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PR 公開日 2023/10/20 07:00

A級、AB級、D級……オーディオアンプの「方式」の違いとは?

改めて知りたいオーディオ基礎知識解説 Powered by オーディオランド
炭山アキラ
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オーディオは実に奥深く、様々な要素が音に影響してくる。だからこそ楽しい趣味なのだが、初心者のうちは分からないことも多く、また熟練したファンであっても、詳しいことは意外と知らないなんてことがあるのではないだろうか。

そこで、オーディオ買取専門店「オーディオランド」のご協力のもと、オーディオにまつわる改めて知りたい基礎知識を炭山アキラ氏が解説する。本項ではアンプ製品の「増幅方式」について、どのような種類があるのか、またそれぞれのメリット、デメリットについて紹介しよう。


A級、B級、AB級……。アンプの増幅方式は何が違う?

アンプの増幅方式にはいろいろなものがある。皆さんも「A級」や「D級」といった用語を目にされたことがあるのではないか。

アンプの増幅方式による違いとは?

「A級」というのは、増幅素子の最も特性のいい部分のみを使う、非常に贅沢な方式である。無音時も常に大きな電力を消費し、しかもその中で最も美味しい部分のみを出力へ使うため、効率は悪く発熱は多く消費電力も大きいが、A級増幅にしか出せない音の滑らかさや実体感、一聴さりげないが時にハッとするような生々しさがあることが多い。

「B級」というのは素子を効率良く使うために開発された方法で、出力信号の+側と-側を別々の素子で増幅する。そのため消費電力の割に出力は大きく、発熱は少ないが、+側と-側の信号を合成する際にどうしても誤差を生じやすく、それが「クロスオーバー歪み」となって再生音を汚すことが多い。それゆえ、現代のオーディオ回路ではほとんど用いられることがなくなった増幅方式である。

B級の効率良さを生かしながらクロスオーバー歪みを解消するために、+側と-側のクロス周辺のみをA級増幅としてつなぐ、という方法論を採るのがいわゆる「AB級」だ。現代オーディオのアンプで絶対的な主流がこの増幅方式である。B級に比べて若干効率が下がり、消費電力の割に得られる出力の値は少し下がるが、クロスオーバー歪みがなくなることのメリットは計り知れない。

AB級はA級領域をどれくらい大きく取るかによって、効率や発熱がかなり違ってくる。そのあたりはオーディオ各社エンジニアの開発方針や音決めの方向性によって方針が決まってくるのであろう。

高効率が持ち味! 小さくても侮れない「D級」アンプ

「C級」という回路もあるにはあるが、オーディオには用いられないので割愛するとして、「D級」は俗に「デジタルアンプ」と呼ばれる増幅方式の通称である。元はある社が開発した高効率増幅へ名付けられた愛称だったと記憶するが、今や一般名詞となった感がある。

D級の基本は、高効率のトランジスターを飽和するまで出力させ、単位時間当たりの密度を変えることで音声信号を生成する方式である。密度を変えるには2つの方法があり、ひとつは出力される幅を変えるものでこれをPMW(Pulse Width Modulation=パルス幅変調)と呼ぶ。もうひとつは非常に短い飽和出力のパルスを生成し、その数を調節するもので、これをPDM(Pulse Density Modulation=パルス密度変調)と呼ぶ。

どちらの方式も出力素子は基本的にずっと「飽和」という、ある種非常に安定した動作状態に置かれており、動作に曖昧な部分が少なく効率が極めて良いのが特徴だ。手のひらへ乗るようなサイズの筐体へACアダプターをつないだ、そんな頼りない姿から驚くほど活発な音楽が流れ出すものが少なくないのは、この持って生まれた素性のもたらすものが大きい。発熱も大変少ないため、普段は真空管アンプやA級アンプを使っていても、夏場だけD級にスイッチするという人もいる。

世の中の大半のD級アンプは「PWM増幅」が採用されている。デジタルアンプとは呼ばれるが、パルスの幅を連続可変的に変化させられるので、この方式は本当はアナログアンプである。

一方、現在のオーディオ界ではほとんどNmodeのみが採用している「PDM増幅方式」は、1ビットアンプと同社自身が呼称していることからも分かるように、これこそがデジタルアンプと呼べるものである。DSDの1ビット・デジタル信号と同じスピードのパルスを生成することができれば、デジタル信号をそのまま増幅回路へ入れられるという意味で、画期的な増幅回路といえるだろう。

数あるD級アンプの中でも、Nmodeのアンプは「PDM増幅方式」を採用する(画像は1bitプリメイン「X-PM5」)

もっとも、PWM増幅回路もデジタル信号とは相性が良く、ごく簡単な変換で増幅へ回すことができる。デジタル全盛の現代にそぐわしい増幅回路といえるだろう。

いわゆるD級的な増幅回路は、知る限り1970年代からオーディオでもいくつか採用されてきたが、当時全盛を極めたAB級に比べてどうにも音に力がなく解像度もイマイチで、何だかショボくれた音に聴こえたものだ。

それが今や普及クラスのミニアンプにとどまらず、高級オーディオでもNmodeやスペック、それにマランツの一部製品などに採用されている。もちろん往時よりも基礎技術やノイズ対策などに格段の進歩があったゆえであろうが、各社エンジニアの「これをものにしてやろう!」という情熱があったことも想像に難くない。

真空管とトランジスターの項でも述べたが、趣味の世界で選択肢は多ければ多いほど良い。A級、AB級、D級も、それぞれの持ち味をどんどん楽しみたいではないか。

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(提供:オーディオランド)

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