公開日 2016/05/06 08:00
<HIGH END>オーディオテクニカ、ハイエンドMCカートリッジ「AT-ART1000」。5,200ユーロ
“ダイレクトパワーシステム”を採用
独ミュンヘンにて現地時間5日、世界最大規模のオーディオショウ「High End 2016」が開幕した。オーディオテクニカは、“ダイレクトパワーシステム”を採用したハイエンド MCカートリッジ「AT-ART1000」を発表。実機を世界初公開した。
欧州での価格は5,200ユーロを予定。なお、日本での発売日や価格は現時点で未定となっている。
AT-ART1000は、スタイラスチップの真上に2つのコイルを配置した“ダイレクトパワーシステム”を採用。これによりアナログレコードの溝の直近でダイレクトに発電を行うことが可能となり、従来の方式と比較して鮮度が高いサウンドを実現できるとのこと。同社は本カートリッジを“ダイレクトパワー・ムービングコイル・カートリッジ”と呼称している。
本機で用いられた「スタイラスチップの真上にコイルを配置する」という方式は、シンプルかつ原理的に高音質が望めるため、発想すること自体は容易とのこと。しかし、コイルの配置において非常に繊細な調整が必要なために、量産は困難。よってこの方式のカートリッジを実現したメーカーはほとんどなかったという。
オーディオテクニカは3年という期間を要して、この方式を実現するための技術開発と生産体制を確立。本機においては、独自処理を行った約25ミクロンのフィルムにコイルを固定し、わずか0.6mmの磁気ギャップの間の適切な位置にコイルを配置することを可能にした。
さらにスタイラスチップやカンチレバー部をあらかじめ組み上げ、ハウジングに組み込んで位置出しを調整できる新機構を開発。この機構が、微妙な調整を必要とする本機を量産可能とすることに貢献しているという。
なお、AT-ART1000の開発を担当した一人である小泉洋介氏によれば、本機に近い方式を採用していた他社製品が1980年代にあったというが、今回のAT-ART1000では、スタイラスチップ上にコイルを配置することを可能としたため、インピーダンスを3Ωとすることができたのが大きなポイントのひとつとのことだ。
さらに出力についても0.2mVを確保。本機は、鉄芯に比べて出力を稼ぐのが難しい空芯を採用しているが、発電効率を上げることで、使いやすいレベルまで出力を確保することができたという。
スタイラスチップには、AT-ART7など同社のハイエンド・カートリッジと同様に特殊ラインコンタクトチップを採用。コイルの導体にはPCOCCを用いている。また、カンチレバーにはボロン、マグネットにはネオジウム、ヨークにはパーメンジュールを使っている。
本機のベース部はチタン削り出し、ハウジング部はアルミ削り出しを採用。異種素材を組み合わせることで制振性にも配慮している。
前述のような方式のためにコイルの適正な位置が極めて重要になるAT-ART1000において、針圧は非常にクリティカルな要素だ。そこで本機では、ひとつひとつの個体を測定・調整することで、2〜2.5gの間で最適な針圧を個体ごとに割り出して明記。ユーザーはその針圧に合わせてセッティングすることで、最良の音質を楽しむことが可能となる。
この点について「しっかりとセッティングを行うことで、ものすごくダイレクトな音を聴くことができます」と小泉氏は説明。一方で、定められた針圧を設定すれば最適なサウンドが得られることから、複雑なセッティングを必要とする他方式のハイエンド・カートリッジに比べて「使い勝手の点でも優れています」とも紹介していた。
本機の主な仕様は以下の通り。周波数特性は15Hz〜30kHz、出力は0.2mV(1kHz,5cm/sec)、チャンネルセパレーションは30dB(1kHz)、出力バランスは0.5dB、コイルインピーダンスは3Ω(1kHz)、コイルインダクタンスは≦1μH(1kHz)、スタティックコンプライアンスは30×10-6cm/dyne、ダイナミックコンプライアンスは12×10-6cm/dyne(100Hz)。
High Endのオーディオテクニカ・ブースでは、本機のデモを行うための専用試聴室を用意。その音質をじっくりと確認することができた。なお、独High Endを取材中の山之内正氏による試聴レポートも近日中に掲載予定だ。
