[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第138回】実録:FitEar 須山氏×Just ear 松尾氏スペシャル対談『あなたのお耳にジャストフィット!』
■閑話休題 音楽の趣味やリファレンス音源は?
高橋: ところで、こちらの三人はどんな音楽を好んで聴いているのかが比較的知られていると思うのですが、松尾さんてそのあたりがあまり知られていないような…
松尾: 私は時代やジャンルでいうと、70年代のジャズやソウルがメインです。元々はオルガンジャズの音が好きで、そのプレイヤーがエレクトリックピアノも使い出すような時代ですね。アナログ盤で販売されるのが前提の時代の音楽が、後にマスタリングを変えてCDで発売されて、最近ではハイレゾが出て。でも僕は、その時代に作られたアナログLPで聴くのがいちばんいい音だと思って聴いているんですよね。LP再生でヘッドホンの音質調整をしたりはしないですけど。
須山: 時代ごとの音っていうのもありますし、アナログ盤ならではの音っていうのもありますよね。
松尾: あと僕個人ではなくソニーということでは、リファレンスにする音として割と共通のソースがあるんですよ。例えば、スタジオモニター「MDR-CD900ST」開発の際に、開発エンジニアがスタジオエンジニアとやりとりした曲の記録などが残されているんです。「音のあの部分をチェックするには、この曲がわかりやすいよね」という内容がソニーの中で継承されているんです。それを踏まえつつ、各開発者が個人的にわかりやすいと思うリファレンス音源も聴いたりします。例えば僕の場合は、自分の友人が出しているCDだと、そのボーカル本人の声をよく知っているので確認しやすいとかありますね。
高橋: それはわかりやすいですね。僕も自分が短い間ですけどギターを習っていた先生の作品は、マイクを通さない生音をすぐ近くで体験できているので、リファレンスのひとつにしてあります。
松尾: そういったものの他でだと、70年代中盤から後半のロックはリファレンスとして聴きやすいなと。音数がそこまで多くなくて楽器の生音を録音していて、男性女性のボーカル、ベースがあって。あとは最近の音源も…
須山: 時代やその機種のターゲットに合わせて確認するといった感じですよね。
高橋: そしてJust earだと、お客様が持ってくる音源がリファレンスになるわけです。ちなみにみなさんに質問ですが、1曲か2曲で音を確認しないといけない環境があったら何を聴きます?
須山: 野村さんに教えていただいた曲もよく使ってますけど、最近だと「Groovin' Magic」だなー。
野村: 僕は「BEAUTIFUL≒SENTENCE」ですね。生ピアノも入ってるし、女性ボーカル二人の声質の違いでもわかるし。
高橋: アニメ「トリニティセブン」のED曲のひとつですね。
野村: リミックス集の「trinity heaven7: MAGUS MUSIC REMIXES TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND」収録の「BEAUTIFUL≒SENTENCE (IS IT A BEAUTIFUL WORLD?)」が、男性ボーカルまで入ってるし打ち込みの音も入っていてベースは生でと、いろんな要素が入ってるんですよ。
高橋: いろんな要素が入ってる曲はオーディオチェック用に便利ですよね。僕は相対性理論というバンドの「たまたまニュータウン (2DK session)」っていう曲が、僕が思い描いていた「こういう曲があったらオーディオチェックに便利なのに」というのが実現されていて、1曲となるとそれですね。最初はバスドラムとハイハットだけ、そこにベースが入ってきます、次にギターが入ってきます、そして個性的な女性ボーカルが入ってくるっていう。
須山: チェックという意味だと、定番ですけどドナルド・フェイゲン「Morph the Cat」とか。FitEarでずっとお世話になっているマスタリングエンジニアの原田光晴さんに教えていただいたんですけど、スネアとハットのバランスが同じに聴こえるCDということで。