公開日 2014/11/17 11:00
これぞ4Kビエラ史上最高画質! 原画忠実を極めた「AX900」
【特別企画】
直下型LEDバックライトを搭載した、初めての4Kビエラがデビューした。その名は「AX900」。高輝度・広視野角のIPSパネルを採用し新開発LSIを用いた高精度な高画質技術を惜しみなく注入。歴代ビエラの映像遺伝子を受け継いだ、新たな“最高峰"が今秋、目覚める。
本質的な画質改善を狙った最重要モデル「AX900」
パナソニックはAX900とAX700各シリーズを投入することによって4Kビエラのラインアップを一気に拡大し、既存のAX800と合わせて3シリーズ計12モデルの堂々たる陣容に強化した。中でもトップエンドのAX900シリーズは直下型バックライトを採用するなど本質的な画質改善を狙った最重要モデルであり、技術面でも注目すべき点が多い。
パナソニックは昨年まで継続してきたプラズマテレビの開発で多くの技術とノウハウを蓄積した。プラズマテレビは自然な階調再現や暗部の色彩表現など、いまも液晶テレビの課題とされる領域で強みを発揮し、映画ファンを中心に根強い支持がある。
パナソニックの設計陣は、当然ながらプラズマテレビの開発で得た技術とノウハウを4K液晶テレビの画質改善に活かすことを目指す。液晶テレビの課題をクリアしたうえで、明るさや精細感など液晶ならではの強みと組み合わせれば、いよいよ「プラズマを超える」ことも不可能ではないはずだ。
実際、今回のAX900シリーズは「ビエラ最高画質」の実現を高らかに謳っている。前作のAX800は「液晶最高画質」という表現にとどまっていたことを考えると、大きなステップアップだ。その裏付けとなる技術を詳しく見てみよう。
コントラスト性能も前作から大きな進化を遂げている
まず前作とは一線を画す高輝度の実現に注目したい。開口率を上げたパネルの直下に高輝度LEDバックライトを配し、AX800シリーズ比で一気に2倍の明るさを獲得。今回の画質改善のなかで効果が最もわかりやすく、色彩やコントラストの改善を支える重要な要素でもある。パネルは85型を除いてIPS方式を採用し、視野角によるコントラストの低下を最小に抑えた。ここはさすがにプラズマ同等とはいかないものの、65型でも実用上ほぼ気にならないレベルまで広い視野角を確保した意味は大きい。
コントラスト性能についてもAX800から大きな進化を遂げている。バックライトの明暗制御はエリアごとにきめ細かく調整するローカルディミングの技術を投入し、引き締まった黒からハイライトまでレンジの広いコントラストを実現。エリア制御の単位を3×3から5×5ブロックに広げることで、明暗の境界部が目立つ現象を緩和している点にも注目すべきだろう。直下型の副作用を入念に抑えることで、エッジ型バックライトとは一線を画す力強いコントラスト表現が重要な意味を持ってくるのだ。
さらに、撮影時に失われた高輝度部の階調情報を復元する「ダイナミックレンジリマスター」の効果も期待できる。直下型バックライトを採用したことによるダイナミックレンジの拡大は、輝度の向上と並んでAX800からの大きな進化で、こちらも一見しただけで誰もが気付くほど顕著な成果を上げている。具体的には、白飛びを解消しながらそこに埋もれていた色を取り戻す効果が期待でき、明るい部分が平板になりやすい欠点を抑え込むことに成功している。
高精細表現を生む4KファインリマスターエンジンPRO
色彩表現については、6軸の色補正を行う「ヘキサクロマドライブ」をAX800シリーズから継承してDCIカバー率約98%を達成したうえで、新たにBT・2020信号の入力時にも色バランスを最適化して鮮やかさを保つ工夫を採り入れ、4K映像の再現力を高めた。広色域の色再現は「カラーリマスター」によってオリジナルに近い色を復元することを実現。ここにもプラズマテレビから継承した技術が活かされている。
高精細表現を引き出す超解像技術は「4KファインリマスターエンジンPRO」に進化を遂げた。新規開発のLSIは変換された映像信号についても原画解像度を判別して適切な処理を行う能力を有し、映像の特徴に応じた精度の高い精細度の復元を行うため、アップコンされた映像にも効果を発揮するという。なお、原画の解像度を判別したうえで絵柄や信号の特徴に応じて最適な超解像を行う機能はAX900シリーズのみの装備で、それが「PRO」と命名された由来である。
適応型処理のなかで新たに導入されたアルゴリズムとして、モデル化された信号処理を柔軟に適用する「モデルベース型超解像技術」も注目に値するものだ。アウトフォーカスの背景など、超解像処理が副作用を引き起こしかねない部分ではあえて処理を抑えることができるので、撮影意図とかけ離れた表現に傾くリスクを回避できるはずだ。
