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公開日 2013/05/14 17:05
シャープ、'12年度は純損失5,453億円 − 「新生シャープ」目指す中期経営計画発表
シャープは、2012年度通期連結業績決算を発表。売上高は2兆4,785億円(前年度比100.9%)、営業損益は1,462億円の赤字、当期純損益は5,453億円の赤字となった。
売上高は前年度からほぼ横ばい。下期は上期比で約2,700億円の売上高増収を実現し、営業利益段階での黒字を達成できたことをアピール。IGZO液晶の量産や、IGZO液晶搭載スマホ/タブレット発売など独自製品の創出が功を奏したという。しかし、急激な円安や需要変動等経営環境の変化に対応し、固定資産の減損や事業構造改革費用の積み増しなどを実施したことから、純損益は5,453億円の赤字に。前回発表した業績予想より953億円下回る結果となった。
また、2012年度4Qにおいて、特別損失の計上を発表した。液晶パネルやAV機器の固定資産についての減損処理473億円や、太陽電池事業の構造転換によるリース設備解約損など事業構造改革費用173億円、TFT液晶事業に関する民事訴訟のうち損失が発生する可能性が高いものについて訴訟損失引当金繰入額323億円の、合計970億円を計上している。
■液晶テレビは大きく売上ダウン/中小型液晶は好調
エレクトロニクス機器部門 AV・通信機器事業では、液晶テレビがASEAN等新興国で販売台数を伸ばしたが、国内市場低迷や中国国内の販売落ち込みなどにより、前年度より大きく売上を落とした。また携帯電話における当年度前半の一部基幹部品の供給不足や、海外携帯電話メーカーとの競争激化の影響などから、AV・通信事業の売上高は7,320億円(前年度比31%減)となった。
一方、健康・環境機器(エアコンや空気清浄機等)は販売好調、国内向けカラー複合機やインフォメーションディスプレイも好調に推移し、売上高を伸ばした。結果、エレクトロニクス機器部門の売上高は1兆3,384億円(前年度比17.9%減)とした。
また電子部品部門 液晶事業では、スマホ/タブレット端末向けの中小型液晶が伸長。大型液晶も好調に推移し、売上高は前年度比54.9%増の6,508億円となった。太陽電池は、欧州等海外市場の販売が減少したものの、国内住宅用等の販売が伸び、売上高を2,598億円(前年度比16.1%増)と伸ばした。そのほか、スマホ/タブレット向けカメラモジュールやLED等の販売も好調。電子部品部門の売上高は1兆1,401億円(前年度比38.2%増)となった。
■2013年度は通期純利益50億円を狙う
2013年度の通期連結業績決算予想も発表された。売上高2兆7,000億円、営業利益800億円、当期純利益50億円を狙う。
2013年度は、安部新政権の経済対策・金融政策により景気回復への期待が高まる一方、欧州の債務リスク再燃や、中国・新興国の成長鈍化から、「予断を許さない難しい状況が続く」と予測。こうした情勢に対処すべく、顧客ニーズへの迅速な対応と、商品・デバイスの事業特性に応じた「ビジネスグループ制」の導入、および2013年4月1日付の組織改革などを行う。別項でお伝えしているとおり、高橋興三氏を社長に新任。奥田現社長は会長に就任する(関連ニュース)。
なお、役員人事については主力銀行より新たに2名の取締役を迎えているが、「事業はやはり我々が決断していかなればダメだと思っている」(高橋氏)とし、経営の自主性を保っていくと説明。「今度来ていただく方達は構造改革のチームに入ってもらって、知見をお借りするという布陣だ」と説明した。
2013年度1Qは、季節的要因により一時的に落ち込みが予想されるものの、2Q以降は安定的な回復を目指すという。1Qから2Qにかけては、デジタル情報家電や液晶の販売が大きく回復すると予想しているとのことだ。
■「新生シャープ」実現めざす中期経営計画発表
新中期経営計画も発表。2013年度を「構造改革ステージ」、2014年度、2015年度を本格成長へと舵を切る「再成長ステージ」と位置付け、シャープの「再生と成長」の実現を目指すという。
