公開日 2023/04/02 08:00
意外に使える!ChatGPTに“超複雑”なテレビの画質設定を手伝ってもらった
機種名やタイトル名で設定値を推奨
大規模言語モデル「ChatGPT」の影響力が日増しに高まっている。多くの企業が自社製品に組み込んだりなど活用が進む一方、いったん開発を止めるべきだ、欺瞞的だから公開を取りやめろなど、否定的な意見も取り沙汰されている。
本稿では、ChatGPTや生成型AIの是非はともかくとして、ChatGPTを使ってオーディオビジュアルをより豊かにするという、いたって平和的な使い方を紹介したい。
今回はずばり、ChatGPTにテレビの画質設定を手伝ってもらったらどうなるか、実験してみた。
テレビは、もちろん製品にもよるが、画質設定項目が非常に多い。なおかつ、それぞれの項目同士が関係し合っている。たとえば色温度を変えたら色合いも調整し直さないといけないし、全体のガンマカーブを変えたら、ほかの項目も調整しないとバランスが崩れる。
そういった難しさも含めて、コンテンツに応じたベストな設定値を探り当てるのが、オーディオビジュアルファンの楽しみの一つだ。
とはいえ、何か指針があった方が設定しやすいという場合もあるだろう、ということでAIに登場願った。なお、ChatGPT-3.5ではごくシンプルな回答しか返ってこない。記事執筆時点で有料にはなるが、ChatGPT-4に聞いてみた。
質問:東芝の55X9400で、ヨーロッパ映画をフィルムライクな画質で楽しむための画質設定の数値を教えて。
ChatGPT-4の回答:最適な画質設定を提案いたします。ただし、個人の好みや視聴環境によって最適な設定が異なる場合がありますので、以下の提案を参考に調整してください。
東芝 55X9400 におけるヨーロッパ映画のフィルムライクな画質設定:
画像モード: 映画 (Movie) または カスタム (Custom)
バックライト: 40-50
コントラスト: 80
明るさ: 45
色: 50
色温度: 暖かい2 (Warm2)
シャープネス: 10-20
ノイズリダクション: 無効 (Off) または 低 (Low)
モーションコントロール: 映画モード (Movie mode) または スムーズ (Smooth)
エッジエンハンサー: 無効 (Off) または 低 (Low)
…うーん、想像していたより細かく設定項目を提案してくれたぞ。たまたま手元にあった有機ELテレビの設定項目を聞いてみたのだが、これが他社のテレビなら、どうなるのだろう。ソニーやパナソニックなど他メーカーの型番でも同じように聞いてみると、メーカーごとに異なる画質設定項目と、その推奨値が出力される。適当に答えているわけではなさそうだ。
では実際に、ChatGPTの推奨値を設定し、映画を見てみよう。そう思ってリモコンを手に取ると、そもそも55X9400には「映画」モードも「カスタム」モードも存在しないことを思い出す。「映画」の名が付く映像モードは「映画プロ」だけだ。
そのほか「バックライト」という項目もない。また、項目名は似ていても、設定値の範囲を誤って理解していると思われるものなどもあり、全体的に間違っているところが多い。
それらについては「たぶんこういうことを言いたいんだろうな」と推量し、ともかくもChatGPTの意図(?)を汲んで設定してみた。マイクロソフトのナデラCEOは「AIは副操縦士だ」と盛んにアピールしているが、今回に関してはどちらが副操縦士なのか、よくわからない状態になっている。
さて、ともかくも推奨値に設定した状態で、部屋を暗くして『ポンヌフの恋人』を再生してみた。
…驚いたことに、これが悪くない。ヨーロッパ映画特有の、少し青みがかった色合いが、ほどよく再現されている。はじめはシャープネスを上げた意味がわからなかったが、映像のフィルムグレインが強調され、これによって「フィムライクな」というこちらのオーダーに応えたのだろうと気づく。
ちなみに、55X9400には「おまかせAI」という映像モードも用意されている。そちらに設定したデフォルトの映像は、とても明るく見やすいのだが、ヨーロッパ映画特有の、少し暗い雰囲気は薄まる。今回の作品に関しては、(私が設定を手伝ったとはいえ)ChatGPTの推奨値の方が好ましく感じた。
そのほか、たとえば「『君の名は。』を見るのに最適な画質設定を教えて」と聞くと、当然ながらまったく違う映像モードや設定値を推奨してくれる。『君の名は。』はアニメなので、明るさやコントラストはかなり強めを推奨してくる。
特にジャンルを指定しなくても、コンテンツ名からジャンルを特定し、それに応じた設定値を教えてくれるのはとても便利だ。
