公開日 2016/06/24 12:22
【レビュー】I2SでのDSD入力に対応したラズパイ用DACボード「Terra-Berry」を聴く
DACに旭化成「AK4490」を搭載
連載「ラズパイオーディオ通信」でおなじみの海上忍氏が、ブライトーンが7月より発売するAK4490搭載のRaspberry Pi用DACボード「Terra-Berry」をレビュー。セットアップ方法から音質までを詳細に紹介していく。
■Raspberry PiのDAC事情
本稿は製品レビューという建前だが、Raspberry Piとの組み合わせで動作する機器である以上、現在の"ラズパイ・オーディオ"が前提とする環境の説明無しにはTerra-Berryという製品を理解できないだろう。長めの序文として、しばしお付き合いいただきたい。
コンポーネントオーディオとしてのDACは、デコードされたオーディオ信号がDACチップを経てアナログ段に到達し最終的な出音となる流れが一般的だ。しかしRaspberry Piの場合、DACに至るまでの経路として「USB」と「I2S」の2種類が存在する(他にはHDMIや有線/無線LANもある)。Raspberry Piの汎用拡張ポート「GPIO」に挿して使うドータボードの形状を見れば、Terra-Berryが後者のタイプと察しが付くはずだ。
GPIOに接続するタイプのDACボードはもれなく、4本のデジタル信号線で2ch音声をシリアル伝送する規格「I2S(Inter-IC Sound)」で接続される。通常はIC間の通信手順としてオーディオ機器内部で利用されるが、これを外部機器との通信に使おうというわけだ。Raspberry PiはSoC/CPUとGPIOが直結しており、GPIOに接続するタイプの拡張ボードとしてDACを用意すれば、他の伝送ルートより「生」に近いオーディオ信号を得られる。PCオーディオではハードルが高いI2S接続をわずか数千円の小さなコンピュータ上で実現できるのだから、そのコストパフォーマンスたるや畏るべし、である。
しかし、設計上・仕様上の約束事がいくつかある。ひとつは「マスタークロック」だ。Raspberry Piは自前の高精度クロックを持たないため、ソフトウェア的に生成して送信するか、あるいはDACボード側で用意するしかない。DDFAやFN1242Aのようにマスタークロックを自己生成できるデジタルアンプ/DACもあるが(関連ニュース)、そうでない場合はオーディオクオリティの高精度クロックをDACボード上に積むことになる。
もうひとつは、I2S出力できるオーディオ信号が最大192kHz/24bit(PCM)ということだ。これは、LinuxがI2Sで扱えるPCM信号の定義が最大192kHz/24bitであることに起因する。それ以上のサンプリングレートに対応させるためのパッチは、すでにALSA開発チームへ提出されているのだが(興味があれば開発者メーリングリストを探してほしい)、ALSAの成果が反映されるLinuxカーネルの最新安定版v4.6.2においても、そのパッチは適用されていない。
つまり、現在のところPCM音源であれば192kHz/24bit、DSD(DoP)であればDSD 2.8MHzが、I2S接続のDACカードで再生できる上限となる。これはVolumioだろうがRuneAudioだろうが、Raspberry Pi向けLinuxディストリビューションであれば変わらない(独自の拡張を施していれば話は別だが耳にしたことはない)。ただし、ALSAではUSBなど別系統の出力においてより大きいデータを扱えるため、USB-DACならばDSD 11.2MHzやPCM 768kHzなどそれ以上のデータ量でも再生可能だ。詳しくは前回記事「ラズパイ・オーディオ通信 第16回」を参照いただきたい。
■Raspberry PiのDAC事情
本稿は製品レビューという建前だが、Raspberry Piとの組み合わせで動作する機器である以上、現在の"ラズパイ・オーディオ"が前提とする環境の説明無しにはTerra-Berryという製品を理解できないだろう。長めの序文として、しばしお付き合いいただきたい。
コンポーネントオーディオとしてのDACは、デコードされたオーディオ信号がDACチップを経てアナログ段に到達し最終的な出音となる流れが一般的だ。しかしRaspberry Piの場合、DACに至るまでの経路として「USB」と「I2S」の2種類が存在する(他にはHDMIや有線/無線LANもある)。Raspberry Piの汎用拡張ポート「GPIO」に挿して使うドータボードの形状を見れば、Terra-Berryが後者のタイプと察しが付くはずだ。
GPIOに接続するタイプのDACボードはもれなく、4本のデジタル信号線で2ch音声をシリアル伝送する規格「I2S(Inter-IC Sound)」で接続される。通常はIC間の通信手順としてオーディオ機器内部で利用されるが、これを外部機器との通信に使おうというわけだ。Raspberry PiはSoC/CPUとGPIOが直結しており、GPIOに接続するタイプの拡張ボードとしてDACを用意すれば、他の伝送ルートより「生」に近いオーディオ信号を得られる。PCオーディオではハードルが高いI2S接続をわずか数千円の小さなコンピュータ上で実現できるのだから、そのコストパフォーマンスたるや畏るべし、である。
しかし、設計上・仕様上の約束事がいくつかある。ひとつは「マスタークロック」だ。Raspberry Piは自前の高精度クロックを持たないため、ソフトウェア的に生成して送信するか、あるいはDACボード側で用意するしかない。DDFAやFN1242Aのようにマスタークロックを自己生成できるデジタルアンプ/DACもあるが(関連ニュース)、そうでない場合はオーディオクオリティの高精度クロックをDACボード上に積むことになる。
もうひとつは、I2S出力できるオーディオ信号が最大192kHz/24bit(PCM)ということだ。これは、LinuxがI2Sで扱えるPCM信号の定義が最大192kHz/24bitであることに起因する。それ以上のサンプリングレートに対応させるためのパッチは、すでにALSA開発チームへ提出されているのだが(興味があれば開発者メーリングリストを探してほしい)、ALSAの成果が反映されるLinuxカーネルの最新安定版v4.6.2においても、そのパッチは適用されていない。
つまり、現在のところPCM音源であれば192kHz/24bit、DSD(DoP)であればDSD 2.8MHzが、I2S接続のDACカードで再生できる上限となる。これはVolumioだろうがRuneAudioだろうが、Raspberry Pi向けLinuxディストリビューションであれば変わらない(独自の拡張を施していれば話は別だが耳にしたことはない)。ただし、ALSAではUSBなど別系統の出力においてより大きいデータを扱えるため、USB-DACならばDSD 11.2MHzやPCM 768kHzなどそれ以上のデータ量でも再生可能だ。詳しくは前回記事「ラズパイ・オーディオ通信 第16回」を参照いただきたい。