公開日 2016/04/15 10:00
始めよう!アナログレコード入門:レコードとアナログプレーヤーの仕組み
アナログが静かなブームです。ターンテーブルのゆっくりとした回転を眺めながら、静かにレコードに針を落とす……古いファンにとっては何気ないしぐさも、ふだん圧縮オーディオに親しんでいる若い世代には新鮮に映るのではないでしょうか。古くて新しいアナログレコードの魅力に、あなたも是非触れてみませんか?
■アナログレコードってどうして音が出るの?
まずアナログレコードとはどういうものか、その仕組みから見ていきましょう。
レコードは、今流に言えば“記録メディア”ですね。音楽を記録するのはすべてアナログ信号で行われていて、音楽信号のどんな複雑な波形もそのままディスクの音溝に刻んでいきます。
ちょっと盤面を見てみませんか?ウーム、黒いビニール盤に細い溝が渦巻きのように並んでいるなあ。針が進むために渦巻上のトラックを形成するわけですが、肉眼でも細かく変化している様子や、音が大きいところとだと大きく波打っている様子もわかります。ルーペで拡大すると、もっとハッキリと溝のうねりがわかって楽しいですよ。
みなさんは、再生中にレコード針の音を聴いたことはありますか? そう、耳をすませば、針の近くからボーカルや楽器の音などシャカシャカと小さい音がするはずです。これは「ニードルトーク」といってあまり好ましい現象ではありませんが、確かに針で音を拾っていることがわかります。音溝の振動を針で拾う(トレースする)……アナログってとてもシンプルで感覚的にわかりやすい仕組みなのです。これがデジタルのCDなんかだと、そうはいきませんね。ちなみにアナログは盤の外から中へとトレースするのに対して、CDは中から外へと、トレースの方向が反対になっているんですよ。
さてレコードの音溝は断面がVの字形をしているので「V溝」とか、英語では「グルーブ(groove)」と呼びます。グループではありませんよ。ダイヤ針が音溝に乗っている様子を描いたのが、下の図です。
針先は少し丸みを持っていて、左右が溝に触れ合うようになっている。ここが大切なポイントなのです。もし針がシャープに尖っていてV字の谷にピタリとはまってしまったら、うまくステレオ再生ができないばかりか、レコードの溝を傷めてしまうんですよ。
でもどうやって、1本の溝にステレオL/Rの、別々の音信号を記録しているのでしょうか。針1本で左右の広がり(ステレオ感)が出せるのも不思議ですよね。この不思議を解くカギが「45-45方式」というレコードのカッティング方式です。これはウエストレックス社が1957年に開発したもので、45度と45度(あわせて90度)に傾けた溝に、内側の壁にはLチャンネル、外側にはRチャンネルの音を独立して記録しておく方法です。
さて、これをトレースする針の方は、見た目は1本の針ですが、実は面白い性質を利用しています。針はダイヤモンドでできているのですが、カーボンの結晶は、左右違う方向から来る振動は、同じ結晶内では干渉しないという面白い特性を持っているのです。ですから「45-45方式」で刻まれた溝の、互いの振動が直角(90度)方向であれば、ほとんどクロストーク(音漏れ)なく、L/Rのステレオ信号がピックアップできるのです。よく考えたものですね。それ以前は、渦巻きがLとRでふたつあり、針を2本使うなんて時代もあったんですよ。
ステレオレコードでは、左右に違う信号が刻まれるために、水平方向だけでなく深さ(垂直方向)も絶えず変化していることも、覚えておくとよいでしょう。
ちなみにレコードのタイプには30センチのLPと、ドーナツ盤(シングル盤)と呼ばれる丸い穴のあいた17センチのEPがあり、回転数はそれぞれ1分間に33 1/3回転と45回転です。また以前にはSPという78回転のレコードがありました。レコードの回転の単位はrpm(Revolutions Per Minute)で表します。