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公開日 2019/05/27 15:50
5Gの経済効果は12兆ドル
5Gはモバイルだけでなく産業の在り方も変える − クアルコム5G担当マネージャーがその展望を語った
編集部:小澤貴信
クアルコムは、5G(第5世代移動通信システム)についての説明会を5月24日(金)に開催。同社のシニア・ヴァイス・プレジデント兼4G/5G ゼネラルマネージャーのDurga Malladi氏が、同社の5Gへの現時点での取り組みや今後の展望について説明を行った。
ドゥルガ・マラーディ氏は、クアルコムにおける5G製品開発を統括する人物とのこと。冒頭では「5Gはモバイルという枠を超えて、社会のあらゆる面に影響を与えるものだと考えている。モバイル向けのブロードバンド・ネットワークとしてデータの送受信が高速化するだけにとどまらない、ユーザー体験の向上を実現できる」と述べた。また、5Gが企業活動や産業、自動車の在り方にも大きな変革をもたらすと強くアピールした。
また、5Gの特徴として「通信のさらなる高速・大容量化」に加えて、「低遅延」「安定性」「多接続」を挙げた。これらにより、膨大なモノをシンプルに接続することができると述べた。
5Gが世界経済に与える影響についても言及。第三者による調査では、2035年までに12兆ドルの経済効果を与えるという結果が出たという。現時点で5Gは立ち上げ段階だが、10年前にLTEが開始された時と比較してもそのスケールは巨大で、あらゆる地域で5Gを立ち上げることを目指しているとした。
「4G端末でもすでにギガビットに対応しているのに、なぜ5Gが必要なのか。よく尋ねられるのでそれについて答えたい」と同氏は述べ、5Gの長所について改めて説明を行った。
当然ながら、5Gの最大の特徴はより高速な通信が行えること。平均的なスループット(データ転送能力)だけでなく、セルエッジ(隣接する基地局がカバーする範囲の境界線。電波が弱い)においてもスループットが改善することが特徴だとした。
5Gは4Gに対して通信のレイテンシーで10倍、通信速度において20倍の性能を誇るとされる。同氏は「すでにミリ波による5Gの商用サービスが始まっているシカゴで実際に試してみたが、動画がわずか10秒程度でダウンロードできた。これは今までにない体験だった」と話す。さらに、5Gカバーエリアの約95%で4K動画をネイティブのビットレートで再生できるとした。
また、平均的なスループットが向上することは、すなわちネットワークのキャパシティーが上がることであり、ビット当たりの単価が下ってよりリーズナブルにネットワークを提供できると同氏。「5Gによって無制限のデータプランがさらに広がっていくことを期待している。ユーザーのデバイスの使い方も変わっていくはずだ」と述べた。
5Gは広範な帯域を用いる技術であり、各帯域を利用するバランスが重要であることも説明された。具体的には、ミリ波による高い周波数帯はその速度と容量を活かしてプライベートネットワークに活用し、1〜6GHzの中間バンドは容量とカバー領域の広さを、1GHz以下はカバー領域の広さを活かした利用を行うというものだ。「5Gは3つの帯域をしっかり使い分けることが重要なのです」(マラーディ氏)。
技術面では、“ミリ波を用いるのはモバイル向けでは難しいのでは”という懸念を常に向けられてきたが、それを確実に解決するための努力を続け、実際に解決したと同氏は胸を張る。「ミリ波対応のスマートフォンが発売されていることが、何よりの証明です」。ミリ波の実用化にあたってはモデムチップだけでなく、様々な周辺部品の役割も重要となり、同社はリファレンスデザインを通じて検証を重ねてきた。そして、様々なスマートフォンが容易に搭載できるミリ波対応アンテナモジュールなどを実現した。
クアルコム製チップを用いた5G対応のコンシューマー向け製品は、現在発表されているものと開発中のものを合わせてすでに75機種を超えているという。同氏は日本メーカーとの密接な関係を築いていることも強調した。
