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公開日 2013/06/03 15:38

【海上忍のAV注目キーワード辞典】放送とネットの新たな連携『ハイブリッドキャスト』とは?

どんなことができる?今後の展開は?
海上 忍
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【第22回:ハイブリッドキャスト】

■ハイブリッドキャストとは

ハイブリッドキャスト(HybridCast)は、テレビ放送とHTML5(Webアプリ)を組み合わせた技術仕様のこと。かんたんにいえば「放送とネットの連携」を目指した技術体系であり、新しいテレビの楽しみ方/使い方を実現するプラットフォームだ。

NHKによるハイブリッドキャストの基本概念解説

もともとはNHK技術研究所を中心に開発が進められてきたが、一般社団法人IPTVフォーラム(放送局や家電メーカーなど60社により構成される業界団体)が標準化を推進。2013年3月には、「IPTVフォーラム技術仕様」として一般公開された。この仕様に準拠したテレビ受像機とテレビ放送波、そしてインターネット回線があれば、ハイブリッドキャストのサービスを利用できる。

ただし、サービス開始時期は2013年秋以降となる見込みで、具体的な日程は公表されていない。対応機器の普及状況を見ながら決めるとのことだが、開発主体であるNHKが先行してサービスを開始し、民放が後を追う形になるだろう。本稿執筆時点でハイブリッドキャスト対応を明らかにしているテレビ受像機は、東芝が5月28日に発表した4Kテレビの新モデル「REGZA Z8X」シリーズ(関連ニュース)のみ(サービス開始にあわせソフトウェアダウンロードの形で提供)であり、本格的な対応機器の増加は今年の秋冬商戦以降となりそうだ。

現在ハイブリッドキャスト対応を表明しているテレビ受像機は、東芝「REGZA Z8X」シリーズのみ

■2013年後半にサービス開始予定

2013年度中に提供開始予定のサービスは第1フェーズに位置付けられ、個々の番組に依存せずいつでも利用できる「独立型サービス」と、放送中の番組の内容や進行に合わせて利用する「連動型サービス」に大別される。6月2日(日)まで一般公開されていた「技研公開2013」では、実際に体験できるようそれらのサービスが展示されていた(関連ニュース)。

ハイブリッドキャストの機能は、リモコンのdボタンを押すことでスタート。いくつかのウインドウが放送画面にオーバーレイする形で表示され、番組の視聴と並行してそれらウインドウで情報を収集する、というイメージだ。

NHK技研で公開されていた、NHKのハイブリッドキャスト

ビデオオンデマンドにも応用できる。展示されていた「アクティブ番組表」は、過去30日前までの番組情報を閲覧できるほか、NHKオンデマンドで提供されている番組はその画面から直接再生することが可能だ。放送年から探したり、ジャンル/地域などの条件で検索したりなど、NHKの番組を存分に楽しむことができる。

スマートフォン/タブレットとの連携もサポートされる。操作性と機能はアプリに依存するが、アプリを起動すると視聴中の番組にあわせてスマートフォン/タブレット上の番組情報が更新される、といったセカンドスクリーン的な使い方を想像するといいだろう。

スマホ/タブレット連携も

第1フェーズで利用できるアプリは、放送信号に含まれる制御信号に基づき各種処理を行う「放送マネージドアプリケーション」と呼ばれるもの。そのため放送局が管理する情報に沿った動作が前提となるが、次のフェーズでは放送信号を使わず放送事業者以外から提供される「放送外マネージドアプリケーション」が登場する予定だ。そうなると複数の放送局にまたがりサービスを提供するアプリが実現可能となる一方、アプリの審査や暗号化といったセキュリティ対策が必要となるため、規格化は来年以降となる見込みだ。

■これからのハイブリッドキャスト

ハイブリッドキャストは、今後もさまざまな機能/サービスが投入される予定だ。前述した「放送マネージドアプリケーション」はその一例で、ほかにも見るべきものは多い。

NHK技研を中心に開発が進められている「スーパーハイビジョン(8K)」も、ハイブリッドキャストと無関係ではない。技研公開2013の展示では、マラソンの中継でトップ集団の様子を大きく表示し、複数配置した中継機からの映像を重ねて表示するなど、単調になりがちなコンテンツを大画面/高解像度のメリットを生かしたものへと昇華させていた。

8Kの高精細大画面を活かした展開も検討

放送通信同期技術を生かしたサービスにも注目したい。テレビやスマートフォン/タブレットと同期し、通信コンテンツを映し出すことにより、放送番組の進行に合わせてインタラクティブな処理が可能になるというものだ。技研公開2013では、吹き出し処理された部分に選んだ言語のセリフをリアルタイム表示する教育番組のデモや、タブレットのアプリで描いた絵がテレビに表示したり他の参加者の絵を鑑賞できるデモが展示されていた。

ほかにも、番組情報をTwitterなどSNSの情報とつなげて提示する「teleda+(テレダプラス)」など、基礎研究段階の技術が存在する。受像機側の対応も含め、実用化に向けた開発はこれからも続く見込みだ。

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