【特別企画】ヤマハ“S2100”シリーズ徹底解剖!
ヤマハ開発陣が明かす、最新Hi-Fi「A-S2100」「CD-S2100」開発秘話
山之内: なるほど。このあたりは、メーカーによって考え方が異なる部分で非常に興味深いですね。また、ドライブメカを搭載するCDプレーヤーは、データ再生だけに対応するネットワークプレーヤーとは設計のポイントが全く異なってきますよね。
辻川: そうですね。CD-S2100では、本体の機械的な振動対策をしっかり行うことで、サーボ電流を極力抑え、音への影響を低減しています。外部からの振動はなるべく本体に伝わらないようにしつつ、筐体自体が持つ振動は上手くコントロールして、サーボ電流を抑えアナログ回路に影響を与えないようにする。これが、CD-S2100本体設計の肝でした。
山之内: そのCD再生に加え、各デジタル入力端子からの音源ソースも同時にサポートしているわけですが、このあたりを踏まえた音質設計についてはいかがでしょうか。
辻川: やはり、電気的な相互干渉を極限まで抑えられるように工夫しました。具体的には、ソースが選択されていない側には電流が流れず、完全にOFFになる仕組みとしています。例えばUSB入力が選択されているときは、CDドライブ側のローダー部やモーター部分まで電気的に完全OFFになります。
山之内: 搭載するDACがCD-S3000とは異なり、CD-S2100ではES9016を採用されているとのことでしたね。DACの違いによって、音質の方向性がCD-S3000とは変わると思いますが、音作りのポイントはどういったところだったのでしょうか。
辻川: DACのグレードの違いは開発面で影響が大きく、ES9016を使用して高精細な音作りができるようにかなり工夫しました。CD-S3000のように量感豊かな音質傾向を狙うことは難しいですが、だからといって音質の品位を落とすことはしたくない。そこでCD-S2100では、特にリズム楽器の低音に躍動感を出す方向性を狙ってチューニングを行いました。
これがトランスの違いにも繋がっていて、CD-S3000で採用したトロイダルは量感や暖かみのある音になりますが、CD-S2100で採用したEIにはスピード感や力強さがあり、狙っている低域表現がよりよく実現できたと思います。
山之内: なるほど。そのあたりもアンプと共通する考え方ですね。こうして内部基板を見せて頂くと、アンプ/プレーヤーとも内部パーツにこだわりが伺えますね。
森井: リレーやコンデンサは、S2000を含むハイグレード製品共通で使用しているパーツを受け継いでいますが、S2100用に試聴を繰り返して、最適なものを選んでいます。
辻川: なお、ブルーのコンデンサは国内メーカーのもので、中高域が綺麗に表現できるという特徴があります。開発時には、まずこのコンデンサで中高域の質感を確保し、次に低域の表現を高めていきました。
山之内: ここまでお話を伺って、S2100シリーズはアンプ/プレーヤーとも、決してS3000をダウングレードしたわけではなく、EIトランスの特徴や低インピーダンス化設計など、良い部分は継承しながらS3000とは違う魅力を引き出していることがわかりますね。
ドイツの「HighEnd」でもそうでしたが、スピーカーなど最新のオーディオ製品は、量感を確保したうえでレスポンスの良い低域を実現するチューニングがトレンドだと感じます。豊かながらキレも良く、立ち上がり・立ち下がりが素直な低音とでもいいましょうか。S2100は、こういった“低音のトレンド”をよく押さえた方向性の音作りですね。
辻川: ありがとうございます。“音楽性”を高めたいという考え方自体はS3000と同じなのですが、S2100ではその表現に新たな方向性を出せるように取り組みました。
山之内: 続いては、アンプとプレーヤーに共通する“S2100”シリーズの外観デザインについて迫っていきたいと思います。