<山本敦のAV進化論 第30回>
「スマホでハイレゾ」の実力とは? ドコモの “ハイレゾ対応” スマホ一斉比較テスト
■音質チェック
サウンドは「ClearAudio+」をONにして、ボリューム位置は全体を10としたら8〜9の位置で聴いた。今回はどの端末も静かな室内環境で一斉に試聴したが、全体的な課題として、オーディオ再生専用のアンプを積んでいないので、ヘッドホン端子からの出力が若干不足しがちだ。屋外で聴く時にはボリュームをMAX近くまで上げないと聴きづらい場合があるのが辛いところだが、Xperia Z3の場合は後述するDAC内蔵ヘッドホンアンプとの組み合わせが利用できる。
音質は解像力の高さと、余計な脚色のないフラットなバランスを特徴としている。余分なクセが無く、どんなジャンルの音楽も忠実にソース本来の良さを引き出してくる。
女性ボーカルは口元の動きを細かく再現。息づかいが側に感じられる。抑揚は少しあっさりめだが、無駄に誇張した感じがしないところはかえって好印象だ。TOTOはバンドの奏でる音の一粒がキリっと立っていて、リニアリティが気持ち良い。S/Nが良いので、ライブ会場の光景が目の前に広がるようだ。中低域の厚みはもう少し欲しいところ。例えばドラムソロは、フロアタムやバスドラのズシンとくる低域にもうちょっとガッツがあれば、演奏全体がより引き締まるはず。ただし、アンプと組み合わせで、このあたりをさらに追い込めるのは、本機を選ぶ大きなメリットの一つになると思う。
オーケストラはきめ細かなニュアンスを丁寧に再現する。ウォークマンAシリーズに比べるとダイナミックレンジがやや狭く、あっさりとした音調に聞こえるが、スマホの中で比べると空間再現力に富んでいる方だ。他にもいくつかクラシックの楽曲を聴いてみたが、クラシック系の音楽とXperia Z3の相性は良さそうだ。
ほかの端末と並べて比較してみると「Walkman」アプリのスムーズな操作性が際立ってくる。今回試聴した4機種の中で、唯一ギャップレス再生に対応していたこともその一つだが、現在再生中の楽曲からライブラリーへの遷移など、インターフェースの出来も総じてレベルが高い。
USB出力によるハイレゾ再生も試してみた。接続方法はXperiaのmicroUSB端子にUSB OTG(On-The-Go)ケーブルを接続してから、アンプとUSBケーブルでつなぐ。端末の「音設定」のメニューから「USB経由のハイレゾオーディオ」にチェックを入れておこう。
iFi Audio「nano iDSD」との組み合わせで音質をチェックしたが、低域のエッセンスが凝縮され、力強さにコシも加わる。リズムがよりタイトに引き締められるので、演奏の緊張感がより高まる。オーケストラはとくに中低域のすごみが増すことで、全体のスケール感も一層広がる。ボーカルはフォーカスがぴたりと定まって、ピアノの伴奏との間に立体的な距離感が生まれる。
ぜひ活用したい機能だが、全てのUSB-DAC内蔵機器との組み合わせで使用できるとは限らないので注意が必要だ。またアンプとの接続時にはスマートフォンのバッテリー消耗が通常よりも速くなるので、電話としても活用している端末なら(むしろそういう方の方が多いとは思うが)バッテリー残量を気にしながら使いたい。
総評としては、音質と使いやすいUI、拡張性など、完成度の高い端末と言える。ハイレゾが聴きたくなったら、「mora」アプリから直接ダウンロードできるのも良い。すでにハイレゾ対応ウォークマンを使いこなしているマニアにとっても、通勤や街歩きなどのシーンでハイレゾを“チョイ聴き”できるスマホとして楽しめそうだ。
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