公開日 2022/10/28 11:50
花沢健吾×関智一 『アイアムアヒーロー』対談。超人気作がボイスコミック化で生まれ変わった
2人と主人公には共通点があった
音声が付いた電子コミック、「ボイスコミック」作品として、『アイアムアヒーロー』の配信が決定した。数々の漫画賞にランクインし、実写映画化もされた人気作品だが、ボイスコミック化は今回が初だ。
目と耳で楽しめるボイスコミックでは、原作の世界がどのように表現されるのか?主人公の鈴木英雄を演じる関智一さん、そして原作者の花沢健吾さんに、その注目ポイントを語っていただいた。
ーー 今回ボイスコミック版『アイアムアヒーロー』でご一緒されることになったわけですが、花沢さんと関さんは、お互いに対してどういった印象をお持ちでしたか?
花沢健吾さん(以下、花沢) 僕はアニメというか、テレビをほとんど観ないもので・・・マンガ関係者なのに。僕のマンガがアニメ化するということがなかったので、ちょっとモヤモヤしてしまうところもあり(笑)。なので、アニメを観なくなってしまっていたんです。でも、関さんは『鎌倉殿の13人』に出演されていますよね? 声優の方としてではなく、それが僕にとって関さんとの最初の接点になっています。
関智一さん(以下、関) アニメとマンガはつながっているように見えて、原作者の方と声優とはそこまで頻繁にお会いするかと言ったら、しないですよね。
花沢 イメージとしては、こちら(花沢さん)が “陰” で、こちら(関さん)が “陽” という感じで。
関 いえいえ、こっちも意外と “陰” ですよ(笑)
花沢 だから僕にとっては、今日はすごく貴重な体験ですね。
関 僕はもともとマンガを読むのが好きで、小学校の頃に “マンガ入門” のような本が出ていたんですが、その巻末に先生の家の住所と連絡先が載っていたんですよ。水木しげるさんや永井豪さんのところに電話したら、ご本人が応対してくれて。
花沢 へー! すごいな・・・、今の時代では考えられないですね。
関 「中学を卒業したら遊びにおいでよ」みたいに言っていただいて、一日中、風忍(かぜしのぶ)先生が相手してくれたりしたんです。単純に憧れて、マンガ家の先生に会いに行ってコミュニケーションを取る、という経験はむしろ小さい頃にありましたね。仕事をしてからの方が会う機会は減ったかもしれません(笑)。ですので、僕にとっても貴重な機会だと思っています。
ーー マンガに音の要素が加わり、ページにそったセリフや効果音、BGMが再生される「ボイスコミック」という形態について、これまで関わったことがあるかや、その印象を教えてください。
花沢 今回の『アイアムアヒーロー』で初めてボイスコミックというものに触れるので、まだ完成形を確認していないのですが、すごく楽しみにしています。これまでは作品が終わればあとは埋もれていく、というのが基本だったのが再発掘されて、こういう風な新しい表現になってくれるのは単純に嬉しいことで、また違う読者層も増えていただければ有り難いですし、良いことしかないですね(笑)
関 ボイスコミックそのものではないですが、僕はもともと声優を目指して勉強している段階でも、マンガを読みながら好きな役を演じて録音・編集して自己満足する、ということをやっていましたね。仕事がないので致し方なく(笑)
花沢 マンガがアニメになったときは、放送時間の尺に合わせて、セリフの字数を減らしたりするわけじゃないですか。『アイアムアヒーロー』だと主人公が1話から結構1人でつぶやいていたりしますが、今回のボイスコミックでは、そのまま話していただいていますよね。これは大変なんじゃないですか?
関 テレビではフォーマットに収めるために切らないといけなかったりしますが、今回は尺の指定はなくて、そこを気にする必要がないのは良かったですね。面白いのは倍速再生もあって、僕たちが演じているペースよりも早く読み進めたい場合、その機能を使えば、セリフを聴き取れる範囲で早くなるという。
花沢 読者の方が読むスピードに合わせてセリフや音がついてくるんですね。でもボイスコミックは、心理描写を説明するシーンなんかはうまくやらないと難しそうな気がしますね。『アイアムアヒーロー』は一切心理描写がなく、全部セリフで喋るようにしちゃっているので、そこは良いのかなと思うのですが、どうなんでしょうね。
関 今までのこういったフォーマットは、アニメをしているというか、コマごとにセリフが付いて、それを順に切り替えていくんですよね。ボイスコミックはページが一気に表示されるので、より原作に忠実になると思うんです。そこもどう受け取ってもらえるのか、楽しみですね。
ーー 新しいフォーマットであるボイスコミックへの参加は、ある意味でチャレンジな部分もあると思いますが、取り組むにあたっての意気込みなど、普段のお仕事との違いなどはありましたか?