基本戦略は「『勝てる市場・分野』へ経営資源をシフト」すること、「自前主義からの脱却、アライアンスの積極活用」、そして「ガバナンス体制の変革による実行力の強化」の3つ。事業ポートフォリオ再構築や液晶事業の収益性改善、ASEANを最重点地域とした海外事業の拡大、前者コスト構造改革による固定費削減、財務体質の改善などに取り組んでいく。こうした計画の下、2013年度の当期純利益黒字化、そして2015年度には営業利益率5%の達成を目指す。
こうした計画について、新社長に就任予定の高橋氏は「いずれもここ数年来のシャープとの決別が必要な戦略」だとコメント。「守るべき創業の精神以外はすべて変える覚悟で進めていく」と、大きな覚悟を持って実行していくとした。
■今後の液晶事業「間違いなく核にする」
そして、再生と成長を実現するための5つの重点施策として「事業ポートフォリオの再構築」「液晶事業の収益性改善」「ASEANを最重点地域とした海外事業の拡大」「全社コスト構造改革による固定費削減」「財務体質の改善」というポイントを挙げる。
「事業ポートフォリオの再構築」とは、前述のように「勝てる分野での勝負」へと移行するということ。同社が持つ強みを活かし、例えばデジタル情報家電であれば大型液晶テレビへの集中、欧州テレビ、BD事業の収益性改善、液晶デバイス事業であれば収益性の高い付加価値ゾーンの拡大などが改革の方向性であるとした。この点について高橋氏は「これまではコモディティ化した液晶テレビ、液晶デバイスなどグローバル市場での戦いにのぞみ苦戦してきた。今後はこの市場からバリュー市場にシフトしていくことで収益の安定性を目指す」とコメントした。
なお、シャープ製品としてのテレビやスマートフォンについては、売上を2015年まで横ばいに設定。「勝てる市場での勝負ということで、基本的には日本市場でのシェアをキープしていく。若干増えていくことはあると思うが、それほど大きくは伸びないと見ている」とした。
液晶事業の収益性については、「付加価値ゾーンの強化」と「安定顧客との取引拡大による販売増」という2点によって限界利益を改善することが重点施策だと説明。IGZOや高精細タッチパネルなどの優位性を背景に、収益性が高く、収益変動リスクが低い付加価値ゾーンを強化していくとした。
液晶事業については、会見に出席したメディアから「巨額赤字の要因が液晶事業だったと思う。今後について液晶を核にするのか」という質問も。これについて高橋氏は「間違いなく核にする」と回答。「液晶事業そのものが赤字でなく、巨額の投資が赤字を招いた」と背景を説明し、「全部自前でやらないとダメ(成長できない)のか?決してそうではないと思う」と、アウトソーシングなども活用しながら再生・成長を図っていく考えを示した。
また、会見ではホンハイなど他社との戦略的アライアンスの状況も紹介。ホンハイとの協業によりSDPが2012年度に黒字転換(前期比500億円強の改善)となったこと、サムスンとの協業による大型液晶パネルの安定受注で亀山第2工場の稼働率が向上したことなどを紹介した。亀山第2工場の操業度については、2013年度下期にはキャパシティの上限近くまでの操業になりそうだという。
なお、海外企業との協業という点では技術流出も懸念されるが、「サムスンはやはりグローバル企業でコンプライアンスがしっかりしている会社。パテントをただで使うだとか、そんなことは絶対にない。彼らは本当に一流企業。流出の定義にもよるが、何かが盗まれるという懸念はない」とした。
そして、今後の持続的な成長に向けては、IGZOや8K技術など同社の強みとなる技術資産を、徹底した顧客志向と組み合わせることで既存領域においてもまだ成長の余地があるとした上で、さらに新規領域の開拓を進めると説明。「ヘルスケア・医療」「ロボティクス」「スマートホーム/モビリティ/オフィス」「食/水/空気の安心安全」「教育」という5つの新事業領域の開拓を行うとした。
