公開日 2015/12/24 16:35
ビートルズのストリーミング開始はハイレゾ配信への布石か? 元洋楽ディレクターが分析
本日よりApple/Google/Amazonで配信開始
12月24日のクリスマスイブ、全国紙の朝刊の全面広告をビートルズのカラー写真が飾った。映画『Help』の有名な“ファブフォー”の4人が並んだカット。下段には大きく「聴き放題、始まる」とある。ビートルズのストリーミング配信開始を知らせる全面広告だ。日本国内においても、Apple Music、Google Play、Amazon Prime Musicの3サービスで午前0時01分から配信が開始された。
これまでビートルズの楽曲はインターネット配信やデジタル利用に大きな制約があり、ダウンロード販売はアップルのiTunes Storeのみに限られてきた。また、アップルもストリーミングサービスであるApple Musicでは、ビートルズの配信は行っていなかった。
近年の音楽配信の主流となっているストリーミングにおいて、ビートルズが一切配信できないことは、各社にとって頭の痛い問題にもなっていた。ビートルズの代表的な楽曲が聴けないのはもちろん、年間ヒットチャートで編纂するクロニクル物のプレイリストも、ビートルズのところだけが歯抜けになるからである。米国アップルとビートルズの原盤会社アップル・コアが結んだ「特別な契約(*1)」があるため、他社はダウンロードもストリーミングも手を出すことができなかった。
(*1)2007年、莫大な金額で「アップル」の商標権を米国アップルに譲渡するという和解策でビートルズとアップルの関係は修復され、2010年の配信開始に際しても両者に加え、当時の配給元EMIとの3者間で特別な契約が結ばれた。配給元がユニバーサルに変わってもそれが引き継がれたと考えられる。
2014年頃から、ポールやジョンなどメンバー個々人のソロ作品が、圧縮音源/ハイレゾともに本格的にダウンロード販売されるようになり、各社ストリーミングサービスでも配信が開始された。さらに米Pandoraなど、WEBラジオ方式の非オンデマンド配信ストリーミングでもビートルズが流れはじめ、本格的な“ビートルズのストリーミング解禁”は間近と期待されていた。
12月18日付の米・音楽業界紙ビルボード(Billboard)には「ザ・ビートルズの楽曲、12月24日のクリスマスイブにストリーム配信開始が濃厚:関係者情報」という記事も出ていた。ビートルズ楽曲の発売元であるユニバーサル・ミュージックのデジタル部門を統括していたロブ・ウェルズが、今年9月に音楽ストリーミングの契約書類を作成し、権利者のサインを得たと伝えられた。今回のストリーミング配信開始にあたって、上記3者間での「特別な契約」にストリーミングの条項が加えられたと推測される。もちろんポール、リンゴの二人、さらにジョンとジョージの未亡人それぞれの合意も必要だったはずだ。
新聞の全面広告では「Apple Music」(アップル)、「Google Play Music」(グーグル)、「Prime Music」(アマゾン)のロゴが掲載され、「上記の3つの定額制音楽配信サービスで、ザ・ビートルズの音楽をお楽しみいただけます」と記載されている。日本ではまずこの3つのサービスが先行する。
筆者も定額契約しているApple MusicとGoogle Playの2つのサービスで試してみた。Apple Musicは、すでにiTunes Storeでも扱っているからなのか、専用ページを設置するといった特別扱いは無い。全17作品に加え、5種類のプレイリストが用意されている。
一方Google Play Musicは、トップ画面に全面広告で使われたファブフォーのカットがあしらわれ、「Let It Stream. ビートルズ、Google Playで配信中」と表記。気合が入っている。こちらでは「人気曲」98曲のプレイリストも提供され、一気に聴ける。
ちなみに国外では、ストリーミング配信の世界最大手であるSpotifyもビートルズを配信開始。44.1kHz/16bitのロスレスストリーミングを配信するTIDALも、ビートルズをやはりロスレスで配信開始している。
ビートルズのストリーミング解禁で、ネットにおける彼らの楽曲利用が大きく広がっていくことは容易に予想される。ストリーミング解禁に伴い、現時点ではiTunes Storeに限定されているダウンロード配信も、各社のサービスで近いうちに解禁されるだろう。
そうなると、次に期待されるのはハイレゾ配信である。以前にこちらの記事で紹介したとおり、ビートルズはすでに96kHz/24bitでデジタライズされた音源を用意している(マスターテープからのデジタル化、および編集作業は192kHz/24bitで行われた)。しかし、いきなり96kHz/24bitで出してくることは考えにくい。まずはかつて限定発売された、USBメモリー版ボックスセットに収録された44.1kHz/24bit、もしくは48kHz/24bitでの配信が現実的だろう。