関 『アイアムアヒーロー』という作品は面白いなと思って拝見していたので、オファーをいただけたのは嬉しかったんですが、同時にプレッシャーもありました。原作って好きな方にとっては特別なものだと思うんですよ。例えばアニメになると、同じ内容でも原作とは切り離した考え方として挑める部分もあるんですが、やっぱり直接、原作に声を当てる、というのは自分の中ではハードルが高いですね。
主人公は普通のドラマだと脇役というか、すごく普通の人じゃないですか。それが僕の演じ方で損なわれて、格好いい雰囲気が漂い過ぎたりすると、本質とずれてしまう。なるべくリアルにしたい、という緊張感がありましたね。
ーー 『アイアムアヒーロー』ではリアルな日常が描かれているからこそ、非日常が入り混じる怖さが増しているように感じます。
関 自分も舞台などをやっていて常々思っていたんですが、嘘の話をリアルに見せるのに、1つ大きな嘘があったら、そのまわりをリアルにしておかないと全部が嘘っぽく見えてしまう。ゾンビが出てくる話だけど、主人公のリアルな生活があるから、物語に入っていきやすいな、と演じてても思ったんですね。
ただ、僕はこの役をやらせていただいたときに、すごく自分に似ているな、と感じたんですよ。「自分も普段、こんなこと言ってるな」とか(笑) ジェラシーから格好悪いことを言って彼女を傷つけてしまったな、というような、青春時代に抱えてる痛みというのが共通している部分があって、演じやすかったというのは救いでした。
職業病でどうしても声がアニメっぽい雰囲気になってしまう瞬間があったりするんです。普通にやっているつもりでも、アニメが好きな方が聴くと、「関さんだな」と透けてしまうというか。そうなると『アイアムアヒーロー』には合わないだろうと考えていたので、透けないようにと意識しましたね。かといって、作りすぎてもあまり作品の世界に合わないと思うので、ナチュラルになるように。
花沢 リアルという部分では、『アイアムアヒーロー』はまず編集さんと色々と雑談しているときに、僕が異様な怖がりで、教科書を魔法陣みたいに並べたりしていたんですよ、という話から、だったらホラー漫画にしましょうよ、という流れがあったんです。
マンガだと意外にゾンビものは大きな作品がないな、ということで、ゾンビものを考えて。どうせやるんだったら単行本1巻くらい使って、徹底的に日常生活を見せた上でひっくり返っていく、という方が面白いんじゃないかという始まりでしたね。
関 まさに、英雄は先生なんですね。
花沢 そうですね、特に最初の頃に関しては、僕をそのまま描いちゃうのが感情も乗りやすいし、良いんじゃないかなと考えて描いていました。
関 ということは、先生も独り言は多いタイプなんですか?
花沢 うーん、さすがに口に出してはいないと思うんですけど、架空の人達が都合の良い会話を僕にしてくれる妄想はしちゃうんですよ。特に仕事場では、妄想で喋っていることがよくありますね。都合のよい質問を僕にしてきてくれたり(笑)
関 英雄の言葉で面白かったのは、「本当のロックとは音楽を一切聞かないことじゃないか」という話で、たしかにそうだなと思ってしまいました。そういうことを考えているわけですね(笑)
花沢 言わないですけどね(笑)
関 でも、そういったシミュレーションをしながら描かれたから、『アイアムアヒーロー』がすごくリアルに感じられるんですね。
ーー パンデミックが起きたあとの英雄の行動も、実際に現実世界でそんなことが巻き起こったとしたら、先生ならどう動くか、というものが反映されているのでしょうか?
