公開日 2020/11/26 06:40
普及のカギは新型ゲーム機。「HDMI 2.1」最新動向をHDMI LA最高技術責任者に訊く
豊富な機能すべてを網羅した製品
2017年11月に正式リリースされたHDMIの次世代規格「HDMI 2.1」。製品の認証プログラムもスタートし、あとは認証製品の普及を待つばかりという段階が続いていたが、この11月、HDMI 2.1対応の次世代ゲーム機「Xbox Series X/S」「PlayStation 5」の発売という大きなトピックがあった。
またケーブルでも、HDMI 2.1の機能すべてをサポートすることを意味する「Ultra High Speed HDMI」認証を、国内で初めて取得したと謳う“HDMI 2.1対応ケーブル”がエレコムから発表された(関連ニュース)。
このように、いよいよ本格普及が迫ってきた印象のあるHDMI 2.1。その近況について、HDMIのライセンス管理等を行っているHDMI LA(HDMI Licensing Administrator.inc)から、最高技術責任者(CTO)のジェフ・パーク(Jeff Perk)氏にオンラインで話を伺った。
■HDMI 2.1普及のカギとして注目される次世代ゲーム機
前述の通り、11月10日から国内発売となったXbox series X/S、11月12日から発売となったPlayStation 5のHDMI端子は、共にHDMI 2.1をサポートしている。またPCでも新型グラフィックボード「Nvidia Geforce RTX3000シリーズ」「AMD Radeon RX6000シリーズ」がHDMI 2.1をサポートした。こうした状況に、パーク氏は「HDMI 2.1普及に向けて、新世代ゲーム機の存在に注目すべきだと考えています」と期待を寄せている。
というのも、本来HDMI 2.1の機器が充実していくきっかけとしてHDMI LAが想定していたのは、今夏開催を予定していた東京オリンピックだった。それが新型コロナ禍により延期となった時、次なる大きな節目として目を向けられたのが、世界中の幅広い家庭で導入される新世代ゲーム機というわけだ。
ここで、HDMI 2.1のポイントについておさらいしておこう。まずはなんと言っても、伝送帯域の拡張が大きい。前バージョンのHDMI2.0が最大18Gbpsだったのに対し、HDMI 2.1では48Gbpsに拡張。最大10Kまでの高解像度データや、8K/60p、4K/120pといった高フレームレートの映像もケーブル1本で伝送可能となる。
ゲームにおいては、高解像度化でより美麗なグラフィックを楽しめることも嬉しいが、高フレームレート対応で激しい画面の動きも滑らかに見やすくなるのが大きな利点と言える。
その実現のキーとなる技術が、FRL(Fixed Rate Link、固定レートリンク)という伝送方式だ。従来バージョンのHDMI 2.0ではTMDSという伝送方式が使われていた。TMDSでは6Gbpsのデータレーンを3つに加えてクロック用レーンを1つ、計4つのレーンを使用していた。
FRLも使用するレーンは4つで変わらないが、クロックをデータレーンにパケットとして埋めこむという手法により、4レーンすべてで最大12Gbpsのデータ伝送を行えるようになった。TMDSとの互換性も確保され、従来の機器も組み合わせられる。HDR10+/ドルビービジョンといったダイナミックHDRもサポートされ、フレームごとにメタデータを参照し、細やかなトーンマッピングが行える。
映像面に限らず、音声面もeARC(Enhanced Audio Return Channel)で強化された。既にテレビ、AVアンプ等で個別に対応した製品が発売されており、名前を目にする機会も増えていることだろう。従来のARC機能の上位規格で、PCM 192kHzオーディオ、あるいは非圧縮の7.1ch/5.1ch、さらにはドルビーアトモスなどのオブジェクトベースオーディオをテレビ経由で伝送できる。
そして、HDMI 2.1にはゲーム向けの機能も多く盛り込まれている。代表的なものがVRR(Variable Reflesh Rate、可変リフレッシュレート)で、出力されるコンテンツのフレームレートにディスプレイが同期し、カクつきやチラつきを防止する。フレームレートが一定ではないゲームの分野で効果を発揮する機能だ。
また、ALLM(Auto Low Latency Mode、自動低遅延モード)の便利さも見逃せない。表示するコンテンツに応じて、画質優先モードと低遅延優先モードを機器側が自動的に切り替えてくれる。ゲームだけでなく動画プレーヤーとしても活躍している近年のゲーム機には、まさにうってつけの機能と言える。
■HDMI 2.1製品の充実は、このホリデーシーズンに期待
それでは、現在のHDMI 2.1対応製品の広まりはどんな状況なのだろうか。実際のところ、現時点でも48Gbps伝送やeARCなど、HDMI 2.1で定められた新機能のうち、いくつかに個別に対応している製品は珍しくない。ただ、「HDMI 2.1対応」と謳うケースは多くない。
「HDMI 2.1の認証プロセス自体は、従来のHDMI2.0から大きく変わっているわけではありません。HDMI 2.1と謳う場合にも、『HDMI 2.1の規格のうち、この機能に対応している』と表記して頂く必要があります」とパーク氏は説明する。
また「HDMI 2.1では、新機能が多く盛り込まれた分だけ試験項目が増えています」とパーク氏は語る。拡張された機能の分が多いぶん、対応する機能が増えると認証にも時間がかかるようだ。
ケーブル側の「Ultra High Speed HDMI」認証については、より厳密だ。HDMI 2.1の様々な新機能の網羅に加え、Wi-FiやBluetoothとの干渉を最小限にするため、国際規格を上回る基準の電磁気妨害対策も求められる。認定製品には専用ラベルが発行され、スマホアプリでラベルをスキャンすると正規品かどうか判別できる。流通/管理に関しても厳密になっているのだ。
