで、大編成のオーケストラを聴いてもその響きのテクスチャーが見事に見えてくる一方、これみよがしでなくミュージシャンの出したいイメージが出てくる。微妙なニュアンスや空気感の表現力の素晴らしさに圧倒され通しだった。
しかし今回のテスト、同社の独自の電流伝送であるES-LINK Analogを使えていない。ケーブル自体はXLRのバランスケーブルを流用しつつ、そこを通る電流量は一般的なバランス接続の50〜100倍という伝送方式だ。この方式によるナチュラルさを知っているだけに、デジタルプレーヤーからプリ、パワーまでが全てこれで接続された時の音を聴いてみたい。通常の接続方式でさえこんなに凄かったのだから。
(提供:エソテリック)
記事は『季刊analog vol.69』 からの転載です。