公開日 2018/05/24 08:00
Roonに関する出展も総まとめ
【HIGH END】Roonが純正サーバーを出した理由とは? 「Nucleus」の詳細を同社マネージャーに聞いた
逆木 一
MUNICH HIGH END 2018の会場で、特にファイル再生に関連して気になったブースについて、数回に分けて紹介していく本シリーズ。この記事では、筆者が「総合音楽鑑賞ソフト」と呼ぶRoonの動向について紹介する。
■Roon Labsのセールスマネージャーに「Nucleus」の詳細を聞く
ドイツのディストリビューターであるAtrのブースでは、Roon Labs(Roonを手がける企業)が開発・販売を行っているRoon Server「Nucleus」が展示されていた。本機は現時点で日本では展開されていないが、欧米ではすでに出荷を開始している。
まず、Nucleusがどのような製品か、かいつまんで解説しよう。
NucleusはRoonを開発しているRoon Labs自身が手掛けた単体Roon Serverである。昨年のMUNICH HIGH ENDで発表され、最近になって発売された。
Roonのシステムには、Roonの「Core」が動く「Roon Server」が必ず必要になる。Roonの動作には高いスペックが要求されるため、従来Roon ServerにはPCやハイスペックのNASが使われることが多く、オーディオ機器としてリリースされている単体Roon Serverは非常に数が限られていた。そのような状況で登場した「オフィシャルな」単体Roon ServerがNucleusというわけだ。
Nucleusは基本的に「Roonの運用に特化・最適化されたミュージックサーバー」と考えることができる。十分なスペックに加えて、専用の「Roon OS」を搭載し、Roon Server以外の機能を持たないかわりに、高速かつ安定した動作を実現しているという。
スペックによって2種類のモデルがあり、Core i3/4GB RAMの「Nucleus」(ノーマルモデル)と、Core i7/8GB RAMの「Nucleus+」が用意されている。音源ファイル保存用のストレージは搭載しないが、増設は可能。価格はNucleusが約1,400ドル、Nucleus+が約2,500ドル。
シャーシはアルミダイキャストの一体型。シャーシ全体をヒートシンクとして使うことでファンレスを実現しており、Nucleusは本格的なオーディオ用途を見据えた作りとなっている。また、写真からわかるとおり、サイズはかなり小型となっている。
電源は外部電源を使う形で、その気になればサードパーティー製のアナログリニア電源を使うことも可能だ。
今回はRoon LabsのセールスマネージャーであるSteve Silberman氏にNucleusやRoonについてインタビューできたので、内容をそのままインタビュー形式でお伝えする(何より製品に注目してほしいというSilberman氏本人の意向で、顔写真の掲載は控えさせていただく)。
■価値ある製品は相応の価格で。世界最高のソフトを作っているという自負
ーー Roon Labs自身がNucleusをリリースした理由を教えてください。
Silberman氏 販売店のためにも、ソフトだけでなく、それを搭載したハードを用意したかったのです。またRoonのユーザーからも「専用機」が欲しいとの声が寄せられていました。ユーザーのPC環境はバラバラで、OSの更新をはじめとする不安定要素も多く、Nucleusはそういった煩雑さからユーザーを解放できます。
ーー 他社の単体Roon Serverに比べて、Nucleusにはどのような強みがありますか?
Silberman氏 ずばりOSです。Nucleusに搭載された「Roon OS」は軽量かつ高速であり、ハードウェアも含めて他のどのOSよりもRoonに最適化されているため、動作速度と安定性の点で非常に優れています。Core i3を搭載したNucleus(ノーマル)とCore i7を搭載したNucleus+、どちらのモデルでもRoonは快適に動作します。
ーー オプションの外部電源を用意する計画はありますか?
Silberman氏 各国の安全基準に合わせるのは非常に困難なため、標準のACアダプターのみを用意しています。
ーー DACを搭載したモデルの計画はありますか?
Silberman氏 NucleusにDACを搭載するつもりはありません。それはパートナーの領分になります。
ーー Nucleusを日本に導入する計画はありますか?
Silberman氏 ぜひ日本にも導入したいですが、現時点ではディストリビューターが決まっていません。
ーー 最近では「Roon Readyプレーヤーであり、USB-DACでもある」製品が多くあります。そのような製品をRoonと組み合わせる際、Roon Readyプレーヤーとして使う場合と、USB-DACとして使う場合、音質的に優れるのはどちらでしょうか?
Silberman氏 それは製品次第ですね。
ーー Roonは非常に高機能なソフトである一方、「値段が高い」という声もあります。例えば機能を制限した「ライトバージョン」を用意する計画はありますか?