しかし何より、これまで普及までのあとひと押しに欠けていたのは、HDMI 2.1の機器を活用できる人気のソース機器の存在だった。その問題を解決する新世代ゲーム機が登場したこのホリデーシーズンこそ、“HDMI 2.1対応”製品の充実に期待したい。
またケーブルでも、HDMI 2.1の機能すべてをサポートすることを意味する「Ultra High Speed HDMI」認証を、国内で初めて取得したと謳う“HDMI 2.1対応ケーブル”がエレコムから発表された(関連ニュース)。
このように、いよいよ本格普及が迫ってきた印象のあるHDMI 2.1。その近況について、HDMIのライセンス管理等を行っているHDMI LA(HDMI Licensing Administrator.inc)から、最高技術責任者(CTO)のジェフ・パーク(Jeff Perk)氏にオンラインで話を伺った。
■HDMI 2.1普及のカギとして注目される次世代ゲーム機
前述の通り、11月10日から国内発売となったXbox series X/S、11月12日から発売となったPlayStation 5のHDMI端子は、共にHDMI 2.1をサポートしている。またPCでも新型グラフィックボード「Nvidia Geforce RTX3000シリーズ」「AMD Radeon RX6000シリーズ」がHDMI 2.1をサポートした。こうした状況に、パーク氏は「HDMI 2.1普及に向けて、新世代ゲーム機の存在に注目すべきだと考えています」と期待を寄せている。
というのも、本来HDMI 2.1の機器が充実していくきっかけとしてHDMI LAが想定していたのは、今夏開催を予定していた東京オリンピックだった。それが新型コロナ禍により延期となった時、次なる大きな節目として目を向けられたのが、世界中の幅広い家庭で導入される新世代ゲーム機というわけだ。
ここで、HDMI 2.1のポイントについておさらいしておこう。まずはなんと言っても、伝送帯域の拡張が大きい。前バージョンのHDMI2.0が最大18Gbpsだったのに対し、HDMI 2.1では48Gbpsに拡張。最大10Kまでの高解像度データや、8K/60p、4K/120pといった高フレームレートの映像もケーブル1本で伝送可能となる。
ゲームにおいては、高解像度化でより美麗なグラフィックを楽しめることも嬉しいが、高フレームレート対応で激しい画面の動きも滑らかに見やすくなるのが大きな利点と言える。
その実現のキーとなる技術が、FRL(Fixed Rate Link、固定レートリンク)という伝送方式だ。従来バージョンのHDMI 2.0ではTMDSという伝送方式が使われていた。TMDSでは6Gbpsのデータレーンを3つに加えてクロック用レーンを1つ、計4つのレーンを使用していた。
FRLも使用するレーンは4つで変わらないが、クロックをデータレーンにパケットとして埋めこむという手法により、4レーンすべてで最大12Gbpsのデータ伝送を行えるようになった。TMDSとの互換性も確保され、従来の機器も組み合わせられる。HDR10+/ドルビービジョンといったダイナミックHDRもサポートされ、フレームごとにメタデータを参照し、細やかなトーンマッピングが行える。
映像面に限らず、音声面もeARC(Enhanced Audio Return Channel)で強化された。既にテレビ、AVアンプ等で個別に対応した製品が発売されており、名前を目にする機会も増えていることだろう。従来のARC機能の上位規格で、PCM 192kHzオーディオ、あるいは非圧縮の7.1ch/5.1ch、さらにはドルビーアトモスなどのオブジェクトベースオーディオをテレビ経由で伝送できる。
そして、HDMI 2.1にはゲーム向けの機能も多く盛り込まれている。代表的なものがVRR(Variable Reflesh Rate、可変リフレッシュレート)で、出力されるコンテンツのフレームレートにディスプレイが同期し、カクつきやチラつきを防止する。フレームレートが一定ではないゲームの分野で効果を発揮する機能だ。
また、ALLM(Auto Low Latency Mode、自動低遅延モード)の便利さも見逃せない。表示するコンテンツに応じて、画質優先モードと低遅延優先モードを機器側が自動的に切り替えてくれる。ゲームだけでなく動画プレーヤーとしても活躍している近年のゲーム機には、まさにうってつけの機能と言える。
■HDMI 2.1製品の充実は、このホリデーシーズンに期待
それでは、現在のHDMI 2.1対応製品の広まりはどんな状況なのだろうか。実際のところ、現時点でも48Gbps伝送やeARCなど、HDMI 2.1で定められた新機能のうち、いくつかに個別に対応している製品は珍しくない。ただ、「HDMI 2.1対応」と謳うケースは多くない。
「HDMI 2.1の認証プロセス自体は、従来のHDMI2.0から大きく変わっているわけではありません。HDMI 2.1と謳う場合にも、『HDMI 2.1の規格のうち、この機能に対応している』と表記して頂く必要があります」とパーク氏は説明する。
また「HDMI 2.1では、新機能が多く盛り込まれた分だけ試験項目が増えています」とパーク氏は語る。拡張された機能の分が多いぶん、対応する機能が増えると認証にも時間がかかるようだ。
ケーブル側の「Ultra High Speed HDMI」認証については、より厳密だ。HDMI 2.1の様々な新機能の網羅に加え、Wi-FiやBluetoothとの干渉を最小限にするため、国際規格を上回る基準の電磁気妨害対策も求められる。認定製品には専用ラベルが発行され、スマホアプリでラベルをスキャンすると正規品かどうか判別できる。流通/管理に関しても厳密になっているのだ。
しかし何より、これまで普及までのあとひと押しに欠けていたのは、HDMI 2.1の機器を活用できる人気のソース機器の存在だった。その問題を解決する新世代ゲーム機が登場したこのホリデーシーズンこそ、“HDMI 2.1対応”製品の充実に期待したい。
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