スマートフォンをはじめとするモバイル向けだけでなく、5Gが様々な領域において今後導入を検討されていることも紹介された。その例として、固定ワイヤレスサービスや企業向け領域、機械製造などの産業、自動
運転を含む自動車などでの活用が挙げられた。
企業向けについては、5Gを固定ワイヤレスで提供することで、従来のWi-Fiを超える速度とカバーエリアを実現。常に高速回線に接続できることで、クラウドとローカルを意識することなくデータの取り扱いができるようになるとした。また、ARグラスを用いて離れた場所にいる人同士があたかも同じ場所にいるかのように業務を行うようなXR領域にも5Gは貢献する。「5G下であればエッジクラウド側で処理した膨大なデータをARグラスへ送ることも容易で、軽量かつ小型のARグラスも実現できる」と同氏。
産業面では、例えば自動車の生産ラインにおける膨大な情報を、それを取り巻くあらゆる機器と人が5G下で共有することで、さらなる生産の効率化や品質の向上が実現できるとのこと。このような産業用においては5Gが高速・大容量だけでなく、低遅延や安定性においても優れていることが重要だという。高解像度な映像を扱うHMDはブロードバンドな通信が必要だが、一方で産業ロボットには通信量よりも高い安定性と低遅延が求められる。また、無数のセンサーも高いスループットは必要ないが、多接続性は必須だ。
自動車については、自動運転の普及において5Gが重要な役割を果たす。自動運転においては、自動車と標識や信号などインフラ側との通信、VtoVと呼ばれる自動車同士の通信によって適切な運行や安全が確保されるが、この通信を5Gが担うことになる。
ドゥルガ・マラーディ氏は「5Gはまだ始まったばかりだが、これから大きく広がって行くだろう」とその期待を述べた。
質疑応答では、「すでに商用の5Gサービスが開始されている米国や韓国で、期待されたほどの通信速度が出ていないという話があるが、技術的にはどのあたりに問題があるのか」という質問が出た。マラーディ氏は「前述したように私自身、高速のスループットが出ていることを確認しているが、立ち上がったばかりであり、改善も引き続き行っている」とした。
ドゥルガ・マラーディ氏は、クアルコムにおける5G製品開発を統括する人物とのこと。冒頭では「5Gはモバイルという枠を超えて、社会のあらゆる面に影響を与えるものだと考えている。モバイル向けのブロードバンド・ネットワークとしてデータの送受信が高速化するだけにとどまらない、ユーザー体験の向上を実現できる」と述べた。また、5Gが企業活動や産業、自動車の在り方にも大きな変革をもたらすと強くアピールした。
また、5Gの特徴として「通信のさらなる高速・大容量化」に加えて、「低遅延」「安定性」「多接続」を挙げた。これらにより、膨大なモノをシンプルに接続することができると述べた。
5Gが世界経済に与える影響についても言及。第三者による調査では、2035年までに12兆ドルの経済効果を与えるという結果が出たという。現時点で5Gは立ち上げ段階だが、10年前にLTEが開始された時と比較してもそのスケールは巨大で、あらゆる地域で5Gを立ち上げることを目指しているとした。
「4G端末でもすでにギガビットに対応しているのに、なぜ5Gが必要なのか。よく尋ねられるのでそれについて答えたい」と同氏は述べ、5Gの長所について改めて説明を行った。
当然ながら、5Gの最大の特徴はより高速な通信が行えること。平均的なスループット(データ転送能力)だけでなく、セルエッジ(隣接する基地局がカバーする範囲の境界線。電波が弱い)においてもスループットが改善することが特徴だとした。
5Gは4Gに対して通信のレイテンシーで10倍、通信速度において20倍の性能を誇るとされる。同氏は「すでにミリ波による5Gの商用サービスが始まっているシカゴで実際に試してみたが、動画がわずか10秒程度でダウンロードできた。これは今までにない体験だった」と話す。さらに、5Gカバーエリアの約95%で4K動画をネイティブのビットレートで再生できるとした。
