[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第132回】高橋敦の“オーディオ金属”大全 − 音と密接に関わる「金属」を知る
●ステンレス鋼
おなじみ「ステンレス」も実は「鋼=鉄合金」の一種だ。鉄が半分以上にクローム(クロム)が一割程度というのを基本に、その他の成分も合わせて配合のバリエーションがある。いずれにしても最大の特長は耐食性の高さ。クロームが表面で酸素と結合して作られる皮膜が保護層となって錆を防ぐ。「鋼の強度+錆びない」というのがステンレス鋼の強みだ。またこれもクロームのおかげか、質感や輝きもいわゆる普通の鉄とは異なり、独特の美しさがある。磁性については、ステンレスの中でも細かな種類によってあったりなかったりだ。
オーディオでも耐食性に加えて、軽量さと頑強さの両方が求められるところに使われる(比重は重めだが強度のおかげで薄くはできるので、総合的にはさほどは重くならない)。例えばポータブルオーディオプレイヤーの筐体などだ。かつてのiPodの裏面は、鏡面処理で磨き上げられたステンレスの美しさのわかりやすい例と言えるだろう。
●銀
純銀は純銅(無酸素銅)を上回り金属中で最大の導電性を誇る。導体素材としては極めて優秀だ。しかし貴金属なので高いし量の確保も難しく、銅のように一般的に用いることは無理。また酸化して黒ずんだりしやすく柔らかくて耐摩耗性も低いので、端子部のメッキ素材としても不適当。
だが「高くても構わん!」となれば例えばケーブル導体としてはやはりその意義は大きく、実際に純銀導体のイヤホンリケーブル製品等はある。また銅導体を銀でコーティングすることで、銀の使用量を最小限にしつつ銀ならではの音調を適度に取り入れているケーブルもある。
●金
銀や銅には及ばないものの高い導電性を備える。そして耐食性が非常に高く性質が安定している。…ということで各種端子部に「金メッキ」されることが多い。端子自体は銅系の素材で作るとして、そのままではただ空気に触れているだけでも酸化等によって状態が悪くなり、端子の接触が甘くなることが想定される。そこで金メッキだ。すると酸化等の影響をほぼ回避でき、良好な接触を維持しやすくなる。
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