Silberman氏 ライトバージョン的なものを作るつもりはありません。Roonは製作・維持・更新に大きなコストがかかっていますし、価値ある製品は相応の価格であるべきです。自分たちは「世界最高のソフトを作っている」との想いを持っています。
ーー 日本のオーディオファンにメッセージをお願いします。
Silberman氏 Roonはあなたの音楽コレクションを、あなただけの音楽雑誌に生まれ変わらせます。ぜひ試してみてください。
以上がSilberman氏へのインタビューである。NucleusやRoonのコンセプトについて、非常に明快な回答が得られた。特に、Roonというソフトに対する強い矜持が感じられた。
個人的には「Roon Readyプレーヤーとして使う場合とUSB-DACとして使う場合、どちらが高音質か」という質問に対して、即座に「製品次第」との答えが返ってきたのが印象的だった。まったくもってその通りである。
状況が整えば日本市場にも導入したいとのことなので、今後の展開に期待したい。
■HIGH ENDの会場でも多くのブースがRoonでデモ
ここからは、ハイエンド会場で出会ったRoon関連の展示について抜粋して紹介したい。
CHORDブースでは「Roon Tested」のパネルが置かれ、Roonとのパートナーシップがアピールされていた。なおRoon Testedとは、Roon Labsとオーディオメーカーの双方が検証を行うことで、Roonとの接続性を保証するプログラムである。実際にブースではRoonが製品デモに使われていた。
dCSやMSB Technologyは、同社製品のRoon Ready対応をアピールしていた。dCSは全製品がRoon ReadyまたはRoon Testedであり、MSB Technologyは先日発表された新型ネットワークモジュールの搭載でRoon Readyに対応する。
Nucleusは、ATCのブースでソース機器として使われていたほか、広大なPro-jectブースの片隅にも展示されていた。
地元ドイツのハイエンドブランドであるMBLはRoonの存在を前面に出しており、製品のデモにRoonを使っていたほか、同社製品をRoon Readyに対応させるモジュールを大々的にアピールしていた。
さて、今回のハイエンドでは、MBLといった例を除いて、Roon Readyであることを大々的にアピールするケースは少なくなったように思える。とはいえ、それはRoonの需要が下火になったことを意味するのではなく、むしろネットワークオーディオプレーヤーがRoon Readyに対応することが当たり前になった結果のように思える。
ちなみに、筆者がHIGH ENDの会場でデモに使われていた再生ソフトを調査したところ、JRiver Media CenterやAudirvana Plusといったソフトではなく、Roonが一番多かった。そもそもHIGH ENDではPCと再生ソフトの組み合わせでデモを行っていたブースが少ないという問題もあるが、Roonが広く浸透していることは確かなようだ。
Roonは先日バージョン1.5にアップデートされ、MQAのコアデコードやLINN DS対応といった数々の新機能を搭載した(関連ニュース)。筆者は2015年からRoonを使い続けているが、今までにアップデートで追加された機能は数知れず、Roonの価値をますます大きなものとしている。
すでに再生ソフトとして完成された感もあるRoonが今後どのような進化を遂げていくのか、いちユーザーとして非常に楽しみだ。
■Roon Labsのセールスマネージャーに「Nucleus」の詳細を聞く
ドイツのディストリビューターであるAtrのブースでは、Roon Labs(Roonを手がける企業)が開発・販売を行っているRoon Server「Nucleus」が展示されていた。本機は現時点で日本では展開されていないが、欧米ではすでに出荷を開始している。
まず、Nucleusがどのような製品か、かいつまんで解説しよう。
NucleusはRoonを開発しているRoon Labs自身が手掛けた単体Roon Serverである。昨年のMUNICH HIGH ENDで発表され、最近になって発売された。
Roonのシステムには、Roonの「Core」が動く「Roon Server」が必ず必要になる。Roonの動作には高いスペックが要求されるため、従来Roon ServerにはPCやハイスペックのNASが使われることが多く、オーディオ機器としてリリースされている単体Roon Serverは非常に数が限られていた。そのような状況で登場した「オフィシャルな」単体Roon ServerがNucleusというわけだ。
Nucleusは基本的に「Roonの運用に特化・最適化されたミュージックサーバー」と考えることができる。十分なスペックに加えて、専用の「Roon OS」を搭載し、Roon Server以外の機能を持たないかわりに、高速かつ安定した動作を実現しているという。
スペックによって2種類のモデルがあり、Core i3/4GB RAMの「Nucleus」(ノーマルモデル)と、Core i7/8GB RAMの「Nucleus+」が用意されている。音源ファイル保存用のストレージは搭載しないが、増設は可能。価格はNucleusが約1,400ドル、Nucleus+が約2,500ドル。
シャーシはアルミダイキャストの一体型。シャーシ全体をヒートシンクとして使うことでファンレスを実現しており、Nucleusは本格的なオーディオ用途を見据えた作りとなっている。また、写真からわかるとおり、サイズはかなり小型となっている。
電源は外部電源を使う形で、その気になればサードパーティー製のアナログリニア電源を使うことも可能だ。
今回はRoon LabsのセールスマネージャーであるSteve Silberman氏にNucleusやRoonについてインタビューできたので、内容をそのままインタビュー形式でお伝えする(何より製品に注目してほしいというSilberman氏本人の意向で、顔写真の掲載は控えさせていただく)。
■価値ある製品は相応の価格で。世界最高のソフトを作っているという自負
ーー Roon Labs自身がNucleusをリリースした理由を教えてください。
Silberman氏 販売店のためにも、ソフトだけでなく、それを搭載したハードを用意したかったのです。またRoonのユーザーからも「専用機」が欲しいとの声が寄せられていました。ユーザーのPC環境はバラバラで、OSの更新をはじめとする不安定要素も多く、Nucleusはそういった煩雑さからユーザーを解放できます。
ーー 他社の単体Roon Serverに比べて、Nucleusにはどのような強みがありますか?
