公開日 2018/11/29 06:15
ELACの新たな中核 “VELA 400” 「FS407/BS403」レビュー。JET Vトゥイーター搭載の決定版スピーカー
【特別企画】キャビネット構造を一新
ELAC(エラック)のスピーカーラインナップにおける中核と言うべきラインナップ“400 LINE”が刷新。VELA 400 LINEとして生まれ変わった。大幅なデザイン刷新も目を引くが、何より同社最新のJET Vトゥイーターの潜在能力をさらに引き出したことに注目したいと岩井喬氏は語る。同氏も審査員を務めるVGP 2018においては「批評家大賞」を受賞した。今回、岩井氏が同シリーズの「VELA BS403」「VELA FS407」をレポートしていく。
■エラックの中核シリーズ「400 LINE」が刷新
この秋、エラックから久々のJET Vトゥイーターを搭載したパッシブ型スピーカー“VELA 400 LINE”、「VELA BS403」「VELA FS407」が登場した(関連ニュース)。
ひとつの個性となっていた従来のスクエアな意匠から脱却し、優美なキャビネットデザインを取り入れていることが一番の特徴となっている。キャビネットの仕上げはホワイト・ハイグロスとブラック・ハイグロス、そして木目の美しいウォルナット・ハイグロスの3種類が用意された。
2012年に登場した「400 LINE」が刷新されたかたちであるが、この旧400 LINEは初めてJET Vトゥイーターを搭載した記念すべきモデルであり、6年余りの歳月で他のシリーズを含めてJET Vトゥイーターが行き渡ったといえるだろう。400 LINEが刷新されてもJET Vトゥイーターについてはほぼそのままの仕様で継続されており、いかに完成度の高いエレメントであるかがわかる。JETトゥイーターはオスカー・ハイル博士が発明したAir Motion Transformer、いわゆるハイルドライバーを発展させたものだ。
■JET Vトゥイーターが高性能だからこそ困難になるスピーカー開発
ハイルドライバーは電極をプリントした振動板を折り畳み、磁界の中に置いた構造となっている。電極に信号が流れる際、折り畳まれ隣り合う振動板には反発・吸引動作が発生。この動きに合わせて空気が引き込まれたり、押し出されることで音波を生み出すが、一般的なドーム型振動板に比べ空気負荷率が向上しており、その立ち上がりの素早さは約4〜5倍となる。
また高域の分割振動が起こらないこと、振動板面積についても2.5cmドーム型に比べ10倍に迫る面積を持っていることが、歪みのないダイナミクスに溢れた高域再生を実現している。
JET Vトゥイーターは、前世代のJET IIIから電極パターンを最小化したことでカプトン製振動板の面積を20%拡大。またこの電極パターンの改良によってより大入力にも耐えうる構造となったほか、共振周波数をさらに低くすることにも繋がっている。加えて、ネオジウム磁気回路の強化や開口部の拡大、バッフルを樹脂からアルミダイキャストに変更するなど、全面的に改修の手が入った。これによりさらなる高域のパワーハンドリング向上や歪率の低下、より広い再生帯域の確保へと繋がっている。
とはいえ、JET Vトゥイーターの性能向上が手放しで喜べるわけではなく、優れた高速ユニットであるがゆえ、それに負けないハイレスポンスな中低域再生環境を整えなければ、トータルでのサウンドバランスが崩れてしまう。前世代のJET IIIトゥイーターにおいてもウーファーの進化が追いつくまでは時間がかかっていた。
旧400 LINEの場合、JET Vトゥイーターの搭載により、従来とは比較にならない高域のリアリティ、音場再現の優位性を実現していたが、低域側の改善についてはキャビネット構造を含め、まだ伸びしろがある印象を得たのも事実だ。そして巡ってきた400 LINEのフルモデルチェンジでこのJET Vトゥイーターと渡り合える中低域再生のクオリティ向上が実現したのである。
■キャビネット構造を全面刷新してユニットの性能を引き出す
今回のVELA 400 LINEの共通点について先に紹介していこう。大きく変更されたのはキャビネット構造である。フロントバッフルをスラントさせ、時間軸整合を図ったつくりで、アルミダイキャスト製のベース部とシームレスに連結。上面から見ると後方にかけて窄んでいく形状で、内部定在波の影響を抑えるとともに、より剛性の高いキャビネット構造を実現。天板に関してもアルミボードを装着し、不要振動の抑え込みと低重心化へと繋げている。
