HOME > ニュース > AV&ホームシアターニュース
公開日 2016/07/26 19:21
「ドルビービジョンデイ」開催。 “映像のドルビー” 強力アピール
'17年にはドルビービジョン対応UHD-BDPも
ドルビージャパンは本日、ドルビービジョンの現在の状況を説明する「Dolby Vision Day 2016」を開催した。
イベントは、ドルビービジョンの撮影や編集、グレーディング、配信などのワークフローを説明するパートと、ドルビージャパンの大沢幸弘社長などがドルビービジョンについて紹介するゼネラルセッションの2パート構成となっていた。まずはゼネラルセッションの模様からお伝えしよう。
■「HDR以前と以後では映像がまったく変わる」
ゼネラルセッションのテーマは「Dolby Vision その実力と期待」。最初に登壇したドルビージャパンの大沢幸弘社長は、「一般には『音響のドルビー』というイメージが強いと思うが、最近では『映像のドルビー』としても知られるようになってきた。ドルビービジョンが世界で使われ始めている」と挨拶した。
大沢社長はまた、ドルビービジョンについてかみ砕いて説明。「4Kになるだけでは、これまでとあまり体験として大差ない。そこでコントラストの幅を持たせる技術としてHDRが必要となる」とし、「自然界の輝度の幅はものすごく広いが、これまでは表現できる輝度の幅が狭かった。だが、いよいよ市場にHDRの波が押し寄せてきた。HDR以前と以後では映像がまったく変わる」と、期待感を強く表明した。
さらに大沢社長は「一言でHDR対応といっても、定量的な性能が語られているわけではなく、HDRにどういうレベルで対応しているか判断する方法がなかった。だが今後は、ドルビービジョン対応かどうかを聞いてもらえれば、高品位なHDRが楽しめると判断いただけるようになる」とした。
ドルビービジョンの優位性については「ダイナミックメタデータを使ったシーンごとの最適化」ができること、「テレビの性能を踏まえた最適化」ができることのほか、「ハリウッドを背景にした豊富なコンテンツ」が揃うこと、「ドルビービジョン以外のHDRコンテンツも再生できる」ことなどを利点として挙げた。
コンテンツについては、「グローバルで非常に強い、ネットフリックスとAmazonという大きなコンテンツプロバイダーがドルビービジョンに対応し、すでにサービスを開始している」と説明。ネットフリックスでは、人気ドラマ「マルコポーロ」セカンドシーズンがドルビービジョンに対応しているという。
大沢社長はまた「エンドトゥーエンドがドルビーの特徴。家庭用の作品数は50作を超え、今年は100作品以上を追加する」とも述べ、今後の作品数増加にも言及した。
さらに大沢社長は劇場における採用状況についてもコメントし、「ドルビービジョン採用映画が続々と発表されている」ことをアピール。またドルビービジョンとドルビーアトモスに対応している映画館「DOLBY CINEMA」がアメリカ、欧州、中国などで続々とオープンしていることにも触れ、「ぜひ日本にも持ってきたい」と述べた。
■LG「どこよりも先駆けてドルビービジョンに対応した」
ハードメーカーでは、LG Electronics Japan(株)のイ・インギュ氏があいさつ。「日本で唯一大型有機ELテレビを展開している」と同社の先進性をアピールしたインギュ氏は、「今年のモデルの特徴は画質の進化で、その中心となるのがドルビービジョン。どこよりも先駆けて対応した」と強調した。
またドルビービジョンやHDRと有機ELテレビの親和性が高いことも訴求し、「液晶では限界のある黒の沈み、明るいところの再現が、有機ELではより際立つ。人間の目に近い映像が再現できる」とした。
■ひかりTVも8月下旬からドルビービジョン対応作品を提供開始
コンテンツプロバイダーを代表して発表したのは、ひかりTVを手がけるNTTぷらら 取締役 技術本部長の永田勝美氏。永田氏は、ひかりTVが4K/4K HDRに取り組んできた経緯を紹介した。
永田氏は「ひかりTVは他社のようなOTTサービスではなく、CDN(クローズドネットワーク)を使う。このため回線の品位が担保でき、4Kのような高品位な映像に対して親和性が高い」と紹介。そのような背景から4Kへの取り組みは非常に早く、2014年10月に4K VODサービスを開始し、2015年11月には4K HDRサービスを開始。また4K IP放送サービスも2015年11月に開始し、いまでは24時間編成を行っている。
4K/HDR作品の提供では、最近になってハリウッド作品を含む12作品を追加。全22作品のラインナップとなった。ドルビービジョン対応コンテンツについても、スポーツドキュメンタリー「レッドブル Xファイター」を8月下旬から提供開始する。