Silberman氏 ずばりOSです。Nucleusに搭載された「Roon OS」は軽量かつ高速であり、ハードウェアも含めて他のどのOSよりもRoonに最適化されているため、動作速度と安定性の点で非常に優れています。Core i3を搭載したNucleus(ノーマル)とCore i7を搭載したNucleus+、どちらのモデルでもRoonは快適に動作します。
ーー オプションの外部電源を用意する計画はありますか?
Silberman氏 各国の安全基準に合わせるのは非常に困難なため、標準のACアダプターのみを用意しています。
ーー DACを搭載したモデルの計画はありますか?
Silberman氏 NucleusにDACを搭載するつもりはありません。それはパートナーの領分になります。
ーー Nucleusを日本に導入する計画はありますか?
Silberman氏 ぜひ日本にも導入したいですが、現時点ではディストリビューターが決まっていません。
ーー 最近では「Roon Readyプレーヤーであり、USB-DACでもある」製品が多くあります。そのような製品をRoonと組み合わせる際、Roon Readyプレーヤーとして使う場合と、USB-DACとして使う場合、音質的に優れるのはどちらでしょうか?
Silberman氏 それは製品次第ですね。
ーー Roonは非常に高機能なソフトである一方、「値段が高い」という声もあります。例えば機能を制限した「ライトバージョン」を用意する計画はありますか?
Silberman氏 ライトバージョン的なものを作るつもりはありません。Roonは製作・維持・更新に大きなコストがかかっていますし、価値ある製品は相応の価格であるべきです。自分たちは「世界最高のソフトを作っている」との想いを持っています。
ーー 日本のオーディオファンにメッセージをお願いします。
Silberman氏 Roonはあなたの音楽コレクションを、あなただけの音楽雑誌に生まれ変わらせます。ぜひ試してみてください。
以上がSilberman氏へのインタビューである。NucleusやRoonのコンセプトについて、非常に明快な回答が得られた。特に、Roonというソフトに対する強い矜持が感じられた。
個人的には「Roon Readyプレーヤーとして使う場合とUSB-DACとして使う場合、どちらが高音質か」という質問に対して、即座に「製品次第」との答えが返ってきたのが印象的だった。まったくもってその通りである。
状況が整えば日本市場にも導入したいとのことなので、今後の展開に期待したい。
■HIGH ENDの会場でも多くのブースがRoonでデモ
ここからは、ハイエンド会場で出会ったRoon関連の展示について抜粋して紹介したい。
CHORDブースでは「Roon Tested」のパネルが置かれ、Roonとのパートナーシップがアピールされていた。なおRoon Testedとは、Roon Labsとオーディオメーカーの双方が検証を行うことで、Roonとの接続性を保証するプログラムである。実際にブースではRoonが製品デモに使われていた。
dCSやMSB Technologyは、同社製品のRoon Ready対応をアピールしていた。dCSは全製品がRoon ReadyまたはRoon Testedであり、MSB Technologyは先日発表された新型ネットワークモジュールの搭載でRoon Readyに対応する。
Nucleusは、ATCのブースでソース機器として使われていたほか、広大なPro-jectブースの片隅にも展示されていた。
地元ドイツのハイエンドブランドであるMBLはRoonの存在を前面に出しており、製品のデモにRoonを使っていたほか、同社製品をRoon Readyに対応させるモジュールを大々的にアピールしていた。
さて、今回のハイエンドでは、MBLといった例を除いて、Roon Readyであることを大々的にアピールするケースは少なくなったように思える。とはいえ、それはRoonの需要が下火になったことを意味するのではなく、むしろネットワークオーディオプレーヤーがRoon Readyに対応することが当たり前になった結果のように思える。
ちなみに、筆者がHIGH ENDの会場でデモに使われていた再生ソフトを調査したところ、JRiver Media CenterやAudirvana Plusといったソフトではなく、Roonが一番多かった。そもそもHIGH ENDではPCと再生ソフトの組み合わせでデモを行っていたブースが少ないという問題もあるが、Roonが広く浸透していることは確かなようだ。
Roonは先日バージョン1.5にアップデートされ、MQAのコアデコードやLINN DS対応といった数々の新機能を搭載した(関連ニュース)。筆者は2015年からRoonを使い続けているが、今までにアップデートで追加された機能は数知れず、Roonの価値をますます大きなものとしている。
すでに再生ソフトとして完成された感もあるRoonが今後どのような進化を遂げていくのか、いちユーザーとして非常に楽しみだ。