花沢 そうですね、銃を持っているとはいえ平凡な人間がどうやったら生き残るのかな、と考えて。でも基本的には生き残らないだろうなと(笑) 。実際にあちこち歩いてみて、意外と街にも人がいない時間帯があるので、そういうところを上手く移動すればなんとかなるのかな、とか取材しながら考えていく感じでしたね。
関 そういうのって、ちょっと考えちゃいますよね。ゾンビがもしいたら、どの武器が最強なのか、みたいな。自分だったらどうなるんだろう? 運は良い方なので、そこそこは生き残れるんじゃないかと思うですけど、実際ゾンビが出てきちゃったら、ビビっちゃって動けないですよね。自分が銃を持っていても、冷静に弾を入れ替えたりできなさそうですし、英雄はなんだかんだ主人公しているなと思いますね。
ーー 英雄は趣味が銃ということもあって、様々な局面を切り抜けていましたが、お二人は趣味が何かにつながった、ということはありますでしょうか?
花沢 好きなことを仕事にしてしまったので、基本的にそれ以外の趣味がないんですよね。やっていることと言えばAmazonで欲しいものがあったらカートに入れて、買った気になってるくらいでしょうか(笑)。趣味でストレス発散というよりは、勝手に気づいたら楽になっている、という感じです。関さんは何かありますか?
関 僕はもともと、お芝居と、画を描くこと、粘土でフィギュアを作ることを趣味の3本柱にしていたんです。そのうちお芝居を仕事にすることができたので、残りの2つは純粋な趣味として残っていたんですが、声優だけど画を描けるよ、フィギュアの原型を作れるよ、というかたちで色々やらせていただくことがあったので、そういう意味では趣味からつながっていますね。でも、先生も造形とかお上手そうですよね。
花沢 どうでしょう、立体はまた目線が違うと思いますが、やってみたいですね(笑)
ーー この取材時点では、まだお二人も完成したボイスコミック版『アイアムアヒーロー』を体験されていませんが、どういったところが楽しみですか?
花沢 この音なんだろう、どうやっているんだろう、というのも楽しめるかもしれませんね。ちなみに第一話で英雄がうがいをするシーンなんか、あれはどうやって音をだしているんですか?
関 あれは実際にマイクの前でうがいをしています。たとえば煎餅をかじるシーンがあるとして、現場に用意されていることもありますが、自発的に声優が持ち込んでかじるということも多いんですよ。
花沢 なるほど、そうなんですね…! ゾンビは過去の記憶が少しあって、多少話したりするんですが、その声がどうなっているのかも気になります。
関 たしかに、我々が創意工夫をするのにも限界がありますからね。どういうかたちになるのか、仕上がりが楽しみです。
花沢 意外なところでも違う発見が出てきそうな気がしています。
ーー 最後に、読者の方にコメントをお願いします。
花沢 繰り返しになりますが、僕にとってこれまでにない試みなので、これをきっかけに『アイアムアヒーロー』を一度読んだことのある方がまた読んでくださったり、新しい人に広がってくれたらありがたいです。ぜひ、読んで聞いてほしいと思います。
関 『アイアムアヒーロー』をボイスコミックとして読み始めたら、物語の最後まで全部ボイスコミックとして体験したくなると思うので、ぜひ応援していただいて、最後まで聞くぞという気持ちで楽しんでいただけたら嬉しいです。
『アイアムアヒーロー』
原作 :花沢健吾
作品形式 :ボイスコミック
声の出演 :関智一、今井麻美、和氣あず未ほか
<あらすじ>
主人公・鈴木英雄 は、35歳の漫画家アシスタント。
現実への不満や将来への不安を抱え、恋人の黒川徹子に対しても苛立ちを募らせる。
ある日、英雄が徹子のアパートを訪ねると、変わり果てた姿の彼女と対峙することに。
謎の感染症により生きる屍となった徹子は、ドアを噛み千切り、狼狽する英雄に襲い掛かる。そして、街へ飛び出した英雄の目の前には衝撃の光景が ……!
散弾銃を手に首都圏から逃れた英雄は、富士の樹海で制服姿の女子高生・ 早狩比呂美 と出会う。未曽有のパンデミックに見舞われる中、英雄はヒーローになれるのか!?