また永田氏は画質を決める項目として輝度、色域、色深度、フレームレート、解像度の各項目を挙げ、ドルビービジョンが輝度や色域、色深度について高いポテンシャルを持っていることも紹介した。
■「すべてのHDRはドルビーが元祖」
評論家という立場からドルビービジョンについて解説したのは、麻倉怜士氏。タイトルは「ドルビービジョンの読み方、HDR 10やHLGなど、すべてのHDRはドルビーが元祖」という刺激的なものだった。
麻倉氏は「HDRにハリウッドがノックアウトされた。4KじゃなくてもいいからHDRだ! という声も出たほどだ」とし、ドルビービジョンを知るための重要ポイントとして「なぜ10,000nitsも必要なのか?」「EOTFをPQカーブにしたのは?」「ディレクターズ・インテンション」の3点を挙げた。
そのうえで、なぜ10,000nitsが必要なのかということについては「数百人に対して行ったテストがもとになっている。被験者に様々な映像を見せ、90%の人を満足させるために必要な輝度の数値を調べたら、白側の輝度は10,000nits、黒側は0.005nitsという結果が出た」と、科学的なアプローチを行った結果であると紹介。
また、以前に当サイトでも紹介していることから詳細は省くが、PQカーブについても解説。人間の視覚特性を研究したPQカーブを用いることによって、データを効率よく使うことが可能になったとした。
さらに麻倉氏が強調したのが「ディレクターズ・インテンション」。監督の意図をしっかりと反映するために、ダイナミックメタデータなどの仕様が盛り込まれているのだと説明した。
ドルビー本社を訪れた際のエピソードも披露し、HDRを見た際に脳が活性化するという研究を行っている研究員の話などを披露。基礎研究をしっかり行っていることが、ドルビーの長年にわたって高い存在感を示し続けている背景にあると紹介した。
■2017年にドルビービジョン対応UHD-BDプレーヤーが登場
セッションの後には、米ドルビーラボラトリーズ本社から来日した、コンシューマーイメージング担当 バイスプレジデント ローランド・ヴライク氏、ドルビージャパンの大沢幸弘社長へのQ&Aセッションも行われた。
ハードウェアの今後の見通しについてヴライク氏は、「パートナーとはいろいろな協力を行っている。ドルビービジョン対応のSoCやチップセットを作っているパートナーも増え、ラインナップが増えている。こういったものは結果的にテレビメーカーさんが使うことになる。グローバルではスカイワースやTCLが対応テレビ発表をアナウンスしているが、ほかのメーカーについても、今後数ヶ月でアナウンスがあるだろう」と述べた。
なお、ドルビービジョン内蔵テレビでなくてもドルビービジョンを楽しめるようにするSTBについても同じような状況とのこと。SoCやチップセットが増えていることから、今後の商品化が期待できるとした。
プロジェクターについての質問も出た。これに対してヴライク氏は「私もプロジェクターは大好きだ。ナイスクエスチョン」とし、現時点で発表できる内容はないが、メーカー数社から問い合わせをもらっていると明らかにした。
さらにヴライク氏は、ドルビービジョン対応のUltra HD Blu-rayプレーヤーについても言及。「2017年には発売されるだろう」と具体的な日程にまで言及した。
なおドルビービジョン対応のUltra HD Blu-rayソフトについても、ソニーのDADCやシナリオなどが対応を進めており、制作環境が整っていると紹介。ハリウッドの対応状況については「具体的に発表できることはない」としたが、「ユニバーサルスタジオは25タイトルについて、ドルビービジョンでもマスタリングすると聞いている」と述べた。
■キャプチャーから編集、グレーディング、表示までのワークフローをデモ
会場では複数の部屋を使い、ドルビービジョンのキャプチャーから編集、グレーディング、表示まで行うワークフローをデモしていた。
キャプチャー(撮影)については、grass valleyのカメラ「LDX 86 Series」を使って、ドルビーのPQカーブに対応した撮影をリアルタイムで行い、表示するデモを展開。カメラからベースステーションに光ファイバーで接続し、そこから2,000nitsの表示ができるドルビーの業務用モニター「マウイ」で表示。その右側にはSDRディスプレイも置かれ、ドルビービジョンとの比較が行えた。
なお、この「マウイ」は発光素子に青色LEDのみを大量に使うことで輝度を向上。赤と緑については量子ドットシートで表現しているという。
なおこの「LDX 86 Series」では、10bitのPQ映像を3G/SDIで外部出力する。動的なメタデータなどは付与されない。
