公開日 2020/12/07 13:16
新境地を果敢に切り開く「VLOGCAM」。動画文化がカメラ市場をいかに突き動かすのか、ソニーマーケティング小笠原氏に聞く
デジタルカメラグランプリ2021受賞インタビュー
受賞インタビュー:ソニーマーケティング
Vlog市場の盛り上がりにいち早く着目。日本市場のポテンシャルの大きさを見据え、大胆にVlog仕様に割り切った「VLOGCAM」を投入したソニー。発売されるやいなや市場から絶大な支持を獲得。デジタルカメラグランプリ2021でも「総合金賞」を射止めた。さらに、「α7S III」「α7C」など話題の新製品を連打。カメラのみならず交換レンズ市場においても、ソニーEマウントレンズの好調ぶりが目を奪う。コロナ禍に見舞われたデジタルカメラ市場の巻き返しへ、けん引役としての期待を担い、熱い視線が注がれる、ソニーマーケティング・小笠原啓克氏に話しを聞く。
デジタルカメラグランプリ2021受賞一覧はこちら
ソニーマーケティング株式会社
プロダクツビジネス本部 デジタルイメージングビジネス部 統括部長
小笠原啓克氏
おがさはらよしかつ Yoshikatsu Ogasahara
プロフィール/1992年 ソニー株式会社入社。欧州や国内でTV、デジタルイメージング、モバイルオーディオなど幅広くプロダクツマーケティングを担当。2016年よりデジタルイメージングビジネス部の統括部長に就任。現在に至る。
■Vlogでカメラの動画撮影に開眼
―― 各社からの新商品登場もあり、徐々に活気を取り戻しつつあるデジタルカメラ市場ですが、縮小傾向の市場に新型コロナの影響でダブルパンチとなったここまでの状況をどのように見ていらっしゃいますか。
小笠原 本当に過去に経験のないような状況が続きました。2月27日から予定されていた「CP+」の開催中止に始まり、新型コロナによる緊急事態宣言や外出自粛など、影響は計り知れません。連休明けにやや回復の兆しが見受けられましたが、7月8月には再び足踏み状態となり、ようやく9月くらいから動き始めました。
昨年9月は消費増税前の駆け込み需要があり、前年比で見るだけでは捉えづらいですが、前々年との比較やお客様の動きなどから回復の動きが確実に出てきています。大きいのはやはり人の動きが活発になってきていること。Go Toキャンペーンも大きな支えになっています。イベント等の開催は引き続きい難しい状況ですが、各社からの新製品登場も後押しとなり、お客様の消費マインドも着実に持ち直してきました。
もうひとつ、新たな動きとして注目しているのが「動画」です。マーケットの減少が続きますが、一方で、映像を使って作品をつくり自分を表現する、情報発信の新しいトレンドがコロナ禍に急速に広がりを見せています。従来とは異なるカメラの用途として注目されます。
―― まさにその新しい動きを捉えた新しい提案が、デジタルカメラグランプリ2021で総合金賞を受賞された「VLOGCAM ZV-1」になります。現在、品薄状態と大変大きな反響を集めていますが、いち早く時流を捉えて商品化された背景や狙いについてお聞かせください。
小笠原 YouTubeを通じて情報発信を行うユーチューバーが続々と増えていますが、何か新しいことをやって注目を集めたい、そんな動きの中で、昨年あたりから盛り上がりを見せてきたのがVlogです。料理だったり、旅行だったり、個人が個人に向けて日常的なことを動画で発信する欧米で先行していたカルチャーです。ソニーでは昨年8月に、Vlog向けの撮影機能や装備を搭載したコンパクトカメラ「DSC-RX100M7」を発売し、いち早くVlogの提案を行いました。海外ではプレミアムコンパクトカメラをVlogに使用するケースが多く、市場からの反応も上々でした。
これは日本のマーケットの特徴だと思いますが、動画による発信に対し、少し慎重な面が見受けられます。そのため、Vlogの広がりも少し遅れているものの、これから大いに盛り上がるポテンシャルは十分あると確信していました。
―― そして、今年6月に「VLOGCAM ZV-1」の発売となりました。