●配信先
マンガアプリ『comipo』
APP Store https://apps.apple.com/jp/app/comipo/id1591548181
Google Play https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.vivion.comipo
WEBサービス『DLsite comipo』
https://www.dlsite.com/comic/
目と耳で楽しめるボイスコミックでは、原作の世界がどのように表現されるのか?主人公の鈴木英雄を演じる関智一さん、そして原作者の花沢健吾さんに、その注目ポイントを語っていただいた。
あまり接点のない “マンガ家” と “声優” を結びつけた「ボイスコミック」
ーー 今回ボイスコミック版『アイアムアヒーロー』でご一緒されることになったわけですが、花沢さんと関さんは、お互いに対してどういった印象をお持ちでしたか?
花沢健吾さん(以下、花沢) 僕はアニメというか、テレビをほとんど観ないもので・・・マンガ関係者なのに。僕のマンガがアニメ化するということがなかったので、ちょっとモヤモヤしてしまうところもあり(笑)。なので、アニメを観なくなってしまっていたんです。でも、関さんは『鎌倉殿の13人』に出演されていますよね? 声優の方としてではなく、それが僕にとって関さんとの最初の接点になっています。
関智一さん(以下、関) アニメとマンガはつながっているように見えて、原作者の方と声優とはそこまで頻繁にお会いするかと言ったら、しないですよね。
花沢 イメージとしては、こちら(花沢さん)が “陰” で、こちら(関さん)が “陽” という感じで。
関 いえいえ、こっちも意外と “陰” ですよ(笑)
花沢 だから僕にとっては、今日はすごく貴重な体験ですね。
関 僕はもともとマンガを読むのが好きで、小学校の頃に “マンガ入門” のような本が出ていたんですが、その巻末に先生の家の住所と連絡先が載っていたんですよ。水木しげるさんや永井豪さんのところに電話したら、ご本人が応対してくれて。
花沢 へー! すごいな・・・、今の時代では考えられないですね。
関 「中学を卒業したら遊びにおいでよ」みたいに言っていただいて、一日中、風忍(かぜしのぶ)先生が相手してくれたりしたんです。単純に憧れて、マンガ家の先生に会いに行ってコミュニケーションを取る、という経験はむしろ小さい頃にありましたね。仕事をしてからの方が会う機会は減ったかもしれません(笑)。ですので、僕にとっても貴重な機会だと思っています。
ーー マンガに音の要素が加わり、ページにそったセリフや効果音、BGMが再生される「ボイスコミック」という形態について、これまで関わったことがあるかや、その印象を教えてください。
花沢 今回の『アイアムアヒーロー』で初めてボイスコミックというものに触れるので、まだ完成形を確認していないのですが、すごく楽しみにしています。これまでは作品が終わればあとは埋もれていく、というのが基本だったのが再発掘されて、こういう風な新しい表現になってくれるのは単純に嬉しいことで、また違う読者層も増えていただければ有り難いですし、良いことしかないですね(笑)
関 ボイスコミックそのものではないですが、僕はもともと声優を目指して勉強している段階でも、マンガを読みながら好きな役を演じて録音・編集して自己満足する、ということをやっていましたね。仕事がないので致し方なく(笑)
花沢 マンガがアニメになったときは、放送時間の尺に合わせて、セリフの字数を減らしたりするわけじゃないですか。『アイアムアヒーロー』だと主人公が1話から結構1人でつぶやいていたりしますが、今回のボイスコミックでは、そのまま話していただいていますよね。これは大変なんじゃないですか?
関 テレビではフォーマットに収めるために切らないといけなかったりしますが、今回は尺の指定はなくて、そこを気にする必要がないのは良かったですね。面白いのは倍速再生もあって、僕たちが演じているペースよりも早く読み進めたい場合、その機能を使えば、セリフを聴き取れる範囲で早くなるという。
花沢 読者の方が読むスピードに合わせてセリフや音がついてくるんですね。でもボイスコミックは、心理描写を説明するシーンなんかはうまくやらないと難しそうな気がしますね。『アイアムアヒーロー』は一切心理描写がなく、全部セリフで喋るようにしちゃっているので、そこは良いのかなと思うのですが、どうなんでしょうね。
関 今までのこういったフォーマットは、アニメをしているというか、コマごとにセリフが付いて、それを順に切り替えていくんですよね。ボイスコミックはページが一気に表示されるので、より原作に忠実になると思うんです。そこもどう受け取ってもらえるのか、楽しみですね。
自分に共通するところがあったから、自然に入っていけた(関)
ーー 新しいフォーマットであるボイスコミックへの参加は、ある意味でチャレンジな部分もあると思いますが、取り組むにあたっての意気込みなど、普段のお仕事との違いなどはありましたか?
