公開日 2023/10/25 10:00
オーディオテクニカ、ハイエンドシステム「鳴神(NARUKAMI)」11/20受注開始。税込1,320万円
“神秘の銘木”黒柿を採用
オーディオテクニカは、真空管ヘッドホンアンプ/プリアンプとヘッドホンで構成されるハイエンドオーディオシステム「鳴神(NARUKAMI)」の受注を11月20日(月)10時より、スペシャルサイトの注文受付欄にて開始する。価格は1,320万円(税込)。受注期間は2024年1月19日(金)18時まで。製品のデリバリーは2024年夏を見込む。
今年8月に開催された香港ハイエンドオーディオショーに出展されたモデルが国内においても展開が決定。海外での好評を受けて急遽日本でのリリースが決まったという。ヘッドホンアンプ/プリアンプ「HPA-KG NARU」と、ウッドハウジングを使用するヘッドホン「AW-KG NARU」のセットで案内される。
後述する製品内容に加え、セット品ということで、販売価格はオーディオテクニカ史上最高額を記録(これまでの最高額は60周年記念モデル)。なお、ヘッドホンは「ATH-AWKG」として年内に一部仕様を変えて単体販売が予定されている。
モデル名に採用される「鳴神」は、日本の伝統文化において雷の神である“雷神”、または自然の力の現れともいえる雷の鳴る音“雷鳴”を意味するもの。日本のお祭りや伝統劇では太鼓を打ち鳴らすことで雷や“雷鳴”を表現するといった歴史的背景に基づいて、音楽に関連する事物の多くが「鳴神」という名で登場しているという。
音と活力を表現するとともに、人々の音楽への情熱と追求を示すというモデル名に込められたメッセージの通り、同社が創業以来60年の間に蓄積してきた音響技術と厳選されたカスタムパーツを多数投入。音のディテールと深みをよりリアルに感じる「繊細で自然なリスニング体験」を楽しむことができるとアピールしている。
モデル名だけでなく、型番にも本製品の特徴となる要素を散りばめる。アンプ・ヘッドホン型番に共通する「KG」は、使用される木材「黒柿」を意味している。
なお、黒柿は樹種ではなく、柿の木の中で内部に黒い紋様が現れたものを指す。内部に黒い模様ができる理由については現在も明らかになっていない上、100年以上経った古木でしか見つかっていないとのことから“神秘の銘木”とも言われる。
長年黒柿を取り扱う島根県出雲市に構える、おかや木芸の職人の手による熟練した専門知識、高い技術で木材の乾燥と加工を実施。加工については、当初は巧く形を成型できなかったり、収縮してしまうという苦労もあったとのことだが、本モデル用の新しい技術を編み出すことで、製品として形作ることができたという。
使用する木材の候補としては、これまで同社が使用してきた黒檀や桜という案も出たという。最終的には、極めてハイエンドな構成となっているアンプに合わせる形で、希少な木材を使うことで高級感を訴求する方向に舵を取ったと説明してくれた。また、非常に数に限りのある黒柿の特性から、鳴神の流通は受注生産という形に決定したという背景もあるとのことだ。
システムの中枢となるアンプのデザインは、日本の伝統的な庭園をコンセプトに枯山水と和室のイメージを取り入れ、「音の宇宙」を表現。サイドパネルにあつらえた黒柿の特徴的な木目により、1台1台が異なる表情を魅せ、同じものが存在しない特別感を演出している。
筐体フロント部への印刷も必要最低限となっており、機器操作に必要な表示は、同梱の金属パネルを組み合わせることでサポートするなど、黒柿の質感を活かしたデザインを徹底した。
その他フレーム部分については黒一色のアルミを使用。トッププレートは枯山水をイメージし、横方向に水流を表す紋様を真っ直ぐに刻む。そして、直下に真空管を配する孔の周りは、水流が出会うことで発生する渦をイメージした意匠を表現。交わることで無限を象徴する「∞」を形成する。そして本体の両側へと水が流れ落ちるような紋様が黒柿を囲む。
真空管および出力トランスを保護する金属のメッシュカバーには、日本固有の樹種で、庭園や景観設計に広く使われる綾杉からくる「綾杉模様」を採用。なお、安全規格に基づいて、グリルの取り外しができない仕様となっているが、その結果ネジのないシームレスなデザインとして完成した。