個人的には、まずはジャイルズ・マーティンによる最新ステレオ・ミックスが収録された「1+」のハイレゾ配信を期待したいところ。いずれにしても、2016年にさらなる動きがあるか、今後も注意して見守っていきたい。
これまでビートルズの楽曲はインターネット配信やデジタル利用に大きな制約があり、ダウンロード販売はアップルのiTunes Storeのみに限られてきた。また、アップルもストリーミングサービスであるApple Musicでは、ビートルズの配信は行っていなかった。
近年の音楽配信の主流となっているストリーミングにおいて、ビートルズが一切配信できないことは、各社にとって頭の痛い問題にもなっていた。ビートルズの代表的な楽曲が聴けないのはもちろん、年間ヒットチャートで編纂するクロニクル物のプレイリストも、ビートルズのところだけが歯抜けになるからである。米国アップルとビートルズの原盤会社アップル・コアが結んだ「特別な契約(*1)」があるため、他社はダウンロードもストリーミングも手を出すことができなかった。
(*1)2007年、莫大な金額で「アップル」の商標権を米国アップルに譲渡するという和解策でビートルズとアップルの関係は修復され、2010年の配信開始に際しても両者に加え、当時の配給元EMIとの3者間で特別な契約が結ばれた。配給元がユニバーサルに変わってもそれが引き継がれたと考えられる。
2014年頃から、ポールやジョンなどメンバー個々人のソロ作品が、圧縮音源/ハイレゾともに本格的にダウンロード販売されるようになり、各社ストリーミングサービスでも配信が開始された。さらに米Pandoraなど、WEBラジオ方式の非オンデマンド配信ストリーミングでもビートルズが流れはじめ、本格的な“ビートルズのストリーミング解禁”は間近と期待されていた。
12月18日付の米・音楽業界紙ビルボード(Billboard)には「ザ・ビートルズの楽曲、12月24日のクリスマスイブにストリーム配信開始が濃厚:関係者情報」という記事も出ていた。ビートルズ楽曲の発売元であるユニバーサル・ミュージックのデジタル部門を統括していたロブ・ウェルズが、今年9月に音楽ストリーミングの契約書類を作成し、権利者のサインを得たと伝えられた。今回のストリーミング配信開始にあたって、上記3者間での「特別な契約」にストリーミングの条項が加えられたと推測される。もちろんポール、リンゴの二人、さらにジョンとジョージの未亡人それぞれの合意も必要だったはずだ。
新聞の全面広告では「Apple Music」(アップル)、「Google Play Music」(グーグル)、「Prime Music」(アマゾン)のロゴが掲載され、「上記の3つの定額制音楽配信サービスで、ザ・ビートルズの音楽をお楽しみいただけます」と記載されている。日本ではまずこの3つのサービスが先行する。
筆者も定額契約しているApple MusicとGoogle Playの2つのサービスで試してみた。Apple Musicは、すでにiTunes Storeでも扱っているからなのか、専用ページを設置するといった特別扱いは無い。全17作品に加え、5種類のプレイリストが用意されている。
一方Google Play Musicは、トップ画面に全面広告で使われたファブフォーのカットがあしらわれ、「Let It Stream. ビートルズ、Google Playで配信中」と表記。気合が入っている。こちらでは「人気曲」98曲のプレイリストも提供され、一気に聴ける。
ちなみに国外では、ストリーミング配信の世界最大手であるSpotifyもビートルズを配信開始。44.1kHz/16bitのロスレスストリーミングを配信するTIDALも、ビートルズをやはりロスレスで配信開始している。
ビートルズのストリーミング解禁で、ネットにおける彼らの楽曲利用が大きく広がっていくことは容易に予想される。ストリーミング解禁に伴い、現時点ではiTunes Storeに限定されているダウンロード配信も、各社のサービスで近いうちに解禁されるだろう。
そうなると、次に期待されるのはハイレゾ配信である。以前にこちらの記事で紹介したとおり、ビートルズはすでに96kHz/24bitでデジタライズされた音源を用意している(マスターテープからのデジタル化、および編集作業は192kHz/24bitで行われた)。しかし、いきなり96kHz/24bitで出してくることは考えにくい。まずはかつて限定発売された、USBメモリー版ボックスセットに収録された44.1kHz/24bit、もしくは48kHz/24bitでの配信が現実的だろう。
個人的には、まずはジャイルズ・マーティンによる最新ステレオ・ミックスが収録された「1+」のハイレゾ配信を期待したいところ。いずれにしても、2016年にさらなる動きがあるか、今後も注意して見守っていきたい。