小笠原 DSC-RX100M7でVlogを提案したときは、これまで通りの静止画撮影とVlogの動画撮影のウエイトが半分半分でしたが、今回の「VLOGCAM」では、一度Vlogに大きく振り切ってやってみようと方向性を打ち出しました。これまでプレミアムコンパクトでVlogをやられていたお客様の動画撮影において、VLOGCAMへ関心を向けていただくことはもちろん、さらに、いままでスマートフォンで動画撮影していた人たちに対する提案にも力を入れました。同じ関心を持つより多くの人に自分がつくる動画メッセージを見てもらいたいというモチベーションの高さから、そこにVlog専用機を使うことでメッセージがより伝わりやすくなることが伝えられれば、「VLOGCAMを是非使ってみたい」と思う人がたくさんいるはずだと考えました。商品の仕様をVlogに絞り込むことはもちろん、製品名もより分かりやすく「VLOGCAM」と命名しました。
―― かなり大きな反響ですが、これは想定内ですか。
小笠原 正直申し上げて想定以上です。Vlogに対する日本でのポテンシャルの大きさはいろいろな調査からも見えていましたが、はたして実際にどれくらいの方に関心を持っていただけるか読みにくい面もありました。想定以上の反応となったその背景には、これまでとは異なる層の新しいお客様が動き、新たな需要を開拓したことが大きく影響しています。そして、店頭からの売り場づくりなどのご提案、ご協力が立ち上がりの反響につながりました。感謝申し上げます。
―― 11月15日にはホワイトモデルが加わりましたが、女性層もかなり取り込めているのでしょうか。また、Vlogは10代後半から20代くらいまでが中心で、30代、40代だとまだ二の足を踏まれている印象ですが、年齢層からはどのような特徴が見られますか。
小笠原 男女比については、これまでのRXシリーズとは明らかに違い、女性から大きな支持を得ています。年齢層については幅広く、初めてカメラを買われる10代・20代の方の購入もありますし、同じ趣味を持つ者が動画を通じてコミュニティを形成できることから、30代・40代の方の購入も少なくありません。
アンケートにおいて、「静止画だけ撮る」「動画だけ撮る」「静止画も動画も両方撮る」に分けて使い方を聞いた結果、「両方撮る」という回答が物凄い勢いで増えてきています。カメラを選ばれるにあたり、動画の撮影性能を重視されるお客様はさらに増えていくと予想しています。
■動画撮影性能を極めた「α7S III」
―― お話しいただいたVlogをはじめとする「動画」をきっかけに、写真趣味層の年齢がかなり降りてきたと言えますか。
小笠原 「動画」というキーワードで年齢層は確実に若い世代へと広がりつつあります。VLOGCAMの購入が主に20代から40代であることもそうした顕著な例のひとつと言えます。インスタ世代を含め、写真を “カメラ” で撮る裾野が着実に広がると同時に、カメラにもAPS-Cやマイクロフォーサーズなど幅広い選択肢がありますが、最初からフルサイズのカメラを購入して、自分の好きな写真を趣味として始められる若い方が増えてきていることも注目されます。
―― “山” が動き出してきたわけですね。
小笠原 現在、そこで大きな支持をいただいているのが「α7III」です。フルサイズのエントリー機として位置づけられるモデルですが、本格的な撮影性能を備えており、大変高い満足度を得られるカメラとして高い人気を獲得しています。10月には、このゾーンのお客様をさらに広げていくポジションの商品として「α7C」 が新たにラインナップに加わり、こちらも多くのお客様から高い評価をいただくことができました。現在、α7Cのプロモーションを強力に展開しています。「より本格的な撮影を楽しみたい」とお考えの方はα7IIIを選択いただけます。両モデルのシナジーを生かして、この年末もフルサイズの新規需要開拓にもさらに力を入れて参ります。
―― 例えば、初めてカメラを買われる方がVLOGCAMを目当てに店頭に来たものの、いろいろな選択肢があり、見て、触って、よく話を聞いてみた結果、自分にはα7Cの方が適しているな、というお客様もいらっしゃるはずです。
小笠原 ミラーレスでフルサイズからAPS-Cまで幅広く揃えさせていただいているラインナップ戦略が、今、力を入れて取り組んでいる若い年代への提案や動画を切り口とした訴求にも大きな力となっています。お客様の目的に適った商品を見つけることができる強力なラインナップとなっています。
―― デジタルカメラグランプリ2021では、α7S IIIに実装された「クラス最高解像度、世界最大のファインダー倍率を実現した高精細EVFの開発」「CFexpress TypeAメモリーカードおよびSDメモリーカードに対応したデュアルスロットの開発」が技術賞を受賞するなど、「α7S III」も大注目商品のひとつです。
