公開日 2018/05/16 11:33
ファイル再生に関連した展示をピックアップ
【HIGH END】逆木一が注目したネットワーク/PCオーディオ<1>サーバー編
逆木 一
5月13日に閉幕した世界最大規模のオーディオ見本市「MUNICH HIGH END 2018」。筆者は今回初めて参加したが、数多くの興味深い展示が行われている中で、特にファイル再生に関連して気になったブースについて、数回に分けて紹介していく。本記事では、日に日に重要性が増している「サーバー」、特にストレージを搭載して機器自体に音源を保存可能な機器に注目する。
■メルコ(DELA)/SFORZATO
欧州では「MELCO」ブランドとして展開されているDELAは、ドイツのディストリビューターのブースに製品を展示。ブースではSFORZATOのネットワークプレーヤーと組み合わせてデモを行っていた。
SFORZATOはDSP-030EX(DSP-Doradoの海外型番)のほか、DSP-050EXも展示。DSP-050EXは日本におけるDSP-Pavoの海外バージョンだが、プレーヤーとしての仕様はそのままに、従来のSFORZATOのテイストとは異なるデザインが与えられている。
後で紹介するfidataとDELAの製品は会場内の多くのブースで使われており、両ブランドが世界の世界で受け入れられていることを端的に示していたと言える。
■Aurender
Aurenderは、新製品「ACS10」をはじめとする同社製品をブースに展示していた。「ACS10」は多機能な光ディスクドライブ搭載ミュージックサーバーで、最大24TBの容量を搭載可能。CDリッピングも行える。非常に頑強な筐体は同社製品ならではと言える。
ACS10は2系統のLAN端子に加えて、1系統のアイソレートが施されたLAN端子を搭載している。ACS10を同社のミュージックサーバーのネットワークストレージとして使用することで、さらなる高品位な再生が可能になるとする。
従来からオーディオ的な最適化を施したUSB出力を搭載する機器は数多くあったが、その流れがLAN端子にも波及したと考えると興味深い。
Aurenderの製品についても複数のブースでソース機器として使われており、同社が高い評価を受けていることを感じたこともお伝えしておきたい。
なお、ブースでは同社のワイヤレススピーカー「S5W」の展示とデモも行われていた。独自の非圧縮無線伝送を採用しているほか、スピーカー本体にバッテリーを搭載しているため電源ケーブルを含めて真に「ワイヤレス」が実現できる。
■アイ・オー・データ/fidata
アイ・オー・データの展開するブランドfidataはミュンヘンハイエンドにブースを出展し、コンセプトモデルを含む複数の製品を展開した。ブース全体の詳細は既出記事を見ていただくとして、ここでは筆者が感じた内容に絞って書いていきたい。
まず目を引いたのは、「fidataの可能性を広げる」ことを念頭に置いたという試作モデル群。外付け光学ディスクドライブ「HFAD」、オーディオネットワークハブ「HFAH」、オーディオポートエンハンサー「HFAE」だ。
筆者が中でも注目したのは「HFAE」。オーディオポートエンハンサーという風変わりな名称が使われているが、要はfidataとUSBケーブルで接続して出力を増やすUSB-DDC(D/Dコンバーター)である。
出力は同軸デジタル・光デジタル・AESのほか、HDMI端子によるI2S出力を搭載。これにより、USB入力を持たないDACでも、fidataをトランスポートとして組み合わせることが可能になる。ブースではPS AudioのUSB DAC/プリアンプStellar Gain Cell DACとI2S接続が行われていた。
I2S接続はPS Audioをはじめとして海外ブランドの製品で採用例があり、音質的にも評価されているので、例えばfidataから直接USB接続するよりもHFAEと組み合わせてI2S接続した方が音質的な優位性があるのか気になるところだ。
また、fidata Music Appのアップデート・バージョンが先行展示されていたことも伝えておきたい。USBストレージへのスムーズな音源転送やCDリッピングの操作をアプリから行えるようになるなど、より使いやすく進化を遂げているようだ。