関 『アイアムアヒーロー』という作品は面白いなと思って拝見していたので、オファーをいただけたのは嬉しかったんですが、同時にプレッシャーもありました。原作って好きな方にとっては特別なものだと思うんですよ。例えばアニメになると、同じ内容でも原作とは切り離した考え方として挑める部分もあるんですが、やっぱり直接、原作に声を当てる、というのは自分の中ではハードルが高いですね。
主人公は普通のドラマだと脇役というか、すごく普通の人じゃないですか。それが僕の演じ方で損なわれて、格好いい雰囲気が漂い過ぎたりすると、本質とずれてしまう。なるべくリアルにしたい、という緊張感がありましたね。
ーー 『アイアムアヒーロー』ではリアルな日常が描かれているからこそ、非日常が入り混じる怖さが増しているように感じます。
関 自分も舞台などをやっていて常々思っていたんですが、嘘の話をリアルに見せるのに、1つ大きな嘘があったら、そのまわりをリアルにしておかないと全部が嘘っぽく見えてしまう。ゾンビが出てくる話だけど、主人公のリアルな生活があるから、物語に入っていきやすいな、と演じてても思ったんですね。
ただ、僕はこの役をやらせていただいたときに、すごく自分に似ているな、と感じたんですよ。「自分も普段、こんなこと言ってるな」とか(笑) ジェラシーから格好悪いことを言って彼女を傷つけてしまったな、というような、青春時代に抱えてる痛みというのが共通している部分があって、演じやすかったというのは救いでした。
職業病でどうしても声がアニメっぽい雰囲気になってしまう瞬間があったりするんです。普通にやっているつもりでも、アニメが好きな方が聴くと、「関さんだな」と透けてしまうというか。そうなると『アイアムアヒーロー』には合わないだろうと考えていたので、透けないようにと意識しましたね。かといって、作りすぎてもあまり作品の世界に合わないと思うので、ナチュラルになるように。
異様な怖がりの僕をそのまま描いたのがスタート(花沢)
花沢 リアルという部分では、『アイアムアヒーロー』はまず編集さんと色々と雑談しているときに、僕が異様な怖がりで、教科書を魔法陣みたいに並べたりしていたんですよ、という話から、だったらホラー漫画にしましょうよ、という流れがあったんです。
マンガだと意外にゾンビものは大きな作品がないな、ということで、ゾンビものを考えて。どうせやるんだったら単行本1巻くらい使って、徹底的に日常生活を見せた上でひっくり返っていく、という方が面白いんじゃないかという始まりでしたね。
関 まさに、英雄は先生なんですね。
花沢 そうですね、特に最初の頃に関しては、僕をそのまま描いちゃうのが感情も乗りやすいし、良いんじゃないかなと考えて描いていました。
関 ということは、先生も独り言は多いタイプなんですか?
花沢 うーん、さすがに口に出してはいないと思うんですけど、架空の人達が都合の良い会話を僕にしてくれる妄想はしちゃうんですよ。特に仕事場では、妄想で喋っていることがよくありますね。都合のよい質問を僕にしてきてくれたり(笑)
関 英雄の言葉で面白かったのは、「本当のロックとは音楽を一切聞かないことじゃないか」という話で、たしかにそうだなと思ってしまいました。そういうことを考えているわけですね(笑)
花沢 言わないですけどね(笑)
関 でも、そういったシミュレーションをしながら描かれたから、『アイアムアヒーロー』がすごくリアルに感じられるんですね。
ーー パンデミックが起きたあとの英雄の行動も、実際に現実世界でそんなことが巻き起こったとしたら、先生ならどう動くか、というものが反映されているのでしょうか?
