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公開日 2006/02/07 19:19
<折原一也の徹底レポート> FHPが開発したフルHD PDPの画質をチェックする
薄型大画面テレビのフルHD化が注目を集める中、日立製作所のプラズマテレビ“Wooo”シリーズのPDPを開発する富士通日立プラズマディスプレイ(以下FHP)から、42V型と(関連記事)と55V型(関連記事)のフルHDプラズマディスプレイが相次いで発表された。
FHPは、2006年10月には同社宮崎工場の三番館を完成させ、現在の月産10万台から20万台に大きく向上させる予定で、PDPの開発と供給能力の増大に意欲的に取り組んでいる。今回、同社を訪問してフルHDパネルの詳細を聞き、55V型/42V型パネルの試作機をチェックすることができた。
●高精細化に有利なALISパネル
今回視聴した42V型フルHDプラズマパネルは、 同社が従来から開発しているALISパネルの技術を引き継ぐ形で開発が行われている。Woooシリーズが搭載するALISパネルは、他社の多くのプラズマパネルが1024×768(XGA、約79万画素)のパネルを採用しているのに対して、1024×1024画素(約105万画素)の高解像度を実現しているのが大きな特徴。これにより精細感のある映像を実現しており、とりわけ縦方向では映像のオーバースキャンを行うことで映像のクオリティを落とさず表示できる利点がある。また開口率はXGA方式の多くが約50%程度であるのに対し、ALISパネルでは約68%を実現しており、より発光領域が広く滑らかな映像を表示している。
ALISパネルの詳しい仕組みは図に譲るが、発光の際にペアで駆動する電極を奇数ライン、偶数ラインの組み合わせの両方で用いることで、より小さな画素を作り出すことに成功している。また、発光デューティーが1/2となるため、信頼性でも有利となる。発光させる画素を決定するアドレスの行程も、ALISパネルではこれまで片方向にアドレス電極を配置するシングルスキャン方式を採用しており、片側が空いていた。フルHDのALISパネルでは、この空きスペースに電極を配置することで、無理のない高解像度化が可能になっている。
●42V型の小画面でフルHD解像度を実現
今回の目玉となった42V型のフルHDプラズマパネルでは、ALIS方式のパネルを採用してきたFHPの強みを活かし、世界最高密度(XGA比約2.6倍の画素数)であるセル面積0.16(×RGB)×0.48平方ミリメートルの正方形セルを実現。これに「新開発スリムリブ」を組み合わせることでセルピッチを現行の0.3mmから0.16mmまで小型化しており、1920×1080の高精細フルHD解像度の表示を可能としている。開口率も一般的なXGAパネルが約50%程度であるのに対して約61%となっており、滑らかな映像を実現できるのはもちろん、ピーク輝度1000cd/m2、パネルの駆動波形の最適化により暗部コントラストも3000対1という高いスペックを実現している。
一方55V型の製品では、1920×1080ドットのフルHD解像度を実現したのはもちろんのこと、各セル面積0.21(×RGB)×0.63平方ミリメートルのリブ・電極形状と放電ガス組成を新たに設計することによって、フルHD化による輝度や発光効率の低下を抑制している。また高輝度・高効率パネルと従来比約1.3倍の高速駆動技術によってピーク輝度は1000cd/mを実現。新開発の高コントラスト駆動(フルブラック駆動)技術により暗部コントラスト5000対1を実現している。
●フルHDプラズマパネルの画質をチェック
画質のチェックは現行のALISパネルとの比較という形で行った。色合いについてはまだ調整前の段階とのことだったが、42V型の映像ではパネルの明るさが十分に確保できていることが分かった。精細感については、1m足らずの近距離で視聴したところ、細かな映像が動くシーンではより緻密さを増しており、細部の階調の違いをきちんと表示しきれているため、奥行き感が非常に向上している。
また解像度の違いがよくわかる静止画を表示するテストでは、現行パネルの文字のアウトラインがギザギザにドットが見えていたのに対して、フルHDパネルの製品では滑らかな曲線を表示できる。この違いは、現行パネルのみで映像を見ている限りではほとんど気になることはないが、しばらく映像を眺めていると、ソースを問わず精細さの違いが分かるようになる。もちろん、画質はフルHDパネルに軍配が上がるのは言うまでもない。
42V型と55V型の画質の傾向にも違いが見られた。42V型パネルは従来からの日立のプラズマテレビのようにピーク輝度が高いのに対して、プログレッシブ方式の55V型は、多少ピーク輝度を低めに抑えているように見えた。その一方で、ワイヤーのように曲線が張り巡らされた映像を表示した際の表示は、55V型の方がクリアに見える。採用する駆動方式は画面サイズによって使い分けるとのことだが、両方式の中間サイズになる50V型程度を作る際にはどちらの方式になるかを尋ねたところ、輝度の向上に有利なALIS方式の採用に前向きなようだ。
●動画に強いプラズマの今後に期待