小笠原 Sシリーズとしては5年振りのアップデートとなり、まさに満を持して発売させていただきました。Sシリーズはもともと画素を抑えた圧倒的な高感度性能を大きな特長として2014年6月にα7Sを発売しましたが、翌年発売した2世代目のα7S IIからは、動画の撮影性能に対しても高い評価をいただいています。
今回、アップデートに5年の時間をいただきましたが、各社から動画を含めた新しい提案が相次ぐ中で、プロを含めて使いこなしていただける革新的な撮影性能を追求するαの想いを結実し、圧倒的な動画撮影性能・静止画撮影性能と使いやすさを高い次元で両立させることができました。発表以降、大変大きな反響をいただいています。
動画撮影では4K120Pのスペックを実現していますが、4K60Pでもしっかりと本格的に使っていただける点も大変高く評価されています。構造的な面では、動画撮影性能の進化に合わせて、背面の液晶モニターの構造やボタンの配置を含めた撮影スタイルの進化、メディアにも動画撮影に適したものを採用するなど、撮影性能のみならず、トータルで大きく進化しました。皆様の期待に応えることができるレベルに仕上げられたと自信を持ってお薦めできます。
―― 超高精細のEVFには審査委員長の山田先生も大変驚かれたそうで、「光学ファインダーとほぼ同レベル、いや、それ以上にキレイに見られる」と評価されています。
小笠原 EVFにしかできないことは最初から認めていただいていましたが、鑑賞的な部分で「もう少し進化してほしい」との要望がありました。今回、α7S IIIでは解像度もファインダー倍率も大きく進化し、「壁をついに乗り越えたか!」との評価をたくさんの方からいただいています。
■強みを発揮する「ワンマウント戦略」
―― 「売れ筋上位はソニーのEマウントレンズばかり」との声が店頭から聞こえてくるなど、交換レンズ市場においても好調な動きが目につきます。
小笠原 Eマウントのレンズのラインナップを先駆けて拡充してきましたが、ここに来て、ユーザーが非常に広がってきていることを実感しています。今後もミラーレスのスタンダードとして、交換レンズにおいてもEマウントのレンズのラインナップをさらに広げ、本体のカメラだけでなく、交換レンズにおいても市場を大いに盛り上げていきたいですね。「G Master」「G」「ZEISS」「無印ノーブランド」の商品構成のもと、純正レンズならではの価値をしっかりとお客様にお届けしていきます。
加えて、ここへきて動画の人気が上昇してきたことで、ソニーの「ワンマウント戦略」の強みが生きています。動画の撮影では、「α6600」や「α6400」などAPS-Cのモデルを使われている方が多いのですが、仮に、ステップアップされてフルサイズのカメラを購入されても、マウントは一緒なので、持っているレンズはそのまま使用することができます。カメラはAPS-Cのボディでも、将来の発展を見据えて敢えてフルサイズ用のFEレンズを選ぶ方もいらっしゃいます。
交換レンズにおいても動画のトレンドが影響し、広角の単焦点レンズの人気が高まるなど、動画撮影ならではのレンズの選び方が増えてきている点が注目されます。「FE 20mm F1.8 G(SEL20F18G)」はジンバルやグリップに装着しやすい小型・軽量設計で、高い近接撮影能力や静粛なAF駆動を誇り、動画撮影にもお薦めできる1本です。「FE 24mm F1.4 GM(SEL24F14GM)」は、ハイパワーのダイレクトドライブSSMを搭載しており、作品づくりに集中できるハイパフォーマンスなAF駆動を実現しています。
ワンマウントの思想はシネマカメラにおいても貫かれており、クリエイターのプラットフォームにおいてもEマウントシステムが活躍しています。ボディについてもシームレスに選べるポイントは、強みとしてしっかり打ち出していきます。
―― デジタルカメラ市場の縮小には、スマートフォンの台頭が大きく影響していますが、ソニーグループではスマートフォンにも「Xperia」を擁しています。より奥深い撮影の楽しさを幅広く伝えていく上での強みやシナジーなどお聞かせいただけますか。
小笠原 お客様はカメラを使い分けされています。写真を趣味とされる方も、写真や動画はコミュニケーションのためのツールとしても位置づけられ、日常的に常に持ち歩くスマートフォンで撮影するのはごくごく普通のことです。そのカメラ性能が上がることは、お客様にとっては間違いなくプラスになるはずです。われわれソニーが有するデジタルカメラの技術がそこへ貢献し、写真や動画を楽しむ世界の中でお客様の価値を高めています。