花沢 そうですね、銃を持っているとはいえ平凡な人間がどうやったら生き残るのかな、と考えて。でも基本的には生き残らないだろうなと(笑) 。実際にあちこち歩いてみて、意外と街にも人がいない時間帯があるので、そういうところを上手く移動すればなんとかなるのかな、とか取材しながら考えていく感じでしたね。
関 そういうのって、ちょっと考えちゃいますよね。ゾンビがもしいたら、どの武器が最強なのか、みたいな。自分だったらどうなるんだろう? 運は良い方なので、そこそこは生き残れるんじゃないかと思うですけど、実際ゾンビが出てきちゃったら、ビビっちゃって動けないですよね。自分が銃を持っていても、冷静に弾を入れ替えたりできなさそうですし、英雄はなんだかんだ主人公しているなと思いますね。
ーー 英雄は趣味が銃ということもあって、様々な局面を切り抜けていましたが、お二人は趣味が何かにつながった、ということはありますでしょうか?
花沢 好きなことを仕事にしてしまったので、基本的にそれ以外の趣味がないんですよね。やっていることと言えばAmazonで欲しいものがあったらカートに入れて、買った気になってるくらいでしょうか(笑)。趣味でストレス発散というよりは、勝手に気づいたら楽になっている、という感じです。関さんは何かありますか?
関 僕はもともと、お芝居と、画を描くこと、粘土でフィギュアを作ることを趣味の3本柱にしていたんです。そのうちお芝居を仕事にすることができたので、残りの2つは純粋な趣味として残っていたんですが、声優だけど画を描けるよ、フィギュアの原型を作れるよ、というかたちで色々やらせていただくことがあったので、そういう意味では趣味からつながっていますね。でも、先生も造形とかお上手そうですよね。
花沢 どうでしょう、立体はまた目線が違うと思いますが、やってみたいですね(笑)
『アイアムアヒーロー』ならではの音がどう表現されるか期待
ーー この取材時点では、まだお二人も完成したボイスコミック版『アイアムアヒーロー』を体験されていませんが、どういったところが楽しみですか?
花沢 この音なんだろう、どうやっているんだろう、というのも楽しめるかもしれませんね。ちなみに第一話で英雄がうがいをするシーンなんか、あれはどうやって音をだしているんですか?
関 あれは実際にマイクの前でうがいをしています。たとえば煎餅をかじるシーンがあるとして、現場に用意されていることもありますが、自発的に声優が持ち込んでかじるということも多いんですよ。
花沢 なるほど、そうなんですね…! ゾンビは過去の記憶が少しあって、多少話したりするんですが、その声がどうなっているのかも気になります。
関 たしかに、我々が創意工夫をするのにも限界がありますからね。どういうかたちになるのか、仕上がりが楽しみです。
花沢 意外なところでも違う発見が出てきそうな気がしています。
ーー 最後に、読者の方にコメントをお願いします。
花沢 繰り返しになりますが、僕にとってこれまでにない試みなので、これをきっかけに『アイアムアヒーロー』を一度読んだことのある方がまた読んでくださったり、新しい人に広がってくれたらありがたいです。ぜひ、読んで聞いてほしいと思います。
関 『アイアムアヒーロー』をボイスコミックとして読み始めたら、物語の最後まで全部ボイスコミックとして体験したくなると思うので、ぜひ応援していただいて、最後まで聞くぞという気持ちで楽しんでいただけたら嬉しいです。
原作 :花沢健吾
作品形式 :ボイスコミック
声の出演 :関智一、今井麻美、和氣あず未ほか
<あらすじ>
主人公・鈴木英雄 は、35歳の漫画家アシスタント。
現実への不満や将来への不安を抱え、恋人の黒川徹子に対しても苛立ちを募らせる。
ある日、英雄が徹子のアパートを訪ねると、変わり果てた姿の彼女と対峙することに。
謎の感染症により生きる屍となった徹子は、ドアを噛み千切り、狼狽する英雄に襲い掛かる。そして、街へ飛び出した英雄の目の前には衝撃の光景が ……!
散弾銃を手に首都圏から逃れた英雄は、富士の樹海で制服姿の女子高生・ 早狩比呂美 と出会う。未曽有のパンデミックに見舞われる中、英雄はヒーローになれるのか!?
●配信先
マンガアプリ『comipo』
APP Store https://apps.apple.com/jp/app/comipo/id1591548181
Google Play https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.vivion.comipo
WEBサービス『DLsite comipo』
https://www.dlsite.com/comic/
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