また、平均的なスループットが向上することは、すなわちネットワークのキャパシティーが上がることであり、ビット当たりの単価が下ってよりリーズナブルにネットワークを提供できると同氏。「5Gによって無制限のデータプランがさらに広がっていくことを期待している。ユーザーのデバイスの使い方も変わっていくはずだ」と述べた。
5Gは広範な帯域を用いる技術であり、各帯域を利用するバランスが重要であることも説明された。具体的には、ミリ波による高い周波数帯はその速度と容量を活かしてプライベートネットワークに活用し、1〜6GHzの中間バンドは容量とカバー領域の広さを、1GHz以下はカバー領域の広さを活かした利用を行うというものだ。「5Gは3つの帯域をしっかり使い分けることが重要なのです」(マラーディ氏)。
技術面では、“ミリ波を用いるのはモバイル向けでは難しいのでは”という懸念を常に向けられてきたが、それを確実に解決するための努力を続け、実際に解決したと同氏は胸を張る。「ミリ波対応のスマートフォンが発売されていることが、何よりの証明です」。ミリ波の実用化にあたってはモデムチップだけでなく、様々な周辺部品の役割も重要となり、同社はリファレンスデザインを通じて検証を重ねてきた。そして、様々なスマートフォンが容易に搭載できるミリ波対応アンテナモジュールなどを実現した。
クアルコム製チップを用いた5G対応のコンシューマー向け製品は、現在発表されているものと開発中のものを合わせてすでに75機種を超えているという。同氏は日本メーカーとの密接な関係を築いていることも強調した。
スマートフォンをはじめとするモバイル向けだけでなく、5Gが様々な領域において今後導入を検討されていることも紹介された。その例として、固定ワイヤレスサービスや企業向け領域、機械製造などの産業、自動
運転を含む自動車などでの活用が挙げられた。
企業向けについては、5Gを固定ワイヤレスで提供することで、従来のWi-Fiを超える速度とカバーエリアを実現。常に高速回線に接続できることで、クラウドとローカルを意識することなくデータの取り扱いができるようになるとした。また、ARグラスを用いて離れた場所にいる人同士があたかも同じ場所にいるかのように業務を行うようなXR領域にも5Gは貢献する。「5G下であればエッジクラウド側で処理した膨大なデータをARグラスへ送ることも容易で、軽量かつ小型のARグラスも実現できる」と同氏。
産業面では、例えば自動車の生産ラインにおける膨大な情報を、それを取り巻くあらゆる機器と人が5G下で共有することで、さらなる生産の効率化や品質の向上が実現できるとのこと。このような産業用においては5Gが高速・大容量だけでなく、低遅延や安定性においても優れていることが重要だという。高解像度な映像を扱うHMDはブロードバンドな通信が必要だが、一方で産業ロボットには通信量よりも高い安定性と低遅延が求められる。また、無数のセンサーも高いスループットは必要ないが、多接続性は必須だ。
自動車については、自動運転の普及において5Gが重要な役割を果たす。自動運転においては、自動車と標識や信号などインフラ側との通信、VtoVと呼ばれる自動車同士の通信によって適切な運行や安全が確保されるが、この通信を5Gが担うことになる。
ドゥルガ・マラーディ氏は「5Gはまだ始まったばかりだが、これから大きく広がって行くだろう」とその期待を述べた。
質疑応答では、「すでに商用の5Gサービスが開始されている米国や韓国で、期待されたほどの通信速度が出ていないという話があるが、技術的にはどのあたりに問題があるのか」という質問が出た。マラーディ氏は「前述したように私自身、高速のスループットが出ていることを確認しているが、立ち上がったばかりであり、改善も引き続き行っている」とした。
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