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ハイレゾ化キーマンにインタビュー

「小泉今日子」像はいかに確立されたのか? ハイレゾ化されたアルバム制作の舞台裏から探る

公開日 2016/07/06 11:15 インタビュー・試聴:炭山アキラ/構成:編集部
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―― それと例えば、レコードからCDへ、ということだとパッケージ・サイズも変わりますし、お客様の手にディスクなどの物理メディアが渡った時の印象のようなものも変わると思うんですが、田村さん、そのあたりはプロデューサーとして気にされたところはありましたか?

田村 分かりやすい話に落とし込むとすると、僕は“便利さ”で普及すると思っているんですよ。例えば、80年代に「ウォークマン」が出て、みんな音がどうのこうのっていうけれど、それは流行ったわけじゃないですか。だから、そういう意味ではコンパクトで聴けるものが出たら、それはクオリティが上がっていけば流行るものだから、それについてどうこう言おうっていう気はないですね。アナログのジャケットだからいいとか、小さいからいいとか……もちろん「CDって小さいな」とは思いましたけど、それはそれできちんと作る方が出てくるわけですからね。

―― やっぱり当時は「CDって小さいなぁ」とは思われていた、と。

田村 うーん、でもCDシングルが出てきた時も「これだったらこういうことができるな」といった風に考えましたね。どんな仕事だって制限がある中でやっているのだから。曲を作る時だって制限はあるんだしね。そういう意味では、全然小さいことが制限だとは思いません。

―― なるほど、ツールとして楽しみ方やバリエーションが増えるだけ、という感じなのですね。

田村 変わっていくものだから、何だって。ずっと続いていくものなんてないしね。大きな会社だってつぶれるんですからね。極端な話をすると、そういうことです(笑)。もちろん、失敗することもあるんですよ。レコード・ビジネスなんて大半は失敗なんですから。けど、せっかく新しいメディアが出てきたら、トライはしてみた方が面白いかな、という風に思ってます。

高田 音についてもそうですね。今、アナログが注目されてるじゃないですか。でも、今作るんであれば、当然昔のやり方でアナログのマスターから採る場合もあるけれど、本当にすごいハイレゾの11.2MHz音源からダイレクトにブラックディスクを切るなんていうようなことをやると、まったく違う音の世界が表現できます。だからやっぱり、メディアを時代によってどう使っていくかというところが、面白いと思いますけどね。


―― ハイレゾも、新しいメディアのひとつとして挑戦するという感じなのですか。

高田 そうです。デジタル技術が発展して、利便性が優先した音楽と音作りのから、“質”を求められてきたので、非常にやりがいがある、面白い世界になってきてますからね。もうちょっと深いところを言うと、アナログの頃にはテープの銘柄を選んだりバイアス値を調整したり、テープスピードを変えたりすることで、音を自分で作っていくことができましたよね。ハイレゾもフォーマットによって、やり方によって音を変えていく、そういう時代になってきますので、より面白くなってきていると思いますよ。

―― ハイレゾ化にあたり大変だった点はどういったところでしょうか。

川崎 ハイレゾだからって音楽を変えるわけじゃないので。音がいいとか悪いとか高い方まで伸びてるとかいうのがハイレゾじゃなくて、「今の時代に格好いい音楽」を入れられる器がハイレゾだ、と思った方がいいかもしれないですね。


田村 音楽って時代のものなので、今流れている音というものがあって、それで昔の音を聴いた時に、「あぁ、今だったらこうなるな」という判断ができるのです。リスナーの皆さんも、現段階の目で話されるわけじゃないですか。昔の話にしたって今の話にしたって。だから、現段階でまさにジャストのいい感じにならなきゃいけない、ということです。それは10年前と今ではもちろん違うし、20年前とも違うし。

―― なるほど。川崎さん、その“今の時代”っぽさのようなものを作る時には、どういうところに気を遣われましたか?

川崎 そうですね……何も考えてないです(笑)。今までずっといろんなCDを聴いたり仕事をしたり洋楽を聴いたりとやってる中でつかんだ「“今”ってこういう感じじゃないかな」という自分なりのイメージをかたちにした感じです。それを田村さんに聴いてもらって「う〜ん、もっと格好良くなんないの?」「え〜っ!?」みたいなやりとりをしながら作業が進んでいったんですが、そのある意味曖昧なやり取りの中で、何だか1本筋の通っているものが見えたり。

田村 もちろん、この仕事以外に現在進行形でいろんなヒット曲が川崎さんの手元にあるおかげもあると思うんですけど、それらと本人の中で辻褄があってる、ということでしょうね。

―― そういう風に川崎さんの中でアップデートされ、蓄積されていったものが、“今の音”を作っていく、と。

川崎 別に音楽だけじゃなくて、スタジオの機材だったりとか、やっぱり自分で使ってみないと分からないし、誰かが「あれはいい」と言ってたって自分で使ってみたらダメだったということもいっぱいあります。そういうことをやっていかなければならないし、いろんな知識を使って、田村さんに「これでどうですか」というようなことで仕事をやってるんですよね。

田村 聴かせてもらったら「いいですねぇ」って言いますよ(笑)。「う〜ん」っていうことは、たま〜にです(笑)

―― ほんとうは結構厳しいんじゃないですか? いっぱい「う〜ん」って言われてたりして。

川崎 いやいやそんなことないですよ……って今言わされました(笑)

―― 本当に川崎さんの感性を信頼されているのですね。

川崎 いや、違うと思います。心配だからみんな立ち合いにきてるわけで(笑)

田村 だって、ここが最後の砦じゃないですか。ここから先はもうリスナーの方に渡るので、ここはやはりちゃんとしておかないと、という思いがあるだけですよ、はい。ここが一番大事、そう思っているだけです(笑)


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