公開日 2011/08/29 15:37
『英国王のスピーチ』で味わうプラズマテレビの“感性領域”
話題のソフトをWoooで見る
この連載「話題のソフトを“Wooo”で観る」では、AV評論家・大橋伸太郎氏が旬のソフトの見どころや内容をご紹介するとともに、“Wooo”薄型テレビで視聴した際の映像調整のコツなどについてもお伝えします。
英国王ジョージ六世は1936年に即位し、その在位は16年と比較的短い。兄で先王のエドワード八世の王位はわずか一年間だったが、米国人人妻・シンプソン夫人との「世紀の恋」はあまりにも有名である。
1952年にジョージ六世が死去し、長女のエリザベスが王位を継いだがその治世は今や60年になんなんとし、国民の大衆的人気という点で英王室史上一といって二と下らぬ存在である。派手な兄と人気者の娘。その挟間でいささか地味な存在であるが、ジョージ六世は高潔な人柄、妥協のない態度という点で稀に見る名君であった。
六世の在位は第二次世界大戦とその前後の時期とぴたり重なる。六世というよき「国民の父」がいたからイギリスは建国以来最大の国難に勝利することが出来たのである。しかし六世にとって、(王位を放り出して愛人の元へ去った兄のおかげで)青天の霹靂で就いた国王の仕事は人知れず辛いものだった。何故なら、六世には「吃音」というハンディキャップがあったのである。
今回の「Woooで見る最新優秀ソフト」はこの地味な王様ジョージ六世と彼を助けた言語障害セラピストの男、夫を励まし支える妻を描いた心温まるドラマ『英国王のスピーチ』を取り上げてみよう。
26年間英国王に在位し第一次世界大戦に勝利した老父ジョージ五世に代わって公式行事を務める機会がとみに多くなった王太子アルバート(コリン・ファース)は、スピーチの途中持病の吃音が始まり肩を落として演壇を降りる。
吃音治療の専門医を邸宅に呼んでも苛立って追い返してしまうアルバート。夫を案じる妻エリザベス(ヘレナ=ボナム・カーター)は「吃音の治療致します」の怪しげな三行広告を見つけ下町の住所をこっそり訪ねると、そこは古ぼけたアパートメントの一室で広告の主は医者ではなくオーストラリア出身の役者崩れの老人ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)だった。
夫が王太子でヨーク公であることを隠し出張治療を依頼するエリザベスに対し、男は「あくまで治療はここで。私の流儀でやります」。
「あいにく、夫は多忙なのです」と往診を主張するエリザベスに男は「吃音でお悩みなら、それでも困らない職業に商売替えするのが一番いい」とあしらう。エリザベスはむっとして「それは出来ないのです。なぜなら夫の職業は…」。
事情を打ち明けても首を横に振る老人の頑固さに手応えを感じたエリザベスは、アルバートを連れてライオネルのアパートにやって来る。やんごとなき王太子に向かって「あなたをベーティと呼びます。私をライオネルと呼んでください」。
「いやドクターと呼ばせていただきたい。私を馴れ馴れしく愛称で呼んだりするな!」「駄目です。バッキンガム宮殿と同様にここは私の城。私の流儀に従っていただきたい」。
こうして治療が始まるが、癇癪持ちのアルバートは蓄音器の音楽を背景にシェイクスピアを朗読する一風変わった治療に苛立ち、途中で止めてしまう。妻を伴って帰ろうとするアルバートにライオネルは録音したばかりの音盤を土産に手渡す。「お暇な折に聴いてみてください」。
帰宅してムード音楽を聴いてもイライラが治まらないアルバートが土産のレコードを代わりに掛けてみると、ハムレットの一節を流暢にスラスラと朗読するアルバートの声が聞こえてきた…。
さて、この先は映画を見ていただくこととして、私たちの素朴な興味はアルバートの吃音の原因と、英国王族の財力と人脈をもってしてなぜこの歳まで治せなかったかということである。この点、観客はセラピストのライオネルより先に映像でヒントを与えられる。
英国王ジョージ六世は1936年に即位し、その在位は16年と比較的短い。兄で先王のエドワード八世の王位はわずか一年間だったが、米国人人妻・シンプソン夫人との「世紀の恋」はあまりにも有名である。
1952年にジョージ六世が死去し、長女のエリザベスが王位を継いだがその治世は今や60年になんなんとし、国民の大衆的人気という点で英王室史上一といって二と下らぬ存在である。派手な兄と人気者の娘。その挟間でいささか地味な存在であるが、ジョージ六世は高潔な人柄、妥協のない態度という点で稀に見る名君であった。
六世の在位は第二次世界大戦とその前後の時期とぴたり重なる。六世というよき「国民の父」がいたからイギリスは建国以来最大の国難に勝利することが出来たのである。しかし六世にとって、(王位を放り出して愛人の元へ去った兄のおかげで)青天の霹靂で就いた国王の仕事は人知れず辛いものだった。何故なら、六世には「吃音」というハンディキャップがあったのである。
今回の「Woooで見る最新優秀ソフト」はこの地味な王様ジョージ六世と彼を助けた言語障害セラピストの男、夫を励まし支える妻を描いた心温まるドラマ『英国王のスピーチ』を取り上げてみよう。
26年間英国王に在位し第一次世界大戦に勝利した老父ジョージ五世に代わって公式行事を務める機会がとみに多くなった王太子アルバート(コリン・ファース)は、スピーチの途中持病の吃音が始まり肩を落として演壇を降りる。
吃音治療の専門医を邸宅に呼んでも苛立って追い返してしまうアルバート。夫を案じる妻エリザベス(ヘレナ=ボナム・カーター)は「吃音の治療致します」の怪しげな三行広告を見つけ下町の住所をこっそり訪ねると、そこは古ぼけたアパートメントの一室で広告の主は医者ではなくオーストラリア出身の役者崩れの老人ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)だった。
夫が王太子でヨーク公であることを隠し出張治療を依頼するエリザベスに対し、男は「あくまで治療はここで。私の流儀でやります」。
「あいにく、夫は多忙なのです」と往診を主張するエリザベスに男は「吃音でお悩みなら、それでも困らない職業に商売替えするのが一番いい」とあしらう。エリザベスはむっとして「それは出来ないのです。なぜなら夫の職業は…」。
事情を打ち明けても首を横に振る老人の頑固さに手応えを感じたエリザベスは、アルバートを連れてライオネルのアパートにやって来る。やんごとなき王太子に向かって「あなたをベーティと呼びます。私をライオネルと呼んでください」。
「いやドクターと呼ばせていただきたい。私を馴れ馴れしく愛称で呼んだりするな!」「駄目です。バッキンガム宮殿と同様にここは私の城。私の流儀に従っていただきたい」。
こうして治療が始まるが、癇癪持ちのアルバートは蓄音器の音楽を背景にシェイクスピアを朗読する一風変わった治療に苛立ち、途中で止めてしまう。妻を伴って帰ろうとするアルバートにライオネルは録音したばかりの音盤を土産に手渡す。「お暇な折に聴いてみてください」。
帰宅してムード音楽を聴いてもイライラが治まらないアルバートが土産のレコードを代わりに掛けてみると、ハムレットの一節を流暢にスラスラと朗読するアルバートの声が聞こえてきた…。
さて、この先は映画を見ていただくこととして、私たちの素朴な興味はアルバートの吃音の原因と、英国王族の財力と人脈をもってしてなぜこの歳まで治せなかったかということである。この点、観客はセラピストのライオネルより先に映像でヒントを与えられる。