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公開日 2006/09/26 17:33
大画面化・HD化をさらに加速する − Wooo10000シリーズ発表会詳報
別項でお伝えしたとおり、日立製作所は本日、プラズマテレビ“Wooo”10000シリーズ3機種を発表した。ここでは発表会の模様をお伝えする。
■「大型化、HD化への対応が日立のテーマ」
まず初めに登壇したのは、同社執行役常務 ユビキタスプラットフォームグループ長&CEOの江幡誠氏。同氏は冒頭、同社の薄型テレビ事業戦略を説明し、「50V型以上の拡大」「フルHD1080の拡大」「HDD内蔵」「ネットワーク化(IPTV)への対応」の4点が戦略の骨子であると述べた。
ワールドワイドのプラズマテレビ市場動向では、2008年度に50V型以上が40%になり、同時にHD比率も90%を超すと予測。「この大型化、HD化に対応するのが日立のテーマだ」とした。
同氏は国内テレビの市場動向にも言及。「ブラウン管が主役だった最後の年である2001年には、37V型以上の販売比率は2%だった。これが現在は40%以上に拡大しており、大画面の常識が変化しつつある」と分析。さらにプラズマテレビ市場動向については、2004年度に月4,000台程度だった50V型以上の販売比率が、今年4〜8月には9,000台程度と、2倍以上に伸びている点に着目。この流れは今後さらに強まると予測した。
同社では、これらの大画面化、HD化に対応するため、プラズマテレビのベースとなるパネル生産を強化する。「富士通日立プラズマディスプレイ(FHP)の三番館が、この10月から量産を開始する。来年夏には年間360万台の生産体制が完成し、85V型までの大画面パネルも生産できる」。また江幡氏は、「ここが一番のポイントなのだが」と前置きし、「これまでの二番館と、新たに稼働する三番館では、生産するサイズを分ける。三番館では42V/50Vといったボリュームゾーンに加え、85V型を生産。二番館では37V型、55V型、60V型、さらには42V型の中国HD規格対応パネルなど、多品種生産を行う。市場や戦略に合わせて2工場で分担生産することで、高効率な生産が可能になる」とした。
さらに液晶テレビについては、IPSアルファテクノロジの最新量産工場をアピールし、「2007年度下期には年間約500万台の体制が整う。26V/32V/37Vの3モデルをすべてIPSα液晶パネルにする」とした。
江幡氏は、同社薄型テレビの大きな特徴である、内蔵HDDへの録画機能についてもくわしく説明した。同氏によると、「プラズマテレビの高画質/高機能タイプの40%は日立のHDD内蔵モデルで、お客様から好評を頂いている」とのことで、現行の9000シリーズの販売の内訳を見ても、70%をHDD内蔵タイプが占めるという。「HDDの訴求で予想以上に販売を伸ばした」と成果に満足しているようだ。なお、今回の新製品投入によってWoooは全16機種となり、そのうちHDD内蔵機種は7機種を占める。
同氏はまた、今後の世界戦略を説明する中で、「HDD内蔵機能の世界展開と進化を行う」と明言。具体的には、「テレビを中心とし、サーバー的な役割をもったものへ進化させる」という。冒頭に紹介した戦略の骨子にも「IPTVへの対応」という文字があることから、IP放送を内蔵HDDに蓄えて好きな時に視聴するといった、新たな機能を検討しているのではないかと予想される。
最後に江幡氏は、レコーダー、カメラといった、薄型テレビ以外の“Wooo”との連携についても強調。中でもカメラでは、8月30日に発売した世界初のHDD+DVDハイブリッドカメラ「DZ-HS303」(関連ニュース)が非常に好調とのことで、POSデータの集計では、9月に入ってから4週連続1位を続けているという。直近のシェアでは13%を占めているとのことで、同社が「カメラ革命」と呼ぶ新たなスタイルが、多くのユーザーに受け入れられているようだ。
■「総合画質は動画解像度で決まる」