最後に、展示の中で最も印象的だったのがRoon Serverのコンセプトモデル「HFAS-RSV」だ。筆者が「総合音楽鑑賞ソフト」と表現するRoonは、きわめて強力なライブラリ機能を持つ一方、それを実現するために高度な処理能力を必要とする。一般的なNASに使われているレベルのCPUではRoon(Core)を満足に動作させることができず、PC用の強力なCPUが必要になるということが、単体Roon Serverの製品化を難しくしていた理由のひとつである。
ちなみに、昨今世界中で対応製品を増やしている「Roon Ready」は、それ自体で「Roon対応」というニュアンスを持つが、実際にはRoon Readyの機器だけではRoonのシステムは成立せず、RoonのCoreが動いている機器(=「Roon Server」)が必要になる。PCの介在しないRoonシステムを構築しようと思えば、「純粋なオーディオ機器として使い得る単体Roon Server」が必要になるわけだが、HFAS-RSVはまさにこのような用途に合致する製品だ。
HFAS-RSVは見た目こそ従来機と同じだが、内部はCPUを含めて刷新されており、Roonをスムーズに動かすマシンパワーを得ている。Roon LabsのWebサイトを見ても、単体Roon Serverを手がけているメーカー/ブランドは非常に限られている。そこに、優れたミュージックサーバーを手がけた実績のあるfidataが加われば、Roonの展開にも大きく貢献することになるだろう。
また、HFAS-RSVはRoon ServerだけでなくサーバーソフトとしてTwonky Serverも同時に動かすとのことなので、ネットワークオーディオプレーヤーと組み合わせる通常のサーバーとしても従来モデルと同様に使うことが可能になる。
HFAS-RSVはあくまでもコンセプトモデルということで、未定な部分が多いとのことだが、いつの日か登場することが非常に楽しみなモデルと言える。
■カクテルオーディオ
NOVATRON社のオーディオブランドであるCocktail Audio(カクテルオーディオ)は、新製品「X45Pro」を展示していた。
X45Proは同社製ミュージックサーバーのフラグシップとなる製品。DACチップにES9038PROを搭載し、PCM 768kHz/32bit、DSD512にくわえ、MQAの再生にも対応する。筐体はフルアルミ製で、X50D以上に重厚かつ頑強な仕上がりとなっている。なお、価格は4,500ユーロとのこと。
X45Proは先行するX50DやX45から強化された内容が多く、同社のNam Koh氏に「フラグシップとして別の型番(例えばX55)を与えた方がよかったのでは?」と聞いてみたが、DACを搭載する製品の型番はあくまでも“40番台”とのことだった。
カクテルオーディオはドイツを中心とするヨーロッパ諸国での販売が大きいとのことで、実際にブースは多くの人でにぎわっていた。
■Request Audio
日本にも導入されているRequest Audioは新製品「The Raptor」を披露。同社の超弩級ミュージックサーバー「The Beast」は本体に大型ディスプレイを備えているが、本機はディスプレイを省いて筐体の薄型化を実現し、「猛禽」(=Raptor)の名にふさわしいシャープなたたずまいとなっている。操作はインターネットブラウザまたはアプリから行え、きびきびと動作している様子も確認できた。
■X-ODOS
地元ドイツのオーディオブランド X-ODOSはミュージックサーバー「xo|one」を展示。ストレージにSSDを搭載し、CDドライブで直接リッピングも行える。ドイツ国内での価格は税込み7450ユーロとのこと。
代表のChristof Poschadel氏は、「デジタル出力の品質」「ビルドクオリティ」「自社製アプリの使いやすさ」が同社製品の強みと語っていた。実際にアプリの完成度は素晴らしく、デザインのわかりやすさやレスポンスの速さなどで、会場内で目にしたコントロールアプリの中でも傑出した出来映えと感じた。
■Antipodes Audio
いちはやく単体Roon Serverを送り出したブランドでもあるAntipodes Audioは同社のフラグシップ「DX」にくわえ、新製品の「EX」を展示した。
EXはRoon Serverをはじめとする様々な機能を持ち、それ自体でミュージックサーバーとして使用可能。EXはLAN端子を2系統持ち、同社のミュージックサーバー「CX」と組み合わせることで、単独で使うよりも良好な再生品質が得られるとのこと。