カメラマーケットは縮小していますが、われわれとしてやるべきことは、カメラ専用機だから楽しめる、より付加価値の高い静止画、動画の撮影性能の向上にこれまで以上に取り組んでいくこと。今、写真も動画も、個人を表現する作品づくりが盛んですが、それを皆さんで共有することが撮影を楽しむ大きなモチベーションになっています。今後、αとXperiaが連携することで、カメラとスマートフォンはよりシームレスにつながり、さらに使い勝手よく楽しめる環境を実現していくことができると考えています。
これから5Gが普及してきます。写真だけでなく、動画ももっと使いやすくなるインフラが整い、カメラとスマートフォンの連携はますます重要になってきます。ハードウエアだけでなく、アプリケーションを含めて、カメラとスマートフォンが連携した新しいソリューションを提供して参ります。そこで、お客様にとっての“新しい楽しみ方”を創造していくのがわたしどもの使命と考えています。
―― 年末、そして2021年へ向けての意気込みをお聞かせください。
小笠原 年末に向けては、大変高いご評価をいただいているSシリーズの「α7S III」、α7IIIとともにフルサイズの新規層掘り起こしが期待される「α7C」、そしてVlogに特化した動画撮影機能を誇る「VLOGCAM」など、特に新商品に力を入れて展開して参ります。7シリーズも供給面でのキャッチアップに一生懸命取り組んでおりますので、しっかりとご販売いただける体制を整えて、年末商戦へ挑みたいと思います。これからの重要な役割としては、これまでのお客様の買い替えだけにとどまらず、新しいお客様の需要創出を強く意識してご提案していくこと。ご販売店と一緒になって、市場に勢いを取り戻して参ります。
Vlog市場の盛り上がりにいち早く着目。日本市場のポテンシャルの大きさを見据え、大胆にVlog仕様に割り切った「VLOGCAM」を投入したソニー。発売されるやいなや市場から絶大な支持を獲得。デジタルカメラグランプリ2021でも「総合金賞」を射止めた。さらに、「α7S III」「α7C」など話題の新製品を連打。カメラのみならず交換レンズ市場においても、ソニーEマウントレンズの好調ぶりが目を奪う。コロナ禍に見舞われたデジタルカメラ市場の巻き返しへ、けん引役としての期待を担い、熱い視線が注がれる、ソニーマーケティング・小笠原啓克氏に話しを聞く。
デジタルカメラグランプリ2021受賞一覧はこちら
ソニーマーケティング株式会社
プロダクツビジネス本部 デジタルイメージングビジネス部 統括部長
小笠原啓克氏
おがさはらよしかつ Yoshikatsu Ogasahara
プロフィール/1992年 ソニー株式会社入社。欧州や国内でTV、デジタルイメージング、モバイルオーディオなど幅広くプロダクツマーケティングを担当。2016年よりデジタルイメージングビジネス部の統括部長に就任。現在に至る。
■Vlogでカメラの動画撮影に開眼
―― 各社からの新商品登場もあり、徐々に活気を取り戻しつつあるデジタルカメラ市場ですが、縮小傾向の市場に新型コロナの影響でダブルパンチとなったここまでの状況をどのように見ていらっしゃいますか。
小笠原 本当に過去に経験のないような状況が続きました。2月27日から予定されていた「CP+」の開催中止に始まり、新型コロナによる緊急事態宣言や外出自粛など、影響は計り知れません。連休明けにやや回復の兆しが見受けられましたが、7月8月には再び足踏み状態となり、ようやく9月くらいから動き始めました。
昨年9月は消費増税前の駆け込み需要があり、前年比で見るだけでは捉えづらいですが、前々年との比較やお客様の動きなどから回復の動きが確実に出てきています。大きいのはやはり人の動きが活発になってきていること。Go Toキャンペーンも大きな支えになっています。イベント等の開催は引き続きい難しい状況ですが、各社からの新製品登場も後押しとなり、お客様の消費マインドも着実に持ち直してきました。
もうひとつ、新たな動きとして注目しているのが「動画」です。マーケットの減少が続きますが、一方で、映像を使って作品をつくり自分を表現する、情報発信の新しいトレンドがコロナ禍に急速に広がりを見せています。従来とは異なるカメラの用途として注目されます。