そして最後に高橋氏は中期経営計画を実行するために「顧客起点で技術を磨く」ことがキーポイントだとコメント。「あらゆる改革に全力をあげるとともに、徹底したお客様視点と強い技術力に立ち返る。お客様視点で技術力を磨くことにこだわり、喜びを提供することがシャープの存在価値だ」とし、こうした姿勢の下で必ず再生と成長を成し遂げると語った。
売上高は前年度からほぼ横ばい。下期は上期比で約2,700億円の売上高増収を実現し、営業利益段階での黒字を達成できたことをアピール。IGZO液晶の量産や、IGZO液晶搭載スマホ/タブレット発売など独自製品の創出が功を奏したという。しかし、急激な円安や需要変動等経営環境の変化に対応し、固定資産の減損や事業構造改革費用の積み増しなどを実施したことから、純損益は5,453億円の赤字に。前回発表した業績予想より953億円下回る結果となった。
また、2012年度4Qにおいて、特別損失の計上を発表した。液晶パネルやAV機器の固定資産についての減損処理473億円や、太陽電池事業の構造転換によるリース設備解約損など事業構造改革費用173億円、TFT液晶事業に関する民事訴訟のうち損失が発生する可能性が高いものについて訴訟損失引当金繰入額323億円の、合計970億円を計上している。
■液晶テレビは大きく売上ダウン/中小型液晶は好調
エレクトロニクス機器部門 AV・通信機器事業では、液晶テレビがASEAN等新興国で販売台数を伸ばしたが、国内市場低迷や中国国内の販売落ち込みなどにより、前年度より大きく売上を落とした。また携帯電話における当年度前半の一部基幹部品の供給不足や、海外携帯電話メーカーとの競争激化の影響などから、AV・通信事業の売上高は7,320億円(前年度比31%減)となった。
一方、健康・環境機器(エアコンや空気清浄機等)は販売好調、国内向けカラー複合機やインフォメーションディスプレイも好調に推移し、売上高を伸ばした。結果、エレクトロニクス機器部門の売上高は1兆3,384億円(前年度比17.9%減)とした。
また電子部品部門 液晶事業では、スマホ/タブレット端末向けの中小型液晶が伸長。大型液晶も好調に推移し、売上高は前年度比54.9%増の6,508億円となった。太陽電池は、欧州等海外市場の販売が減少したものの、国内住宅用等の販売が伸び、売上高を2,598億円(前年度比16.1%増)と伸ばした。そのほか、スマホ/タブレット向けカメラモジュールやLED等の販売も好調。電子部品部門の売上高は1兆1,401億円(前年度比38.2%増)となった。
■2013年度は通期純利益50億円を狙う
2013年度の通期連結業績決算予想も発表された。売上高2兆7,000億円、営業利益800億円、当期純利益50億円を狙う。
2013年度は、安部新政権の経済対策・金融政策により景気回復への期待が高まる一方、欧州の債務リスク再燃や、中国・新興国の成長鈍化から、「予断を許さない難しい状況が続く」と予測。こうした情勢に対処すべく、顧客ニーズへの迅速な対応と、商品・デバイスの事業特性に応じた「ビジネスグループ制」の導入、および2013年4月1日付の組織改革などを行う。別項でお伝えしているとおり、高橋興三氏を社長に新任。奥田現社長は会長に就任する(関連ニュース)。
なお、役員人事については主力銀行より新たに2名の取締役を迎えているが、「事業はやはり我々が決断していかなればダメだと思っている」(高橋氏)とし、経営の自主性を保っていくと説明。「今度来ていただく方達は構造改革のチームに入ってもらって、知見をお借りするという布陣だ」と説明した。
2013年度1Qは、季節的要因により一時的に落ち込みが予想されるものの、2Q以降は安定的な回復を目指すという。1Qから2Qにかけては、デジタル情報家電や液晶の販売が大きく回復すると予想しているとのことだ。
■「新生シャープ」実現めざす中期経営計画発表
新中期経営計画も発表。2013年度を「構造改革ステージ」、2014年度、2015年度を本格成長へと舵を切る「再成長ステージ」と位置付け、シャープの「再生と成長」の実現を目指すという。