製品の詳細については、同社ユビキタスプラットフォームグループ マーケティング本部の吉野正則氏が説明した。スペックや機能などはこちらの記事に譲るが、吉野氏は50V型というサイズの意義、そしてプラズマテレビの優位点について強調していたので紹介しよう。
吉野氏によると、同社がユーザーに欲しいテレビのサイズを聞いたところ、半分以上のユーザーが40V型以上を希望したといい、中でも50V型以上を求めるユーザーが多かったという。吉野氏はこのことから、「大画面=50インチという構図ができつつある」と分析。ハイビジョンには、画面高さ(H)の3倍の距離が適正という「3H」という考え方があるが、吉野氏はこれを映画館と50V型画面にも当てはめ、「劇場のスクリーンの高さは5.5mで、劇場の一番良い席までの距離は16m程度。50インチ画面の場合、画面までの距離が2mあれば劇場と同じ視野角が得られ、同等の臨場感が味わえる」と説明した。
また吉野氏は、プラズマテレビの動画表示性能を強調。「テレビは動画を見る時間が圧倒的に長く、このことからテレビの画質は静止画ではなく、動画表示の性能によって決まる。また、小画面に比べて大画面では映像の移動量が多く、さらに動画性能が重要になる」とした。
この動画性能を数値化するため、同社では、モノスコチャートをテレビカメラと同じ速度でスクロールさせながら、目視で解像度を判定する実験を行った。解像度は「TV本」で表す。この結果、スポーツなど動きの速い映像では、液晶に比べプラズマは2倍の視覚的解像度を持つという結果が出たという。吉野氏は「総合画質の一番の決め手は動画解像度。動画解像度が優れるほど、大画面テレビは画質が良いと言える」と、プラズマテレビの液晶テレビに対する優位性を強調した。
吉野氏は、HDD内蔵テレビのユーザー調査結果についても発表。ユーザーの7割が週2〜3回以上の録画を行っているとのことで、「ボタン一つですぐに録画ができ、余計な接続が不要というHDD内蔵の便利さが受け入れられている」とした。またHDDの容量については、XCodeHDによる長時間録画が可能なことについて触れ、ユーザー調査でも「録画を良くする」と答えたユーザーの約6割がHDD容量に「かなり余裕がある」と回答していることを紹介した。
■質疑応答
発表会場で行われた質疑応答をご紹介する。
Q: プラズマテレビ事業に多額の広告宣伝費を投入しているが、思うような結果が出ていないように感じられる。問題点はどこにあると認識しているか。
A: 当社では日米欧中の4極体制で事業を展開しているが、率直に言って2勝2敗という印象だ。日米については好調だが、ヨーロッパでは品揃えが足らず、中国では予想以上に価格が下落した。コストダウンと品揃えの充実が課題と認識しており、コストダウンについては、一気に半分にすると言った、思い切った目標設定が必要になる。品揃えは既に倍程度に増やしており、これは今年後半、来年の結果につながるのではないかと考えている。事業としては、2007年度全体で黒字化を見込んでいる。
Q: 大画面、HDへの対応をしていくとのことだが、液晶テレビについてはどのようなスタンスなのか。撤退するなどの可能性はないのか。
A: たしかに事業の比重はPDPに置いているが、テレビ全体の品揃えとして、37V型より小さいモデルを揃えなければならない。だから液晶テレビは絶対必要だ。ただし、液晶テレビでは、満艦飾でなく、シンプルでコストの安いモデルを投入する必要があると認識している。ODMやOEMなどの工夫で投資効率を上げたい。
Q: 42V型フルHDモデルの発売時期はいつ頃か。
A: 2007年春にパネルの量産を始める。テレビとしての発売は夏以降を予定している。
Q: 85V型フルHDモデルの販売時期はいつ頃か。
A: 2007年度以降に予定している。
Q: 50V型フルHDモデルの販売時期はいつ頃か。
A: 2007年の早い時期に商品化したい。
Q: 2009年度以降の新工場立ち上げ予定を教えて欲しい。
A: 三番館は360万台の生産能力を持っている。我々の予想では2008年度の世界需要を1,500万台としており、そのうち20%程度の生産能力ということになり、当面は問題がないと見ている。2009年以降はショートすることも予想されるが、三番館の生産性を向上させることも検討している。市場の動向を見ながら生産能力の拡充を検討していきたい。