―― まさにその新しい動きを捉えた新しい提案が、デジタルカメラグランプリ2021で総合金賞を受賞された「VLOGCAM ZV-1」になります。現在、品薄状態と大変大きな反響を集めていますが、いち早く時流を捉えて商品化された背景や狙いについてお聞かせください。
小笠原 YouTubeを通じて情報発信を行うユーチューバーが続々と増えていますが、何か新しいことをやって注目を集めたい、そんな動きの中で、昨年あたりから盛り上がりを見せてきたのがVlogです。料理だったり、旅行だったり、個人が個人に向けて日常的なことを動画で発信する欧米で先行していたカルチャーです。ソニーでは昨年8月に、Vlog向けの撮影機能や装備を搭載したコンパクトカメラ「DSC-RX100M7」を発売し、いち早くVlogの提案を行いました。海外ではプレミアムコンパクトカメラをVlogに使用するケースが多く、市場からの反応も上々でした。
これは日本のマーケットの特徴だと思いますが、動画による発信に対し、少し慎重な面が見受けられます。そのため、Vlogの広がりも少し遅れているものの、これから大いに盛り上がるポテンシャルは十分あると確信していました。
―― そして、今年6月に「VLOGCAM ZV-1」の発売となりました。
小笠原 DSC-RX100M7でVlogを提案したときは、これまで通りの静止画撮影とVlogの動画撮影のウエイトが半分半分でしたが、今回の「VLOGCAM」では、一度Vlogに大きく振り切ってやってみようと方向性を打ち出しました。これまでプレミアムコンパクトでVlogをやられていたお客様の動画撮影において、VLOGCAMへ関心を向けていただくことはもちろん、さらに、いままでスマートフォンで動画撮影していた人たちに対する提案にも力を入れました。同じ関心を持つより多くの人に自分がつくる動画メッセージを見てもらいたいというモチベーションの高さから、そこにVlog専用機を使うことでメッセージがより伝わりやすくなることが伝えられれば、「VLOGCAMを是非使ってみたい」と思う人がたくさんいるはずだと考えました。商品の仕様をVlogに絞り込むことはもちろん、製品名もより分かりやすく「VLOGCAM」と命名しました。
―― かなり大きな反響ですが、これは想定内ですか。
小笠原 正直申し上げて想定以上です。Vlogに対する日本でのポテンシャルの大きさはいろいろな調査からも見えていましたが、はたして実際にどれくらいの方に関心を持っていただけるか読みにくい面もありました。想定以上の反応となったその背景には、これまでとは異なる層の新しいお客様が動き、新たな需要を開拓したことが大きく影響しています。そして、店頭からの売り場づくりなどのご提案、ご協力が立ち上がりの反響につながりました。感謝申し上げます。
―― 11月15日にはホワイトモデルが加わりましたが、女性層もかなり取り込めているのでしょうか。また、Vlogは10代後半から20代くらいまでが中心で、30代、40代だとまだ二の足を踏まれている印象ですが、年齢層からはどのような特徴が見られますか。
小笠原 男女比については、これまでのRXシリーズとは明らかに違い、女性から大きな支持を得ています。年齢層については幅広く、初めてカメラを買われる10代・20代の方の購入もありますし、同じ趣味を持つ者が動画を通じてコミュニティを形成できることから、30代・40代の方の購入も少なくありません。
アンケートにおいて、「静止画だけ撮る」「動画だけ撮る」「静止画も動画も両方撮る」に分けて使い方を聞いた結果、「両方撮る」という回答が物凄い勢いで増えてきています。カメラを選ばれるにあたり、動画の撮影性能を重視されるお客様はさらに増えていくと予想しています。
■動画撮影性能を極めた「α7S III」
―― お話しいただいたVlogをはじめとする「動画」をきっかけに、写真趣味層の年齢がかなり降りてきたと言えますか。
小笠原 「動画」というキーワードで年齢層は確実に若い世代へと広がりつつあります。VLOGCAMの購入が主に20代から40代であることもそうした顕著な例のひとつと言えます。インスタ世代を含め、写真を “カメラ” で撮る裾野が着実に広がると同時に、カメラにもAPS-Cやマイクロフォーサーズなど幅広い選択肢がありますが、最初からフルサイズのカメラを購入して、自分の好きな写真を趣味として始められる若い方が増えてきていることも注目されます。
―― “山” が動き出してきたわけですね。