先に紹介したAurenderもそうだが、これは様々な機能を集約しているミュージックサーバーが、音質向上のために機能を分離させようという例だと言える。ファイル再生の流れを機器ごとに分割して高音質を狙うアプローチはPCオーディオの領域で盛んに行われているが、オーディオ機器でも同様のアプローチが行われているというのは興味深い。
■メルコ(DELA)/SFORZATO
欧州では「MELCO」ブランドとして展開されているDELAは、ドイツのディストリビューターのブースに製品を展示。ブースではSFORZATOのネットワークプレーヤーと組み合わせてデモを行っていた。
SFORZATOはDSP-030EX(DSP-Doradoの海外型番)のほか、DSP-050EXも展示。DSP-050EXは日本におけるDSP-Pavoの海外バージョンだが、プレーヤーとしての仕様はそのままに、従来のSFORZATOのテイストとは異なるデザインが与えられている。
後で紹介するfidataとDELAの製品は会場内の多くのブースで使われており、両ブランドが世界の世界で受け入れられていることを端的に示していたと言える。
■Aurender
Aurenderは、新製品「ACS10」をはじめとする同社製品をブースに展示していた。「ACS10」は多機能な光ディスクドライブ搭載ミュージックサーバーで、最大24TBの容量を搭載可能。CDリッピングも行える。非常に頑強な筐体は同社製品ならではと言える。
ACS10は2系統のLAN端子に加えて、1系統のアイソレートが施されたLAN端子を搭載している。ACS10を同社のミュージックサーバーのネットワークストレージとして使用することで、さらなる高品位な再生が可能になるとする。
従来からオーディオ的な最適化を施したUSB出力を搭載する機器は数多くあったが、その流れがLAN端子にも波及したと考えると興味深い。
Aurenderの製品についても複数のブースでソース機器として使われており、同社が高い評価を受けていることを感じたこともお伝えしておきたい。
なお、ブースでは同社のワイヤレススピーカー「S5W」の展示とデモも行われていた。独自の非圧縮無線伝送を採用しているほか、スピーカー本体にバッテリーを搭載しているため電源ケーブルを含めて真に「ワイヤレス」が実現できる。
■アイ・オー・データ/fidata
アイ・オー・データの展開するブランドfidataはミュンヘンハイエンドにブースを出展し、コンセプトモデルを含む複数の製品を展開した。ブース全体の詳細は既出記事を見ていただくとして、ここでは筆者が感じた内容に絞って書いていきたい。
まず目を引いたのは、「fidataの可能性を広げる」ことを念頭に置いたという試作モデル群。外付け光学ディスクドライブ「HFAD」、オーディオネットワークハブ「HFAH」、オーディオポートエンハンサー「HFAE」だ。
筆者が中でも注目したのは「HFAE」。オーディオポートエンハンサーという風変わりな名称が使われているが、要はfidataとUSBケーブルで接続して出力を増やすUSB-DDC(D/Dコンバーター)である。
出力は同軸デジタル・光デジタル・AESのほか、HDMI端子によるI2S出力を搭載。これにより、USB入力を持たないDACでも、fidataをトランスポートとして組み合わせることが可能になる。ブースではPS AudioのUSB DAC/プリアンプStellar Gain Cell DACとI2S接続が行われていた。
I2S接続はPS Audioをはじめとして海外ブランドの製品で採用例があり、音質的にも評価されているので、例えばfidataから直接USB接続するよりもHFAEと組み合わせてI2S接続した方が音質的な優位性があるのか気になるところだ。
また、fidata Music Appのアップデート・バージョンが先行展示されていたことも伝えておきたい。USBストレージへのスムーズな音源転送やCDリッピングの操作をアプリから行えるようになるなど、より使いやすく進化を遂げているようだ。
最後に、展示の中で最も印象的だったのがRoon Serverのコンセプトモデル「HFAS-RSV」だ。筆者が「総合音楽鑑賞ソフト」と表現するRoonは、きわめて強力なライブラリ機能を持つ一方、それを実現するために高度な処理能力を必要とする。一般的なNASに使われているレベルのCPUではRoon(Core)を満足に動作させることができず、PC用の強力なCPUが必要になるということが、単体Roon Serverの製品化を難しくしていた理由のひとつである。