プロジェクトのスタートは2012年頃になるとのことで、同社製品では「AT-HA5050H」「AT-HA22TUBE」と同時期に開発を始めたとのこと。
試作については、ひとつひとつの部品の音質傾向を理解した上で、回路や部品、機構による音質の違いを耳で確かめながら判断してきたと同社。同社の目指す鮮明さ、躍動感のある「真空管の音」を追求し続けた結果、製品としての形が完成したのは今から2年前。間にコロナ禍を挟んだこともあり、一度はプロジェクト自体が座礁に乗り上げるも、10年の歳月をかけ現在の仕様に至った。
真空管は個別にテストとマッチングを行うことで、システムに最適化したパフォーマンスを引き出した。選定についても試作機を2機用いて「AB比較」を行った上で使用するものを絞り込んでいった。
信号増幅段には、ペアリングされたJJ Electronic社製の「ECC83S-gold」を採用し、豊かで響きのあるサウンドを再現。パワー段には、高槻電器工業社製の「TA-300B」が2ペア使用され、パワフルなドライブ力と躍動感のある高品質なサウンドを提供するとしている。また、ハムやその他のノイズを抑制するため、TA-300Bのヒーターは複雑な直流点灯方式で駆動する。
これらの真空管をフルバランス構成でドライブ。前段4本のECC83SをSRPP回路で信号増幅し、後段4本のTA-300Bを力強く駆動させる洗練されたアンプ回路設計を実現した。バランス入力時には、信号は直接左右のバランス回路に送られ、ライン入力時にはルンダール社製の入力トランス「LL1532」を介してバランス信号に変換、左右のバランス回路に信号伝送を行う。バランス変換回路についても、豊かなハーモニクスとダイナミックレンジ幅をもたせることで、真空管ならではの音の味わいをより引き出すとともに、クリアで高品質な音色表現したと同社はアピールしている。
回路設計も左右のチャンネルがHOT側・COLD側のバランス回路からなる、4回路の贅沢な構成を採用。左右の音声信号回路にそれぞれ独立した専用電源トランスから電流を供給することで、高い分離度と低ノイズ化を達成。優れた音楽再生能力に寄与する。また、入力の切り替えや出力トランスの切り替えは、すべてシールされたリレーで行い、耐久性と信頼性を確保。加えて、リレーを使用することで、最適化した信号の流れを実現させた。
電子回路部品についても高品質パーツをふんだんに投入。電圧増幅段には「ECC83S」を使用したSRPP回路を採用し、電流増幅段ではTA-300Bを介して出力トランス「LL2765AgAM」を駆動する。
さらに、LL1532や、特別仕様のアモルファスコア+銀線で作られている出力トランス「LL2765AgAM」、アムトランスの極めて高い放熱特性を発揮する材料と構造を持った最高級オーディオ抵抗、本製品のために専用設計された染谷電子社製の左右独立電源トランス、JJ Electronic社製の整流管「GZ34S」など、音質へのこだわりを念頭に厳選されたものが使用される。
なお、採用パーツであるルンダール社のアモルファスコア銀線出力トランスは、一般的なコアとは異なるアモルファス合金を使用することで、非常に低い磁気ヒステリシス損失、高い飽和磁束密度、優れた周波数特性を兼ね揃える。さらに、コアを高純度の銀線で巻くことで、非常に低い抵抗と優れた導電性を獲得。この設計により、真空管アンプの出力トランスとヘッドホンのインピーダンスマッチングにおいて最適な数値を提供する。
ヘッドホン出力はフロントにXLR 4pinとφ6.3mmのシングルエンド出力を装備。各部機能として、出力トランスのヘッドホンマッチング回路には3つのポジションを用意。ヘッドホンの特性や音質に応じてインピーダンスを選択可能。その他L/R ボリュームバランス調整ノブや、プリアンプの出力機能を装備。TA-300Bで駆動される出力トランスの信号を出力してパワーアンプを駆動することもできる。
付属のヘッドホンAW-KG NARUは、既存モデルをベースに新たなチューニングを実施。先述の通りハウジングには黒柿を採用する。ヘッドホンケーブルは厚めの金メッキ導線を使用しているとのことだ。
超ハイエンドに相応しい内容となっている本モデルの一般公開は、10月28日(土)に開催予定の秋のヘッドフォン祭2023同社ブースにて予定する。試聴については事前のWEB申し込み制となっているが、記事執筆時点で既に受付を終了している。