(Phile-web編集部)
■「大型化、HD化への対応が日立のテーマ」
まず初めに登壇したのは、同社執行役常務 ユビキタスプラットフォームグループ長&CEOの江幡誠氏。同氏は冒頭、同社の薄型テレビ事業戦略を説明し、「50V型以上の拡大」「フルHD1080の拡大」「HDD内蔵」「ネットワーク化(IPTV)への対応」の4点が戦略の骨子であると述べた。
ワールドワイドのプラズマテレビ市場動向では、2008年度に50V型以上が40%になり、同時にHD比率も90%を超すと予測。「この大型化、HD化に対応するのが日立のテーマだ」とした。
同氏は国内テレビの市場動向にも言及。「ブラウン管が主役だった最後の年である2001年には、37V型以上の販売比率は2%だった。これが現在は40%以上に拡大しており、大画面の常識が変化しつつある」と分析。さらにプラズマテレビ市場動向については、2004年度に月4,000台程度だった50V型以上の販売比率が、今年4〜8月には9,000台程度と、2倍以上に伸びている点に着目。この流れは今後さらに強まると予測した。
同社では、これらの大画面化、HD化に対応するため、プラズマテレビのベースとなるパネル生産を強化する。「富士通日立プラズマディスプレイ(FHP)の三番館が、この10月から量産を開始する。来年夏には年間360万台の生産体制が完成し、85V型までの大画面パネルも生産できる」。また江幡氏は、「ここが一番のポイントなのだが」と前置きし、「これまでの二番館と、新たに稼働する三番館では、生産するサイズを分ける。三番館では42V/50Vといったボリュームゾーンに加え、85V型を生産。二番館では37V型、55V型、60V型、さらには42V型の中国HD規格対応パネルなど、多品種生産を行う。市場や戦略に合わせて2工場で分担生産することで、高効率な生産が可能になる」とした。
さらに液晶テレビについては、IPSアルファテクノロジの最新量産工場をアピールし、「2007年度下期には年間約500万台の体制が整う。26V/32V/37Vの3モデルをすべてIPSα液晶パネルにする」とした。
江幡氏は、同社薄型テレビの大きな特徴である、内蔵HDDへの録画機能についてもくわしく説明した。同氏によると、「プラズマテレビの高画質/高機能タイプの40%は日立のHDD内蔵モデルで、お客様から好評を頂いている」とのことで、現行の9000シリーズの販売の内訳を見ても、70%をHDD内蔵タイプが占めるという。「HDDの訴求で予想以上に販売を伸ばした」と成果に満足しているようだ。なお、今回の新製品投入によってWoooは全16機種となり、そのうちHDD内蔵機種は7機種を占める。
同氏はまた、今後の世界戦略を説明する中で、「HDD内蔵機能の世界展開と進化を行う」と明言。具体的には、「テレビを中心とし、サーバー的な役割をもったものへ進化させる」という。冒頭に紹介した戦略の骨子にも「IPTVへの対応」という文字があることから、IP放送を内蔵HDDに蓄えて好きな時に視聴するといった、新たな機能を検討しているのではないかと予想される。
最後に江幡氏は、レコーダー、カメラといった、薄型テレビ以外の“Wooo”との連携についても強調。中でもカメラでは、8月30日に発売した世界初のHDD+DVDハイブリッドカメラ「DZ-HS303」(関連ニュース)が非常に好調とのことで、POSデータの集計では、9月に入ってから4週連続1位を続けているという。直近のシェアでは13%を占めているとのことで、同社が「カメラ革命」と呼ぶ新たなスタイルが、多くのユーザーに受け入れられているようだ。
■「総合画質は動画解像度で決まる」
製品の詳細については、同社ユビキタスプラットフォームグループ マーケティング本部の吉野正則氏が説明した。スペックや機能などはこちらの記事に譲るが、吉野氏は50V型というサイズの意義、そしてプラズマテレビの優位点について強調していたので紹介しよう。