ただ、推奨値を見ていて一点気になったのは、ChatGPTは「モーションコントロール」を使いがちなのでは、ということだ。
実は、55X9400には「モーションコントロール」という設定項目はない。だが、その名称から、フレーム間の補間機能を指しているものと思われる。55X9400では「倍速モード」というのが正式な名称だ。たとえば『君の名は。』の場合だと、この設定項目を「スムーズ (Smooth) または 標準 (Standard)」にしてみて、といってくる。
「なぜモーションコントロール機能をオンにすることを推奨するのか」と尋ねると、「アニメ映画においてしばしば登場する高速な動きやカメラのパンニングをより滑らかに表示するため」だという。
とはいえ、さすがはChatGPT-4。「モーションコントロール機能の効果は個人の好みによります。効果が強すぎると映像が不自然に見えると感じることがあります」と付け加え、その副作用についても指摘してきた。
もう少し掘り下げて、「フレーム補間機能を使うと、制作者の意図と違う映像の見え方になるのでは?」とChatGPTに聞くと、「おっしゃるとおり、制作者の意図とは異なる映像の見え方になる可能性があります。特に、アニメや映画で意図的にフレームレートが低く設定されている場合、フレーム補間によってその独特の雰囲気やリズムが損なわれることがあります」との返答が来た。
そこまで知っているならオフを推奨して欲しいのだが…とも思ったが、ChatGPTは続けて、要約すると「制作者の意図を忠実に再現するならオフを検討、ただし好みやテレビの性能によってはフレーム補間も有用。最終的には自分の好みや視聴環境で設定することが重要」という意味の回答をしてきた。たしかにそうだよね。
ちなみに、ChatGPTに「フレーム補間を嫌っている著名な映画関係者を教えて」と聞いてみると、クリストファー・ノーラン、ポール・トーマス・アンダーソン、スティーブン・スピルバーグの3氏を挙げてきた。最初の2氏はフレーム補間を嫌っていることで有名だけど、スピルバーグよりはトム・クルーズを真っ先に挙げて欲しかったかな…。
◇
今回の実験を通じて、ChatGPTを使った画質設定は、補助的に使う分には、かなり使えるという印象を持った。ChatGPTが自ら指摘しているとおり、推奨する設定値はあくまで「出発点」なのだ。画質設定についてあまり詳しくないという方は、AIの推奨値を参考にするのは有用だと思う。ぜひ試してみてほしい。
本稿では、ChatGPTや生成型AIの是非はともかくとして、ChatGPTを使ってオーディオビジュアルをより豊かにするという、いたって平和的な使い方を紹介したい。
テレビの画質設定は複雑
今回はずばり、ChatGPTにテレビの画質設定を手伝ってもらったらどうなるか、実験してみた。
テレビは、もちろん製品にもよるが、画質設定項目が非常に多い。なおかつ、それぞれの項目同士が関係し合っている。たとえば色温度を変えたら色合いも調整し直さないといけないし、全体のガンマカーブを変えたら、ほかの項目も調整しないとバランスが崩れる。
そういった難しさも含めて、コンテンツに応じたベストな設定値を探り当てるのが、オーディオビジュアルファンの楽しみの一つだ。
とはいえ、何か指針があった方が設定しやすいという場合もあるだろう、ということでAIに登場願った。なお、ChatGPT-3.5ではごくシンプルな回答しか返ってこない。記事執筆時点で有料にはなるが、ChatGPT-4に聞いてみた。
質問:東芝の55X9400で、ヨーロッパ映画をフィルムライクな画質で楽しむための画質設定の数値を教えて。
ChatGPT-4の回答:最適な画質設定を提案いたします。ただし、個人の好みや視聴環境によって最適な設定が異なる場合がありますので、以下の提案を参考に調整してください。
東芝 55X9400 におけるヨーロッパ映画のフィルムライクな画質設定:
画像モード: 映画 (Movie) または カスタム (Custom)
バックライト: 40-50
コントラスト: 80
明るさ: 45
色: 50
色温度: 暖かい2 (Warm2)
シャープネス: 10-20
ノイズリダクション: 無効 (Off) または 低 (Low)
モーションコントロール: 映画モード (Movie mode) または スムーズ (Smooth)
エッジエンハンサー: 無効 (Off) または 低 (Low)