オーディオテクニカのブースでは、ART MONITORシリーズをはじめとする同社のヘッドホンやヘッドホンアンプが出展。昨年のHigh Endでも披露された超弩級ヘッドホンアンプ「AT-HA5050H」も、引き続きデモが行われていた。
欧州での価格は5,200ユーロを予定。なお、日本での発売日や価格は現時点で未定となっている。
AT-ART1000は、スタイラスチップの真上に2つのコイルを配置した“ダイレクトパワーシステム”を採用。これによりアナログレコードの溝の直近でダイレクトに発電を行うことが可能となり、従来の方式と比較して鮮度が高いサウンドを実現できるとのこと。同社は本カートリッジを“ダイレクトパワー・ムービングコイル・カートリッジ”と呼称している。
本機で用いられた「スタイラスチップの真上にコイルを配置する」という方式は、シンプルかつ原理的に高音質が望めるため、発想すること自体は容易とのこと。しかし、コイルの配置において非常に繊細な調整が必要なために、量産は困難。よってこの方式のカートリッジを実現したメーカーはほとんどなかったという。
オーディオテクニカは3年という期間を要して、この方式を実現するための技術開発と生産体制を確立。本機においては、独自処理を行った約25ミクロンのフィルムにコイルを固定し、わずか0.6mmの磁気ギャップの間の適切な位置にコイルを配置することを可能にした。
さらにスタイラスチップやカンチレバー部をあらかじめ組み上げ、ハウジングに組み込んで位置出しを調整できる新機構を開発。この機構が、微妙な調整を必要とする本機を量産可能とすることに貢献しているという。
なお、AT-ART1000の開発を担当した一人である小泉洋介氏によれば、本機に近い方式を採用していた他社製品が1980年代にあったというが、今回のAT-ART1000では、スタイラスチップ上にコイルを配置することを可能としたため、インピーダンスを3Ωとすることができたのが大きなポイントのひとつとのことだ。
さらに出力についても0.2mVを確保。本機は、鉄芯に比べて出力を稼ぐのが難しい空芯を採用しているが、発電効率を上げることで、使いやすいレベルまで出力を確保することができたという。
スタイラスチップには、AT-ART7など同社のハイエンド・カートリッジと同様に特殊ラインコンタクトチップを採用。コイルの導体にはPCOCCを用いている。また、カンチレバーにはボロン、マグネットにはネオジウム、ヨークにはパーメンジュールを使っている。
本機のベース部はチタン削り出し、ハウジング部はアルミ削り出しを採用。異種素材を組み合わせることで制振性にも配慮している。
前述のような方式のためにコイルの適正な位置が極めて重要になるAT-ART1000において、針圧は非常にクリティカルな要素だ。そこで本機では、ひとつひとつの個体を測定・調整することで、2〜2.5gの間で最適な針圧を個体ごとに割り出して明記。ユーザーはその針圧に合わせてセッティングすることで、最良の音質を楽しむことが可能となる。
この点について「しっかりとセッティングを行うことで、ものすごくダイレクトな音を聴くことができます」と小泉氏は説明。一方で、定められた針圧を設定すれば最適なサウンドが得られることから、複雑なセッティングを必要とする他方式のハイエンド・カートリッジに比べて「使い勝手の点でも優れています」とも紹介していた。
本機の主な仕様は以下の通り。周波数特性は15Hz〜30kHz、出力は0.2mV(1kHz,5cm/sec)、チャンネルセパレーションは30dB(1kHz)、出力バランスは0.5dB、コイルインピーダンスは3Ω(1kHz)、コイルインダクタンスは≦1μH(1kHz)、スタティックコンプライアンスは30×10-6cm/dyne、ダイナミックコンプライアンスは12×10-6cm/dyne(100Hz)。
High Endのオーディオテクニカ・ブースでは、本機のデモを行うための専用試聴室を用意。その音質をじっくりと確認することができた。なお、独High Endを取材中の山之内正氏による試聴レポートも近日中に掲載予定だ。
オーディオテクニカのブースでは、ART MONITORシリーズをはじめとする同社のヘッドホンやヘッドホンアンプが出展。昨年のHigh Endでも披露された超弩級ヘッドホンアンプ「AT-HA5050H」も、引き続きデモが行われていた。