吉野氏によると、同社がユーザーに欲しいテレビのサイズを聞いたところ、半分以上のユーザーが40V型以上を希望したといい、中でも50V型以上を求めるユーザーが多かったという。吉野氏はこのことから、「大画面=50インチという構図ができつつある」と分析。ハイビジョンには、画面高さ(H)の3倍の距離が適正という「3H」という考え方があるが、吉野氏はこれを映画館と50V型画面にも当てはめ、「劇場のスクリーンの高さは5.5mで、劇場の一番良い席までの距離は16m程度。50インチ画面の場合、画面までの距離が2mあれば劇場と同じ視野角が得られ、同等の臨場感が味わえる」と説明した。
また吉野氏は、プラズマテレビの動画表示性能を強調。「テレビは動画を見る時間が圧倒的に長く、このことからテレビの画質は静止画ではなく、動画表示の性能によって決まる。また、小画面に比べて大画面では映像の移動量が多く、さらに動画性能が重要になる」とした。
この動画性能を数値化するため、同社では、モノスコチャートをテレビカメラと同じ速度でスクロールさせながら、目視で解像度を判定する実験を行った。解像度は「TV本」で表す。この結果、スポーツなど動きの速い映像では、液晶に比べプラズマは2倍の視覚的解像度を持つという結果が出たという。吉野氏は「総合画質の一番の決め手は動画解像度。動画解像度が優れるほど、大画面テレビは画質が良いと言える」と、プラズマテレビの液晶テレビに対する優位性を強調した。
吉野氏は、HDD内蔵テレビのユーザー調査結果についても発表。ユーザーの7割が週2〜3回以上の録画を行っているとのことで、「ボタン一つですぐに録画ができ、余計な接続が不要というHDD内蔵の便利さが受け入れられている」とした。またHDDの容量については、XCodeHDによる長時間録画が可能なことについて触れ、ユーザー調査でも「録画を良くする」と答えたユーザーの約6割がHDD容量に「かなり余裕がある」と回答していることを紹介した。
■質疑応答
発表会場で行われた質疑応答をご紹介する。
Q: プラズマテレビ事業に多額の広告宣伝費を投入しているが、思うような結果が出ていないように感じられる。問題点はどこにあると認識しているか。
A: 当社では日米欧中の4極体制で事業を展開しているが、率直に言って2勝2敗という印象だ。日米については好調だが、ヨーロッパでは品揃えが足らず、中国では予想以上に価格が下落した。コストダウンと品揃えの充実が課題と認識しており、コストダウンについては、一気に半分にすると言った、思い切った目標設定が必要になる。品揃えは既に倍程度に増やしており、これは今年後半、来年の結果につながるのではないかと考えている。事業としては、2007年度全体で黒字化を見込んでいる。
Q: 大画面、HDへの対応をしていくとのことだが、液晶テレビについてはどのようなスタンスなのか。撤退するなどの可能性はないのか。
A: たしかに事業の比重はPDPに置いているが、テレビ全体の品揃えとして、37V型より小さいモデルを揃えなければならない。だから液晶テレビは絶対必要だ。ただし、液晶テレビでは、満艦飾でなく、シンプルでコストの安いモデルを投入する必要があると認識している。ODMやOEMなどの工夫で投資効率を上げたい。
Q: 42V型フルHDモデルの発売時期はいつ頃か。
A: 2007年春にパネルの量産を始める。テレビとしての発売は夏以降を予定している。
Q: 85V型フルHDモデルの販売時期はいつ頃か。
A: 2007年度以降に予定している。
Q: 50V型フルHDモデルの販売時期はいつ頃か。
A: 2007年の早い時期に商品化したい。
Q: 2009年度以降の新工場立ち上げ予定を教えて欲しい。
A: 三番館は360万台の生産能力を持っている。我々の予想では2008年度の世界需要を1,500万台としており、そのうち20%程度の生産能力ということになり、当面は問題がないと見ている。2009年以降はショートすることも予想されるが、三番館の生産性を向上させることも検討している。市場の動向を見ながら生産能力の拡充を検討していきたい。
(Phile-web編集部)