フルHDプラズマの気になる商品化の時期だが、55V型は今年夏以降のパネル出荷が予定されており、秋以降の新製品に搭載が見込まれる。42V型は2007年春に量産開始となる。フルHDのプラズマパネルを採用した製品は従来形式の製品と比べて若干コストアップが予想されるため、従来品も併売される見込みだ。動画応答性能が高く、視野角も広いなど、ディスプレイとしての高い資質を持つプラズマだけに、高解像度の製品がいち早く登場することに期待したい。
(折原一也)
FHPは、2006年10月には同社宮崎工場の三番館を完成させ、現在の月産10万台から20万台に大きく向上させる予定で、PDPの開発と供給能力の増大に意欲的に取り組んでいる。今回、同社を訪問してフルHDパネルの詳細を聞き、55V型/42V型パネルの試作機をチェックすることができた。
●高精細化に有利なALISパネル
今回視聴した42V型フルHDプラズマパネルは、 同社が従来から開発しているALISパネルの技術を引き継ぐ形で開発が行われている。Woooシリーズが搭載するALISパネルは、他社の多くのプラズマパネルが1024×768(XGA、約79万画素)のパネルを採用しているのに対して、1024×1024画素(約105万画素)の高解像度を実現しているのが大きな特徴。これにより精細感のある映像を実現しており、とりわけ縦方向では映像のオーバースキャンを行うことで映像のクオリティを落とさず表示できる利点がある。また開口率はXGA方式の多くが約50%程度であるのに対し、ALISパネルでは約68%を実現しており、より発光領域が広く滑らかな映像を表示している。
ALISパネルの詳しい仕組みは図に譲るが、発光の際にペアで駆動する電極を奇数ライン、偶数ラインの組み合わせの両方で用いることで、より小さな画素を作り出すことに成功している。また、発光デューティーが1/2となるため、信頼性でも有利となる。発光させる画素を決定するアドレスの行程も、ALISパネルではこれまで片方向にアドレス電極を配置するシングルスキャン方式を採用しており、片側が空いていた。フルHDのALISパネルでは、この空きスペースに電極を配置することで、無理のない高解像度化が可能になっている。
●42V型の小画面でフルHD解像度を実現
今回の目玉となった42V型のフルHDプラズマパネルでは、ALIS方式のパネルを採用してきたFHPの強みを活かし、世界最高密度(XGA比約2.6倍の画素数)であるセル面積0.16(×RGB)×0.48平方ミリメートルの正方形セルを実現。これに「新開発スリムリブ」を組み合わせることでセルピッチを現行の0.3mmから0.16mmまで小型化しており、1920×1080の高精細フルHD解像度の表示を可能としている。開口率も一般的なXGAパネルが約50%程度であるのに対して約61%となっており、滑らかな映像を実現できるのはもちろん、ピーク輝度1000cd/m2、パネルの駆動波形の最適化により暗部コントラストも3000対1という高いスペックを実現している。
一方55V型の製品では、1920×1080ドットのフルHD解像度を実現したのはもちろんのこと、各セル面積0.21(×RGB)×0.63平方ミリメートルのリブ・電極形状と放電ガス組成を新たに設計することによって、フルHD化による輝度や発光効率の低下を抑制している。また高輝度・高効率パネルと従来比約1.3倍の高速駆動技術によってピーク輝度は1000cd/mを実現。新開発の高コントラスト駆動(フルブラック駆動)技術により暗部コントラスト5000対1を実現している。
●フルHDプラズマパネルの画質をチェック
画質のチェックは現行のALISパネルとの比較という形で行った。色合いについてはまだ調整前の段階とのことだったが、42V型の映像ではパネルの明るさが十分に確保できていることが分かった。精細感については、1m足らずの近距離で視聴したところ、細かな映像が動くシーンではより緻密さを増しており、細部の階調の違いをきちんと表示しきれているため、奥行き感が非常に向上している。
また解像度の違いがよくわかる静止画を表示するテストでは、現行パネルの文字のアウトラインがギザギザにドットが見えていたのに対して、フルHDパネルの製品では滑らかな曲線を表示できる。この違いは、現行パネルのみで映像を見ている限りではほとんど気になることはないが、しばらく映像を眺めていると、ソースを問わず精細さの違いが分かるようになる。もちろん、画質はフルHDパネルに軍配が上がるのは言うまでもない。
42V型と55V型の画質の傾向にも違いが見られた。42V型パネルは従来からの日立のプラズマテレビのようにピーク輝度が高いのに対して、プログレッシブ方式の55V型は、多少ピーク輝度を低めに抑えているように見えた。その一方で、ワイヤーのように曲線が張り巡らされた映像を表示した際の表示は、55V型の方がクリアに見える。採用する駆動方式は画面サイズによって使い分けるとのことだが、両方式の中間サイズになる50V型程度を作る際にはどちらの方式になるかを尋ねたところ、輝度の向上に有利なALIS方式の採用に前向きなようだ。
●動画に強いプラズマの今後に期待
フルHDプラズマの気になる商品化の時期だが、55V型は今年夏以降のパネル出荷が予定されており、秋以降の新製品に搭載が見込まれる。42V型は2007年春に量産開始となる。フルHDのプラズマパネルを採用した製品は従来形式の製品と比べて若干コストアップが予想されるため、従来品も併売される見込みだ。動画応答性能が高く、視野角も広いなど、ディスプレイとしての高い資質を持つプラズマだけに、高解像度の製品がいち早く登場することに期待したい。
(折原一也)