小笠原 現在、そこで大きな支持をいただいているのが「α7III」です。フルサイズのエントリー機として位置づけられるモデルですが、本格的な撮影性能を備えており、大変高い満足度を得られるカメラとして高い人気を獲得しています。10月には、このゾーンのお客様をさらに広げていくポジションの商品として「α7C」 が新たにラインナップに加わり、こちらも多くのお客様から高い評価をいただくことができました。現在、α7Cのプロモーションを強力に展開しています。「より本格的な撮影を楽しみたい」とお考えの方はα7IIIを選択いただけます。両モデルのシナジーを生かして、この年末もフルサイズの新規需要開拓にもさらに力を入れて参ります。
―― 例えば、初めてカメラを買われる方がVLOGCAMを目当てに店頭に来たものの、いろいろな選択肢があり、見て、触って、よく話を聞いてみた結果、自分にはα7Cの方が適しているな、というお客様もいらっしゃるはずです。
小笠原 ミラーレスでフルサイズからAPS-Cまで幅広く揃えさせていただいているラインナップ戦略が、今、力を入れて取り組んでいる若い年代への提案や動画を切り口とした訴求にも大きな力となっています。お客様の目的に適った商品を見つけることができる強力なラインナップとなっています。
―― デジタルカメラグランプリ2021では、α7S IIIに実装された「クラス最高解像度、世界最大のファインダー倍率を実現した高精細EVFの開発」「CFexpress TypeAメモリーカードおよびSDメモリーカードに対応したデュアルスロットの開発」が技術賞を受賞するなど、「α7S III」も大注目商品のひとつです。
小笠原 Sシリーズとしては5年振りのアップデートとなり、まさに満を持して発売させていただきました。Sシリーズはもともと画素を抑えた圧倒的な高感度性能を大きな特長として2014年6月にα7Sを発売しましたが、翌年発売した2世代目のα7S IIからは、動画の撮影性能に対しても高い評価をいただいています。
今回、アップデートに5年の時間をいただきましたが、各社から動画を含めた新しい提案が相次ぐ中で、プロを含めて使いこなしていただける革新的な撮影性能を追求するαの想いを結実し、圧倒的な動画撮影性能・静止画撮影性能と使いやすさを高い次元で両立させることができました。発表以降、大変大きな反響をいただいています。
動画撮影では4K120Pのスペックを実現していますが、4K60Pでもしっかりと本格的に使っていただける点も大変高く評価されています。構造的な面では、動画撮影性能の進化に合わせて、背面の液晶モニターの構造やボタンの配置を含めた撮影スタイルの進化、メディアにも動画撮影に適したものを採用するなど、撮影性能のみならず、トータルで大きく進化しました。皆様の期待に応えることができるレベルに仕上げられたと自信を持ってお薦めできます。
―― 超高精細のEVFには審査委員長の山田先生も大変驚かれたそうで、「光学ファインダーとほぼ同レベル、いや、それ以上にキレイに見られる」と評価されています。
小笠原 EVFにしかできないことは最初から認めていただいていましたが、鑑賞的な部分で「もう少し進化してほしい」との要望がありました。今回、α7S IIIでは解像度もファインダー倍率も大きく進化し、「壁をついに乗り越えたか!」との評価をたくさんの方からいただいています。
■強みを発揮する「ワンマウント戦略」
―― 「売れ筋上位はソニーのEマウントレンズばかり」との声が店頭から聞こえてくるなど、交換レンズ市場においても好調な動きが目につきます。
小笠原 Eマウントのレンズのラインナップを先駆けて拡充してきましたが、ここに来て、ユーザーが非常に広がってきていることを実感しています。今後もミラーレスのスタンダードとして、交換レンズにおいてもEマウントのレンズのラインナップをさらに広げ、本体のカメラだけでなく、交換レンズにおいても市場を大いに盛り上げていきたいですね。「G Master」「G」「ZEISS」「無印ノーブランド」の商品構成のもと、純正レンズならではの価値をしっかりとお客様にお届けしていきます。
加えて、ここへきて動画の人気が上昇してきたことで、ソニーの「ワンマウント戦略」の強みが生きています。動画の撮影では、「α6600」や「α6400」などAPS-Cのモデルを使われている方が多いのですが、仮に、ステップアップされてフルサイズのカメラを購入されても、マウントは一緒なので、持っているレンズはそのまま使用することができます。カメラはAPS-Cのボディでも、将来の発展を見据えて敢えてフルサイズ用のFEレンズを選ぶ方もいらっしゃいます。