バスレフポートについても旧400 LINE同様に下向きにポートを設置しているが、本シリーズではアルミダイキャストベースの両サイド・後方へスリットを設けた、デザイン性の高いダウン・ファイヤリング構造を採用。フロアスタンディング型のVELA FS407については背面にもう一つポートを設けたデュアルフレアポート構成で、風切り音の阻止と低音域のチューニングを実施している。
■エラックの中核シリーズ「400 LINE」が刷新
この秋、エラックから久々のJET Vトゥイーターを搭載したパッシブ型スピーカー“VELA 400 LINE”、「VELA BS403」「VELA FS407」が登場した(関連ニュース)。
ひとつの個性となっていた従来のスクエアな意匠から脱却し、優美なキャビネットデザインを取り入れていることが一番の特徴となっている。キャビネットの仕上げはホワイト・ハイグロスとブラック・ハイグロス、そして木目の美しいウォルナット・ハイグロスの3種類が用意された。
2012年に登場した「400 LINE」が刷新されたかたちであるが、この旧400 LINEは初めてJET Vトゥイーターを搭載した記念すべきモデルであり、6年余りの歳月で他のシリーズを含めてJET Vトゥイーターが行き渡ったといえるだろう。400 LINEが刷新されてもJET Vトゥイーターについてはほぼそのままの仕様で継続されており、いかに完成度の高いエレメントであるかがわかる。JETトゥイーターはオスカー・ハイル博士が発明したAir Motion Transformer、いわゆるハイルドライバーを発展させたものだ。
■JET Vトゥイーターが高性能だからこそ困難になるスピーカー開発
ハイルドライバーは電極をプリントした振動板を折り畳み、磁界の中に置いた構造となっている。電極に信号が流れる際、折り畳まれ隣り合う振動板には反発・吸引動作が発生。この動きに合わせて空気が引き込まれたり、押し出されることで音波を生み出すが、一般的なドーム型振動板に比べ空気負荷率が向上しており、その立ち上がりの素早さは約4〜5倍となる。
また高域の分割振動が起こらないこと、振動板面積についても2.5cmドーム型に比べ10倍に迫る面積を持っていることが、歪みのないダイナミクスに溢れた高域再生を実現している。
JET Vトゥイーターは、前世代のJET IIIから電極パターンを最小化したことでカプトン製振動板の面積を20%拡大。またこの電極パターンの改良によってより大入力にも耐えうる構造となったほか、共振周波数をさらに低くすることにも繋がっている。加えて、ネオジウム磁気回路の強化や開口部の拡大、バッフルを樹脂からアルミダイキャストに変更するなど、全面的に改修の手が入った。これによりさらなる高域のパワーハンドリング向上や歪率の低下、より広い再生帯域の確保へと繋がっている。
とはいえ、JET Vトゥイーターの性能向上が手放しで喜べるわけではなく、優れた高速ユニットであるがゆえ、それに負けないハイレスポンスな中低域再生環境を整えなければ、トータルでのサウンドバランスが崩れてしまう。前世代のJET IIIトゥイーターにおいてもウーファーの進化が追いつくまでは時間がかかっていた。
旧400 LINEの場合、JET Vトゥイーターの搭載により、従来とは比較にならない高域のリアリティ、音場再現の優位性を実現していたが、低域側の改善についてはキャビネット構造を含め、まだ伸びしろがある印象を得たのも事実だ。そして巡ってきた400 LINEのフルモデルチェンジでこのJET Vトゥイーターと渡り合える中低域再生のクオリティ向上が実現したのである。
■キャビネット構造を全面刷新してユニットの性能を引き出す
今回のVELA 400 LINEの共通点について先に紹介していこう。大きく変更されたのはキャビネット構造である。フロントバッフルをスラントさせ、時間軸整合を図ったつくりで、アルミダイキャスト製のベース部とシームレスに連結。上面から見ると後方にかけて窄んでいく形状で、内部定在波の影響を抑えるとともに、より剛性の高いキャビネット構造を実現。天板に関してもアルミボードを装着し、不要振動の抑え込みと低重心化へと繋げている。
バスレフポートについても旧400 LINE同様に下向きにポートを設置しているが、本シリーズではアルミダイキャストベースの両サイド・後方へスリットを設けた、デザイン性の高いダウン・ファイヤリング構造を採用。フロアスタンディング型のVELA FS407については背面にもう一つポートを設けたデュアルフレアポート構成で、風切り音の阻止と低音域のチューニングを実施している。