基本戦略は「『勝てる市場・分野』へ経営資源をシフト」すること、「自前主義からの脱却、アライアンスの積極活用」、そして「ガバナンス体制の変革による実行力の強化」の3つ。事業ポートフォリオ再構築や液晶事業の収益性改善、ASEANを最重点地域とした海外事業の拡大、前者コスト構造改革による固定費削減、財務体質の改善などに取り組んでいく。こうした計画の下、2013年度の当期純利益黒字化、そして2015年度には営業利益率5%の達成を目指す。
こうした計画について、新社長に就任予定の高橋氏は「いずれもここ数年来のシャープとの決別が必要な戦略」だとコメント。「守るべき創業の精神以外はすべて変える覚悟で進めていく」と、大きな覚悟を持って実行していくとした。
■今後の液晶事業「間違いなく核にする」
そして、再生と成長を実現するための5つの重点施策として「事業ポートフォリオの再構築」「液晶事業の収益性改善」「ASEANを最重点地域とした海外事業の拡大」「全社コスト構造改革による固定費削減」「財務体質の改善」というポイントを挙げる。
「事業ポートフォリオの再構築」とは、前述のように「勝てる分野での勝負」へと移行するということ。同社が持つ強みを活かし、例えばデジタル情報家電であれば大型液晶テレビへの集中、欧州テレビ、BD事業の収益性改善、液晶デバイス事業であれば収益性の高い付加価値ゾーンの拡大などが改革の方向性であるとした。この点について高橋氏は「これまではコモディティ化した液晶テレビ、液晶デバイスなどグローバル市場での戦いにのぞみ苦戦してきた。今後はこの市場からバリュー市場にシフトしていくことで収益の安定性を目指す」とコメントした。
なお、シャープ製品としてのテレビやスマートフォンについては、売上を2015年まで横ばいに設定。「勝てる市場での勝負ということで、基本的には日本市場でのシェアをキープしていく。若干増えていくことはあると思うが、それほど大きくは伸びないと見ている」とした。
液晶事業の収益性については、「付加価値ゾーンの強化」と「安定顧客との取引拡大による販売増」という2点によって限界利益を改善することが重点施策だと説明。IGZOや高精細タッチパネルなどの優位性を背景に、収益性が高く、収益変動リスクが低い付加価値ゾーンを強化していくとした。
液晶事業については、会見に出席したメディアから「巨額赤字の要因が液晶事業だったと思う。今後について液晶を核にするのか」という質問も。これについて高橋氏は「間違いなく核にする」と回答。「液晶事業そのものが赤字でなく、巨額の投資が赤字を招いた」と背景を説明し、「全部自前でやらないとダメ(成長できない)のか?決してそうではないと思う」と、アウトソーシングなども活用しながら再生・成長を図っていく考えを示した。
また、会見ではホンハイなど他社との戦略的アライアンスの状況も紹介。ホンハイとの協業によりSDPが2012年度に黒字転換(前期比500億円強の改善)となったこと、サムスンとの協業による大型液晶パネルの安定受注で亀山第2工場の稼働率が向上したことなどを紹介した。亀山第2工場の操業度については、2013年度下期にはキャパシティの上限近くまでの操業になりそうだという。
なお、海外企業との協業という点では技術流出も懸念されるが、「サムスンはやはりグローバル企業でコンプライアンスがしっかりしている会社。パテントをただで使うだとか、そんなことは絶対にない。彼らは本当に一流企業。流出の定義にもよるが、何かが盗まれるという懸念はない」とした。
そして、今後の持続的な成長に向けては、IGZOや8K技術など同社の強みとなる技術資産を、徹底した顧客志向と組み合わせることで既存領域においてもまだ成長の余地があるとした上で、さらに新規領域の開拓を進めると説明。「ヘルスケア・医療」「ロボティクス」「スマートホーム/モビリティ/オフィス」「食/水/空気の安心安全」「教育」という5つの新事業領域の開拓を行うとした。
そして最後に高橋氏は中期経営計画を実行するために「顧客起点で技術を磨く」ことがキーポイントだとコメント。「あらゆる改革に全力をあげるとともに、徹底したお客様視点と強い技術力に立ち返る。お客様視点で技術力を磨くことにこだわり、喜びを提供することがシャープの存在価値だ」とし、こうした姿勢の下で必ず再生と成長を成し遂げると語った。