続いて編集については、AVIDのメディアコンポーザーによる編集がデモされた。同ソフトはPQカーブはもちろん、HLGにもS-LOGにも対応しており、たとえばS-LOG映像をPQに変換することもできる。
またHDRへの対応では、リアルタイムでダイナミックレンジを表示できる機能も用意。さらに「Baselight」というプラグインを立ち上げることで、グレーディングをリアルタイムに行うこともできる。
グレーディングについては、FilmLight社も同社取扱システムを紹介した。同社のシステムでは、映像を見ながら、たとえば「100nitsのテレビで見たらどう見えるか」「4,000nitsまで表示できるパルサーだったら?」などのシミュレーションを一瞬で行うことが可能だ。
さらに、イマジカとキヤノン、BlackMagic Designによる共同デモルームも用意されていた。キヤノンは、SDRに対応した30型4Kディスプレイ「DP-V3010」の横に、2,000nitsまで表示できる試作機を置いていた。
またBlack Magic Designでは「DaVinci Resolve (ダヴィンチリゾルブ)」を紹介。同社では2014年の段階からドルビービジョンに対応しており、第1弾タイトル「トゥモローランド」も同システムを使って制作されたもの。
デモでは、PQカーブによるもとのHDR映像を分析し、SDR表示する際の最適なパラメーターを解析。それをもとにして、HDR映像とSDR映像を手早く制作できることが紹介されていた。なお、この解析結果のメタデータはXMLで書き出すこともできる。
配信については、NetflixとひかりTVの視聴デモが行われていた。Netflixについては上述の「マルコポーロ」セカンドシーズンが再生され、目の輝きや衣服のディテール、照明の描写などにドルビービジョンらしさが現れると紹介した。
ひかりTVも上述のレッドブルのバイクレースの模様を再生。「背景に明るい照明があって、その前をバイクが横切るなどといったシーンでも、照明の明るさとバイクのディテール、どちらも表現できる」とドルビービジョンの威力を紹介していた。
さらに、アメリカで展開されているVOD「VUDU」を使って、ドルビービジョンとドルビーアトモスで視聴するデモルームも用意された。
デモルームでは、VIZIOのテレビで4K/ドルビービジョン映像を表示し、音声はドルビーデジタルプラスをベースとしたアトモス音声が再生された。映像と音声をあわせても11Mbps程度とビットレートは低いが、4K/HDRらしい映像とオブジェクトオーディオがVODで楽しめるのは嬉しい。日本導入も期待したいサービスだ。
イベントは、ドルビービジョンの撮影や編集、グレーディング、配信などのワークフローを説明するパートと、ドルビージャパンの大沢幸弘社長などがドルビービジョンについて紹介するゼネラルセッションの2パート構成となっていた。まずはゼネラルセッションの模様からお伝えしよう。
■「HDR以前と以後では映像がまったく変わる」
ゼネラルセッションのテーマは「Dolby Vision その実力と期待」。最初に登壇したドルビージャパンの大沢幸弘社長は、「一般には『音響のドルビー』というイメージが強いと思うが、最近では『映像のドルビー』としても知られるようになってきた。ドルビービジョンが世界で使われ始めている」と挨拶した。
大沢社長はまた、ドルビービジョンについてかみ砕いて説明。「4Kになるだけでは、これまでとあまり体験として大差ない。そこでコントラストの幅を持たせる技術としてHDRが必要となる」とし、「自然界の輝度の幅はものすごく広いが、これまでは表現できる輝度の幅が狭かった。だが、いよいよ市場にHDRの波が押し寄せてきた。HDR以前と以後では映像がまったく変わる」と、期待感を強く表明した。
さらに大沢社長は「一言でHDR対応といっても、定量的な性能が語られているわけではなく、HDRにどういうレベルで対応しているか判断する方法がなかった。だが今後は、ドルビービジョン対応かどうかを聞いてもらえれば、高品位なHDRが楽しめると判断いただけるようになる」とした。
ドルビービジョンの優位性については「ダイナミックメタデータを使ったシーンごとの最適化」ができること、「テレビの性能を踏まえた最適化」ができることのほか、「ハリウッドを背景にした豊富なコンテンツ」が揃うこと、「ドルビービジョン以外のHDRコンテンツも再生できる」ことなどを利点として挙げた。
コンテンツについては、「グローバルで非常に強い、ネットフリックスとAmazonという大きなコンテンツプロバイダーがドルビービジョンに対応し、すでにサービスを開始している」と説明。ネットフリックスでは、人気ドラマ「マルコポーロ」セカンドシーズンがドルビービジョンに対応しているという。