また、同社が主催する「Analog Market 2023」(11月18日・19日)内でも試聴を予定する。受付方法や、参加方法については今後のアナウンスを予定する。
今年8月に開催された香港ハイエンドオーディオショーに出展されたモデルが国内においても展開が決定。海外での好評を受けて急遽日本でのリリースが決まったという。ヘッドホンアンプ/プリアンプ「HPA-KG NARU」と、ウッドハウジングを使用するヘッドホン「AW-KG NARU」のセットで案内される。
後述する製品内容に加え、セット品ということで、販売価格はオーディオテクニカ史上最高額を記録(これまでの最高額は60周年記念モデル)。なお、ヘッドホンは「ATH-AWKG」として年内に一部仕様を変えて単体販売が予定されている。
モデル名に採用される「鳴神」は、日本の伝統文化において雷の神である“雷神”、または自然の力の現れともいえる雷の鳴る音“雷鳴”を意味するもの。日本のお祭りや伝統劇では太鼓を打ち鳴らすことで雷や“雷鳴”を表現するといった歴史的背景に基づいて、音楽に関連する事物の多くが「鳴神」という名で登場しているという。
音と活力を表現するとともに、人々の音楽への情熱と追求を示すというモデル名に込められたメッセージの通り、同社が創業以来60年の間に蓄積してきた音響技術と厳選されたカスタムパーツを多数投入。音のディテールと深みをよりリアルに感じる「繊細で自然なリスニング体験」を楽しむことができるとアピールしている。
■“神秘の銘木”を惜しみなく使用。同じものが一つとして存在しないデザイン
モデル名だけでなく、型番にも本製品の特徴となる要素を散りばめる。アンプ・ヘッドホン型番に共通する「KG」は、使用される木材「黒柿」を意味している。
なお、黒柿は樹種ではなく、柿の木の中で内部に黒い紋様が現れたものを指す。内部に黒い模様ができる理由については現在も明らかになっていない上、100年以上経った古木でしか見つかっていないとのことから“神秘の銘木”とも言われる。
長年黒柿を取り扱う島根県出雲市に構える、おかや木芸の職人の手による熟練した専門知識、高い技術で木材の乾燥と加工を実施。加工については、当初は巧く形を成型できなかったり、収縮してしまうという苦労もあったとのことだが、本モデル用の新しい技術を編み出すことで、製品として形作ることができたという。
使用する木材の候補としては、これまで同社が使用してきた黒檀や桜という案も出たという。最終的には、極めてハイエンドな構成となっているアンプに合わせる形で、希少な木材を使うことで高級感を訴求する方向に舵を取ったと説明してくれた。また、非常に数に限りのある黒柿の特性から、鳴神の流通は受注生産という形に決定したという背景もあるとのことだ。
システムの中枢となるアンプのデザインは、日本の伝統的な庭園をコンセプトに枯山水と和室のイメージを取り入れ、「音の宇宙」を表現。サイドパネルにあつらえた黒柿の特徴的な木目により、1台1台が異なる表情を魅せ、同じものが存在しない特別感を演出している。
筐体フロント部への印刷も必要最低限となっており、機器操作に必要な表示は、同梱の金属パネルを組み合わせることでサポートするなど、黒柿の質感を活かしたデザインを徹底した。
その他フレーム部分については黒一色のアルミを使用。トッププレートは枯山水をイメージし、横方向に水流を表す紋様を真っ直ぐに刻む。そして、直下に真空管を配する孔の周りは、水流が出会うことで発生する渦をイメージした意匠を表現。交わることで無限を象徴する「∞」を形成する。そして本体の両側へと水が流れ落ちるような紋様が黒柿を囲む。
真空管および出力トランスを保護する金属のメッシュカバーには、日本固有の樹種で、庭園や景観設計に広く使われる綾杉からくる「綾杉模様」を採用。なお、安全規格に基づいて、グリルの取り外しができない仕様となっているが、その結果ネジのないシームレスなデザインとして完成した。
■厳選パーツを多数投入。オーディオテクニカの目指す最高峰の音を再現
プロジェクトのスタートは2012年頃になるとのことで、同社製品では「AT-HA5050H」「AT-HA22TUBE」と同時期に開発を始めたとのこと。