…うーん、想像していたより細かく設定項目を提案してくれたぞ。たまたま手元にあった有機ELテレビの設定項目を聞いてみたのだが、これが他社のテレビなら、どうなるのだろう。ソニーやパナソニックなど他メーカーの型番でも同じように聞いてみると、メーカーごとに異なる画質設定項目と、その推奨値が出力される。適当に答えているわけではなさそうだ。
では実際に、ChatGPTの推奨値を設定し、映画を見てみよう。そう思ってリモコンを手に取ると、そもそも55X9400には「映画」モードも「カスタム」モードも存在しないことを思い出す。「映画」の名が付く映像モードは「映画プロ」だけだ。
そのほか「バックライト」という項目もない。また、項目名は似ていても、設定値の範囲を誤って理解していると思われるものなどもあり、全体的に間違っているところが多い。
それらについては「たぶんこういうことを言いたいんだろうな」と推量し、ともかくもChatGPTの意図(?)を汲んで設定してみた。マイクロソフトのナデラCEOは「AIは副操縦士だ」と盛んにアピールしているが、今回に関してはどちらが副操縦士なのか、よくわからない状態になっている。
さて、ともかくも推奨値に設定した状態で、部屋を暗くして『ポンヌフの恋人』を再生してみた。
…驚いたことに、これが悪くない。ヨーロッパ映画特有の、少し青みがかった色合いが、ほどよく再現されている。はじめはシャープネスを上げた意味がわからなかったが、映像のフィルムグレインが強調され、これによって「フィムライクな」というこちらのオーダーに応えたのだろうと気づく。
ちなみに、55X9400には「おまかせAI」という映像モードも用意されている。そちらに設定したデフォルトの映像は、とても明るく見やすいのだが、ヨーロッパ映画特有の、少し暗い雰囲気は薄まる。今回の作品に関しては、(私が設定を手伝ったとはいえ)ChatGPTの推奨値の方が好ましく感じた。
そのほか、たとえば「『君の名は。』を見るのに最適な画質設定を教えて」と聞くと、当然ながらまったく違う映像モードや設定値を推奨してくれる。『君の名は。』はアニメなので、明るさやコントラストはかなり強めを推奨してくる。
特にジャンルを指定しなくても、コンテンツ名からジャンルを特定し、それに応じた設定値を教えてくれるのはとても便利だ。
ChatGPT、フレーム補間に頼りがち?
ただ、推奨値を見ていて一点気になったのは、ChatGPTは「モーションコントロール」を使いがちなのでは、ということだ。
実は、55X9400には「モーションコントロール」という設定項目はない。だが、その名称から、フレーム間の補間機能を指しているものと思われる。55X9400では「倍速モード」というのが正式な名称だ。たとえば『君の名は。』の場合だと、この設定項目を「スムーズ (Smooth) または 標準 (Standard)」にしてみて、といってくる。
「なぜモーションコントロール機能をオンにすることを推奨するのか」と尋ねると、「アニメ映画においてしばしば登場する高速な動きやカメラのパンニングをより滑らかに表示するため」だという。
とはいえ、さすがはChatGPT-4。「モーションコントロール機能の効果は個人の好みによります。効果が強すぎると映像が不自然に見えると感じることがあります」と付け加え、その副作用についても指摘してきた。
もう少し掘り下げて、「フレーム補間機能を使うと、制作者の意図と違う映像の見え方になるのでは?」とChatGPTに聞くと、「おっしゃるとおり、制作者の意図とは異なる映像の見え方になる可能性があります。特に、アニメや映画で意図的にフレームレートが低く設定されている場合、フレーム補間によってその独特の雰囲気やリズムが損なわれることがあります」との返答が来た。
そこまで知っているならオフを推奨して欲しいのだが…とも思ったが、ChatGPTは続けて、要約すると「制作者の意図を忠実に再現するならオフを検討、ただし好みやテレビの性能によってはフレーム補間も有用。最終的には自分の好みや視聴環境で設定することが重要」という意味の回答をしてきた。たしかにそうだよね。
ちなみに、ChatGPTに「フレーム補間を嫌っている著名な映画関係者を教えて」と聞いてみると、クリストファー・ノーラン、ポール・トーマス・アンダーソン、スティーブン・スピルバーグの3氏を挙げてきた。最初の2氏はフレーム補間を嫌っていることで有名だけど、スピルバーグよりはトム・クルーズを真っ先に挙げて欲しかったかな…。
今回の実験を通じて、ChatGPTを使った画質設定は、補助的に使う分には、かなり使えるという印象を持った。ChatGPTが自ら指摘しているとおり、推奨する設定値はあくまで「出発点」なのだ。画質設定についてあまり詳しくないという方は、AIの推奨値を参考にするのは有用だと思う。ぜひ試してみてほしい。