大沢社長はまた「エンドトゥーエンドがドルビーの特徴。家庭用の作品数は50作を超え、今年は100作品以上を追加する」とも述べ、今後の作品数増加にも言及した。
さらに大沢社長は劇場における採用状況についてもコメントし、「ドルビービジョン採用映画が続々と発表されている」ことをアピール。またドルビービジョンとドルビーアトモスに対応している映画館「DOLBY CINEMA」がアメリカ、欧州、中国などで続々とオープンしていることにも触れ、「ぜひ日本にも持ってきたい」と述べた。
■LG「どこよりも先駆けてドルビービジョンに対応した」
ハードメーカーでは、LG Electronics Japan(株)のイ・インギュ氏があいさつ。「日本で唯一大型有機ELテレビを展開している」と同社の先進性をアピールしたインギュ氏は、「今年のモデルの特徴は画質の進化で、その中心となるのがドルビービジョン。どこよりも先駆けて対応した」と強調した。
またドルビービジョンやHDRと有機ELテレビの親和性が高いことも訴求し、「液晶では限界のある黒の沈み、明るいところの再現が、有機ELではより際立つ。人間の目に近い映像が再現できる」とした。
■ひかりTVも8月下旬からドルビービジョン対応作品を提供開始
コンテンツプロバイダーを代表して発表したのは、ひかりTVを手がけるNTTぷらら 取締役 技術本部長の永田勝美氏。永田氏は、ひかりTVが4K/4K HDRに取り組んできた経緯を紹介した。
永田氏は「ひかりTVは他社のようなOTTサービスではなく、CDN(クローズドネットワーク)を使う。このため回線の品位が担保でき、4Kのような高品位な映像に対して親和性が高い」と紹介。そのような背景から4Kへの取り組みは非常に早く、2014年10月に4K VODサービスを開始し、2015年11月には4K HDRサービスを開始。また4K IP放送サービスも2015年11月に開始し、いまでは24時間編成を行っている。
4K/HDR作品の提供では、最近になってハリウッド作品を含む12作品を追加。全22作品のラインナップとなった。ドルビービジョン対応コンテンツについても、スポーツドキュメンタリー「レッドブル Xファイター」を8月下旬から提供開始する。
また永田氏は画質を決める項目として輝度、色域、色深度、フレームレート、解像度の各項目を挙げ、ドルビービジョンが輝度や色域、色深度について高いポテンシャルを持っていることも紹介した。
■「すべてのHDRはドルビーが元祖」
評論家という立場からドルビービジョンについて解説したのは、麻倉怜士氏。タイトルは「ドルビービジョンの読み方、HDR 10やHLGなど、すべてのHDRはドルビーが元祖」という刺激的なものだった。
麻倉氏は「HDRにハリウッドがノックアウトされた。4KじゃなくてもいいからHDRだ! という声も出たほどだ」とし、ドルビービジョンを知るための重要ポイントとして「なぜ10,000nitsも必要なのか?」「EOTFをPQカーブにしたのは?」「ディレクターズ・インテンション」の3点を挙げた。
そのうえで、なぜ10,000nitsが必要なのかということについては「数百人に対して行ったテストがもとになっている。被験者に様々な映像を見せ、90%の人を満足させるために必要な輝度の数値を調べたら、白側の輝度は10,000nits、黒側は0.005nitsという結果が出た」と、科学的なアプローチを行った結果であると紹介。
また、以前に当サイトでも紹介していることから詳細は省くが、PQカーブについても解説。人間の視覚特性を研究したPQカーブを用いることによって、データを効率よく使うことが可能になったとした。
さらに麻倉氏が強調したのが「ディレクターズ・インテンション」。監督の意図をしっかりと反映するために、ダイナミックメタデータなどの仕様が盛り込まれているのだと説明した。
ドルビー本社を訪れた際のエピソードも披露し、HDRを見た際に脳が活性化するという研究を行っている研究員の話などを披露。基礎研究をしっかり行っていることが、ドルビーの長年にわたって高い存在感を示し続けている背景にあると紹介した。
■2017年にドルビービジョン対応UHD-BDプレーヤーが登場
セッションの後には、米ドルビーラボラトリーズ本社から来日した、コンシューマーイメージング担当 バイスプレジデント ローランド・ヴライク氏、ドルビージャパンの大沢幸弘社長へのQ&Aセッションも行われた。
ハードウェアの今後の見通しについてヴライク氏は、「パートナーとはいろいろな協力を行っている。ドルビービジョン対応のSoCやチップセットを作っているパートナーも増え、ラインナップが増えている。こういったものは結果的にテレビメーカーさんが使うことになる。グローバルではスカイワースやTCLが対応テレビ発表をアナウンスしているが、ほかのメーカーについても、今後数ヶ月でアナウンスがあるだろう」と述べた。