交換レンズにおいても動画のトレンドが影響し、広角の単焦点レンズの人気が高まるなど、動画撮影ならではのレンズの選び方が増えてきている点が注目されます。「FE 20mm F1.8 G(SEL20F18G)」はジンバルやグリップに装着しやすい小型・軽量設計で、高い近接撮影能力や静粛なAF駆動を誇り、動画撮影にもお薦めできる1本です。「FE 24mm F1.4 GM(SEL24F14GM)」は、ハイパワーのダイレクトドライブSSMを搭載しており、作品づくりに集中できるハイパフォーマンスなAF駆動を実現しています。
ワンマウントの思想はシネマカメラにおいても貫かれており、クリエイターのプラットフォームにおいてもEマウントシステムが活躍しています。ボディについてもシームレスに選べるポイントは、強みとしてしっかり打ち出していきます。
―― デジタルカメラ市場の縮小には、スマートフォンの台頭が大きく影響していますが、ソニーグループではスマートフォンにも「Xperia」を擁しています。より奥深い撮影の楽しさを幅広く伝えていく上での強みやシナジーなどお聞かせいただけますか。
小笠原 お客様はカメラを使い分けされています。写真を趣味とされる方も、写真や動画はコミュニケーションのためのツールとしても位置づけられ、日常的に常に持ち歩くスマートフォンで撮影するのはごくごく普通のことです。そのカメラ性能が上がることは、お客様にとっては間違いなくプラスになるはずです。われわれソニーが有するデジタルカメラの技術がそこへ貢献し、写真や動画を楽しむ世界の中でお客様の価値を高めています。
カメラマーケットは縮小していますが、われわれとしてやるべきことは、カメラ専用機だから楽しめる、より付加価値の高い静止画、動画の撮影性能の向上にこれまで以上に取り組んでいくこと。今、写真も動画も、個人を表現する作品づくりが盛んですが、それを皆さんで共有することが撮影を楽しむ大きなモチベーションになっています。今後、αとXperiaが連携することで、カメラとスマートフォンはよりシームレスにつながり、さらに使い勝手よく楽しめる環境を実現していくことができると考えています。
これから5Gが普及してきます。写真だけでなく、動画ももっと使いやすくなるインフラが整い、カメラとスマートフォンの連携はますます重要になってきます。ハードウエアだけでなく、アプリケーションを含めて、カメラとスマートフォンが連携した新しいソリューションを提供して参ります。そこで、お客様にとっての“新しい楽しみ方”を創造していくのがわたしどもの使命と考えています。
―― 年末、そして2021年へ向けての意気込みをお聞かせください。
小笠原 年末に向けては、大変高いご評価をいただいているSシリーズの「α7S III」、α7IIIとともにフルサイズの新規層掘り起こしが期待される「α7C」、そしてVlogに特化した動画撮影機能を誇る「VLOGCAM」など、特に新商品に力を入れて展開して参ります。7シリーズも供給面でのキャッチアップに一生懸命取り組んでおりますので、しっかりとご販売いただける体制を整えて、年末商戦へ挑みたいと思います。これからの重要な役割としては、これまでのお客様の買い替えだけにとどまらず、新しいお客様の需要創出を強く意識してご提案していくこと。ご販売店と一緒になって、市場に勢いを取り戻して参ります。
トピック
クローズアップCLOSEUP
-
大人気のJBL最新TWS「LIVE BUDS 3」が30%オフ!楽天ブラックフライデーで安すぎる注目機
-
高音質と機能性を両立する新たなスタンダード機!AVIOT完全ワイヤレス「TE-V1R」レビュー
-
初めてのスクリーンなら シアターハウス「WCBシリーズ」が推し!高コスパで“王道シアター”
-
ファッション性と機能性のバランスが抜群なヘッドホンAVIOT「WA-Q1」レビュー
-
【読者限定割引クーポンあり】多彩なコーデックと強力なANCで快適リスニング!「EarFun Air Pro 4」レビュー
-
ソニーの新ながら聴きイヤホン「LinkBuds Fit」徹底レビュー!スピーカーとも連携
-
ソニー「BRAVIA Theatre Quad」“本格”シアターを“手軽に”実現
-
ソニー「BRAVIA Theatre Bar 9/Bar 8」は「リビングシアターの理想形」
アクセスランキング
RANKING
11/22 10:41 更新