試作については、ひとつひとつの部品の音質傾向を理解した上で、回路や部品、機構による音質の違いを耳で確かめながら判断してきたと同社。同社の目指す鮮明さ、躍動感のある「真空管の音」を追求し続けた結果、製品としての形が完成したのは今から2年前。間にコロナ禍を挟んだこともあり、一度はプロジェクト自体が座礁に乗り上げるも、10年の歳月をかけ現在の仕様に至った。
真空管は個別にテストとマッチングを行うことで、システムに最適化したパフォーマンスを引き出した。選定についても試作機を2機用いて「AB比較」を行った上で使用するものを絞り込んでいった。
信号増幅段には、ペアリングされたJJ Electronic社製の「ECC83S-gold」を採用し、豊かで響きのあるサウンドを再現。パワー段には、高槻電器工業社製の「TA-300B」が2ペア使用され、パワフルなドライブ力と躍動感のある高品質なサウンドを提供するとしている。また、ハムやその他のノイズを抑制するため、TA-300Bのヒーターは複雑な直流点灯方式で駆動する。
これらの真空管をフルバランス構成でドライブ。前段4本のECC83SをSRPP回路で信号増幅し、後段4本のTA-300Bを力強く駆動させる洗練されたアンプ回路設計を実現した。バランス入力時には、信号は直接左右のバランス回路に送られ、ライン入力時にはルンダール社製の入力トランス「LL1532」を介してバランス信号に変換、左右のバランス回路に信号伝送を行う。バランス変換回路についても、豊かなハーモニクスとダイナミックレンジ幅をもたせることで、真空管ならではの音の味わいをより引き出すとともに、クリアで高品質な音色表現したと同社はアピールしている。
回路設計も左右のチャンネルがHOT側・COLD側のバランス回路からなる、4回路の贅沢な構成を採用。左右の音声信号回路にそれぞれ独立した専用電源トランスから電流を供給することで、高い分離度と低ノイズ化を達成。優れた音楽再生能力に寄与する。また、入力の切り替えや出力トランスの切り替えは、すべてシールされたリレーで行い、耐久性と信頼性を確保。加えて、リレーを使用することで、最適化した信号の流れを実現させた。
電子回路部品についても高品質パーツをふんだんに投入。電圧増幅段には「ECC83S」を使用したSRPP回路を採用し、電流増幅段ではTA-300Bを介して出力トランス「LL2765AgAM」を駆動する。
さらに、LL1532や、特別仕様のアモルファスコア+銀線で作られている出力トランス「LL2765AgAM」、アムトランスの極めて高い放熱特性を発揮する材料と構造を持った最高級オーディオ抵抗、本製品のために専用設計された染谷電子社製の左右独立電源トランス、JJ Electronic社製の整流管「GZ34S」など、音質へのこだわりを念頭に厳選されたものが使用される。
なお、採用パーツであるルンダール社のアモルファスコア銀線出力トランスは、一般的なコアとは異なるアモルファス合金を使用することで、非常に低い磁気ヒステリシス損失、高い飽和磁束密度、優れた周波数特性を兼ね揃える。さらに、コアを高純度の銀線で巻くことで、非常に低い抵抗と優れた導電性を獲得。この設計により、真空管アンプの出力トランスとヘッドホンのインピーダンスマッチングにおいて最適な数値を提供する。
ヘッドホン出力はフロントにXLR 4pinとφ6.3mmのシングルエンド出力を装備。各部機能として、出力トランスのヘッドホンマッチング回路には3つのポジションを用意。ヘッドホンの特性や音質に応じてインピーダンスを選択可能。その他L/R ボリュームバランス調整ノブや、プリアンプの出力機能を装備。TA-300Bで駆動される出力トランスの信号を出力してパワーアンプを駆動することもできる。
付属のヘッドホンAW-KG NARUは、既存モデルをベースに新たなチューニングを実施。先述の通りハウジングには黒柿を採用する。ヘッドホンケーブルは厚めの金メッキ導線を使用しているとのことだ。
超ハイエンドに相応しい内容となっている本モデルの一般公開は、10月28日(土)に開催予定の秋のヘッドフォン祭2023同社ブースにて予定する。試聴については事前のWEB申し込み制となっているが、記事執筆時点で既に受付を終了している。
また、同社が主催する「Analog Market 2023」(11月18日・19日)内でも試聴を予定する。受付方法や、参加方法については今後のアナウンスを予定する。