パワフルなコントラスト感がリアリティを一気に高める
エリア制御を組み合わせた直下型バックライトの導入はコントラストの改善に確実な効果を上げている。輝度の向上自体もひと目で分かる成果で、たとえば地デジ放送ではステージを彩る舞台照明がリアルなほどの輝きを放つし、金属の光沢感など質感を引き出す力も明らかに向上している。
そして、そうした高輝度部分の力強さと黒の深い沈み込みの対比が生むパワフルなコントラスト感は被写体のリアリティを一気に高める効果があり、映像の説得力が確実に強まる。人間の視覚と脳が映像から現実感を実感するうえで、コントラストがいかに重要な役割を果たしているか、あらためて思い知らされるほどだ。
『アラビアのロレンス』では炎天の砂漠から立ち上る陽炎から空気そのものの熱が感じられ、野営の炎と闇の対比が砂漠での孤立感を際立たせる。どちらも目に焼き付くようなコントラストを表現できなければ、その場面の撮影意図は半分も伝わってこない。
色の彩度と明度それぞれのリニアな再現能力が向上
プラズマテレビからの継承を個人的に期待してきたのが低輝度部の色再現と階調表現の改善だ。液晶テレビは低輝度部の色が抜けやすいうえに階調の深みが足りず、人物の表情が伝わり切らないもどかしさを感じることがある。その点ではいまもプラズマテレビが優位というのが筆者の実感なのだが、果たしてAX900はその印象を覆してくれるのだろうか。
『パリの恋人』をシネマモードで見る。明るい場面の鮮やかな色彩表現にひとしきり感心したあと、暗い場面に切り替えてみると、顔や衣装の色がほとんど鮮度を失っていないことに気付いた。明暗の階調自体、以前よりも明らかに精度が上がっていて、色の彩度と明度それぞれのリニアな再現能力が向上しているのだ。
シネマモードは意図的に黒を引き締める方向にチューニングされているようで、場面によっては最暗部の沈み込みが深くなりすぎることがあるが、THX(明)に切り替えるとフィルムの豊かな階調を存分に引き出すことができる。シネマプロも含め、階調表現のさじ加減はモードごとに巧みに変えてあるので、特に映画については作品によって積極的に各モードを使い分けることをお薦めする。
暗部の色相や彩度の表現力は有機ELマスモニにも迫る
かつてはプラズマテレビと比較して液晶ビエラの進化を検証する機会が何度かあったのだが、今回のAX900の視聴会場にはなんと有機ELのマスターモニターが設置され、AX900と比較する環境が用意されていた。忠実再生を使命とするマスモニの映像はコントラストと色再現に有機ELならではの余裕があり、液晶と同じ基準で比べることはできないのだが、さきほど紹介した暗部階調や色彩については参考になる点が少なくなかった。
階調の描写は『パリの恋人』、『アラビアのロレンス』、『オブリビオン』でそれぞれ複数の場面を確認したが、傾向が全く異なるこの3作品を見た範囲で、暗部の色相がシフトしにくいことと、彩度が低下しにくいことに気付いた。その点に関して低輝度時のAX900の画調がマスモニにかなり近いことがわかる。厳密な比較をすれば色の純度や微妙な階調表現に少なからぬ差があるのだが、以前はそうした比較自体がほとんど成立しなかったことを考えると、大きな進歩と言うべきだろう。IPSパネルを採用したことによる視野角の改善も確実な効果を発揮しており、多少斜めから見た程度ではコントラストと色の低下をほとんど気にしないで済む。65型では特にその恩恵が大きいと感じた。
コントラストと階調の余裕が現実さながらの臨場感を生む
4Kパネル本来の精細感を実感するにはネイティブの4K映像を見るのが一番の早道だ。もちろん画素の存在は画面の直近まで近付かないとわからない。撮影条件の良いデモンストレーション映像は輪郭を描き直すなどの補正処理とは無縁で、色の階調の豊かさで自然に立体感が浮かび上がってくる。試験放送においてデモンストレーション映像のような品位を求めるのは酷だが、AX900が持つコントラストの余裕や自然な暗部階調の表現は、ソースが例えフルHD映像でも十分に伝わるし、4K映像では本機のメリットが一段と際立つ。精細感の高さは当然として、そこにコントラストと階調の余裕が加わることで初めて現実と見紛うほどの臨場感が生まれるのだ。AX900の映像からはそうした4K本来の醍醐味の一端が確実に伝わってきた。
【製品情報】
TH-65AX900 ¥OPEN
●画面サイズ:65型 ●液晶パネル方式:IPS方式 直下型LEDパネル ●画素数:3840×2160 ●チューナー:地上・BS・110度CSデジタル×3 ●消費電力:484W(待機時約0.2W) ●年間消費電力量:231kWh/年 ●外形寸法:1457W×863H×356Dmm ●質量:約52.0kg(スタンド含む)