ちなみに、昨今世界中で対応製品を増やしている「Roon Ready」は、それ自体で「Roon対応」というニュアンスを持つが、実際にはRoon Readyの機器だけではRoonのシステムは成立せず、RoonのCoreが動いている機器(=「Roon Server」)が必要になる。PCの介在しないRoonシステムを構築しようと思えば、「純粋なオーディオ機器として使い得る単体Roon Server」が必要になるわけだが、HFAS-RSVはまさにこのような用途に合致する製品だ。
HFAS-RSVは見た目こそ従来機と同じだが、内部はCPUを含めて刷新されており、Roonをスムーズに動かすマシンパワーを得ている。Roon LabsのWebサイトを見ても、単体Roon Serverを手がけているメーカー/ブランドは非常に限られている。そこに、優れたミュージックサーバーを手がけた実績のあるfidataが加われば、Roonの展開にも大きく貢献することになるだろう。
また、HFAS-RSVはRoon ServerだけでなくサーバーソフトとしてTwonky Serverも同時に動かすとのことなので、ネットワークオーディオプレーヤーと組み合わせる通常のサーバーとしても従来モデルと同様に使うことが可能になる。
HFAS-RSVはあくまでもコンセプトモデルということで、未定な部分が多いとのことだが、いつの日か登場することが非常に楽しみなモデルと言える。
■カクテルオーディオ
NOVATRON社のオーディオブランドであるCocktail Audio(カクテルオーディオ)は、新製品「X45Pro」を展示していた。
X45Proは同社製ミュージックサーバーのフラグシップとなる製品。DACチップにES9038PROを搭載し、PCM 768kHz/32bit、DSD512にくわえ、MQAの再生にも対応する。筐体はフルアルミ製で、X50D以上に重厚かつ頑強な仕上がりとなっている。なお、価格は4,500ユーロとのこと。
X45Proは先行するX50DやX45から強化された内容が多く、同社のNam Koh氏に「フラグシップとして別の型番(例えばX55)を与えた方がよかったのでは?」と聞いてみたが、DACを搭載する製品の型番はあくまでも“40番台”とのことだった。
カクテルオーディオはドイツを中心とするヨーロッパ諸国での販売が大きいとのことで、実際にブースは多くの人でにぎわっていた。
■Request Audio
日本にも導入されているRequest Audioは新製品「The Raptor」を披露。同社の超弩級ミュージックサーバー「The Beast」は本体に大型ディスプレイを備えているが、本機はディスプレイを省いて筐体の薄型化を実現し、「猛禽」(=Raptor)の名にふさわしいシャープなたたずまいとなっている。操作はインターネットブラウザまたはアプリから行え、きびきびと動作している様子も確認できた。
■X-ODOS
地元ドイツのオーディオブランド X-ODOSはミュージックサーバー「xo|one」を展示。ストレージにSSDを搭載し、CDドライブで直接リッピングも行える。ドイツ国内での価格は税込み7450ユーロとのこと。
代表のChristof Poschadel氏は、「デジタル出力の品質」「ビルドクオリティ」「自社製アプリの使いやすさ」が同社製品の強みと語っていた。実際にアプリの完成度は素晴らしく、デザインのわかりやすさやレスポンスの速さなどで、会場内で目にしたコントロールアプリの中でも傑出した出来映えと感じた。
■Antipodes Audio
いちはやく単体Roon Serverを送り出したブランドでもあるAntipodes Audioは同社のフラグシップ「DX」にくわえ、新製品の「EX」を展示した。
EXはRoon Serverをはじめとする様々な機能を持ち、それ自体でミュージックサーバーとして使用可能。EXはLAN端子を2系統持ち、同社のミュージックサーバー「CX」と組み合わせることで、単独で使うよりも良好な再生品質が得られるとのこと。
先に紹介したAurenderもそうだが、これは様々な機能を集約しているミュージックサーバーが、音質向上のために機能を分離させようという例だと言える。ファイル再生の流れを機器ごとに分割して高音質を狙うアプローチはPCオーディオの領域で盛んに行われているが、オーディオ機器でも同様のアプローチが行われているというのは興味深い。