なお、ドルビービジョン内蔵テレビでなくてもドルビービジョンを楽しめるようにするSTBについても同じような状況とのこと。SoCやチップセットが増えていることから、今後の商品化が期待できるとした。
プロジェクターについての質問も出た。これに対してヴライク氏は「私もプロジェクターは大好きだ。ナイスクエスチョン」とし、現時点で発表できる内容はないが、メーカー数社から問い合わせをもらっていると明らかにした。
さらにヴライク氏は、ドルビービジョン対応のUltra HD Blu-rayプレーヤーについても言及。「2017年には発売されるだろう」と具体的な日程にまで言及した。
なおドルビービジョン対応のUltra HD Blu-rayソフトについても、ソニーのDADCやシナリオなどが対応を進めており、制作環境が整っていると紹介。ハリウッドの対応状況については「具体的に発表できることはない」としたが、「ユニバーサルスタジオは25タイトルについて、ドルビービジョンでもマスタリングすると聞いている」と述べた。
■キャプチャーから編集、グレーディング、表示までのワークフローをデモ
会場では複数の部屋を使い、ドルビービジョンのキャプチャーから編集、グレーディング、表示まで行うワークフローをデモしていた。
キャプチャー(撮影)については、grass valleyのカメラ「LDX 86 Series」を使って、ドルビーのPQカーブに対応した撮影をリアルタイムで行い、表示するデモを展開。カメラからベースステーションに光ファイバーで接続し、そこから2,000nitsの表示ができるドルビーの業務用モニター「マウイ」で表示。その右側にはSDRディスプレイも置かれ、ドルビービジョンとの比較が行えた。
なお、この「マウイ」は発光素子に青色LEDのみを大量に使うことで輝度を向上。赤と緑については量子ドットシートで表現しているという。
なおこの「LDX 86 Series」では、10bitのPQ映像を3G/SDIで外部出力する。動的なメタデータなどは付与されない。
続いて編集については、AVIDのメディアコンポーザーによる編集がデモされた。同ソフトはPQカーブはもちろん、HLGにもS-LOGにも対応しており、たとえばS-LOG映像をPQに変換することもできる。
またHDRへの対応では、リアルタイムでダイナミックレンジを表示できる機能も用意。さらに「Baselight」というプラグインを立ち上げることで、グレーディングをリアルタイムに行うこともできる。
グレーディングについては、FilmLight社も同社取扱システムを紹介した。同社のシステムでは、映像を見ながら、たとえば「100nitsのテレビで見たらどう見えるか」「4,000nitsまで表示できるパルサーだったら?」などのシミュレーションを一瞬で行うことが可能だ。
さらに、イマジカとキヤノン、BlackMagic Designによる共同デモルームも用意されていた。キヤノンは、SDRに対応した30型4Kディスプレイ「DP-V3010」の横に、2,000nitsまで表示できる試作機を置いていた。
またBlack Magic Designでは「DaVinci Resolve (ダヴィンチリゾルブ)」を紹介。同社では2014年の段階からドルビービジョンに対応しており、第1弾タイトル「トゥモローランド」も同システムを使って制作されたもの。
デモでは、PQカーブによるもとのHDR映像を分析し、SDR表示する際の最適なパラメーターを解析。それをもとにして、HDR映像とSDR映像を手早く制作できることが紹介されていた。なお、この解析結果のメタデータはXMLで書き出すこともできる。
配信については、NetflixとひかりTVの視聴デモが行われていた。Netflixについては上述の「マルコポーロ」セカンドシーズンが再生され、目の輝きや衣服のディテール、照明の描写などにドルビービジョンらしさが現れると紹介した。
ひかりTVも上述のレッドブルのバイクレースの模様を再生。「背景に明るい照明があって、その前をバイクが横切るなどといったシーンでも、照明の明るさとバイクのディテール、どちらも表現できる」とドルビービジョンの威力を紹介していた。
さらに、アメリカで展開されているVOD「VUDU」を使って、ドルビービジョンとドルビーアトモスで視聴するデモルームも用意された。
デモルームでは、VIZIOのテレビで4K/ドルビービジョン映像を表示し、音声はドルビーデジタルプラスをベースとしたアトモス音声が再生された。映像と音声をあわせても11Mbps程度とビットレートは低いが、4K/HDRらしい映像とオブジェクトオーディオがVODで楽しめるのは嬉しい。日本導入も期待したいサービスだ。